東方鬼灯伝   作:Agies

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 二ヶ月も間を空けてしまい申し訳ないです。


第十一話 幻想郷

 俺たちが討伐から戻ってきた次の日、八雲紫の討伐は失敗に終わってしまったものの、町では宴会を開くらしい。無論、討伐隊である俺たちメインで。

 

「さて、人も集まって来たところで、かんぱーい!」

 

「かんぱーい!」

 

 乾杯の音頭もそこそこに、皆一斉に酒を飲みだす。俺も杯に酌まれた酒を飲み干す。

 

「よぉ、嬢ちゃん、飲んで大丈夫なのかぁ?」

 

 そう言って近づいてきたのは、俺が広場で声をかけた男だった。飲んで大丈夫かと聞いたのは、俺の見た目が幼いからだろう。一応妖怪だから酒には強い。むしろ、ついさっき飲み始めたばかりなのに出来上がっている、この男のほうが大丈夫なのかと問いたい。

 

「私、これでも二十ですよ」

 

「嘘はよくねぇぜぇ、嬢ちゃん」

 

 と、杯を取り上げられた。杯を持ち上げられてしまっては、身長差のあるこの男と俺とでは取り返すことはできない。畜生、返せ。

 

「ハッハッハァ」

 

 何が面白いのか、笑いながら男は覚束無い足取りで去っていった。転生して妖怪になろうとも酔っぱらいの相手は嫌いだ。

 

「あらあらお嬢さん、飲んでいないの?」

 

 去っていった男を睨み付けていると、隣から女の声がした。さっきまでは誰もいなかったはずなのに。

 

「まあ、これでも飲みなさいな」

 

 そう言って新しい杯を渡されそこに酒を注がれる。

 その杯を傾け一言、

「で、ここで何やってるんですか、()()()さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 曰く、逃げたままというのも示しがつかず、それに人間の宴会に興味が湧いたから、この宴会に紛れ込んだらしかった。

 そんな理由で討伐対象が討伐隊の打ち上げに来るなと思ってしまうのは、俺だけなのだろうか。

 

「ほらほら、飲んでちょうだい」

 

 どういう訳だか八雲紫の姿は、他の人間に八雲紫として認識されていないようだった。不思議に思ったのでその理由を問えば、

 

「そんなの私の能力でちょちょいのちょいよ」

 

 と言われてその能力のあまりの強力さに呆れたのは、今から10分程前のことだ。

 

「そういえば、貴女の能力ってどんな能力なの?」

 

「能力ですか……」

 

 そういえば自分の能力について考えたこともなかった。

 

「わからないですね」

 

 そう素直に答えておく。

 

「わからないの?へー、変わっているわねー」

 

 お前には変わっている、なんて言われたくない。と言いかけたのをグッと我慢して酒と一緒に飲み込む。

 

「しかしよく飲むわねー。こんなに可愛らしい見た目して。 うりうりー」

 

 紫が俺の頬をツンツンとつついてくる。

 

「やめて下さい」

 

 と、振り払っても、

 

「うふふー、うりうりー」

 

 と、またつついてくる。

 さすがに、いい加減腹がたってくる。

 

「みなさーん!ここに八雲紫がいますよー!倒すなら今ですよー!」

 

 叫んでやった。

 

「いやー!やめてー!洒落になってないわよー!」

 

 自分の能力で認識されないようにしていて、やろうと思えばここにいる全員を無力化できるはずなのに、この反応である。間違いなく悪ふざけだろう。

 俺も悪ふざけは終わりだ。

 

「それで、なんでここにいるんですか?」

 

「え? だからさっきも言ったでしょう?興味本位だって」

 

「真面目に答えて下さい。そんな理由で来るはずがないじゃないですか」

 

 恐らくは、幻想郷の話をするために来たのだろうと思われる。だが一向にその話をする気配がなかったので、こちらから踏み込んでみた。

 

「なんだ、わかってたのね」

 

「……はい」

 

「お察しの通り、前に話した理想郷のことよ」

 

 やはりか。

 

「私は妖怪と人間が一緒に暮らせる場所を創りたいの」

 

「ええ」

 

「そのためには、こうして人間に違和感なく溶け込んでいる貴女の力が必要なのよ」

 

 その一言一言には情熱が籠っている。その想いは俺の想像つく範疇にはない。

 

「私の力ですか」

 

 はっきり言って、俺の力など無力に等しい。自分の能力もろくにわかってないし。

 

「理想郷の候補地は決めてあるわ。今からそこに来てほしいのよ」

 

「随分と唐突ですね」

 

「申し訳ないけれど今すぐ来てほしいのよ。私の協力者もそこで待ってるわ」

 

 協力者か。八雲藍のことだろうか。確か八雲藍は八雲紫の式神だったはず。この時代から既に共に行動していてもおかしくない。

 

「わかりました。どうせそこまで貴女の能力で行んでしょうし、時間もかからないですから」

 

「本当に?ありがとう。じゃあ、ついてきて」

 

 そう言って立ちあがると、能力を使い、スキマを出現させる。

 

「今回はドレスの裾、踏んづけませんでしたね」

 

 俺が茶化すと、

 

「わ、忘れてちょうだいっ!」

 

 顔を真っ赤にさせていた。なにこれ、かわいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おえぇ、きぼちわる゛い」

 

「大丈夫?」

 

「あんまり大丈夫じゃないです。――うぇ」

 

 八雲紫が開いたスキマに入ったまではよかったのだが、いざ入ってみると、ギョロりとした目見られてる感覚に気分が悪くなり、更に方向感覚まで失ってしまったので、一種の乗り物酔いのような症状になってしまった。あえて言うならばスキマ酔いと言ったところだろうか。

 

「さて、もう大丈夫かしら?」

 

「ええ、もう大丈夫です」

 

 まだ少し気分は悪いが、この体は丈夫なのですぐに治る。

 

「じゃあ、ついてきてちょうだい」

 

「え……またスキマですか…………?」

 

「もうスキマは使わないわよ。歩きよ」

 

 紫が呆れたような顔で見てくる。いや、そんな顔されても、スキマが怖いんだもの。トラウマ、トラウマ。

 

 八雲紫についていくと、木が多かった道を抜けて拓けたところへ出た。

 

「ここは?」

 

「ここで私の協力者と待ち合わせてるのよ。もういるはずなんだけど……」

 

 どうやらここでその協力者とやらと待ち合わせてるらしい。

 

「あ、いたわ。おーい、らーん!こっちよー」

 

「紫様。お待ちしておりました」

 

 紫が藍とよんだ女性は道着によくわからない帽子をかぶった、金髪の美人さんだった。そして、特徴的なのはその服装だけではない。腰からは髪と同じく綺麗な金色の尻尾が九つ、風に揺れていた。間違いなく東方projectに登場する、八雲紫の従者、八雲藍である。

 

「紹介するわ、こっちが私の式神の八雲藍」

 

「八雲藍だ。よろしく頼む」

 

「私はホウズキ・スカーレット。誇り高き吸血鬼です」

 

 そう言って俺は華麗にカーテシーをきめる。

 

「紫様、この者が紫様の仰っていた協力者なのですか?まだ子供のようにしか見えませんが……」

 

 そう紫に確認している藍は、訝しげに俺を見ている。というか、子供ってなんだ。失礼なやつだな。

 

「見た目だけで判断してはいけないわよ藍。見た目が子供だからと油断して、萃香に痛い目にあわされたでしょう?この子は幼くとも吸血鬼。実力は間違いないわ」

 

 なんだろうか、藍のように完全に舐められるのも腹立たしいが、紫のようにべた褒めされるのもなんだかむず痒い。

 

「そうなのですか。ホウズキ殿失礼した。紫様の夢のため、共に頑張りましょう」

 

「はい、頑張りましょう。 あと、呼び捨てでいいですよ」

 

「さて、自己紹介も終わったところで改めて――――ここは妖怪と人間が共存する理想郷……の予定地。この理想郷、いえ、幻想郷は誰でも歓迎するわ。共に頑張りましょうホウズキ・スカーレット」

 

 

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