東方鬼灯伝   作:Agies

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 一周年記念のショートストーリーです。
 ※本編の少し未来のお話になります


おまけのお話たち
一周年記念ss『幻想郷は今日も騒がしい』


 幻想郷。妖怪と人間が共存する、妖怪にとっての最後の楽園。

 そんな幻想郷は今日も騒がしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――朝か………」

 

 妖怪の賢者、八雲紫の式神兼従者の八雲藍の朝は早い。

 八雲藍の朝は、主人の八雲紫を起こすことから始まる。

 

 

「紫様、起きて下さい。朝ですよ」

 

「………むぅ、あと五分………」

 

「はぁ、…………」

 

 主人が起きないことなんて想定内。最早様式美だ。

 このダメ主人が二度寝を享受している間に、朝御飯を作りに行く。

 

「~♪」

 台所で鼻歌を歌いながら朝御飯を作り始める。

 今日の献立は鮭の塩焼きと豆腐とワカメの味噌汁、ほうれん草のお浸しだ。

 

「よし、完成だ」

 

 皿に自分の分と主人の分を配膳し、完成。

 もう一度主人を起こしに廊下へとでる。

 九尾の証たる九つの尻尾を揺らし、廊下を歩いていく。金色に輝く美しい尾も、寝ている主人の前だと凶器へと変貌する。声をかけても起きなかったら、一本目でひっぱたく。もう一度声をかけて起きなかったら二本目でぶったたく。起きるまで繰り返すのだ。

 今日は何本目で起きるかな、等と不穏な考え事をしつつ、主人の寝室の襖を開ける。

 

「紫様、起きて下さい。朝御飯が準備できましたよ」

 

「……ふわぁ、おはよう藍。いい朝ね」

 

 予想外の返事に、振りかぶっていた尻尾を下ろす。いつもならここで、あと五分、と二度寝する筈なのだが。

 どうやら今日は、ぶったたく必要は無いらしい。それもそのはず、そういえば今日は、花見と称した宴会を開くのだった。 宴会ともなれば、いくらいつも寝坊助な主人と言えど、起きれるらしい。毎朝そうして欲しいと、思うのだが。

 

 主人の着替えが終わり、朝食の待つ居間へと向かう。

 

 

「今日の宴会は誰が来るんだったかしら?」

 

 食事を口に運ぶ主人からそんな質問が聞こえてきた。食事は黙って食べる派の主人が、食事中に自分から話しだすとは、余程今日の宴会が楽しみなのだろう。

 今日の宴会というのは、毎年春に博麗神社で行う、桜を見ながら酒を飲む、幻想郷の云わば恒例行事のようなもので、主人はそれを毎年楽しみにしているのだ。

 

 さて、今日の参加者だったか。場所を提供する博麗神社の巫女の博麗霊夢は勿論のこと、その友人の霧雨魔理沙や、紅魔館の住人なんかも来るはず。

 

「今日の参加者ですか、確か萃香も来ると言っていました」

 

 伊吹萃香。一見幼い童女だが、歴史に名を残す、酒呑童子本人であり、恐ろしいほどの力を持っているのだが、その実、陽気で酒好き、常に幻想郷をふらふらしている鬼。そんな酒好きな鬼も今回参加すると言っていた。またいつものように何処からともなく現れて、酒を飲んでいくのだろう。

 

「へぇ、萃香がねぇ。他には?」

 

「あとは、妖怪の山の天狗たちに、迷いの竹林の住人たちも来るそうです」

 

「妖怪の山の、ねぇ、うるさくなりそうね」

 

「ええ」

 

 妖怪の山の天狗。戒律の厳しい、独自のコミュニティを形成しており、余程の物好きじゃ無い限り、人と接することの無い妖怪だが、こういった宴会にはちょくちょく顔をだす。鬼と同じく酒好きなのだ。

 

「あんまり食べすぎちゃうと、宴会で飲めなくなっちゃうから程々にしとくわ。ごちそうさま」

 

「お粗末様でした」

 

 主人が食べ終わり、いよいよ宴会へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお霊夢、来たぜー」

 

「あら魔理沙、早いわね開始まであと二時間ちょっとあるわよ?」

 

 神社の鳥居や賽銭箱などは華麗に無視して、空から舞い降りたモノクロの魔女は、図々しくも庭から縁側に上り霊夢のいる部屋へと入る。

 

「霊夢、魔理沙さんは熱いお茶を所望するぜ」

 

「図々しいわね………あ、こらお煎餅勝手に食べるんじゃないわよ!」

 

「私と霊夢の仲なんだ、いいじゃないか。なぁ、萃香」

 

「そうだぞぉー霊夢ぅー、あんまり気にしすぎるとハゲるぞう」

 

 間延びした声で応える小さな鬼。酒呑童子こと伊吹萃香。

 

「なっ、あんたいつの間に」

 

「そんなことより霊夢、魔理沙さんは喉が乾いたぜ。お茶をおくれ」

 

「だぁーっ、もう、うるっさいわねっ!今持ってくるわよ!」

 

 そう言って湯飲みを取りに、台所へと消える霊夢。

 

「なんだ、あんなに怒鳴ることか?」

 

「んー、年頃の乙女にはそういうこともあるんだよ。多分」

 

「なるほどなー」

 

 

「何がなるほどなー、よ。貴女も霊夢と大して年は変わらないでしょ」

 

 そう言って襖を開けて入ってきたのは、紅魔館の完全で瀟洒なメイド、悪魔の犬。十六夜咲夜。

 

「お、咲夜。お前も早いな。レミリアも一緒なのか?」

 

「いえ、宴会の準備があるだろうから、霊夢を手伝いに私だけ先に来たのよ。お嬢様たちは後で、中国がつれてくるわ」

 

「ありがとう、咲夜。魔理沙、あんたもちょっとは見習いなさいな」

 

 台所から湯飲みを持ってきた霊夢が、魔理沙を睨む。

 

「さて霊夢、準備をやっちゃいましょう。料理、手伝うわ」

 

「ありがとう咲夜。魔理沙も何か手伝いなさいよ」

 

「えー」

 

 文句を言いつつ、渋々立上がり台所へ向かう魔理沙。

 

「萃香はそこを片付けておいて」

 

「あいよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって迷いの竹林。

 そこに位置する永遠亭では、とある姫が珍しく自室から出ようとしていた。

 

「永琳、そろそろ行くわよ」

 

「あら、本当に行くんですね。珍しい」

 

「何よ、私はただ、美味しいお酒が飲みたくなっただけよ。文句ある?」

 

「いえ、別に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉様っ!行きましょう!」

 

「ええ、そうね」

 

 紅魔館では、吸血鬼の姉妹がワクワクしながら、準備をしていた。

 

「中国、パチェを呼んできて頂戴」

 

 紅美鈴は紅魔館の住人からは、中国と呼ばれている。そんな美鈴は、主人の親友の、パチュリー・ノーレッジのいる、大図書館へと向かう。

 

「フランはお姉様を呼んできて頂戴」

 

「わかったわ、お姉様!」

 

 レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットの姉、ホウズキ・スカーレット。

 スカーレット姉妹の末っ子は、長女を呼びに、走りっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四月の半ば、どうやら今日は花見が行われるらしい。二日ほど前に招待状が届いた。

 花見と言っても、ようは皆集まってお酒でも飲んで、楽しく過ごしましょう、みたいなものらしい。

 俺はそれが楽しみで楽しみで、昨日から丸一日かけて、念入りに準備をしていた。

 

「さて、どの酒を持って行こうか」

 

 魔法で酒を作るようになってからというもの、俺の部屋には物凄い量の酒が、ごった返していた。

 雑然と並ぶ瓶に入った酒たち。その中から、二つほど持っていく酒を決める。

 一番出来のいい酒を持っていくのは当然として、残り一つを、なかなか決められないでいる。

 次に出来のいい酒か、それとも全然美味しくないが、見た目だけはいい酒か、はたまた、味も香りも普通だが、量だけは沢山ある酒か。

 

「うーむ………決めかねるな………」

 

「ホウズキお姉様っ!お花見行きましょっ!」

 

 俺が持っていく酒を、決めあぐねていると、元気よく扉を開けて、フランドールが入ってきた。

 

「もうそんな時間ですか?すいません、今準備しますね。 そうだフラン、フランはどのお酒がいいと思いますか?」

 

 長い時間、持っていく酒を決めることだけに使うのも、勿体ないので、この際、フランに決めて貰うことにした。

 

「うーんとねー、じゃあこの、ホウズキお姉様が一番美味しいって言ってたヤツ!」

 

 フランは一番美味しい酒を指差す。俺がさっき持っていくと決めたものだ。

 

「ああ、それはもう持っていくって決めたんです。あと一つを決めかねてるんですよ」

 

「そうなの? じゃあね、フランこれがいい!」

 

「ああ、そのお酒ですか。いいですね。そうしましょう」

 

 一番美味しい酒と、フランが決めてくれた酒を小脇に抱え、レミリアの待つ玄関へと、急ぎ足で向かう。

 

 幻想郷の宴会はもうすぐ始まろうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほー、魔理沙!霊夢!来たよー」

 

 フランが桜の木の下に座る集団に突っ込んでいく。

 宴会会場の博麗神社に到着した俺たちは、早速、輪の中に入っていく。

 フランが登場したことで、天狗の男共のテンションが最高潮へ達する。

 【速報】天狗たちはロリコンだった。

 レミリアもフランを追うように、霊夢たちの下へ向かう。

 天狗たちのテンションが更に上がった。どうしようもねぇな。天狗。

 逆に、フランやレミリアに一切反応せず、永琳や藍、そして紫の胸を凝視して、それを肴に酒を飲んでいる天狗も怖い。本当にどうしようもない。

 

 そんな賑やかな連中を横目に、幻想郷はどうなってしまうんだ、と近い未来に絶望しつつ、縁側に座り酒を飲む、紫の下へと行く。

 

「こんにちは紫さん。本日はお招きいただきありがとうございます」

 

「こんにちはホウズキ。そんな固っ苦しくしなくていいわよ。楽しみましょう」

 

 相変わらずの胡散臭い笑みを浮かべて、そんなことを言う紫。

 

「そうですね、折角のお花見ですし。 ああ、そうだお酒、持ってきたんですよ。飲みます?」

 

「ええ、いただくわ」

 

 そう言って自分の猪口をこちらに差し出す紫。俺はそれに、フランが選んでくれた酒を注ぐ。一番美味しい酒は、後でこっそり、一人で楽しむのだ。

 

「え?」

 

 注がれた酒を見て、思わず固まる紫。紫に注いだ、フランが選んでくれた酒は、見た目も味も、到底酒と呼べる代物ではない、度数だけは矢鱈高い酒だった。この酒を飲んで、生きていたものはいない。通称妖怪殺し。

 そんな酒を飲んで、生きていられるかな?紫さん。

 

「一応聞いておくけれど……これ、お酒よね?」

 

「はい、お酒ですよ。見た目はアレですが、味はいいので是非飲んでみてください!」

 

 大嘘である。

 

「そうなの?じゃ、じゃあ遠慮なく」

 

 俺の発言を信じ、勢いよく猪口を傾ける紫。

 

「っっ!!!!―――――――。   」

 

 妖怪殺しを飲みほし、声にならない悲鳴をあげ、その場に倒れる紫。ザマミロ。

 さて、次のターゲットは天狗たちだ。

 

 

「天狗のみなさーん!差し入れのお酒ですよー!」

 

 そう言って俺が集団に近づくと、ワラワラと、酒好きの天狗たちが集まってきた。

 

「なあ、これ色ヤバくねぇか?」

 

「色はヤバイが、香りはいいな」

 

「お、おい、お前飲んでみろよ」

 

「いやだよ、おっかねぇ」

 

 興味本位で集まってきた天狗たちは、妖怪殺しの色を見て、明らかに飲むのを躊躇っている。

 が、勇者現る。

 

「お、俺飲んでみるよ」

 

「「「おお!!」」」

 

「さあさあ、ぐいっと、一気に!」

 

「ゴクッ……ッッ!!!――――。  」

 

「ぎゃああ!!風太郎がしんだぁ!!」

 

「この酒やべぇぞ!最早酒じゃねぇ!!」

 

 桜の木の下が阿鼻叫喚の渦に巻き込まれる。

 

「いやー、面白いもの見れました」

 

「いや、何やってんのよあんた」

 

 こうして幻想郷の、毎年恒例の花見は始まった。

 

 

 

 

 因みに、宴会が始まって突然、謎の酒を飲まされ気を失って、楽しみにしていた宴会に、殆ど参加できず終わった紫は、恨みを込めて、後日ホウズキに大蒜を大量に送りつけたらしい。




 鬼灯伝が一周年であります!
 こうして一周年を迎えられたのは、皆様のおかげです。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
 是非感想や評価、お気に入りをよろしくお願いします。
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