東方鬼灯伝   作:Agies

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 自分が書くお話としてはかなり長めです。(3700字)
 それでは第六話、どーぞ。


第2章~日本編〜
第六話 れっつごーとぅーじゃぱん


 俺は小高い丘の上に転移した。

 見渡す限り、木、木、木。そして丘から見えるは、古い日本家屋が並ぶ町並み。本当に日本に来たんだな、と思う。

 レミリアたちを無責任にも、屋敷に置いていってしまったのを、今更ながら後悔するけれど、今それを言ったところで、それこそ後の祭りだろう。切り替えて、次の目標へと向かう。

 

 町、いや、この場合村だろうか?に、歩を向けたところでふと自分を省みる。省みる、と言ってもなにか悪行をはたらいた訳でもないし、レミリアたちを屋敷に置いてきてしまったことを、また不安がっている訳でもない。俺はただ、自分の今の格好が気になったのだ。

 薄い水色の、レミリアたちとお揃いのナイトキャップ、ナイトキャップと同じ色の、これもまた、レミリアたちとお揃いのドレス。なにも問題はない。が、これから、()()の村に行くのだから、ドレスやナイトキャップはまずいだろう、と思いすぐに、魔法で和服らしき服を作る。魔法、マジ便利。

 よし、これでいいだろう、とまた歩き出すが、はたと立ち止まる。

 

「ああ、そうだ。俺、吸血鬼じゃん」

 

 因みに、一応性別は女なので一人でいるとき以外は、一人称は私で、口調もできるだけ丁寧に話しているのだが、一人でいるときは一人称は俺になるのだ。

 閑話休題。

 

 吸血鬼なので当然、背中には羽があり、口には牙もある。人間の住まう里に入る上で、羽と牙は流石にまずいだろう。すぐ魔法で見えなくする。魔法、マジ便利。

 ついでに妖力も極力抑えておく。余程手練れの陰陽師みたいな人でもいない限り、恐らくはばれないだろう。そんな手練れの陰陽師も、そうそういるもんでもないだろうし。

 

 さて、ようやく準備が整った。

 

「よし、行くか」

 

 人の住まう里に向かうべく、歩き出す。

 生い茂っていた木々が、だんだんと疎らになっていき、道がだんだんと拓けてくる。そして、日を遮る木が少なくなったことで、朝の強い日差しが俺に直接降りかかってくる。

 

「ぎぃいやぁァァァァァァァァ!!!」

 

 そして、俺は太陽光に焼かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 危うく、塵になるところだった。

 吸血鬼だから、日光が弱点なのにも関わらず、日除けの魔法をかけずに、日光が当たるところに普通に出てきてしまった。

 咄嗟に木陰に入り、なんとかなったものの、これから気を付けねば。

 そんなこんなで、町に入った訳だが――

 

「へい、らっしゃぁい!!」

 

 ――ものすごい活気だ。ところ狭しと建ち並ぶ店からは、店主の客引きの大音声が聞こえてくる。辺りを見渡しながら道を歩いていると、とある店の前で呼び止められた。

 

「お嬢ちゃん、うちの御手洗はうめぇよぉ、どうだい!」

 

「御手洗団子ですかっ!?」

 

 何を隠そうこの俺、ホウズキ・スカーレットは御手洗団子をはじめとした団子が、ものすごく大好物なのだ。だから俺は、意気揚々と店に入ろうとして―――

 

「あ、やっぱりいいです。今お腹いっぱいなので」

 

 ―――やめた。

 俺は日本に来てまだ一時間も経っていない。日本で流通しているお金など、持っている訳がなかったのだ。

 実に遺憾ながら、本当に遺憾ながら、渋々団子屋を後にする。さらばだ、団子屋。さらば、おっちゃん。俺は必ずまたここへくるぞ………!あいるびーばっく。

 

 

「さて、どうしたものか………」

 

 金も無ければ、寝るところもない。一旦、町を出て猪でも狩ってきて、売って金にするか。まだ時間はたっぷりとあるのだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 町を出た。町に入ってから一時間も経っていないのに、とても早い撤退だった。

 さて、俺はこれから、この先当分の資金を集めに狩りへ行く。一狩行こうぜっ!

 まずは近くの森を適当に歩いて、手当たり次第、行き当たりばったりで獲物を見つけ、狩っていくつもりだ。因みに魔法はなるべく使わないで、自力で獲物を仕留めるつもりだ。

 

 

 狩りを始めて三時間余り、全く獲物が見つからない。余りの見つからなさに、途中から手当たり次第に歩き回るのをやめ、物陰に隠れ、 獲物を待ち伏せたりなど、様々なことを試してみたのだが、一向に獲物が来る気配がしない。

 気は進まないのだが、この際面倒なので、魔法を使うことにする。

 

「探知」

 

 今発動した、探知という魔法は、自分の魔法を周囲に広げて、動いたりする物を探知する、簡単な魔法だ。

 普段ならば一方向しか発動しない。全方向でも、とても短い距離しか魔力を広げないのだが、今回ばかりは面倒、且つ、金を稼げないと割りとまずいので、全方向へ一キロメートルくらいまで広げ、獲物を探す。なかなかの魔力を消費するのだが、この際気にしていられないのでパッパと終わらせてしまおう。

 ……………見つけた。

 ここから東へ約800メートル。なんてことない距離だ。飛べば30秒程でつくだろう。

 

「飛翔」

 

 この魔法は、単純に魔力を放出させて空を飛ぶ魔法だ。さっきの探知と合わせて、そこそこの魔力を消費したが、獲物を狩る分は残っている。俺は更に飛ぶ速度を上げる。

 周りの景色が後ろへとすっ飛んでいく。

 見つけた。

 猪らしき影だ。

 

 獲物を見つけると同時に、魔力で周囲の風を操り、猪の首を一瞬で落とす。あとは、血抜きをして町の肉屋に売るだけだ。

 血抜きをするために、そこら辺の木の枝に猪をぶら下げる。

 血抜きをする間、これからのことについて考える。

 

 まずは東方のキャラクター達への接触だが、これは運次第だと思う。ひとまずは、金を稼いであの町で暮らしていこうと思う。

 

 

 

 

「さて、血抜きも終わったことだし、帰るとするか」

 

 町へ戻るべく森の道なき道を行く。

 

「えーと、こっちの方向かな?」

 

 外見年齢約14歳程にしか見えない少女が森の中を、体長160センチメートル、体重140キログラム程の丸々と太った巨大猪を肩に担ぎ、すたすたと歩いて行く。シュールだ。心なしか周りの動植物も引いているような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び町に戻って来たのだが、猪をこのまま抱えて行くと町の人に驚かれる、と言うかまず間違いなく警戒されるだろう。見た目だけで言うならば14歳に届くかどうか。そんな少女が往来を堂々と、140キログラム余りの猪を担いで、歩いているのである。俺ならまず逃げる。そう考えざるを得ないだろう。

 だからこそ今こうして、偶然町の門番をしていた男に、猪を運んで貰っているのだ。

 

「あの、重くないですか?」

「ああ、問題ない。鍛えているからな」

 

 言葉数は少ないが、優しい男のお陰で、俺は余り目立たず行動できているのだった。感謝。

 

 そうこうしているうちに、肉屋までについたらしい。男の足が止まる。

 

「ここが肉屋だ。この猪ならなかなかの値で買い取ってくれるだろう」

 

 そう言ってこの場を去ろうとする男。

 

「あ、あの!ありがとうございました!」

 

 俺が礼を伝えると、背中越しに手を挙げて応えてくれる。うわお、くーるだぜ。

 

 さて、男にも礼は言ったし、あとはこの猪の買い取りだけだ。

 店の奥にいると思われる店主に声を呼ぶ。

 

「すいませーん!買い取ってほしい物があるんですけどー!」

 

「あいよー!」

 

 低いダミ声を響かせて現れたのは、熊のような大男。先程手伝ってもらった男とは、違うタイプの男らしさだ。

 身長の低い俺は見上げる形となってしまう。

 

「なんだい、嬢ちゃん。その猪を売ってくれるのかい?こりゃまた随分と大物だね」

 

 見た目とは裏腹に、かなり砕けた態度の店主は、快く猪を買い取ってくれた。店頭に並ぶ商品から相場を予想するとそこそこ、いや、かなりサービスしてくれた。ラッキー。

 さて、次は宿の確保だ。店主のおっちゃんにいい宿はないかと聞いてみる。

 

「宿か?うーん、こっからだと、そこの通りを真っ直ぐ行って右にある宿が一番人気かな」

 

 本当に親切な人だ。俺が女だったらホレてるところだったぜ。あ、今は、女なのか。

 

「ありがとうございます。その宿に行ってみますね」

 

「おう、またのお越しを待ってるぜ!」

 

 そう言っておっちゃんと別れて宿に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿に着いた。おっちゃん曰く人気店らしいが、なるほど。確かに周りの建物と比べて大きい。人気なのは間違いないようだ。

 早速宿の中に入る。

 

「すいません、二泊お願いします」

 

「はい、お部屋まで案内しますね」

 

 俺のようなチビでも簡単に受け入れてくれた。金を持っているからなのか、それともただ単におおらかなだけなのか。

 兎に角、案内された部屋はそこそこ広く、食事も出してくれるようだった。

 とりあえず、初日の成果としては上出来だろう。金も手に入り、宿も取れた。

 

「ふう、流石に今日は疲れたぜ」

 

 日本までの長距離の転移魔法に、半日狩りをしたのだ、吸血鬼と言えど流石に疲れる。

 

「もう、寝るか」

 

 日が沈んで二時間も経っていないはずだが、今日は早めに寝ることにした。

 布団に潜る。

 部屋の灯りは薄暗い行灯だけ、どこか寂しさを感じる。

 今、レミリアは何をしているだろうか、俺が居なくても平気だろうか。

 彼女は大人びていると言えどまだ五歳。明らかに子どもだ。

 いまさら心配しても。とは思うのだが、どうしても気になる。

 いやいや、ここはレミリアとメイドさん達を信用して俺は俺のすべきことをしよう。

 レミリア達を助けるためにわざわざ日本まで来たのだ、戻ったら本末転倒だ。

 

 そんなことを考えがながら、俺は日本での、始めての夜を明かす。

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