キリトに双子の妹がいたとしたら   作:たらスパの巨匠

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妹はこの世の残酷さに膝から崩れ落ちます

 

 私はアルヴヘイム・オンライン、通称ALOにログインした。一度ログインしたことがあるから、種族を選ぶことはないけど、セーブしていなかったから最初からみたいだ。ちなみに、選んだ種族はスプリガン。理由はSAOで使ってた装備が黒だったから選んだんだけど、攻略本によるとそこまで戦闘に有利というわけでもないらしい。

 ゲームが始まり、空からスプリガンの領地に降りていこうとしたところで、目の前にノイズが走る。ノイズが消えると目の前は森だった。そして最初は飛行補助があったはずだが、いきなりそれが消え、そのまま下に急降下していった。

 

 「いやああぁぁぁーーー。」

 

 バキバキバキッ。木の枝をいくつも折りながら、地面に激突した。顔面から。

 

 「きょ、今日はなんか顔にダメージを受けてばっかりな気がする・・・」

 

 とりあえず、始まってからの即死は免れたみたいだ。さてと、茅場に言われた通りにアイテムを全部売るとしよう。ウインドウからアイテム欄を開き、あとは選択して売るだけなのだが・・・なんか、こう、使えないとわかっていても二年間集めたアイテムを売るのはためらってしまう。文字化けしてしまって読めないが、この中にはSAOでの愛刀、白雪もある。

 アイテムを削除しますか?yesのボタンを勢いで押して残されたのは初期装備だけになった。今腰にあるのは小さな片手用直剣だ。なんとも心もとない。

 

 ドゴォォォーーン!

 

 飛ぶ練習をしようと思ったら、なんか近くで爆発した。とりあえず様子を見に行ってみよう。

 

 「てこずらせるんじゃねえーよ。」

 

 「こちらも任務だからなあ。だが、金とアイテムを置いていけば助けてやってもいいぞ。」

 

 「えーー、なんだよ。殺そうぜ。女相手なんて久々じゃん。」

 

 えーっと、物音がした方に行くと、一人の女の子を、鎧を着こみ武器を持った男三人が取り囲んでいた。会話の内容から通報待ったなしの危機的状況だ。むしろこの状況を見ただけで通報されかねない。

 

 「一人は絶対に道ずれにする。デスペナルティの惜しくない人からかかってきなさい。」

 

 すると、一人の女の子は刀のようにそりのある剣をかまえる。金髪をポニーテールにしている。かなりきれいな容姿をしている。それも相まって犯罪臭がハンパない。

 と、とりあえず女の子の方を助けよう。襲われてるみたいだし。

 

 「男三人で女の子一人を痛めつけるのは良くないんじゃない?」

 

 私は四人の前に出た。

 

 「なぜスプリガンがここに?」

 

 「おっ!獲物が増えたじゃん。しかも結構かわいい。胸はないけど。」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ユカは剣を抜いた。目にもとまらぬ速さで一閃。一人の男の首と胴体が別れを告げた。それは、かつてSAOで夜叉と呼ばれ恐れられた者の本気の一撃だった。

 

 「なっ、速すぎる。」

 

 「てめぇー!このまな板がぁ!」

 

 もう一人の男のプレイヤーが叫んだ瞬間、その男の武器は破壊された。姿は見えないが男の周りに風切り音が鳴る。ユカが男の周りを走り回っているのだ。そして、男は次々と斬られ、防具を壊されていく。やがてHPがゼロになった。

 

 「どうする?あなたも戦う?」

 

 「い、いや、やめておこう。もう少しで魔法スキルが900なんだ。デスペナが惜しい。」

 

 そういうと男の人は飛んでいった。

 

 「大丈夫・・・だった・・・?」

 

 「え、ええ。助けてくれてありがとう?」

 

ユカは戦慄した。目の前の女の子が持つものに。自分と比べると圧倒的戦力差。比べることもおこがましいその強烈な破壊力。なぜだ。なぜいつもこうなる。私はゲームの中ですら巨乳になることは許されないのか。

 ユカは嘆いた。この世界の残酷さに。気が付くと地面に手と膝をついていた。

 

 「え、えーっと。だ、大丈夫?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私はリーファ。これでも結構な古参よ。」

 

 「私はユカだよ。」

 

 襲われていた女の子はリーファというみたいだ。種族はシルフ。たしか、攻略本では飛行速度と聴力に長けていて、風属性魔法が得意だったはず。

 

 「ところで、どうしてスプリガンがこんなところにいるの?」

 

 「それが・・・ゲームを始めた途端、ここに飛ばされちゃって。」

 

 「飛ばされた?」

 

 「うん。なんか目の前にノイズが走って、気が付いたらここに。」

 

 「へー、何かのバグかな?そんな話聞いたことないけど。」

 

 「そ、それで、始めたばっかりだから、右も左もわからなくて。」

 

 リーファは怪訝な表情で少し考えっている。まあ、初心者がいきなり二人のプレイヤーを倒したりしちゃったもんなー。

 

 「まっ、いっか。災難だったね。ユカはこの後どうするの?」

 

 「え、いや、特に予定はないけど。」

 

 「じゃあ、お礼に一杯おごるよ。」

 

 「それはうれしいな。あと、この世界のことについていろいろ教えてもらってもいい?」

 

 「いいよ。じゃあ、ちょっと遠いけど北の方に中立の村があるから、そこまで行こう。」

 

 「あれ?さっき空から割と近くに街が見えたけど。」

 

 「あそこはシルフ領なの。シルフ領だとユカはシルフの人に攻撃できないけど、逆はありなんだよ。」

 

 「うーん。でもみんながみんな襲ってくるわけじゃないんでしょ?それにリーファもいるし、そこでいいよ。」

 

 「本気?命の保証まではできないよ?」

 

 「うん。」

 

この後、飛び方をリーファに教えてもらったけど、ひどい目にあった。何度も何度も顔面から地面や木に突っ込んだ。今日一日で何回顔を打っただろう?

 

 

 

 


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