スマイルプリキュア!~新たなるプリキュア、その名はキュアアギト!?~ 作:ユウキ003
また、ラストの方でちょっとした百合展開があるため、
それが苦手、原作改変が苦手と言う方はブラウザバックを
お勧めします。
~~前回までのあらすじ~~
デコルデコールを使ってポップと連絡できるようになった
みゆき達。しかし学校では人目も多く、6人だけの秘密の場所を
探す事になった。
皆が皆、それぞれイメージした所を巡り、ウルフルンとの戦闘が
ありながらも最終的にふしぎ図書館が6人の秘密基地になるの
だった。
ふしぎ図書館が私達の秘密基地になってから数日後。
その日私は徒歩で通学していた。理由は昨日の帰り道で
自転車がパンクしちゃったから。元々歩いていける距離
でもあったし、たまにはと言う事で歩いていた。
その時。
みゆき「黄金ちゃ~~ん」
不意に後ろからみゆきちゃんの声が聞こえたから足を止めて
振り返ると、小走りでみゆきちゃんが駆け寄ってきた。
「おはよう黄金ちゃん」
黄金「おはようみゆきちゃん」
みゆき「今日はどうしたの?自転車じゃないの?」
黄金「あ、アハハ。それが昨日の帰り道でパンクしちゃって。
今修理に出してる所なの」
みゆき「成程~。それは災難だったね~」
と、歩きながら談笑していた時。
キャンディ「クル?流れ星クル!」
み・黄「「え??」」
キャンディ「あっちに落ちたクル!」
み・黄「「落ちたの?」」
と、私達は異口同音を口にしつつも、キャンディが指さした方向
へと向かった。
そして、私達は『それ』を見つけた。
キャンディ「そりが流れ星クル?」
私達の見つけたそれは、銀色のリングが二つ。同じ形をした、
所謂ペアリングだった。
みゆき「星って言うか指輪だね。それもペアリング」
キャンディ「ペアリングって、何クル?」
黄金「ペア、つまり二人一組の人が身に着けるアクセサリーの事で
お揃いのアクセサリーの一つだよ。……でも」
みゆき「そうだよね~。何処から落ちて来たんだろ?」
そうだよね~。まさか飛行機から投げられた、何てことは…。
あ、そうだ。
黄金「みゆきちゃん、ちょっと見せて。もしかしたらどこかに
名前とか書いてあるかも」
みゆき「成程。流石黄金ちゃん。はい、どうぞ」
と、みゆきちゃんが持っていた一つを受け取ったその時。
『ピカッ』
なっ!?
いきなり指輪が光ってゴムのように形を変えたかと思うと
勝手に私の左手中指に嵌ってしまった。
みゆき「うぇっ!?」
同時に、みゆきちゃんが持っていた物もみゆきちゃん自身の
指に嵌ってしまった。
「な、なにこれ!?」
黄金「これ、唯の指輪じゃ!?」
と、その時。
『『ドクンッ!』』
み・黄「「ッ!?」」
その時、不意に私の体を違和感が襲った。まるで、強制的に
魂を肉体から引きはがさるような、そんな錯覚に。
キャンディ「み、みゆき!黄金!大丈夫クル!?」
不意に、キャンディの声が聞こえて来て私はパチパチと目を
瞬かせてから周囲を見回した。
そして、気づいた時にはいつの間にか私の視界に私が居た。
言葉として変かもしれないが、いつの間にかみゆきちゃんと
向かい合っていたはずの私が、次の瞬間には
自分自身を見つめていた。
いや、でも、何となくわかる。記憶、感情、思考。それが
全部自分だけど、『体』が違う。そう、つまりこれは……。
み(黄)「な、何で私が居るの!?」
目の前の私、の中に居るみゆきちゃんが私を指さす。
そしてみゆきちゃんはポニーテールにしていた私の髪を
肩の前に動かし、その毛先を見る事で大体事情を
把握したみたい。
「あ、あぁ。嘘。どうなってるのこれ」
ワナワナと体を震わせるみゆき(黄金)。
と、そこに偶々通りかかったあかねが合流してきた。
あかね「何しとんねん二人とも。早く行かんと遅刻
するで」
欠伸をしながらも歩み寄ってくるあかねちゃん。
それを見て、みゆきちゃんが……。
み(黄)「わ、私と黄金ちゃんが、入れ替わっちゃった~~~~!」
こうして、はたまたトラブルが始まったのだった。
その後、学校で合流した私達7人は外のベンチで
集まっていた。
み(黄)「みゆきです」
黄(み)「黄金です」
と、私の顔で落ち込み気味のみゆきちゃんと、
逆にみゆきちゃんの顔でどこか冷静な私。
れいか「不思議ですね」
やよい「すご~~い」
なお「と言うか、正直ちょっと信じられないね」
あかね「いや~、うちも最初そう思ってんけど、ど~も
ホンマっぽいねんなぁこれが」
というあかねちゃんもかなり困り気味。
って、やよいちゃんお願いだから目を輝かせるのやめて。
しかし、入れ替わりを完全に証明できないが故にみんな
所々疑っている。
何か、入れ替わった証明を……。
そう思いつつ、足を組んで私が顎に手を当てていた時。
『『『『じ~~』』』』
黄(み)「ん?みんなどうかしたの?」
あかね「え!?え~っと、いやその、何ちゅうか、
みゆきの姿でそんなポーズされると普段との
ギャップのせいか、その」
やよい「何て言うか、凛々しいって言うか」
れいか「でも、みゆきさんは普段こんな仕草はしませんし、
やっぱり入れ替わりは本当なのではないでしょうか?」
なお「何と言うか、普段のみゆきちゃんとイメージが違い
過ぎるもんね」
み(黄)「な、なおちゃんヒドイッ!?」
ガ~ンと擬音が聞こえてきそうな感じで落ち込むみゆきちゃん。
ともかく、これで私達が入れ替わってるって事は証明された。
その後、原因の指輪を見せて、強引に引っこ抜こうとしたり、
秘密基地の戦いの時に手に入れた指輪デコルを試してみたけど
全部ダメだった。
なお「あ、そうだ。黄金の念力で何とかならない?この前
無人島で鍵を開けたりしてたじゃない」
み(黄)「……。なおちゃん、私みゆきだよ?」
なお「えっ!?あぁそうだったゴメン黄金!」
と、そう言って私、みゆきちゃんの体の方に視線を移す
なおちゃん。
とはいっても……。
黄(み)「ごめん、多分それは出来ない」
やよい「え?どうして?」
黄(み)「……アギトの能力も、超能力も、それは私の
魂と体に刻まれた物。だから能力そのものが
あるのは今も私の体の中。そしてそれを使い
こなせるのは多分私だけ」
れいか「超能力を使うために必要な事が揃っていない、
というわけですね」
その言葉を聞きながら、私は今の自分の体、みゆきちゃんの
手を見つめた。
細い。指も、何もかも。それでもわかる。ちゃんとした
『普通の手』。
そう、私がアギトに覚醒する前の手も、こんな感じだったんだ。
私がそんな事を考えている一方で……。
なお「けどどうするの?もうすぐ授業始まっちゃうよ?」
れいか「ここはやはり、黄金さんがみゆきさんとして。逆に
みゆきさんが黄金さんとして授業を受けるしか
ありませんね。みゆ、黄金さんもそれで
良いですか?」
みゆきの方を向き、みゆきと言いかけて訂正するれいか。
しかし……。
「黄金さん?」
黄(み)「え?あぁうん。わかった。私がみゆきちゃんの代わりを
すればいいんだね?」
考え込んでいた私は、れいかちゃんの言葉に反応するが少し
送れてしまい、何とか思考を戻して返事をした。
その後、何とか授業を受け、放課後の最後の授業になった
んだけど、ふとみゆきちゃんを見た時、みゆきちゃんが
頭を押さえているのに気づいた。
黄(み)「み、黄金ちゃん?どうしたの?」
いきなりの事で、危うく呼びかける言葉を飲み込み声を
掛ける私。
み(黄)「ご、ごめん。ちょっと、頭が……」
そう言って玉のような汗を浮かべるみゆきを見て、ある事に
勘付いた黄金は行動を起こした。
黄(み)「先生すみませ~ん。黄金ちゃんが何だか体調
悪そうなので、保健室に連れて行ってあげても
良いですか?」
先生「え?」
と言うと、黒板に向かい合っていた佐々木先生が振り返って
みゆきちゃん、つまり私の体の様子を見た。
「あら、確かに津神さん体調悪そうね。わかりました。
星空さん、津神さんを保健室まで連れて行って
上げなさい」
黄(み)「はい」
短く返事をすると、頭を押さえるみゆきちゃんの手を取り、
ゆっくりとした足取りで教室を出て保健室に向かった。
その後、保健室に辿り着いた私はそこに居た保健医の先生に
訳を話してみゆきちゃん、私の体をベッドに横たえ
布団をかけてあげた。
そして、みゆきちゃんの寝顔を見てから私は教室に戻った。
それから数十分後、授業が終わり、更に帰りのHRも
終わった後、私はみんなより少し早く掃除を終えると
みゆきちゃんの、つまりは自分の荷物を鞄に纏めて、
やよいちゃん達に、『保健室に鞄を届けてくる』とだけ言って
教室を出た。
保険室に行くと、扉の前に会議に出席中と書かれた掛札が
してあり、保健室の中にはベッドで眠るみゆきちゃんだけが
居た。
み(黄)「う、う~~ん」
そして、肝心のみゆきちゃんはどこかうなされていた。そんな
みゆきちゃんの様子を見た私は、その傍に鞄を置くと
静かに保健室を後にした。
私の背を、薄っすらと開いた眼で見つめるみゆきちゃんを
残して。
それから更に約10分後。
み(黄)「あれ?ここって」
目が覚めたみゆきは体を起こし、額に手を当てた。
『そっか。私、『あれ』が聞こえて頭が痛くなって』
そう思っていた時。
『クソッ!なんで俺がこんな!』
『あいつ、掃除サボりやがって!』
『何あいつ、ちょーウザい』
みゆきの頭の中に、無数のノイズと共に流れ込んでくる
不快な声。
聞こえる声にまたしても頭痛を覚え、頭を押さえるみゆき。
と、そこへ。
れいか「失礼します」
あかね「みゆき~。起きたか~?」
保健室のドアを開け、あかね達4人とキャンディが入ってきた。
み(黄)「みんな」
なお「うわっ!汗びっしょりじゃない!大丈夫?」
み(黄)「う、うん」
と、その時。
『クソッ!何であんな奴が俺より成績良いんだよ!』
『あの先生マジウザい。早く≪死なない≫かな~』
「やめてっ!!!」
また聞こえた単語に頭を両手で押さえ、その場に蹲るみゆき。
そんな彼女の体はガクガクと震えていた。
あかね「み、みゆき?どないしたん?」
キャンディ「みゆき、大丈夫クル?」
余りの怯えように驚き困惑する4人とキャンディ。
み(黄)「声、声が聞こえるの」
ガクガクと震え、目を見開き、顔を真っ青にしながらも
その事を伝えるみゆき。
なお「声?どういう事?」
と、聞いたあかね、やよい、なおの3人はすぐには理解
出来なかったが、れいかだけはそれだけで一つの事を
思い出していた。
「私ね!誰かに触れる事で相手の考えている事が
わかるんだよ!」
それは、黄金がみゆき達の友達として受け入れられた時、
心がボロボロになっていた時の彼女の言葉だった。
れいか『もしや、テレパシー?アギトに覚醒した黄金さんが
超能力を使え、尚且つそれをあの時コントロール
出来ていなかったとしたら……』
「みゆきさん、落ち着いてください」
そう言うと、震えるみゆきの両手を自分の両手で優しく包み、
同じくらい優しい声色で語り掛けるれいか。
「聞こえる声に乱されないで。心を落ち着けて。
深呼吸です。吸って、はいて」
み(黄)「う、うん」
彼女の言葉に従い、深呼吸をしてから心を落ち着けるみゆき。
やよい「みゆきちゃん、大丈夫?」
み(黄)「う、うん。何とか。ありがとうれいかちゃん」
れいか「いえ。助けになれたのなら何よりです」
なお「それにしてもれいか、よくあんな風に的確にアドバイス
出来たね?」
あかね「と言うか、みゆきはどうしてああなったん?やめてって
いきなり叫ぶからびっくりしたで」
み(黄)「そ、それは……」
と、どこか言いづらそうなみゆき。
れいか「恐らく、先ほどまでみゆきさんは声に晒されていたのです」
やよい「声?」
れいか「はい。皆さんは覚えていますか?黄金さんが初めて私達の
前で変身した時、誰かに触れる事で相手の考えが判る、と
仰っていた時の事」
なお「あぁ、そう言えば確かに」
れいか「そして恐らく、あの時の黄金さんはアギトの力に慣れて
居なかったせいもあり、今のみゆきさんの様に
完全に超能力を使いこなしている訳ではなかったのだと
思います。そして、そのテレパシーの力が大きく、
制御できないが故に、この学校に居る生徒達の心の声を
無差別に拾ってしまったのだと思います」
あかね「あ、じゃあまさか、あの時よく黄金が頭を押さえて
苦しそうにしていたのって」
れいか「恐らく、今のみゆきさんと同じです。聞きたくもない
ような人の心の声がストレスとなり、頭痛や体調不良の
原因となっていたのでしょう。そして、人の心の声が
必ずしも美しい物とは限りません。嫉妬、後悔、
怒り、憎しみ。そんな人間の負の感情があの時の
黄金さんを。そして今のみゆきさんを苦しめているの
だと思います」
み(黄)「………」
れいかから聞かされる事の推察をただ黙って、シーツに視線を
落としながら聞いているみゆき。
それを見ていたあかね達。やがて……。
あかね「あんなみゆき。別に落ち込む事無いねん。人なんて
腹ん中に何溜め込んでるか分からんし、その、な?」
み(黄)「ううん。違うの」
やよい「え?」
否定された事に、てっきりみゆきが人の負の感情を前に
落ち込んでいるのだと思ったやよいは疑問符を浮かべ、
同じく当てが外れたあかねとなおは首を傾げた。
み(黄)「最初は、本当に軽い気持ちだった。授業中に
黄金ちゃんみたいに超能力使えたらな~って
気分で試して、周りのみんなの心が読めたからって、
上手く行ったからって舞い上がって」
次第に肩を震わせるみゆき。そして……。
「私は、私が許せない」
その目から大粒の涙を流し始めた。彼女の頬を伝った涙が、
シーツへと落ちる。
「黄金ちゃんは、自分からアギトになった訳じゃないのに、
なのに、私はこの力を面白半分に使って」
制服の袖で、ゴシゴシと目元を拭うみゆき。
「今日、こうなって初めて分かった。あの時の黄金ちゃんが
どれだけ苦しんでたのか。どれだけ辛い思いをしてたのか。
そんな事も考えないで、こんな風に力を使った私は……」
両手で顔を覆い、嗚咽を漏らすみゆき。
やよい「みゆきちゃん」
そんな彼女の肩に、やよいや逆方向に回り込んだあかねが
手を置く。
あかね「みゆき、間違いは誰にでもある。自分がした事が
許せへんなら、その気持ち全部込めて、黄金に
謝ったらええ。それで良いんよ」
み(黄)「あかねちゃん。……うん、ありがとう」
涙で顔をグチャグチャにしながらも、みゆきはもう一度涙を
拭い、笑みを浮かべるのだった。
それから、数分をかけて落ち着きを取り戻すみゆき。
なお「みゆきちゃん、大丈夫?もう立てる?」
み(黄)「うん。大丈夫。……私、ちゃんと黄金ちゃんに
謝らなきゃ」
そう思っていた時だった。
やよい「って、あれ?そう言えば黄金ちゃんは?」
と、ここに来て黄金がどこにいるか、分からなくなる5人。
なお「確か、みゆきちゃんに鞄届けてくるって言って教室を
出た切り見てないね」
あかね「もしかして、校内に居るんちゃうか?手分けして
探してみよ」
れいか「そうですわね。みゆきさんはここでキャンディと
待っていてください。
もしかしたら黄金さんが戻ってくるかもしれませんから」
み(黄)「う、うん」
キャンディ「みゆきは任せるクル!」
その後、手分けしてみゆきの体を持つ黄金を捜索したが、見つかりは
しなかった。
あかね「黄金、見つかったか?」
ある程度探し終え、保健室に戻ってくるあかね。先に戻ってきて
居たのはれいかとやよいだった。
れいか「ダメです。あちこち探しましたが」
あかね「そっか。黄金、一体どこに」
と言っていると……。
なお「あ、みんないる!丁度良かった」
最後になおが戻ってきた。
れいか「なお、どうしたのそんなに慌てて」
なお「実は、戻り際に下駄箱が目に入って、もしかしたらって
みゆきちゃんの下駄箱を覗いたんだけど、靴が
無くなってたんだ」
あかね「っちゅうことは黄金はもう下校しているって事かいな」
やよい「で、でもそこまで遠くに行くとは思えないし」
なお「そうだね。学校の周りや黄金の家までの道の辺りを
探してみよう」
そう言うと、5人とキャンディは下校し、その足でみゆきの体を
持つ黄金を探し始めたのだった。
一方、黄金は一人公園へと来ていた。そこで遊ぶ子供たちを
離れたベンチに座りながら見つめる黄金。
多分、あの時みゆきちゃんが苦しんでいたのは、私の能力の
せいだ。あれは、私がまだ十分に能力をコントロール
できなかった時と同じ。
周りから聞こえる誰とも分からない汚い心の声を否応なしに
聞かされて。
……あんなことを経験したみゆきちゃんが、私の事をまだ
友達だと言ってくれるだろうか。
そもそも、私がアギトに覚醒しなければ、こんな事には……。
後悔の念が黄金の中で燻る。だが、その時彼女の脳裏に
みゆき達5人と笑い合う自分の記憶が蘇った。
もし仮に、この事でみゆきちゃん達から避けられたとしても、
ほんの少しの時間でも、私の事を友達と言ってくれた
みゆきちゃん達を守れるのなら。
私の大切な人を守れるのなら。
そう思いながら、私はギュッと拳を握りしめた。
今更、この命を惜しいなどとは思ってない。覚悟、なんて
立派な物じゃないけど、私自身今のみゆきちゃん達がしてくれる
みたいに普通に接してくれる人が現れるなんて、アギトになって
死ぬまで戦う決意をした時は思ってもみなかった。
死ぬまで周りから疎まれ、蔑まれ、排斥される。
そうなっていても可笑しくなかった私をみゆきちゃん達が
救ってくれた。
だから、今ここにある命は、みゆきちゃん達のために使う。
今一度、己が覚悟を認識する黄金。
それは≪友≫のために戦う決意。守りたい友たちのために、
大切な人を守るために全てを賭けて戦う覚悟。
自らを盾にしてでも仲間を守る覚悟。
少女達の剣であり続ける覚悟。
例え、己が光と認めた少女達に拒絶されても、一時でも
自分に笑顔をくれた彼女たちを守り切る覚悟。
それを、黄金は決意した。
やがて、私が一人そんな事を考えていると周囲は既に
夕方の時間帯だった。
最後に残っていた子供も母親に手を引かれ帰路に着いた。
それを見送った黄金もまた鞄を片手にその場を後に
しようとしたが……。
不意に、自分の影を見て髪型がいつもと違う事から、すっかり
忘れていた自分が今みゆきの体に居る事を思い出す黄金。
しまった。そうだった。まだ入れ替わったまま戻って
無いんだった。みゆきちゃん達、まだ学校かな。それとも
もう家に戻ったかな。う~ん。どうしよう。
と、黄金が悩んでいたその時。
なお「お~~い!」
やよい「黄金ちゃ~~ん!」
そこへ私、つまりみゆきちゃんやみんなが現れ駆け寄ってきた。
黄(み)「ッ。みんな」
驚き、僅かに息をのむ私の前に集まるみんな。
れいか「学校にも通学路にも居ないので探しました」
あかね「いや~。ホンマに探したで~」
と言いつつ、口々に笑みを浮かべるみんな。
私もつられて笑みを浮かべようとしたけど、その時私は
皆の後ろに居たみゆきちゃんがどこか戸惑っているような
姿を目にして、何となく理解してしまった。
そうだよね。気持ち悪いよね。他人の考えが読めるなんて。
何時何処で自分の事、聞かれるかもわからないのに。
……分かってた事だ。私も覚悟を決めよう。
そう思っていた時、みゆきちゃんが一歩前に踏み出し、私も
同じように一歩前に踏み出した。
み・黄「「あ、あの」」
と、その時私達の言葉が被ってしまった。
黄(み)「あ、えっと。みゆきちゃんからどうぞ?」
み(黄)「う、うん。えっとね、黄金ちゃん、私——」
と、その時。
マジョ「見つけただわさ!」
不意に声が聞こえて私達はその声がした方に視線を向けた。
見ると近くの遊具の天辺にマジョリーナが立っていた!
あかね「あいつは!?」
れいか「マジョリーナ!」
マジョ「まさかお前達がその指輪を持っていたとは……。
しかしこれは怪我の功名だわさ」
『その指輪』って、まさか!?
黄(み)「まさか、この指輪はあなたが!?」
マジョ「その通りだわさ!装着した者の中身を入れ替える
ペアリング!その名も『イレカワール』!」
………。
黄(み)「……あんたネーミングセンス壊滅的ね」
マジョ「うるっさいだわさ!こうなったら!」
そう言うと、あいつはあの本を取り出した。
「世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まるだわさ!
白紙の未来を黒く塗りつぶすだわさ!」
バッドエンド空間が展開され、周囲の人々からバッドエンド
エナジーが吸収されていく。
み(黄)「このままじゃ!」
黄(み)「だったらこっちも!みゆきちゃん!」
そう言ってスマイルパクトを取り出し黄金(体はみゆき)は
自分の体、みゆきの方へとパクトを投げ渡した。
そして、改めて前を向きオルタリング召喚の、黄金にとっての
変身スイッチでもあるポーズを行うが……。
み(黄)「そ、そんな!スマイルパクトが開かない!?」
黄(み)「お、オルタリングが……」
黄金の体を持っているみゆきは、スマイルパクトが開かずに
変身の為のキュアデコルをセットする事さえできず、
逆にみゆきの体を持つ黄金はオルタリングを召喚する
事すらできなかった。
やよい「そ、そんな!?どうして!?」
れいか「恐らく、みゆきさんがハッピーに変身するためには。
そして黄金さんがアギトに変身するためには。
肉体と魂が一つで無ければならないのでしょう」
マジョ「ひぇ~ひぇっひぇ!それは良い事を聞いただわさ!
つまりキュアハッピーとキュアアギトは変身できない
って事だわさ!」
黄(み)「そんなっ!?」
こんな時に戦えないなんて……。
あかね「こうなったらウチらだけでやるで!」
突き付けられた現実に私が俯く中、残りのみんなが
パクトを構える。
あ・や・な・れ「「「「プリキュア!スマイルチャージ!」」」」
『ゴー!ゴーゴー!レッツゴー!』
みゆきちゃんを除いたみんなが同時に変身していく。
サニー「太陽サンサン熱血パワー!キュアサニー!」
ピース「ピカピカぴかりんじゃんけんポン♪キュアピース!」
マーチ「勇気リンリン直球勝負!キュアマーチ!」
ビューティ「しんしんと降り積もる清き心!キュアビューティ!」
そして、それを見るとマジョリーナはスプリング式の遊具を
使って、アカンベェを作り出した。
それはマジョリーナの身長程度しかないアカンベェだった。
だけど、それは逆に機敏さと言う意味で有利に働き、これまで
巨大なアカンベェとばかり戦っていたみんなはその素早い
動きに翻弄され、アカンベェの足から放たれたバネに捕らえられて
しまった。
み(黄)「みんなっ!」
キャンディ「そんな~」
黄(み)「このままじゃ不味い」
皆動けない。でも私とみゆきちゃん、キャンディは戦えない。
マジョ「ひぇ~ひぇっひぇ!これで残ったのは変身できない
お前達と、ひ弱な妖精だけだわさ!さぁアカンベェ!
そいつらを捻り潰すだわさ!」
『アカンベェ!』
遊具型アカンベェが一つ足でピョンピョンと跳ねながら
にじり寄って来る。
マーチ「黄金!みゆきちゃん!キャンディを連れて逃げて!」
それを見てマーチ、なおちゃんが叫ぶ。
逃げる?私に、大切な友達を置いて逃げろと?
……出来るもんか。そんな事。
一歩前に踏み出し、みゆきちゃんとキャンディを庇う。
み(黄)「こ、黄金ちゃん?」
黄(み)「みゆきちゃん。キャンディを連れて下がってて。
後、もしこの体に傷を作っちゃったら、ごめん」
キャンディ「黄金!何する気クル!?」
マジョ「ひぇ~ひぇっひぇ!まさか生身でアカンベェに
立ち向かう気かだわさ!身の程知らずめ!
よ~しアカンベェ!遊んでやれだわさ!」
『アカンベェ!』
マジョリーナの命令に従い、向かって来るアカンベェに
対して私は構える。
今の私の体はアギトでも、変化した私自身の体でもない。
それでも、それを理由に諦める訳には行かない!
『アカンッ!』
今だ!
アカンベェが私の眼前に着地しようとしたその瞬間を狙って
奴の顔に飛びかかった。
『ベェッ!?』
そのまま体全体でアカンベェの体にしがみつき、そして……。
黄(み)「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『ガブッ!!!!!!!』
アカンベェの耳みたいな、縞模様の左の棒に、思いっきり
噛みついた。
『ア、アカンベェ~~~~~!?!?』
サニー「噛みついたっ!?」
そうだ!今の私じゃ剣も拳も盾も必殺技も無い!
それでも!!
黄(み)「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎっ!!!!」
暴れるアカンベェにしがみつきながらも首を動かして
棒を曲げて行く。そして……。
『バギッ!!!!!』
『アカンベェ~~~~~~!』
盛大な音と共に片方の棒をへし折った。けど、その反動で……。
『ドサッ!』
「んぐっ!」
へし折った棒の先を銜えたままアカンベェから振り落とされて
しまった。
立ち上がりながらも、食い千切った棒をペッと吐き出す。
行ける!私の、みゆきちゃんの歯でも食い千切れる。
だったら、次は首をやれば……!
マジョ「ちっ!よくもやってくれただわさ!
アカンベェ!まずそいつから始末するだわさ!」
『アカンベェ!』
言われずとも、と言わんばかりに向かって来るアカンベェ。
黄(み)「うあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
倒して抱き着ければこっちの物。そう考えて殴りかかる私。
『ブォンッ!』
それでもその拳は空しく空を切り……。
『ドガッ!』
「あぐっ!?」
私の横をすり抜けたアカンベェの蹴りが背中に命中する。
「かはっ!」
息を吐き出し、地面に、膝に手を突きながらも立ち上がる。
『アカンベェッ!』
『ドゴッ!』
「がはっ!!」
だがその直後。今度はお腹に突進され、みゆきちゃん達の
前まで吹き飛ばされる。
み(黄)「黄金ちゃん!!」
マジョ「ひぇ~ひぇっひぇ!バカな人間だわさ!まともに
戦えもしないのに粋がるからそうなるだわさ!
さぁアカンベェ!そのまま残りの二人を!」
黄(み)「何、勝手に、終わりに、してんの、よ」
マジョリーナの言葉を遮るように、私は苦痛と衝撃で
ぼやける視界のまま、地面に手を突きながら、フラフラに
なりながらも立ち上がる。
「私は、まだ、終わって、無い」
そう言うと、頬の土を拭う黄金。
マーチ「無茶だよ!逃げて黄金!」
サニー「せや!今の黄金は変身できんのやで!早く
逃げな!」
ビューティ「せめてみゆきさん達だけでも!」
ピース「二人を連れて逃げて黄金ちゃん!」
黄(み)「嫌だ!!!!!」
皆の言葉をかき消すように、私は叫ぶ。
「みんなを置いて、逃げる?そんな事、そんな事
出来る訳ないじゃない!こんな私を、化け物な
私を友達だって言ってくれるみんなを置いて、
ただ一人逃げられる訳無いじゃない!」
私は叫ぶ。それが、本心だから。
失いたくないから。化け物の私を、友達だと
言ってくれたみんなを、守りたいから。
「例え、アギトに変身できなくたって、剣も、盾も、
槍も、何一つ武器が無くたって。どれだけ惨め
だって、それでも私は、私は……」
「私は、私を友達だと言ってくれるみんなを
守りたいんだっ!!!」
拒絶されるのは確かに怖い。でも、みんなを
助けられない事の方が、もっと怖い。
だから……。
「だから私は戦うっ!!!」
その時、正しく魂の叫びを上げていた黄金は
気づかなかった。
自分の体が、次第に緑色の光に包まれ始めている事に。
「どれだけボロボロになっても、痛くても、
辛くても!」
その時、緑の光の余波が黄金の、みゆきの左手中指に
された方のイレカワールにヒビを入れ始めた。
「私は、私が護りたいと思ったみんなのために、
戦うんだぁぁぁぁぁぁっ!!!」
その叫びと共に駆け出す黄金。そして、緑の光に
気おされ動けなかったアカンベェの頬に、
光に包まれた黄金の左拳がめり込み、殴り飛ばした。
そして……。
『バリィィィィィィンッ!』
その攻撃で、黄金の、みゆきの体に装着されていた方の
イレカワールが完全に破壊された。
そして同時に……。
『バリィィィィィィンッ!』
み(黄)「あ!こっちの指輪も!」
片方が壊れたためにか、もう片方も効力を失い自壊した。
と、次の瞬間。
『『ドクンッ!』』
みゆきと黄金の魂が本来あるべき所へ、自らの肉体へと戻った。
そして、みゆきの方はと言うと……。
みゆき「ッッ!!!!」
全身を走る激痛にその場に膝をついた。
マジョ「まさかイレカワールが壊れるなんて!アカンベェ!
まずはそっちのキュアハッピーを倒すだわさ!」
『アカンベェッ!』
マジョリーナの命令に従い、跳躍しバネの足からキックを
繰り出すアカンベェ。
4人「「「「みゆき!(ちゃん!)(さん!)」」」」
咄嗟に叫ぶサニー達。
だが、その足先がみゆきに届く事は無かった。
『ガシッ!』
『ベェッ!?』
みゆきの前に、黄金が現れた。そして今の彼女は
先ほどイレカワールを破壊した時のような緑色の
オーラの様な物で体を包んでいた。
アカンベェの足先を、みゆきちゃんの前に立った私の手が
受け止めた。
黄金「これ以上、やらせない!みゆきちゃんも、
あかねちゃん達も!私が守る!」
と、次の瞬間、僅かに視線を上げたみゆきやサニー達は
驚いた。
なぜなら、黄金の横に、アギトとも異なる服装の少女が
現れたからだ。
そして、その少女が次第に黄金と重なるようなり、黄金の
姿がその少女と同じになった。
その少女は、黄金であるがアギトでは無かった。
アギトと似た、半袖半ズボンの黒いスパッツ。上着も
羽織っているが、その色は緑色。
そしてそれを前で止める黒いボタンも無く、前は開いていた。
足元を覆うロングスカートも消え、肩には簡易な
緑のショルダーパッド。手足を覆う緑色のグローブとブーツ。
手首と足首を覆う、クリスタルのようなパーツが付属した
リストバンド。
口元は灰色のスカーフの様な物で覆われていた。
額には緑色の鉢巻の様な物を巻き、額の中央にもクリスタル
の様な物が埋め込まれ、アギトのクロスホーンのような緑の角が
展開されていた。
腰元に展開されたベルトも、アギトのオルタリングとは異なる物、
『メタファクター』となっていた。
そして、黄金の髪色もまた、ダークグリーンに変化。瞳も
真っ赤に染まっていた。
それは、肉体と魂が分離した不完全な状態に置かれたアギトの
力が、黄金の心と共鳴し、ある意味暴走し、生み出してしまった力。
——ギルス——
不完全なアギトの姿だ。そして、今の黄金の感情が爆発
しているように、不完全故にその力はアギトを凌ぐ。
ギルス「ウゥゥ、ガァァァァァァァッ!!!」
獣のような咆哮にスカーフがめくれギルスの口元が
見える中、ギルスは両手でアカンベェの足を掴むと
地面に叩きつけた。
「ウアァァァァァァァァァァッ!」
そのまま私は雄叫びを上げながらアカンベェを何度も地面に
叩きつけた。
『あ、アカンベェッ!』
しかし、私の拘束を振り切り逃げたアカンベェはその舌で
ラッシュを繰り出して来た。
『ドドドドッ!』
そのラッシュを両手をクロスさせて防ぐ。そして、
奴が着地した瞬間を狙って回し蹴りを繰り出すが奴はジャンプ
で私の後ろにすり抜けた。それでも……。
『ギュルルッ!ガシッ!』
『アカンベェッ!?』
次の瞬間、私の右手の手首のクリスタルから現れた触手、
ギルスフィーラーが奴の体に巻き付けた。
「ウォォォォォォォォォォッ!」
そしてギルスフィーラーを力いっぱいに引き寄せ、動けない奴の
後ろからその首にフィーラーを回して暗殺者のように首を
締め上げる。
更に………。
「ウガァァァァァッ!」
酸欠で動きが鈍ったアカンベェを地面に倒しマウントを取ると
フィーラーを右手で締めあげつつ左手で何発も奴の顔面を
殴る。殴り続ける。
ゴッ、ガッ、ガンッ。
鈍い打撃音が嫌に静かな公園に響く。
その様子を、みゆきやキャンディ、サニー達が唖然とした
様子で見守り、ヒーローなどとは言えない、
ある意味単純な『殺し合い』のような戦い方に
マジョリーナでさえ声が出なかった。
だけど、それだけじゃない。
「ウワァァァァァァッ!!!」
『ガブッ!!!』
咆哮と共にスカーフをめくりあげ、アカンベェの頭に噛みつき、
歯に思いっきり力を籠める。
ルールなんて無い。今は唯、私を動かすのはみんなを、
みゆきちゃん達を守れと言う単純な認識だけ。
そのために、こイツを、タオス。
「ウォォォォォォォォォッ!!!」
『ブォン!ドガッ!ガッ!ガガガガッ!』
フィーラーを握ってアカンベェを地面に叩きつけ、
そのまま奴の頭を持って地面の上を引きずる。
『ア、アカン、ベェ……』
その時、アカンベェは既にボロボロ。あちこちを傷だらけに
しながら、血のような赤黒いエネルギーを浮かばせていた。
だが、それだけではなくギルスは立ち上がるとアカンベェの
体を踏みつけ、蹴とばし、馬乗り状態でまたマウントを取ると
今度は両手で殴り続けた。
既にアカンベェの顔は原型を留めないほどボロボロ。
マウントを取られつつも、舌で反撃を試みるが……。
『シャッ!スッ!』
放たれた一撃を躱したギルス。
『ガシッ!』
だがそれだけではなく、ギルスはその舌を右手で掴むと……。
「ウワゥッ!」
『ザシュッ!』
左手首のクリスタルから展開した爪、ギルスクロウで舌を
切断した。
そして最後は………。
「ウォォォォォォォォォォッ!!!!」
雄叫びと共に、ギルスがアカンベェの口の中に両手を
突っ込み、上あごと下あごを掴んで……。
『バキバキバキッ!!!』
上下に、文字通り体を引き裂いた。
それによって、肉体を維持できない程のダメージを
受けたアカンベェは消滅。アカンベェの核となっていた
鼻が霧散し、その中からデコルがポトリとギルスの
足元に落ちた。
そして、アカンベェが倒された事でサニー達を拘束していた
バネも消失した。
ビューティ「バネが!」
驚きつつも立ち上がるサニー達。
サニー「みゆき!大丈夫か!」
そしてサニーとマーチが地面にへたり込んで動けない
みゆきの元へと駆け寄った。
マジョ「ちっ!?まさかこんなの、計算外だわ——」
その時……。
ギルス「ウガァァァァァァッ!」
今度はマジョリーナを敵と判断したギルスが雄叫びを上げ
襲い掛かった。
咄嗟に避けるマジョリーナ。そして彼女が立っていた遊具に
ギルスの拳がめり込む。
「ウオォォォォォッ!」
マジョ「ま、マジで危ないだわさ!逃げるださわ!」
空中に逃げたマジョリーナ目掛けてギルスフィーラーが
襲い掛かるが、寸での所でマジョリーナはそれを回避して
姿を消した。
それを見たギルスは……。
ギルス「ウァァァァァァァァァァッ!!!」
勝利した歓喜か、それとも敵を逃がした悔しさか。
或いはその両方か。どちらかは分からないが、最後に
一声、天に向かって咆哮するのだった。
それから数秒後、変身を解除するあかね達と、普段の
姿に戻った黄金。
だが、次の瞬間。
『ドサッ』
あかね「ッ!?黄金!」
遊具の上に立っていた黄金が突如として倒れてしまった。
慌てて駆け寄るあかねとなお。
なお「黄金!大丈夫!?しっかりして!」
黄金「あ、ぐっ」
彼女の息がある事に安堵した二人だが、どうやら
黄金は動けそうになった。
そんな時。
れいか「皆さん、ここは目立ちます。とにかくまずは、
黄金さんを連れてふしぎ図書館へ」
というれいかの発案に従い、あかねが黄金をおんぶしつつ
近くの本屋からふしぎ図書館へと向かったみゆき達とキャンディ。
そして、黄金をふしぎ図書館内のハウスにあるソファに寝かせ、
みゆき達は下の椅子に座った。
そして、5人ともしばらく沈黙してからの事だった。
なお「何か、凄かったね。あの時の黄金」
れいか「まるで、野獣のようでした。粗々しく、狂暴で、
戦うと言うより、その……」
『殺すために戦っていた』ように見えた。
その言葉を飲み込むれいか。
ギルスの戦いぶりは、プリキュアから見れば異質その物
と言ってもいいだろう。
プリキュアの戦いは技による『浄化』を前提としている。
しかしアギト、ギルスにとっての前提とはつまり
『相手を倒す事』。アギトの場合はそれをまだ理性が
成り立った上での戦いだ。しかしギルスの場合、あれは理性
ではなく『本能』で戦っていたようなものだ。
本能故に、倒すのではなく、『殺す』。
あの時のサニー達の目に映った物は、その殺意を感じさせる
程、凄まじい物だったのだ。
だが、それでも……。
みゆき「私は正直、嬉しかったな」
れいか「え?」
みゆき「あの時、ボロボロになっても立ち上がって、
私達を守るって言ってくれた黄金ちゃんはまるで
王子様みたいで。カッコいいな~って、私
思ってたんだ」
その言葉に、4人の脳裏にボロボロになっても戦い続け、
魂の叫びを響かせる黄金の姿が蘇った。
その姿を思い起こし、彼女たちもまた笑みを漏らした。
あかね「確かにまぁ、あの時の黄金はかっこええかったな~」
やよい「本当のヒーローみたいだったね」
なお「うんうん」
れいか「黄金さん、実は熱血漢な所があるんですね」
そう言って5人で笑っていた時だった。
黄金「う、う~ん。ここ、は」
その時、上に寝かせていたソファから黄金の声が
聞こえ、5人は上に駆け上がった。
みゆき「こ、黄金ちゃん!」
黄金「みゆき、ちゃん?ここは……」
なお「ふしぎ図書館だよ。戦いの後、黄金倒れたんだよ。
覚えてない?」
黄金「……あぁ、そっか。ごめん、みんなに迷惑かけて」
あかね「何言うとんねん。黄金が今日一番頑張ったやん。
これくらいお安い御用や」
黄金「そ、っか」
そう言いつつ、私は体を起こした。
れいか「あ。まだ無理をされない方が……」
黄金「平気平気、怪我した訳じゃないんだし。
新しい力にちょっと戸惑っただけだよ」
そう言って苦笑を浮かべた時、みゆきちゃんと
話そうと思っていたあの時の事を思いだした。
「ね、ねぇみゆきちゃん。あの時の話の
続き、しても良いかな?」
僅かに俯きながらそう告げるとみゆきもハッとした
表情を浮かべた。
そう言うと、数秒互いに沈黙する二人。やがて……。
み・黄「「ごめんなさいっ!……え?」」
と、いきなり互いに謝ってから疑問符を浮かべる私と
みゆきちゃん。
黄金「な、何でみゆきちゃんが謝るの!?」
みゆき「こ、黄金ちゃんだって!」
そう言われると、私はまた俯いた。
黄金「そもそも、あの時みゆきちゃんが苦しんだのは
私が超能力なんて物持ってたから。私のせいで…」
みゆき「それは違うよ!いけないのは、黄金ちゃんの力を
面白半分に使った私で、黄金ちゃんがあの時、
苦しんでるのを知ってたのに、私が……」
黄金「みゆきちゃん」
そう言って涙目のみゆきちゃんを見て、何処か私は
満たされる物を感じていた。
「私ね、怖かったんだ」
みゆき「え?」
黄金「今日、こうしてみゆきちゃんが改めて私の力を知って、
私が本当の化け物として、みんなに嫌われるんじゃ
無いかって。怖かった。保健室までみゆきちゃんを
運んだ時、私のせいでみゆきちゃんが苦しんでるん
じゃないか、そのせいで嫌われるんじゃないかって、
ずっとそんな事を考えてた」
みゆき「じゃあ、どうして、公園の時」
黄金「みんなに、みゆきちゃん達に化け物って言われるのは
確かに怖い。それでも、みゆきちゃん達だけは……。
あの日、私を友達って言ってくれたから」
あの日、私を照らしてくれたみんなの事を思い出しながら
私は涙を流した。
「だから、守りたかった。どれだけ、私が弱くても、
あの日私に手を伸ばしてくれたみんなを、
守りたかったから」
その言葉を聞いた時。
みゆき「私こそ、本当にごめん。黄金ちゃんがあの時、
たくさん苦しんでたの、知ってたはずなのに。
超能力が使えるからって舞い上がって。それで
黄金ちゃんにまで迷惑かけて……。
本当にごめんなさい!」
そう言って、全力で頭を下げるみゆきちゃん。
でも、その言葉を聞けただけで私は正直嬉しい。
私みたいな化け物を、そう思っていてくれるだけでも
嬉しい。
黄金「ねぇみゆきちゃん。みんな、私はまだ、ここに
居て良いかな?みんなの隣に」
あかね「黄金、今更何言うてんねん。まだもこれからも
あらへん。黄金は今も昔もウチらの、
スマイルプリキュアの仲間や!」
やよい「その通りだよ!」
なお「今更そんな事、気にしなくて良いんだよ」
れいか「私達は何時までも、黄金さんのお友達です」
みゆき「黄金ちゃん、私は、私達はいつまでも、ずっと、
友達だよ」
私は、その言葉に心が満ちるのを感じる。
もし、みゆきちゃん達との出会いが運命なのだとしたら、
私は、とっても幸せ者なのかもしれない。
だって、こんな私を受け入れてくれる、みんなに
出会えたのだから。
黄金「ありがとう、みんな」
私は、そう呟きながらうれし涙を流した。
その後、ある程度落ち着いて、時間も時間なので
皆ここで解散して帰ろうとした時。
みゆき「おわっ!?」
不意に、椅子の足の角に躓いて倒れそうになるみゆきちゃん!
黄金「あ!危なっ!!」
咄嗟に受け止めようとした私だったけど、戦いの疲労も
あり受け止めて支える事までは出来ず、そのまま
みゆきちゃん諸共倒れてしまった。
いっつ。あ、頭打った。
頭の痛みに目を閉じていた時。しかし不意に、私の
唇に何か柔らかい物が触れている、そんな感じがして、
気になって目を開けると……。
目の前にみゆきちゃんの顔があった。
そう、つまり私達は今、『キス』をしてしまったのだった。
周りのみんなも驚いている中、数秒して慌てて体を起こす
みゆきちゃん。
みゆき「ごごごご、ごめん黄金ちゃん!大丈夫だった!?」
黄金「う、うん。大丈夫」
顔を赤くしてテンパっているみゆきちゃんと、同じく顔を
赤くしている私。
く、唇ってあんなに柔らかいんだ。ちょっとプニプニしていた。
『ズキンッ!』
ッ!
その時、鈍い痛みが私の体を襲った。
みゆき「え~っと、あのそのその!これは事故であって
アクシデントであってえっとだからその!」
黄金「大丈夫だよみゆきちゃん。こういうのはノーカン。
ノーカウントだよ。さ、それより早く戻ろう。
もう時間も時間だし、早く帰らないとみんな
お家の人に怒られちゃうよ」
あかね「あ、あぁせやったな~!」
やよい「そ、そうだね!」
と、みんな顔を赤くしつつも、それぞれが本棚を使って自分の
家や部屋へと戻って行った。
そして私もまた、鈍い痛みを耐えながら自分の部屋まで
一気に移動した。
れいかちゃんが、何処か私を気にする様子に気付かないまま。
そして、部屋に辿り着くなり……。
黄金「かはぁっ!!」
思いっきり息を吸い込んだ。
「ハァ、ハァ、ハァ……!」
ベッドの上に制服のまま倒れこみ、激しい息遣いで
呼吸をする。
そして、掌を何とか動かしてみると、まるで老人の
手みたいに皺くちゃになっていた。
「う、ぐっ」
けど、その時はすぐに老化現象と痛みがすぐに引いて、
数十分もすれば動けるようになった。
それが、ギルスの代償。
ギルスは胸に力をコントロールする機関、ワイズマンモノリスを
持たないが故に、常に全力全開。しかしそのため、変身による
負荷がダイレクトに黄金に伝えられるのだ。
そして、一方のみゆきはと言うと……。
帰宅後、普通に食事をしてお風呂に入り、その後
ベッドに入るみゆき。
しかし……。
みゆき『黄金ちゃんの唇、柔らかかったな~』
ベッドに入り、顔を赤くしながらもあのアクシデントの
事を考えずにはいられないみゆき。
『って、私は何を!黄金ちゃんと私は女の子同士
なんだよ!そ、それを……』
と、その時みゆきの脳裏に、勇ましい黄金やアギトの
姿が浮かぶ。
『そ、そうだよ。女の子同士なんだもん。
これは、ただ、驚いているだけ。うん、
きっとそう』
自分に言い聞かせるように、頭の中でそう呟くみゆき。
しかし、彼女の頬の火照りが、簡単に引く事は無かった。
果たして、黄金のギルス覚醒は何をもたらすのか?
みゆきと黄金のこれからはどうなって行くのか?
この先、戦いはどうなっていくのか?
今、時の流れが速まって行く。
第8話 END
というわけで、ギルス覚醒。
まぁただ、アギトとギルスの一人二役なんで出番が
多いかは微妙です。