プロローグ
皆さんは、吸血鬼という妖怪をご存知だろうか。吸血鬼とは、人の血を吸ったり、蝙蝠に化けたりする恐ろしい妖怪だ。
この物語は、そんな吸血鬼のとある日常を描いた、どこか儚くも愉快な物語―――
◇
紅く染まった屋敷に産声が響く。
「まぁ、可愛らしい赤ちゃんだこと。あなた、この子が私たちの子供よ」
赤子を抱いた母親らしき女が屋敷の主だと思われる男に赤子の顔を見せる。
男は赤子の顔をまじまじと見つめ、言う。
「私とあんまりにてないな。どちらかというと母親似のようだな。この子は」
「フフフ、そんなことをおっしゃらないで下さい。あなたともそっくりですよ。
……ところで名前はどうするのです?」
「うーん、ふむ……そうだな、ヴラドはどうだ?なんかドラキュラっぽいだろ?」
女は考えるような素振りをする。
「んー……なんか微妙ですね。それに女の子っぽくありません。」
「微妙か」
「微妙です」
「ならば他にいい名前はあるか?」
男と女、二人ともなかなかいい名前が浮かばず、うーんと頭を捻っていると、ふと、女があ、と声をだし呟く。
「……鬼灯みたいなほっぺた……。そうだ、ホウズキ。ホウズキがいいわ!あなた、ホウズキなんてどうでしょう?」
「ホウズキか。なかなかいいのではないか?」
そう言うと男は赤子を抱えあげ、声高らかにその赤子の名を呼ぶ。
「お前の名はホウズキ。誇り高きスカーレット家の長女。ホウズキ・スカーレットだ!」
◇
ある日俺は友人に、新発売のうまひ棒キクラゲ味が出たと聞いて近くのスーパーでうまひ棒キクラゲ味を買った。
俺の運命を変えた出来事がおきたのはその帰りだった。
うまひ棒を無事買えてルンルン気分で家へ向かう道を歩いていると突然トラックが俺めがけて突っ込んできた。
突然視界が真っ白だか真っ暗だかわからないような状態になって、白装束の美少女が表れる。もしや女神だろうか。つーか俺死んだの?
トラックに轢かれて目の前には、女神様……ふむ、二次創作とか言うヤツでよく見る展開だな。
「ごきげんよう、私は女神です。貴方は死にましたよ。って美少女だなんてそんな……」
突然女神様らしい少女が喋りだす。恐らく今の発言は俺の思考を読んだのだろう。流石神様、凄い、可愛い。
「可愛いだなんて……ってそうじゃなくて、貴方は死んだんです。だから、私が転生させてあげます!」
ふーん。
「いや、ふーんって!?もうちょっと驚いて下さいよ!」
いや、だって二次創作でこんな展開飽きるぐらい見たし。
「え?二次創作ってなんですか?ってそうじゃなくて!もう、貴方のせいで話が反れちゃったじゃないですか!」
いや、あんたが勝手に話を反らしてただけだからね。
「えっと、何の話をしてたんですっけ? ……あぁそうだ!貴方を転生させてあげるって話でしたね! それで、貴方を死なせてしまったのはこちらのミスなので、転生する世界を選んでもいいですよ!」
おぉ、凄いテンプレだ。それに女神さんが凄い上から目線だ。
「いいから早く決めて下さい!」
じゃあ、東方Projectの世界で。
「わっかりましたー!それでは一名様ごあんなーい!」
おろ?いきなり?種族とかは?ねぇ、チート能力とかは?選ばせてくれないの?おーい!こういうとこだけテンプレじゃねぇのかよ!おーい!―――――――
◇
あの女神さんに転生させてもらって始めて呼ばれた名前はホウズキ・スカーレット。どうやら吸血鬼らしい。
東方projectの世界で吸血鬼さらに苗字がスカーレットというと、レミリアとフランドールを思い浮かべるけど、もしレミリアの遠い祖先でレミリアたちに会えないってなったら泣き崩れる自信がある。どうかレミリアたちに会えますように。
何だかんだで吸血鬼に転生した訳だが、転生といってもよくある、自分の体を保ったまま能力とかを与えられての転生ではなく、完全に新しい体を与えられたようだ。
つまり赤子の状態からスタートな訳だ。女神さんに記憶を消して貰えば良かった。記憶を消さなかったおかげで見た目は赤子、頭脳は、現代日本でいうところの高校生というアンバランスなコナン君もビックリな生命体が誕生したわけだ。
そして、今日は俺の15歳の誕生日。今までの15年間、色々と苦労した。例えば、空を飛ぶ練習だったりとか、
まぁ、兎に角俺は15年間頑張ったのだ。だから誕生日くらい頑張ったねと誉めてくれる人がいてもいいと思うが、この屋敷にはお父様とお母様と、あとメイドが数人しかいないから誉めてくれる人なんていないのだ。だから自分で自分を誉めてやろう。よく頑張ったぞ、俺、そして、Happy birthday to me……
………虚しいなぁ。
「失礼するわよ~」
誕生日を祝ってくれるような友達なんかがいないことに改めてショックを受け、部屋の隅っこで動かぬ石像ごっこをしていたらお母様が部屋に入ってきた。
いつ見てもお母様は綺麗な顔をしている。この人の娘は本当に俺なのだろうか、部屋の壁にある鏡に写った自分の顔を見てみる。多少似ている気がするがまだまだお母様には程遠い。
そんなことを考えていると、お母様が俺の頬をつついてくる。
「なんですか?」
「いやぁー、今日も可愛いなーって思って」
そう言っている間もツンツンと俺の頬をつつく。
「…………」
「…………」
ツンツンツンツン。お母様に遠慮はない。俺が拒否しようと、お母様は自分が飽きるまで俺の頬をつつく。うんやめてくれ。
「そういえば………」
ようやく俺の頬をつつくのをやめてくれくれた。
「そういえば、今日は貴女の誕生日ね。お誕生日おめでとう。ホウズキ」
「あ、ありがとうございます」
「今日で15歳よね。もう立派な大人じゃない」
うーん……15歳で大人か……やっぱり21世紀の日本で暮らしていたから15歳で大人というのは何だか違和感を感じる。
「どうしたの黙りこくっちゃって?」
「いえ、なんでもないですよ」
「ふーん、ところで…いい加減敬語で話す癖を治しなさいよー私達親子でしょう?」
確かに俺はずっと敬語で話してきた。親に対し敬語はおかしいと思う。だけど……
「ですが、癖なので。一応努力はします」
「そう、頑張ってちょうだいね。じゃあ、私はもう行くわ」
そう言ってお母様は部屋から出ていく。何がしたかったのだろうか。
◇
次の日、俺はお父様からとんでもないことを告げられた。
「ホウズキ、お前には婚約してもらう」
「はい?」
「婚約してもらう」
な、ナンダッテー!?婚約?えー、やだー。絶対やだー。
「相手はかのロシュー伯爵の息子だ。血統はもちろん、実力もなかなかだぞ。どうだ?」
いや、どうだ?って、いやに決まってるじゃまいか。
「いやです」
「なぜだ?」
「私はまだ結婚なんてしたくない。それだけです」
「だめだ」
「何故です!?」
「お前には跡継ぎを生んで貰わないとな」
「私はまだ十五です。早すぎると思います!」
「………暫く考える時間をやる。答えを出しておけ」
「………はい」
……………………。