東方鬼灯伝   作:Agies

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 投稿、遅れてしまいました。申し訳ないです。


第九話 討伐隊

「なぁ雫ちゃん、ちっと相談があるんだが………」

 

 千代を助け、そのお礼にと千代の宿に泊まらせてもらった次の日の朝、宿の親父さんつまりは千代のお父さんに呼び止められた。

 

「なんですか?相談って?」

 

「いや、実はな、千代を妖怪から救ってくれた雫ちゃんの腕前を見込んでのことなんだが」

 

「はあ」

 

「八雲紫っていう妖怪が最近騒がれてる、って話はこの間したと思うが、その八雲紫の討伐隊が組まれててな。 その討伐隊に参加してるヤツに、この前娘を雫ちゃんに助けてもらった、って話をしたら討伐隊に是非ってな。 そういう訳だ、雫ちゃん、討伐隊に参加してくれ!頼む!」

 

「つまり八雲紫の討伐隊に入れと」

 

「ああ、頼む!」

 

 八雲紫との接触のまたとないチャンスだ。これはやらざるを得ないだろう。

 

「わかりました。やらせていただきます」

 

 無論了承する。だが、討伐隊に参加するということは八雲紫と敵対するというわけで、つまり八雲紫と友好的に接したい俺としては割りと不利益な訳で。どうしようかな。まあ、深く考えないほうがいいのかもしれない。

 

「それで、討伐っていつやるんですか?」

 問えば、

「それがな急で悪いんだが、明日なんだ」

 そう答えが返ってくる。

 随分と急なんだな。まあ、以前から討伐隊は組まれていたと言うし、決まっていたことなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八雲紫討伐当日。千代と一緒に朝食を摂り、着替えて準備をすませる。討伐隊は町の広場に集合し、その後出発らしい。

 

「雫お姉ちゃん、気をつけてね?」

 

 玄関を出るとき(玄関からといっても他の客の迷惑にならないよう裏口からだが)千代に不安そうな顔を向けられる。

 

「そんな不安そうな顔をしないでください。私は大丈夫ですから」

 

「はい、雫ちゃん。これお弁当。多めに作っといたから。頑張っておいで」

 

 そう言って女将さんは包みを渡してくれる。その包みはズッシリと重たい。

 

「わあ、ありがとうごさいます。じゃあ、行ってきます」

 

 千代たちに見送られ、大通りを広場のほうに歩いていく。

 少し歩くと見えてきたのは、むさ苦しい男たちが集まった汗臭そうな空間。よく見れば男たちは皆、刀のようなものを所持している。

 はて、江戸時代では刀狩りかなんかで刀は所持できないのではなかったか? あれ、もしかして江戸時代じゃない? レミリアが生まれたのが俺のいた世界から五百年前だから、レミリアが五歳のこの世界だと、西暦およそ一五〇〇年。ザビエルが来たのが一五四九年だから………、おうふまだ戦国時代じゃん。ずっと江戸時代だと勘違いしていた………。

 気をとりなおして、近くにいた男に話しかけてみることにした。

 

「すいません、ここが討伐隊の集合場所でよかったですか?」

 

「おお、嬢ちゃんが噂の娘か。おう、ここが討伐隊の集合場所で間違いないぜ」

 

 どうやらここで間違いなかったようだ。それより噂のお嬢ちゃんというのが気になる。こんな男所帯に紅一点。確かに噂になるだろうが、なんて言われているかが気になる。妖怪に襲われた少女を助けた英雄、みたいな扱いだったら困る。あんまり目立ちたくないし。

 

「少女を襲ってた何体もの妖怪を一瞬で葬り去ったらしいじゃねぇか。そんな娘が参加してくれるんだ、心強ぇや」

 

 なんか話が盛られてる。そんな何体も妖怪を倒してないよ。一体だけだった。確かに一瞬で葬り去ったってのは否定できないけれども。

 

「は、はあ。それで、これからどこに向かうんですか?」

 

 気になったので聞いてみる。八雲紫はどこに現れるのだろうか。

 

「近くに森があるだろ?そこでちょっと前に八雲紫を見たっていう情報が入ってな。だからそこを虱潰しに探してとっちめるって訳だ。」

 

 近くの森というのは、前に二回俺が入った森のことだろう。森に入った時は妖力や気配は感じなかったが。

 

「お、そろそろ出発みたいだ。気ぃ引き締めろよ」

 

 リーダーらしき男が指揮を執り、討伐隊は森へと出発する。俺も遅れないように後ろの方にくっついていく。

 男たちは列を成して大通りを歩いていく。森がだんだんと近づいてきて、気付けば辺りは木だらけになってくる。

 森に入れば、道なき道をただひたすら歩くだけ。正直に言ってこのまま歩き続けても、八雲紫が見つかる気がしない。少し手伝ってやるとしよう。

 妖力を解放した。こうすることで、八雲紫が怪しみこちらに近づいてくるかもしれない。ただ歩くよりはましだろう。

 そうしながら歩くこと二十分程、漸く釣れた。大きな妖力がこちらに近づいてくる。間違いなく八雲紫だろう。

 

「あらあら、こんな大勢でどうしたのかしら?」

 

 紫色のドレスに薄い桃色の日傘、金色の髪に胡散臭い笑みを張り付けた、少女ともとれる美しい顔。間違いなく八雲紫だ。

 

「貴女、一体何者?そんな大きな妖力を発しておきながら人間に溶け――」

「や、八雲紫だ!!八雲紫が出たぞ!!かかれ!!」

「きゃっ!なによ!私がまだ喋ってたじゃない! いやっ!いたいっ!きゃーーー!」

 

 討伐隊の男たちに迎撃され、悲鳴をあげる八雲紫。日傘さして、クールに、そしてドヤ顔できめた登場が台無しである。

 

「もうっ、やめてってば!!」

 

 そう八雲紫が叫ぶと、周りにいた男たちが倒れる。恐らく能力かなにかで、気絶させたのだろう。八雲紫は境界を操る程度の能力という、まあ云わばチートのような能力を持っている。その能力を持ってすれば、男たちを気絶させることくらい、容易いだろう。

 

「ふう、これで静かになったわね。それで、貴女一体何者なの?」

 

 パンパンと服に付いた埃を落としながら、そう問うてくる紫。

 

「私ですか?ただのしがない人間ですよ」

 

「白々しいわね。そんな大きな妖力を持っていながら人間と一緒にいるなんて。この男たちを利用して私の居場所を探ろうとか、私を殺そうとするでもなく。どうして人間と一緒に行動しているの?」

 

「私、質問攻めにされるのって嫌いなんです」

 

 俺がおどけてそう答えると怪訝そうな顔をする八雲紫。

 

「質問に答えなさいよ」

 

 八雲紫から出る妖力が一段と大きくなる。これ以上不機嫌になって攻撃されても困る。素直に答えるとしよう。

「何となくですよ。そんなに特別な理由はないんです」

 

「何となく、ねぇ。ふぅん、面白いわね。貴女名前は?」

 

「名前を聞くときは自分が名乗ってからだと言われませんでしたか? 私の名前はホウズキ・スカーレット。今は彼鳥雫と名乗ってます。以後お見知り置きを」

 

「小生意気な娘ね。私は八雲紫。スキマ妖怪とか呼ばれてるわ。貴女のこと気に入ったわ。どう?私と取引しない?」

 

「取引ですか?」

 

「ええ、貴女が私の手伝いをする代わりに、私は貴女に住みやすい場所を提供するわ」

 

「その手伝いというのは?」

 

 まあ、大体は予想がつく。恐らくは幻想郷を作る手伝いをしろ、というものだろう。この時期にはまだ幻想郷は出来ていないはずだ。

 

「笑わないで聞いてくれるかしら?」

 

「ええ、勿論」

 

「実はね、人間と妖怪が共存できる、理想郷を作りたいのよ。その手伝いをしてほしいの。それで、妖怪なのに人間と一緒にいた貴女とならできると思ったわけ」

 

 ビンゴ。予想通りだった。

 

「わかりました。その取引受けましょう。手伝いますよ、人間と妖怪が共存できる理想郷づくり」

 

「本当にっ!?ありがとうっ!」

 

 目を輝かせて喜ぶ紫。胡散臭い笑みよりも、よっぽどこの表情のほうが似合う。

 

「それじゃあ早速行きましょっ!ついてきてっ!」

 

 そう言って踵を返そうとした瞬間、ドレスの裾を踏んづけ、思いっきりスッ転び、涙目になる紫。

 

「ぁう、いたぃ……」

 

 なにこれ可愛い。

 俺と八雲紫の邂逅はなんともしまりのないものとなってしまったのであった。




 次回は一ヶ月以内に投稿できたらいいな。神さま、筆の進みが早くなりたいです。おねげぇします。
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