まさかカズに剣を向けられるとは思わなかった。もちろんベータ時代にデュエルをしたことはあるけど、あんな目で剣を向けられたことはなかったなぁ。現実世界でもあんな目をしたカズ見たことないし。
そもそもこのやり方だと、ベーターテスターへの悪印象は多少薄れても、その敵意はカズに向けられるだけじゃん。ほんともっとうまくやれる方法はなかったのかなぁ。私が言えたことではないんだけど・・・・・
ていうかカズこれからどうするつもりなんだろう。カズならそうそう死なないとは思うけど、それはベータ時代の知識があるとこまでだしなぁ。それに変更されている点もあるだろうし。面倒ごとにも巻き込まれるかもしれないし。ついていきたいけど、みんなの前であんな言い方されてついていくのもへんだし。 っていうかあそこまで言う必要ないじゃん。何なの、攻略組には珍しい女だったからパーティーを組んでいただけって。今まで彼女もいたことないくせによくあんな大口叩けたもんだよ。・・・・・なんか思い出したら腹立ってきた。
「なあ、嬢ちゃんたち。」
ふいに話しかけられ振り向くと、筋骨たくましい集団に囲まれていた。ちょっと、いやかなり怖い。
「な、なんですか。」
「嬢ちゃんたち、あの子と仲いいんだろ。大丈夫だ。さっき言ったことは嘘だってわかっている奴が大半だからな。 それで伝言を頼みたいだがいいか?」
助けてくれたエギルが話しかけてきた。ちゃんとわかっている人がいてくれてうれしい。
「次のボス戦も一緒にやろうって伝えておいてくれ。」
「わかりました。 ユカ、行こ。」
「・・・アスナ行ってきて。私は行かない。」
どうも今はカズに会う気にはならなかった。多分カズは私が会いに行ってもついて来いとは言わないだろうし。
「・・・わかった。行ってくるね。」
アスナは特に何も言わずにうなずいてくれた。気を使ってくれているのが分かる。
「・・・アスナ。その、悪いんだけど私も伝言お願いしていい?」
優香には悪いことをしたな。多分、あいつならわかってくれるだろう。怒っているとは思うけが、あれだけ言っておけばついては来れないだろう。あいつは女だから俺と同じ立場になればより標的にされやすいはずだ。実際この二か月の間に犯罪者プレイヤーは何人か見た。それにSAOは男の方が圧倒的に多いからな。
索敵スキルに反応があった。一人。誰か来るな。
「キリト君!」
「アスナ。」
アスナが階段を上がってきた。
「なにをしに来たんだ?」
「伝言。エギルさんとユカから。」
ユカとエギルってあの筋肉がすごい人から伝言?
「エギルさんはまた一緒にボス戦をやろうだってさ。」
やっぱりあの人いい人だな。今度またお礼を言っておかないと。
「ユカからは、危ないことはするなよ。かっこつけるのもほどほどにね。それとどうしようもなくなくなったり、寂しくなったりしたらいつでも会いに来てね。だってさ。」
「そうか。」
あいつ、ちゃんとわかってくれているみたいだ。また謝らないとな。今度なんか好きなものでもおごってやろう。
「いい妹を持ったね。」
「あいつが俺の妹だって言ったっけ?」
「ユカに聞いたのよ。まぁ、うすうすそんな気はしてたけどね。双子の妹なんでしょう。」
「あいつ。・・・こっちではあまりリアルの話はするなよ。」
「私が聞いたのよ。それとこれは私から。 いくら何でもやりすぎじゃない。ユカが分かってくれるからってやっていいことと悪いことがあるでしょう。なんで剣まで突きつけたのよ。ほんと次こんなことしたら許さないわよ。」
「わ、わかった。もうしないよ。」
なんだろう。アスナからは母さんと同じ匂いがするような気がする。この、なんていうか、絶対に逆らってはいけないようなこの雰囲気。
「ねぇ、これからどうするつもりなの。」
「え?あ、ああ。ソロでやっていくつもりだよ。」
「その、大丈夫なの?」
「まあ、何とかなるだろ。それよりアスナ。君はどうするんだ?」
「私はユカさえよければ一緒に行きたいと思っているけど。」
「そうか。ならユカにいろいろ教えてもらってくれ。君は強くなれる。そして信頼できる人にギルドに誘われたら断るなよ。一人や二人では絶対的な限界があるからな。」
実際、アスナは強い。攻略組でもトップレベルだろう。いずれ攻略組にとってなくてはならない存在になるかもしれない。
「それじゃあ、また第二層攻略で会おう。ユカにもよろしく言っておいてくれ。」
「わかったわ。それじゃあ、またね。」
アスナは階段を下って行った。