私はALOをログアウトし、自室で目を覚ました。目を開けるとそばにはスグがいた。
「お姉ちゃん!大丈夫!?」
どうやら、魔法とブレスで一斉射撃した後、シルフとケットシー同盟は撤退に成功したようだ。スグはその後ログアウトし、心配で私のベッドの横にいたらしい。
「うん。大丈夫だよ。それにカズもアスナも無事で、今頃病院で目を覚ましているはずだよ。」
「ほんとに!?お兄ちゃん目を覚ましたの!?よかった・・・」
「今から病院に向かうんだけど、スグも一緒に行く?」
「うん!私も行く!!」
そういうとスグは自分の部屋に着替えに行った。私も着替えることにする。
(それにしても病院へはどうやって行こうかな・・・お母さんは出張でいないし。・・・そうだ!!)
私は病院まで連れて行ってくれて、ボディーガードにもなりそうな人物に電話した。
「おうユカ!どうした?こんな時間に。」
「エギル!こんな時間にごめんね。」
私は頼りになる心優しいゴリマッチョに電話した。
「今キリトとアスナが病院で目を覚ましてるはずなんだ。」
「なに!?それは本当か!?」
「うん!詳しいことはあとで話すけど、病院で悪い奴に待ち伏せされてるかもしれないの。だから、私と妹を病院まで送ってほしくて。」
「そういうことなら任せろ!!すぐに車で迎えに行く!!どこに迎えに行けばいい?」
「ありがとう!なら家の近くのコンビニに・・・そうそうそこの通りのロー〇ンでよろしく!」
「わかった。そこなら10分~15分くらいで行けるはずだ。」
「よろしくね!」
電話を終え、身支度を整えてから私は部屋を出た。するとスグは部屋の前にいた。
「お姉ちゃん!早く行こう!!自転車で行く!?」
「詳しくはあとで説明するけど病院で待ち伏せしてる人がいるかもしれないんだ。危ないから頼りになる人に車で送ってもらうことにしたの。」
「そうなんだ。襲われるかもしれないってことか・・・」
私たちはエギルと待ち合わせをしているコンビニへ向かった。家を出る際、スグは木刀を持ち出しており、コンビニまで木刀を片手に走っていた。
コンビニで待つこと数分。黒のランクルがコンビニの駐車場に入ってきた。
「待たせたな。二人とも乗れ!」
私たちはエギルの車に乗り込み、エギルは病院に向かうためアクセルを踏んだ。それにしてもエギル。体だけでなく車もごついな。スグはエギルとは初対面のはずだ。少し緊張している感じだ。
スグは、「こ、これは木刀いらないかな・・・」とつぶやいていたがユカには聞こえていなかった。
「ユカの妹ちゃんだな。俺はアンドリュー・ギルバード・ミルズ。エギルと呼んでくれ。よろしく。」
「あ、よろしくお願いします。私は直葉と言います。」
二人は互いに自己紹介をした。
「ユカ。二人が目を覚ましたとのことだがいったい何があったんだ?」
私は世界樹の上であったことを二人に話した。
「なるほどな。その須郷という奴が病院で待ち伏せしているかもしれねえというわけか。」
「・・・それにしても許せない。」
スグが暗い目をしながら木刀を握りしめていた。
そういえば小さい頃、スグはカズにべったりだったような・・・私にも懐いてくれていたけど、特にカズに。・・・もしかするとスグにはブラコンの気があるのかもしれない。
「にしても、レクトがなあ。ユカの言ってることを疑うわけじゃないが、信じられんな。」
「うん。私もこんなこと言われても信じられないと思う。」
「あと、茅場晶彦が助けてくれたとはな。現実では死んでるのに仮想世界でプログラムとして生きてるって何なんだよ・・・流石天才というべきか。」
茅場晶彦がジョジョ立ちしていたことは話していない。エギルがあの光景を目にしたらどうゆう顔になるだろう。少なくとも私はジョジョ立ちであんな真剣な話をする茅場晶彦を見たくはなかった。
「よし。病院に着いたぞ。」
エギルは車を駐車場に止め、三人で病院の入口へと向かう。スグは木刀を持ったまま走っている。さっきから一言も喋ってないけど大丈夫だろうか。まあ、危ない大人に狙われてるかもしれないからね。緊張しているのかもしれない。
一人の男が車の影から私目掛けて、ナイフを持ちいきなり突っ込んできた。
「あぶねえ!!」
エギルは私と男の間に割り込み、私をかばいながら右手の拳を握り応戦しようとした。
「小手えええええええぇ!!!!!」
その時スグの声が病院の駐車場に響き渡った。スグが木刀で放った小手は襲ってきた男、須郷のナイフを握っていた右手を正確にとらえ、ナイフを手放させた。
「ぎゃ、ああああああ」
「胴ううおおおおおおおおおおぉ!!!!!」
スグは右手の痛みに耐えきれず絶叫し立ち尽くす須郷に続けざまに胴を打ち込んだ。須郷はその場に倒れこむ。息をするのもままならない様子だ。スグはそんな須郷を冷たい目で見降ろす。
「こいつがお兄ちゃんを・・・」
スグはゆっくりと木刀を上段に構え
「めええええええええええええんんんん!!!!!」
木刀を振り下ろした。流石に脳天を狙うことはしなかったが、木刀は須郷の左肩へ振り下ろされ、須郷は痛みでのたうち回る。
スグはもう一度須郷へ打ち込むため木刀を振り上げる。
「ちょ、ちょっと待て!」
見かねたエギルがスグを取り押さえるが、スグはバーサク状態であり、なかなか落ち着きそうにない。
「ユ、ユカ!とりあえずここは俺に任せろ。お前はキリトとアスナの所へ行ってやれ。直葉ちゃんが落ち着いたら俺たちも向かう。」
「わ、分かった。よ、よろしくねエギル。」
私は病室へと向かった。・・・スグがいればエギルがいなくても危険がなかったんじゃないかな?・・・いや、私じゃ今のスグを止められる自信無いや。エギルがいてくれてよかった。ボディーガードじゃなくてセーフティ装置としてだけど。
私はまずカズの病室に向かった。カズの方が階層が下だからだ。だが、カズの病室に入ってもカズがいなかった。おそらくアスナを探しに行ったのだろう。私はアスナの病室のある階層にエレベーターから降りた。すると廊下にカズがいた。
「カズ!」
「ユカか!?」
カズは点滴スタンドを杖代わりにして歩いていた。アスナの病室を探して歩き回っていたんだろう。
「バカ・・・無茶して・・・」
私はカズに肩を貸しながらアスナの病室へと向かった。その際涙で前が見づらかった。
アスナの病室の前にたどり着いた。
「カズ。ここがアスナの病室だよ。」
「ああ。やっと会うことができるな。」
そうして私とカズはアスナの病室へと入っていった。
三人が現実世界での感動の再会に涙していた頃、病院の駐車場ではエギルが警察官に取り囲まれていた。
直葉の掛け声を聞いた病院の看護師が何事だろうと駐車場の様子を見に来たのだ。そのタイミングが悪かった。看護師が見た光景は、その場にうずくまっている一人の細身の男性と木刀を持ちながら暴れている中学生くらいの少女、そしてその少女を取り押さえようとしているガチムチアゴヒゲスキンヘッドだった。
看護師はすぐさま警察に連絡、ガタイのいい男が少女を取り押さえ誘拐しようとしていると。警察はその通報を受け、近くにいたパトカー三台を病院の駐車場に向かわせた。
もちろん誘拐しようなどと考えていないエギルは病院の駐車場に入ってきたパトカーが須郷を捕まえようとしていると思い、パトカーに向かって手を上げた。パトカーから警察官が下りてくるのだが、直葉はまだ興奮状態にあり、エギルの立ち位置も悪かった。須郷が落としたナイフがエギルの足元に落ちていたのだ。それを目撃した警察官はホルスターから拳銃を抜き、エギルへ向けたのである。
「彼女を解放し、両手を頭の後ろに回せ!!日本語は分かるか!?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、これは違うんだ!」
「何が違うんだ!?違うというなら彼女を解放しろ!!」
エギルは言われた通り直葉から手を離した。直葉も警察に拳銃を向けられたことで冷静さを取り戻し、暴れることはなかった。
エギルが手を離した瞬間3名の警察官がエギルを取り押さえた。そして直葉は一人の警察官に手を引かれパトカーのある位置まで誘導した。
「あ、あの、違うんです。エギr
「もう大丈夫よ。怖かったよね。」
直葉は涙ぐんでいた。自分のせいでエギルが警察官に取り押さえられていることが怖くなったのだ。しかし、警察官は乱暴されそうになった恐怖からだと勘違いした。
エギルはその後連行されたが、直葉の証言と倒れていた須郷の逮捕状が出たことからエギルは翌日解放された。自分の夫が女子中学生に乱暴しようとしていたと聞いたエギルの妻は、そんなことあるわけないとエギルが解放されるまでエギルを信じ続けていた。エギルはSAOに捕らわれている時も今回も自分を信じ続けてくれる妻を最高の女だと言いながら抱きしめた。
後日泣きながらエギルに謝る直葉をエギルは頭を撫で慰めて許していた。
現実世界で再開したクラインは「それはお前のいかつい見た目が悪いって!ぎゃははははっ!」と酔っぱらった状態でエギルに絡んだが、エギルはクラインをぶん殴ることはなかった。彼は心優しいゴリマッチョである。
ただ、酔っぱらった翌日のクラインの財布にはあまり金が残っていなかったそうだ。おそらく酔っぱらった勢いでエギルの店にある高い酒を飲んだのだろう。クラインには記憶が残っていないが。