東方鬼灯伝   作:Agies

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 章と章の間の閑話的なお話なので短めです。


第五・五話 それから

 夜が更けて、目を覚ます。朝が来たら、床につく。大蒜を毛嫌いし、太陽から逃げ、十字架を拒み、生きる。私は吸血鬼だ。誇り高きスカーレット家の次女、レミリア・スカーレット。

 そんな私には姉がいる。

 いや、()()

 ある日、いつも通り起きて、ふと机を見ると手紙が置いてあった。何だろうと思い手を伸ばし、寝ぼけ眼でその手紙を読むと――

 

 『おはよう、レミリア。

 お姉様は少しの間旅に出ます。その間、フランを頼みましたよ。

 いつの日か、大きく成長したレミリアに会えることを楽しみに。

   ホウズキ・スカーレット』

 

 ――と書かれていた。

 お姉様が旅に出た。つまりは、この館にはもういない。

 

 見捨てられた。そんな考えが一瞬頭をよぎった。

 けれど、お姉様はそんなことはしない。きっと、私には想像の及ばない、なにかをするために、旅に出たのだ。

 

 

 そう信じて私はお姉様の帰りを待つ。

 待って、待って、待って。

 何ヵ月過ぎただろう。何年経っただろう。何十年も過ぎたかもしれない。

 最初は数ヶ月、長くても数年で戻ってくるだろうと思っていた。

 待って、待って、待って。

 

 結局、お姉様は戻って来なかった。

 もしかしたら、やっぱり見捨てられたのかもしれない。

 だが、私の能力には、ハッキリと見える。

 お姉様と私とフランの三人で楽しく、過ごす日々が。喧嘩もするけれど、仲のいい三人が手を取り合って過ごす運命(未来)が。

 今は、フランも狂気に蝕まれて、自由に外に出れないし、お姉様も居ないけれど、そうなることを切に願って。

 お姉様がいち早く戻って来ることを祈って―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お姉様が居なくなってから、何人か屋敷の住人が増えた。

 親友の、屋敷の図書館で引きこもって、ずっと魔法の研究をしている根暗な魔女。

 腕っぷしだけの、居眠りばっかりしている門番。

 お姉様が居なくなってから、私の周りは随分と賑やかになった。

 この賑やかな輪の中に、お姉様が入ってきたら、どうなるのだろうか。想像するだけで楽しみだ。ついつい口元が緩む。

 

「どうしたの?レミィ。そんなアホみたいな顔して」

 

 本を読むため、下げていた視線をこちらに向け、なんだか失礼なことを言う親友。

 

「なによパチェ。このカリスマ溢れる私が、アホみたいな顔ですって?冗談もほどほどにしなさい」

 

「自分でカリスマ溢れる、だなんて言うんじゃないわよ。聞いているこっちが恥ずかしいわ。それに、冗談なんかじゃなくて、本当にアホみたいな顔してたわよ。スカーレット家の当主が聞いて呆れるわね」

 

「ふんっ、言えばいいわ!カリスマ溢れる私は罵詈雑言にも動じないのよ!」

 

「寝言は寝て言いなさい。それとも、お子ちゃまなれみりあさまは、もうおねむなのかしら?」

 

「うるさいわね!万年日陰根暗魔女!」

 

 目には目を、歯には歯を。言の葉には言の葉を。見た目幼女な吸血鬼と、引きこもり体質の魔女の言い合いは続く。

 

「言ったわね!紅茶も熱いと涙目になって、飲めないくせに!」

 

「なにおう!引きこもり!」

 

「ちび!」

 

「き、貴様ぁあ、い、言ってはならないことを……!」

 

「あら、気にしてたかしら、ごめんなさーい。おちびちゃん?」

 

 おどけた調子で幼女を煽る魔女。

 

「うがぁぁぁあああ!!!」

 

 激昂する幼女。

 最早恒例行事と化した、いつもの言い合いは、続く。

 こうして幼女な吸血鬼と、引きこもり体質の魔女の日々は過ぎて行く。たった一人の少女の帰りを待って。

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