スマイルプリキュア!~新たなるプリキュア、その名はキュアアギト!?~ 作:ユウキ003
~~前回までのあらすじ~~
京都に引き続き、修学旅行で大阪へとやってきた
みゆき達。序盤にて危うくはぐれる所だったが
黄金の力ですぐさま合流する事が出来た。
一方で、れいかは黄金が戦いの中で何度も
ボロボロになる事を危惧しており、彼女は
その想いを黄金に打ち明ける。それでも、黄金は
れいか達5人を守る為に戦い続ける決意を
示し、二人は互いを守る意思を示した。
その直後、マジョリーナのアカンベェが出現
するが、アギトとビューティの合体技、
5人のヒーリングの力で無事撃退されるのだった。
~~ウルフルン達の基地にて~~
ウル「どういう事だジョーカー!テメェに貰った
青っ鼻、全然役に立たねぇじゃねぇか!」
ウルフルン達幹部3人が、ジョーカーを責めていた。
ジョー「申し訳ありません皆様。私としても、
少々プリキュアを見誤っていた
ようです」
マジョ「んん?どう言う意味だわさ?」
マジョリーナが疑問符を浮かべると、ジョーカーは
右手で2本、指を立てた。
ジョー「一つは、ウルフルンさんとの最初の戦いで
生まれたレインボーヒーリングなる技。
無効化出来るはずだった、これまでの技
を超える新たな技を土壇場で生み出した事。
もう一つは、アギトのしぶとさです。
アギトはプリキュア以上にしぶとかった、
と言う事です」
アカ「けどどうするオニ。青っ鼻が使えない
んじゃ意味ないオニ」
ウル「そうだっ!何かねぇのか、もっとこう、
簡単にプリキュアをぶっ飛ばせそうなの!」
ジョー「無い、訳ではありませんが……」
と、ジョーカーが言うと……。
アカ「あるオニ!?」
マジョ「あるなら見せるだわさ!」
と、幹部達がそう迫った。
ジョー「分かりました。ではこちらへ……」
そう言うと、ジョーカーは3人を伴って
どこかへと歩き出した。
「実は以前、横浜で一つの戦いがありました」
と、歩きながら3人に対して語り出すジョーカー。
「その戦いの中で、キュアアギトは右腕が
切断されるほどの重症を負いました。
幸か不幸か、アギトは右腕を再生させ、
今も普通に生活しています。
しかし、その時私はそこに居ました。
そして、回収したのですよ。その
千切れた右腕を」
マジョ「で、それが何だって言うんだわさ?」
そうマジョリーナが問いかけた時、ジョーカー
があの部屋の前で止まり、扉を開いた。
ジョー「その右腕の細胞からクローニングを
行い、クローン、つまり人造人間を
創り出しました。それが、こいつら
です」
そう言って、ジョーカーが示したのは、
あのポッドだった。
ウル「何だぁ?こいつら人間か?」
ジョー「はい。今回は、敢えて人間を模倣
して創りました」
アカ「何でわざわざ人間なんかにした
オニ?」
ジョー「理由としましては、人である事です。
プリキュアがこれまで戦ってきた敵、
即ちアカンベェとは人間離れした
存在です。しかし、そんなプリキュアの
前に人間の姿をした敵が現れれば、彼女
達はどう想うでしょう?守るべき人間と
そっくりな敵を果たして倒せる
でしょうか?」
ウル「成程。人間らしくして攻撃するのを
躊躇わせる訳だな」
アカ「なら、俺様が使わせて貰うオニ!」
ウル「あぁ!?待てよ!こいつらは俺様が
使うぜ!」
マジョ「違うだわさ!私だわさ!」
と、誰がG3とG4を使うかを揉め始める3人。
しかし……。
ジョー「何か勘違いされていますが、こいつら
は皆さんの指揮を受けませんよ?」
と、ジョーカーが呟いた。
ウル「あぁ!?そいつはどう言う事だ
ジョーカー!」
ジョー「この二体は独自に考え行動します。
皆さんの命令を聞く必要も
ありません。ですので、皆さんの
お手を煩わせる事はありません
ので、ご安心下さい」
と、言っているジョーカー。
しかし、その表現を悪い意味でとれば、
ウルフルン達3人は必要無い、と言われて
居るような物だ。
ジョー「最終的なチェックは終えています。
後は私の命令に背かない洗脳を
施せば、プリキュアと戦わせる事が
可能です」
そう言うと、ジョーカーは3人の側を
通り過ぎる。
「後数日もあれば、二人を実戦で
使える事になるでしょう」
とだけ言い残して、ジョーカーは
部屋を後にした。
残されたウルフルン達。
ウル「俺たちがいらねぇだと?
ふざけやがってジョーカーの奴!」
アカ「こんな奴より、俺様の方が強いオニ!」
ジョーカーが居なくなってから、悪態をつく
二人。
マジョ「けど不味いだわさ」
ウル「あぁ?何が不味いんだよ」
マジョ「考えてもみるだわさ。もし仮にこいつら
がプリキュアを倒したら、あたし達の
面目丸つぶれだわさ!」
その言葉を聞くと、ウルフルンがG3のポッド
へと歩み寄る。
ウル「けっ。ふざけやがって」
すると……。
『バンッ!』
「俺様がこんなちっこいガキより
弱いってか!?あぁ!?」
マジョリーナの方を睨みながらG3の
ポッドを何度も叩くウルフルン。
すると……。
『ビーッ!ビーッ!』
突然部屋の中に赤い光とアラームが鳴り響く。
アカ「な、何事オニ!?」
マジョ「なんなんだわさ!五月蠅いだわさ!」
耳を塞ぐ3人。その時。
『緊急事態発生!緊急事態発生!
ポッド1にダメージを確認!
緊急離脱シークエンスを執行!
ポッド1、転送を開始します!』
ウル「はぁっ!?ちょ、ま、待て!」
転送、と言う言葉に慌てて更にポッドを
叩くウルフルン。
しかし、それは逆効果だった。
『転送座標確認、人間界、
七色ヶ丘市。転送開始、5秒前。
4、3、2、1。転送』
電子音声と共に、G3を内蔵したポッドが
光に包まれどこかへと消えてしまった。
アカ「な、何やってるオニ!?片方
どっか行っちゃったオニ!?」
マジョ「ま、不味いだわさ!これがもし、
ジョーカーに知られたら……!」
ウル「い、急いで探せ!おらお前等も来い!」
アカ「何でお前が威張ってるオニ!?」
ウル「っるせぇ行くぞ!ジョーカーに
バレる前にあいつを回収するんだよ!」
と、慌てた様子で3人は人間界へと向かった。
一方その頃、人間界では……。
黄金「はぁ~。今日は平和だね~」
平日の昼下がり、私服姿で黄金たち7人が
街を歩いていた。
平日なのに黄金たちが街に居る理由は、
数日前の修学旅行が理由だ。土日を
挟んでの旅行だった為、代休としての
休みがあったのだった。
なお「この後どうしよっか?どっか寄ってく?」
みゆき「あっ。それなら私本屋さんとか
覗いてみたい」
やよい「あっ。私も」
と、彼女達がそれぞれどこに行くか
話していた時。
『キランッ!』
キャンディ「クル?みんな、今何か光ったクル」
あかね「へ?」
キャンディ「何か、あっちの方に落ちたクル」
黄金「落ちたって……」
私は話していたとき、以前のマジョリーナの
イレカワールの一件を思い出した。
「またマジョリーナのヘンテコアイテム
じゃないでしょうね~」
れいか「念のため、確認しましょう」
私達は、キャンディの言う何かを探して
その方向に向かった。場所は、私達の
いた場所から歩いて数分、林の方だった。
草木をかき分け進む私達。
やよい「ん、しょっ。ん?
あぁ!みんなあれ!」
林の中を歩いていると、後ろに居た
やよいちゃんが何かに気づいた。
みゆき「え?何々?」
やよい「ほら見て!あそこ!」
そう言ってやよいちゃんが指さす先では、
木々の合間に、何か銀色のような物体を
見つけた。
しかもその物体からは僅かに煙が上がっていた。
黄金「あれかな?行ってみよう」
私の言葉に頷き、みんなでゆっくり、
前例があるから警戒しながら近づいていく。
木々の後ろに隠れながらそれ、ポッドの
ような物まで近づく。
あかね「な、なんやあれ?鉄の棺桶か?」
やよい「何だか、SF映画とかに出てくる
脱出ポッドみたい」
目の前に現れた、丸みを帯びた銀色の
ポッドに戸惑うあかねと、似ている物の例を
上げるやよい。
なお「まさか、エイリアンが入ってるとか!?」
みゆき「えぇ~!?」
驚き、まさか?!と言う表情のなおとその言葉に
戸惑い驚くみゆき。
れいか「そんなまさか。漫画じゃあるまいし」
黄金「まぁ、プリキュアの存在自体漫画みたい
だけどね」
と、私はため息交じりのれいかちゃんの言葉に
苦笑を浮かべつつ、静かにポッドに
近づいた。
ポッドは、やよいちゃんの言うとおりSF映画
の脱出艇のようだった。
慎重に近づき、そ~っとガラスの中をのぞき
込む私達。すると……。
「って!?女の子!?」
ポッドの中に入っていたのは、エイリアンでも
宇宙服を着た人でもない、裸で青い髪を腰の
辺りまで伸ばした女の子だった。
「どうして女の子がこんな物に、
それも裸で……」
あかね「な、なぁ。これって開けて出してやった
方が良いんとちゃうか?」
なお「でも、開けるたってどうやって?」
と、首をかしげる二人。
やよい「あっ。ねぇみんな。これ」
その時、ポッドの周りを見ていたやよいが
何かに気づいた。黄金が近づくと、ポッドの
側面に赤いレバーがあった。
黄金「これって……。緊急時にポッドを
開くレバー、的な?」
やよい「多分そうじゃないかな?」
黄金「……。みんなは下がってて。私が
やってみる」
みんなを下がらせた私は、ゆっくりとポッドの
レバーを動かした。
『ガチャンッ』
すると……。
『プシュゥゥゥゥッ!』
ガラスが開いて中から煙が溢れ出したかと
想うと、ゆっくりガラスのカバーがせり
上がった。
私は中をのぞき込み、女の子の首元に手を
当てた。
脈は……。ある。鼻先に指を近づけても、
呼吸している。胸も僅かに動いてるし、
気絶しているだけみたい。
れいか「黄金さん。どうですか?」
黄金「体に傷とかは無いみたい。呼吸も
してるから、気を失ってるだけ
みたいだけど……」
なお「けど、どうするのこの子?まさか
ここにこのままって訳にも
行かないし」
みゆき「やっぱり、交番とか警察の人の
ところに連れて行った方が
良いのかな?」
黄金「……でも、信じて貰えなさそう
だよね。これ」
そう言って、私はポッドの表面を撫でる。
確かに、と言わんばかりにあかねちゃんが
頷く。
れいか「ですが、このままと言うわけ
にも行きません」
黄金「そうだね。……じゃあ、とりあえず
この子を連れてふしぎ図書館に
行こう。あそこなら大丈夫だろうし」
なお「そうだね。あっ、でも、その前に
服とか着せた方が良いんじゃ」
っと、そうだった。
その後、私が一旦家に戻って服を取ってきた。
女の子に服を着せ、私がおんぶすると
街の本屋さんへ行き、そこからふしぎ図書館
へと向かった。
黄金「よっ、っと」
図書館のログハウスに入った私達は、女の子を
2階のソファに寝かしつけ、毛布を掛けると
1階でテーブルを囲むように座った。
「ふぅ。これでとりあえず一安心、
なんだけど……」
なお「何者なんだろうね?あの子」
みゆき「宇宙人でも無いし、宇宙飛行士とか?」
れいか「あんな、私達と同い年くらいの宇宙飛行士
なんて聞いたこともありませんよ、
みゆきさん」
みゆき「だよね~」
あかね「ハァ。けど、どないするん?目ぇ
覚めたら話聞いて、警察に送り届けるん?」
黄金「それしか無いと思うよ。こう言うのは、
流石にそっちの人達の仕事だと思うし」
れいか「そうですね。私も黄金さんの意見に
賛成です。……しかし」
と、呟きながら二階の方を見つめるれいかちゃん。
「本当に、あの子は一体どこからやってきた
のでしょうか?」
と、私達では答えられない疑問符を浮かべ、
みんな同意するように静かに頷くのだった。
黄金「……。もしかして……」
あいつらの刺客?
私はそうつぶやき掛けて、口をつぐむ。
それを確定する証拠も無い。
考えすぎだ。
私は自分にそう言い聞かせた。
と、その時。
???「ん、んっ」
二階から、あの女の子の声が聞こえた。
私達は、席を立って二階へと上がった。
~~~
う、うぅん。
ここは、どこ?
あれ?『私』って、誰だっけ?
分からない。何も、分からない。
私は、『誰』?
分からない。分からない。過去も
記憶も、何も無い。
その時。
みゆき「あなた、大丈夫?」
不意に、誰かが私の顔をのぞき込んだ。
数は6人。
皆女の子だった。
でも、私は……。
???「あっ」
なぜだか分からないけど、『彼女』を
見たとき、私は無意識に、そう呟いた。
「マ、マ」
そして、私はもう一度意識を手放した。
~~~
ん?んん??
今、この子は何と言った?
ママ?私が?
目が覚めたのかと思って集まって
みゆきちゃんが声を掛けると、
女の子は赤い瞳で私達全員を見回し、
そして私を見ながらママって言った。
うん、はっきり聞こえた。
ママって。
女の子は再び眠っちゃって、
逆に皆の視線が私に集まる。
やよい「い、今この子、黄金ちゃんの
事をママ、って」
あかね「いやいや!きっとあれや!
勘違いや勘違い!だって私らと
この子、見た目殆ど変わらないやん!」
黄金「そ、そうだよ!大体、私は子供を産んだ
記憶なんてこれっぽっちも無いからね!」
と、私はあかねちゃんに続くようにママ疑惑を
否定する。
……。けれど……。
「……」
何故だろう。私とこの子は赤の他人なのに、
なんて言うんだろう?既視感?初対面の
はずなのに、そうは思えない。
そんな、不思議な感覚に私は苛まれていた。
それから30分くらいして……。
???「う、うぅん」
再びあの子が目を覚ました。
そして、体を起こそうとしたから
みゆきちゃんが背中に手を回して
それを手伝った。
「ここ、は……」
女の子は、戸惑った様子のまま周囲を、
そして私達を見回した。
「あなた、達は……」
みゆき「私?私は星空みゆきだよ!
初めまして!」
あかね「ウチは日野あかねや!よろしゅうな!」
やよい「私は、黄瀬やよいだよ。
よろしくね」
なお「緑川なお。はじめまして」
れいか「青木れいかです。はじめまして」
黄金「私は津神黄金。よろしくね」
キャンディ「キャンディはキャンディクル!」
と、私達は順番に自己紹介をした。
「所で、あなた名前は?」
???「私は……。……私は……」
私が質問すると、女の子は何かを言いかけた
かと思うと、俯いてしまった。
何で?と思って居ると……。
「分からない、です」
みゆき「え?それってどういう……」
???「思い出せないん、です。名前も、
どうして自分がここに居るのかも」
やよい「それって……」
れいか「記憶喪失、ですね」
キャンディ「それって何クル?」
れいか「記憶喪失、と言うのは事故などで
頭に衝撃を受けた時など、ショックが
原因で自分や、自分のこれまでの事を
忘れてしまう障害の事です」
あかね「何か少しでも覚えてないん?
なんかこう、名前とか何か」
???「名前。私の……。ッう!」
その時、女の子がこめかみに手を当てて
うめき声を上げた。
黄金「だ、大丈夫っ!?」
慌てて心配する私達。しかし数秒すると、
女の子は静かに手を下ろした。
そして……。
???「G、3」
黄金「え?」
何かを呟く女の子。G3?
G3「『G3』。誰かに、そう呼ばれていた
気がする、です」
黄金「それが、名前?」
私の言葉に、G3ちゃん(?)はコクンと首
を縦に振る。
それに、みんな困ったような表情を
浮かべる。
あかね「なんか、その、なぁ?」
なお「うん。軍隊のコードネームみたい」
れいか「それは、その、失礼かと思いますが
本名なのですか?」
G3「……分からない、です。誰かが、
私をそう呼んでいた。それしか、
覚えてない、です」
そう、G3ちゃんは悲しそうに呟いた。
その時。
みゆき「じゃあさ、私達で名前をつけて
あげようよ!」
G3「え?」
みゆき「だって、G3って言うのより、もっと
可愛い名前が良いんじゃないかな?
女の子なんだし!」
G3「私の、名前を?」
戸惑うG3ちゃん。
なお「良いね!折角だから可愛いのを
考えてあげようよ!」
やよい「賛成!」
と、皆戸惑ってるG3ちゃんを完全に
無視してそんな事を言ってる始末。
まぁ私も賛成だけど……。
黄金「けど、名前かぁ」
……青い髪と赤い瞳。青い髪は深い青、正しく『蒼』。
その瞳は赤くまるで兎のよう。
蒼い、宝石。と言えば……。
「サファイヤ」
みゆき「え?何々?黄金ちゃんなんて言ったの?」
黄金「あ、えっと。……この子の髪、深い
青色で綺麗だな~って思って。
蒼い宝石って考えたらサファイヤ
なんて名前、どうかな?」
あかね「サファイヤ。うん!えぇやん!」
れいか「では、これからG3さん改め、
サファイヤちゃんですね」
サファイヤ「サファイヤ。それが、私の名前?」
こうして、G3ちゃんの新たな名前が、
『サファイヤ』ちゃんで決定した。
で、その後。
みゆき「これでサファイヤちゃんの名前が決まった
訳だけど、どうしようっか?」
やよい「やっぱり警察に連れて行くべきかな?」
れいか「普通に考えれば、そうですよね」
と、皆で話し合っていると……。
サファイヤ「……」
相変わらず、サファイヤちゃんが暗い顔を
していた。それを見たあかねちゃんが……。
あかね「そや!折角やからサファイヤ、ウチで
お好み焼き食うてき!」
サファイヤ「え?お好み、焼き?何それ?」
あかね「え~~!?サファイヤお好み焼き
知らんの!?それはもったいないで!
って事ですぐにウチの店行くで!」
そう言うと、あかねちゃんがサファイヤ
ちゃんの腕を引いて歩き出した。
サファイヤ「え?いや、あの……」
戸惑うサファイヤちゃん。
あかね「大丈夫やて!ごっつ美味いもん
やから!」
サファイヤ「う、うん」
って事で、私は戸惑うサファイヤちゃんを
連れてあかねちゃんのお店へ。
あかね「ほいっ!ほいほいっと!」
私達が見ている前でお好み焼きを焼いている
あかねちゃん。
サファイヤちゃんは、その様子を驚いた
様子で見つめていた。
今も、「お~~」と驚嘆の声を漏らし
初めて見るそれに目を輝かせている。
その後、出来やがったお好み焼きは
8人分。
7人「「「「「「「いただきます!(クル!)」」」」」」」
サファイヤ「い、いただきます」
私達が手を合わせると、サファイヤちゃんも
手を合わせてから箸を持ち、お好み焼きを
切り取り食べ始めた。
う~ん、記憶は無くても箸とか普通に
使えてるな~。
とか思っていた時。
サファイヤちゃんはフーフーする事なく
お好み焼きを口に!
しかし……。
「んぐっ、んぐっ」
『ゴクンッ』
「……美味しい」
普通に噛んで飲み込んでしまう
サファイヤちゃん。
後ろから聞こえる皆の声に耳を
傾ければ、6人とも『熱ッ』とか『あちち!』
とか言いながら、フーフーして食べてる。
「ん?どうかしました?」
黄金「あっ!えっと、サファイヤちゃん、
お好み焼き、熱くない?大丈夫?」
サファイヤ「?大丈夫です、けど……」
と、彼女は特に熱がる様子も無くお好み焼きを
食べていく。
……そんなに熱さに強いの?と、内心私は
そう思っていた。
まぁ、とりあえずそんな事は良い。
黄金「美味しい?お好み焼き」
サファイヤ「うん、美味しい、です。こんな
美味しい物、初めて食べました」
黄金「そっか、良かった」
しかし、少し食べ進めるとサファイヤちゃんは
箸を置いた。
「あれ?どうかしたの?」
サファイヤ「……少し、考えてるんです。こんな
美味しい物、普通に生活していたら、
絶対食べてるはず。なのに私は、
お好み焼きの名前すら知らなかった」
……。その言葉には、サファイヤちゃんの
悲しみの色が浮かんで居た。
「記憶が無いのは何故なんだろう?
家族は居るのか?友達は?
以前の私は、どんな子だった
んだろう」
「私は、誰なんだろう。って」
考えても考えても、自分が何者なのか、
思い出せない。
考えただけでも身震いする私。その恐怖と
不安を、今のサファイヤちゃんは抱えているんだ。
だから……。
黄金「例え、思い出せないとしても……
サファイヤちゃんはサファイヤちゃんだよ。
それは私達が保障するし、覚えている
事だから」
サファイヤ「覚え、て?」
黄金「うん。少なくとも、今のサファイヤちゃん
には私達が居る。……私には、記憶喪失の
不安感とか分からないけど、側に居る
事は出来るから」
そう言って、私の左手を、サファイヤちゃんの
右手に重ねる私。
「あんな風に出会ったのも、もしかして
運命なのかもね」
そう言って、私は笑みを浮かべた。
サファイヤ「黄金、さん」
すると、サファイヤちゃんは何故か顔を赤くして
私を見ている。
ん?何故?
気になって反対側を向くと……。
『『『ニヤニヤ』』』
何故かあかねちゃん、なおちゃん、みゆきちゃん
が笑みを浮かべ……。
『『……………』』
やよいちゃんとれいかちゃんが笑ってるけど
笑ってなかった!
怖いよ二人とも!?私はどこで地雷を踏んだの
ですかぁ!?
と、私は若干涙目になるのだった。
~~~
一方、その頃。
ウル「だ~~!全然見つからねぇ!」
アカ「そもそもお前がバンバン叩くから
こうなったオニ!」
ウル「うるせぇ文句言ってる暇があったら
とっとと探せ!」
3幹部が町の上空を浮遊しながらG3が入っていた
ポッドを探していた。
しかし、一行に見つからないポッドに、
苛立ちが募っていた。
その時。
マジョ「あ~もう!しょうが無いだわさ!
こうなったらこれを使うだわさ!」
そう言って取り出したのは、青っ鼻だった。
「お前達もこれを使うだわさ!
手は多い方が良いだわさ!」
ウル「成程。それに、人間どもの
バッドエンドエナジーが集まって
一石二鳥だな」
そう言うと、ウルフルンは闇の絵本と絵の具を
取り出した。
「世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!
白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ!」
ウルフルンが叫び、闇の絵本に絵の具を
叩き付けると、バッドエンド空間が町に
広がる。
「さ~て、んじゃいっちょやるか」
3人「「「出でよ!アカンベェ!」」」
3人が一斉に青っ鼻のアカンベェを召喚する。
現れたのは、
バレーボールのアカンベェ。
ローラーのアカンベェ。
遊具のアカンベェ。
その3体だった。
ウル「ウルッフッフッフッ!これであいつを
見つけ出してやるぜ」
~~~
ッ!!!この感覚は!?
あかねちゃんのお好み焼きを食べ終えて、
食器を洗っていたとき、私達7人は
バッドエンド空間の発生を肌で感じた。
その時。けど、驚く事があった。
サファイヤ「なに、これ……」
ッ!?バッドエンド空間の中なのに、
サファイヤちゃんは普通に動いて、驚いた
様子で周囲を見回す。
黄金「さ、サファイヤちゃん大丈夫
なの!?バッドエンド空間が
発生してるのに!」
サファイヤ「バッド、エンド?……ッ!?」
私が問いかけると、サファイヤちゃんは
頭を押さえてその場に膝を突いた!
黄金「サファイヤちゃん!?どうしたの!?
大丈夫?!」
サファイヤ「……。知ってる」
黄金「え?」
サファイヤ「その言葉を、私は、知ってる」
知ってる?サファイヤちゃんが?バッドエンド
と言う単語自体は、難しい言葉じゃない。
ゲームとかでも良く出るし、知っている
事自体は大して珍しい事じゃない。
……でも、私達7人から見たら、スルー
出来ない物がある。
『奴ら』に通ずる物があるから。
やっぱり、サファイヤちゃんは奴らの……。
そう思っていた時。
あかね「何してんねん黄金!はよ行くで!」
黄金「ッ!うん!」
私はあかねちゃんの声を聞いて我に返ると
すぐに皆の後を追いかけて駆け出した。
その時、私は忘れていた。サファイヤちゃん
に何も言わずに、彼女を一人にして
しまった事を。
~~~
みんな、どこかへ行っちゃう。
待って。
そう言おうとした。けど、何故か声が
出なかった。
怖い、一人は怖い。
自分が誰かも分からない。ヤだ。
一人に、一人に、しないで……。
私は、震える足で立ち上がりながら
皆の後を追っていった。
~~~
私達が闇の気配を追って走っていると、街
の広場へたどり着いた。そこには、ウルフルン、
アカオーニ、マジョリーナが浮かび、その
すぐ下には3体の青い鼻のアカンベェが
居た。
黄金「ッ!アカンベェが3体も!」
アカ「んん?あぁ!プリキュアオニ!」
3人の内、アカオーニが叫び私達の方を
指さした。
ウル「何ッ!?ちぃっ!こんな時に!」
あかね「お前等!また性懲りも無く
現れおって!」
れいか「3人で来れば、負けないとでも
お思いですか!」
マジョ「ふんっ!今日はお前達の相手を
してる暇なんて無いだわさ!」
ッ。あの3人、何か焦っている?
……。いや、そこを考えても仕方ない。
このままだと、バッドエンドエナジーが
周囲の人達から吸収され続ける。
そしたら……。
黄金「そっちに用がなくても、こっちには
バッドエンドエナジーを集めさせない
って言う理由があるのよ!皆!」
みゆき「うん!バッドエンドなんて、絶対に
させない!」
そして、黄金達は変身する。
『バッ!ババッ!』
黄金「はぁぁぁぁぁ……!」
いつもの動きでオルタリングを出現させる黄金。
『レディ?』
5人「「「「「プリキュア!スマイルチャージ!」」」」」
『ゴー!ゴーゴー!レッツゴー!』
5人が光を纏い変身していく。
黄金「変身ッ!」
『カチッ!』
『VUUUUUN!!』
黄金もまた、光を纏いアギトへと変身する。
ハッピー「キラキラ輝く未来の光!キュアハッピー!」
サニー「太陽サンサン熱血パワー!キュアサニー!」
ピース「ピカピカぴかりん♪じゃんけんポン♪
キュアピース!」
マーチ「勇気リンリン直球勝負!キュアマーチ!」
ビューティ「しんしんと降り積もる清き心!キュアビューティ!」
アギト「神が生みし悪を断つ戦姫!キュアアギト!」
6人「「「「「「6つの光が導く未来!輝け!スマイルプリキュア!」」」」」」
私達は変身を終え、アカンベェ達と相対する。
ウル「ちっ!?こんな時に……!こうなったら、
先にお前らの相手をしてやるぜ!
行け!アカンベェ!」
『『『アッカンベェ!』』』
3体のアカンベェが向かってきた!
ハッピー「来るよ!」
アギト「みんなはローラーと遊具の相手を
お願い!私は、あのバレーボールの
奴を倒す!」
ビューティ「大丈夫なのですか!?」
アギト「私の技は奴らにも効く!それに
デコルが入ってないから、それを
壊す心配も無く、本気でやれるから!
はぁっ!」
私は、最初のローラーと遊具のアカンベェ
を飛び越え、バレーボールアカンベェに
殴りかかった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
『ドゴォォォォォォツ!』
拳が奴の顔面を捕え、そのまま後ろへと
飛ばす。私も一緒になって飛び、とにかく
皆から引き剥がした。
「お前の相手は、私だっ!」
アギトがバレーボールのアカンベェと戦っている時、
ハッピー、サニー、ピースが遊具のアカンベェと。
ビューティ、マーチがローラーのアカンベェと。
それぞれ戦っていた。
『アッカンベェ!』
遊具のアカンベェが、バネの形の拘束具を放つ。
サニー「おっと!そうなんども同じ手は
食わへんで!」
ピース「もうあの日みたいに油断なんて
しないんだから!」
一方、ローラーアカンベェの突進を
避けるビューティとマーチ。
ビューティ「とは言え、このアカンベェを倒す
には5人の合体技、レインボー
ヒーリングでないと……!」
マーチ「何とか隙があれば……!」
ハッピー達5人は別れて戦っていた。しかし、
青っ鼻のアカンベェを倒すには5人の合体技
であるレインボーヒーリングしかない。
しかしそれはアカンベェ達も知ってのことか、
5人が合流しようとすると遊具アカンベェが
バネを連射し、ローラーアカンベェが5人を
分断するように突進してくる。
ハッピー「ダメ!これじゃレインボーヒーリング
が使えない!」
叫ぶハッピー。そして彼女は、チラリと
離れた場所で戦うアギトへと目を向けるの
だった。
アギト「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
『ベべべべべベェッ!!!』
そして、そのアギトはウィンディフォーム
となり、アカンベェが繰り出すバレーボール
の雨を蹴りの嵐で相殺していた。
「はぁっ!!」
ボールの一つを蹴飛ばし、距離を取るアギト。
そして彼女はアカンベェと向き合い構える。
今、こいつは私が押さえている。でも、こいつ
だけじゃない。まだ他に2体居る。
そして、こいつらを倒せるのはアギトである
私か、レインボーヒーリングだけ。そして、
あの5人技が連発出来るかも分からない。
だから、私がやるべき事は……!
「こいつをぶっ倒して!もう一匹
倒す事!はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
私は、もう一度バレーボール型アカンベェに
殴りかかった。
その頃、G3ことサファイヤは暗い街の中を
彷徨っていた。
サファイヤ「みんな……。どこ?」
周囲の人々は皆全て地面に膝を突き、項垂れて
いる。彼女はそんな状況に戸惑いながらも、
みゆきや黄金達に会う為、足を進めた。
『ドォォォンッ』
「っ!?な、何?」
突如聞こえてきた爆音にビクッと肩をふるわせ、
音のした方へ視線を向けるサファイヤ。
見れば、彼女からそう離れていない場所で
砂煙が上がっていた。
そして……。
アギト「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
彼女の耳に届いた声。それは聞き覚えのある物
だった。
あっちに、みんなが、黄金さんが居る!
あそこに行けば、皆に会える!
その感情に突き動かされ、G3、サファイヤは
駆け出した。
アギト「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!はぁっ!」
『アッカンベェ~~~~!』
『ドォォォォォォォンッ!!』
私はウィンディフォームで何百とバレーボール
アカンベェの体を蹴りつけ、ようやく1体を
撃破した。
「ハァ、ハァ、ハァ!あと、2匹!」
私は、すぐに視線を巡らせ、5人の方へと
跳躍。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
『ドゴォォッ!』
『ベェッ!?』
ローラーアカンベェの後頭部に蹴りを入れ
皆の前に着地した。
ハッピー「アギト!」
アギト「ごめん、お待たせ!バレーボールのは
倒したから安心して!」
サニー「よっしゃぁ!これで残りはあいつら
だけや!」
私の言葉にサニーが叫び、他の4人も笑みを
浮かべながら頷く。
と、その時。
サファイヤ「み、みんな!!」
後ろから声が聞こえた。慌てて振り返ると、
そこには息を切らしたサファイヤちゃんの
姿があった。
アギト「さ、サファイヤちゃん!?」
ハッピー「えぇ!?どうしてここに!?」
驚きで、私達は一瞬動きを止めてしまった。
ウル「ん?あっ!おいあの女!」
アカ「あぁ!間違い無いオニ!あいつオニ!」
マジョ「見つけただわさ!アカンベェ!
あの青い髪の女を捕まえるだわさ!」
『アッカンベェ!』
その時、遊具型アカンベェが何故かサファイヤちゃん
に向けてバネを放ってきた。
サファイヤ「あぁっ!」
驚き、動けないサファイヤちゃん。
ハッピー「危ないっ!」
そんな彼女の前に皆が飛び込み、バネを
弾き飛ばす。
でも……。
『アッカンベェ!』
そこにローラー型アカンベェが突進
してきた。
ビューティ「ッ!?危ない!!」
『ドガガッ!』
ハッピー「うわぁぁっ!」
サニー「くあぁぁっ!」
ピース「きゃぁぁぁっ!」
その攻撃を避けきれなかったハッピー、サニー、
ピースが弾き飛ばされる。
アギト「ハッピー!サニー!ピース!
クッソォッ!」
私はすぐさま飛び出し、ウィンディレッグの
飛翔能力で遊具型アカンベェに迫る。
「おぉぉぉぉぉぉっ!」
『ベェッ!?』
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」
『ドゴォォッ!』
私の蹴りが遊具型アカンベェを弾き飛ばす。
にしても……。
「お前ら!なぜサファイヤちゃんを
狙った!?」
アカ「あぁん?何でそんなこと知りたがるオニ!
まぁでも、あの子供がキュアアギトの右腕から
作られた~なんて教えてやらないオニ!」
ウル「あっ!?おいバカっ!」
ッ!?何、て?今、奴は、私の右腕から、サファイヤ
ちゃんが作られた?そう、言ったの?
アギト「ッ!!!どういうことだ!サファイヤ
ちゃんが、私の右腕から作られたって。
答えろ!どういうことだ!」
ウル「ちっ!?このバカ!余計な事まで
喋りやがって!」
そうアカオーニを罵倒するウルフルン。
しかし、彼はアギトを見ると何かを思いついた
かのようにニンマリと嫌な笑みを浮かべた。
「あぁ良いだろう。冥土の土産に教えて
やろう。キュアアギト、お前俺たち以外
の敵と戦って、右腕ぶった切られた事が
あるらしいな?」
ッ!まさか、横浜での戦い!?
「俺等の仲間がそん時近くに居たのさ。
んで、千切れたお前の腕を回収したん
だとよ」
ビューティ「アギトの右腕を!?一体なんの
為に!」
ウル「そんなの俺等が知るかよ。けど、あいつは
拾った右腕からくろーにんぐ?ってので
クローンって奴を作ったらしい。それが、
そこに居る青い髪の女なんだとよ!」
サファイヤ「ッ!!!」
ウルフルンの言葉に、サファイヤちゃんは
肩をふるわせ目を見開いている。
アギト「くっ!?なんで、何で私のDNAから
サファイヤちゃんを作った!?」
ウル「そりゃ、もちろんテメェ等プリキュア
と戦わせるために決まってんだろうが!」
ッ!!!
サファイヤちゃんが、奴らの作り出した刺客
って事。
その事実に、私や皆が愕然となる。
そして……。
ウル「さ~って、つ~わけだG3。テメェの
力でプリキュアを倒せ!」
サファイヤ「ッ!?……え?」
ウル「おらどうしたぁ!テメェはプリキュアと
戦う為に生み出された、人の形をした
兵器なんだよ!さっさと戦え!」
ウルフルンが叫ぶ。サファイヤちゃんは、
震えながら自分の両手を見ている。
サファイヤ「私が、兵器?皆を、倒す為に……。
作られた?」
ウル「そうさ!オメェは戦う為に、そのためだけ
に作られたんだよ!分かったらさっさと
戦え!プリキュアを倒すんだよ!」
しかし、サファイヤちゃんはその命令を聞いて
も震えているだけだった。
「ちっ。ジョーカーめ、あんなガキなんか
作りやがって。……役立たずに用はねぇ。
やれ!アカンベェ!」
マジョ「ってっ!人のアカンベェに勝手に
命令するなだわさ!」
『アッカンベェ!』
何やらマジョリーナが叫んだかと思うと、
遊具型アカンベェがサファイヤちゃん目がけて
無数のバネを乱射してきた。
不味いっ!!!
そう、考えた時には私自身、体が勝手に
動いていた。
ベルト左側のスイッチを叩き、ストーム
フォームに変身した私は、ストームハルバード
を取り出し、高速回転させる。
音を立てて弾かれるバネ。しかしその数は
かなりの物で、防ぐのが精一杯だった。
サファイヤ「やめて……」
その時、後ろからサファイヤちゃんの掠れた
声が聞こえた。
見れば、サファイヤちゃんは地面に膝と手を
突き俯いている。
「やめて、ください。どうして、
私を守るの?私は、黄金さんや、
みゆきさん達を、倒すために、
作られた兵器なんですよ?」
アギト「ッ!関係、無い!」
サファイヤ「どうして!?私は、あなた達の
敵なんですよ!?みんなを倒す。
その為に生まれた、兵器
なんですよ!?」
彼女は、自らを兵器と呼ぶ。
それはまるで過去の私のようだった。
自らが化け物だと思い込んで、それで
他人を拒絶して。人とはわかり合えない。
そう思っていた。近づいても傷付けられる。
だから、傷つかないように、離れなければ。
そう思っていた。
でも、心のどこかでは救われる事を
願っていた。
誰かに手を差し伸べて欲しかった。
だから……!!
アギト「違う!」
私は彼女の言葉を『否定』する。
「あいつらの言ってる事が本当だと
しても、私達の前に居るのは、
プリキュアの敵なんかじゃない!
サファイヤちゃんなんだ!」
サファイヤ「ッ!!」
アギト「私も、似たような経験をした!
ある日突然アギトになって、自分が
怪物になった事に恐怖した。
色々怖かった!だから人から離れた!
友達から、周囲から、全てから!
でも、そんな私を友達として
受け入れ、救ってくれた人が居る!
それがみゆきちゃん達なんだ!」
ハッピー「アギト……」
アギト「そして思い知った事がある!力は、
所詮力でしかない!その使い方を
決めるのは、全部自分!彼奴ら
みたいに悪い奴にもなるし、プリキュア
みたいな正義の味方にだってなれる!
そして……!私はプリキュアの味方である
道を選んだ!!」
サファイヤ「道を、選ぶ?」
アギト「そう!!自分がどうしたいのか、何が
したいのか!それを決めるのは全部
自分だ!自分の思いに、私はもう
嘘をつきたくない!ハッピー達を
守ると決めた!!そして、サファイヤ
ちゃん!貴方の側に居るって、私は
あの時貴方と約束した!」
サファイヤ「ッ!!!」
その時、防御を突破して飛来したバネの一つが
アギトの左腕を掠める。
アギト「うっ!?」
サファイヤ「黄金さん!もうやめて!
このままじゃあなたが!」
アギト「嫌だ!!!」
サファイヤ「黄金さん……」
アギト「私は、サファイヤちゃんの側に居る
って約束した!」
そう叫ぶと、アギトは静かに、肩越しに
振り返りこれまでとは違う、優しい表情を
浮かべた。
「それに、サファイヤちゃんが私から
作られたって言うのなら、
サファイヤちゃんは私にとって、
妹とか、娘みたいなものだから」
サファイヤ「ッ!!……黄金、さん」
その言葉に、サファイヤは涙を流す。
アギト「家族を守るのは、姉として、お母さん
として、当たり前だからねっ!!」
そう叫ぶと、一瞬の隙を突いてアギトが
ストームハルバードを投げた。
『ベェッ!?』
その攻撃に驚く遊具型アカンベェ。しかし
避ける事も敵わず、撃ち落とされた。
「さぁ!人の家族に手を出そうって
言うなら、私が相手よ!」
そう叫ぶ私。
サニー「な、なんや。アギトがマーチに
なってる」
って、誰がオカンよ。ってツッコもうと
したけどやめて、私は飛び出した。
そんな中で、サファイヤは……。
~~~
あの人は、黄金さんは、言ってくれた。
私のことを家族だと。兵器として生まれた
と聞いたときは、驚き、絶望しかけた。
それでも、あの人の言葉が、私を、
サファイヤとしての私をつなぎ止めて
くれた。
今、私の目の前で、黄金さんが……。
お母さんが戦っている。
アカ「行くオニ!アカンベェ!」
『アッカンベェ!』
アギト「しまっ!?くぅぅぅっ!!」
お母さんが、ローラーみたいな怪物に
弾き飛ばされ、近くのお店に激突して
しまう。
「くっ!?まだまだぁっ!」
けれど、お母さんは諦めずに戦っている。
お母さんは、私を守ってくれている。
私も、守りたい。お母さんを。
欲しい。戦う為の力が。お母さんの
隣で、一緒に、『戦いたい』!!
彼女の、サファイヤの思いが荒ぶる時、
彼女の中に埋め込まれていた力が
覚醒した。
『パァァァァッ!』
突如として、彼女の足下に青白い
魔法陣が現れた。
ハッピー「ッ!?あれって!」
驚き声を荒らげるハッピー。
そして……。
サファイヤ「お母さん、私も、戦う。お母さん
やお母さんの友達を、守る」
魔法陣の中でサファイヤが立ち上がる。
「その為に、戦う!!」
彼女が叫んだ次の瞬間、彼女の体が
青白い光に包まれた。
彼女の纏っていた服が消えたかと思うと、
次の瞬間には黒いライダースーツが
彼女の体を覆う。
更に、青白い粒子が彼女の腕や足、胴体
へ吸い寄せられるように集まり、それが
形を成していく。
脚部を覆う、青い鋼鉄のアーマー。胴体部を
覆う、銀色のチェストアーマー。更に肩や腕
も青い装甲が覆っていく。腹部にはベルトが
巻かれ、ベルト中央にはエネルギーゲージの
ような物が装備され、ゲージは満タンだった。
そして、最後に彼女の頭上にヘルメットが
現れ、ゆっくりと落下しサファイヤの頭部を
すっぽりと覆った。
ヘルメットは額の辺りまでを完全に隠し、
その部分にはアギトのクロスホーンにも
似た、中央の一本が短い、3本のメカニカル
な、アンテナのような角が生えていた。
かと思うと、ヘルメットの上部、額の
辺りからサファイヤ、いや、G3となった
彼女の目元を守る赤いバイザーが降りてきて、
保護した。
それが、サファイヤの本来の姿。
『G3』だった
ハッピー「あれが、サファイヤちゃんの
本当の姿」
G3「G3です」
サニー「え?」
G3「この姿の時は、そう呼んで下さい。
それが、私のもう一つの名前です」
ピース「G、3」
G3は、ハッピー達に向かってそう微笑むと、
前方の3人とアカンベェを睨み付ける。
ウル「テメェ!どういうつもりだ!」
G3「どうもこうもないです。私は、貴方達
の所へは戻らない。私を私として、
サファイヤの名を与えてくれたお母さん
やその友達を守る為に戦う。
そう決めたんです」
アカ「むぅっ!生意気オニ!アカンベェ!」
『アッカンベェ!』
アカオーニの命令でローラー型アカンベェ
が彼女に向かって突進してきた。
ビューティ「危ない!」
咄嗟に叫ぶビューティ。
だが……。
G3「標的確認。アーマメントモジュール、
展開」
彼女がそう呟き右手を前に翳すと、彼女
の前に青白い魔法陣が浮かび上がり、その
中から銀色の、長方形のボックスが
現れた。その右隣に移動するG3。
「GM―01、アクティブ」
更に彼女が呟くと、ボックスの一面の、
さらに一部が稼働し、中から、拳銃と
言うには大きく、しかしアサルトライフルと
言うには小さい、そんな銃、
『GM―01スコーピオン』が現れた。即座
にそれを片手で握るG3。そして……。
『ドキュンドキュンッ!!』
それをローラーアカンベェ目がけて
ぶっ放した。それが、寸分違わず
アカンベェの両目を貫いた。
『アカッ!?アッカンベェッ!?』
視力を失ったアカンベェはフラフラと揺れ、
近くの建物の壁に衝突した。
それを見たアギトやハッピー達が、皆
驚いていた。
ハッピー「す、凄い!」
ピース「何だか、SF映画の主人公
みたい!」
サニー「おっしゃぁ!行ったれG3!」
マーチ「負けるなぁ!G3!」
と、口々に叫ぶサニーやマーチ。
ビューティ「って!皆さん!私達も
行きますよ!」
ハッピー「っと、そうだった!行こう
みんな!」
ハッピー達5人はうなずき合い、駆け出す。
アギト「ハァッ!」
彼女は、遊具型アカンベェを蹴飛ばすと
後ろに下がった。その時、彼女の隣に
G3が現れた。
G3「……。お母、さん」
アギト「……うん。一緒に、行こう」
そう言って、彼女が右手を差し出す。
G3「うん、お母さん」
そして、G3も左手で彼女の右手を取り、
握り返す。
そして、そんな二人の周囲に着地する
ハッピー達。
アギトは、ハッピーに目配せをする。
アギト「あっちのちっこいには私と
G3で倒すから。皆はあっちの
ローラーアカンベェをお願い」
ハッピー「うん!任せて!みんな、行くよ!」
彼女のかけ声に従い、目を潰されて
遮二無二に暴れるローラー型アカンベェに
向かっていくハッピー達。
マジョ「えぇい!アカンベェ!そいつら
を倒すだわさ!」
『アッカンベェ!』
マジョリーナの指示に従い、バネを連射
するアカンベェ。
『ドキュンドキュン!』
アギト「はぁっ!」
しかし、その全てがG3の正確無比な射撃
とアギト・ストームフォームの拳と蹴りの
前にたたき落とされる。
G3「お母さん。私があいつの動きを
止めます」
アギト「うん!任せる!」
G3「はいっ!」
彼女は、アギトの言葉に頷くと後ろへと
飛んだ。
そして、アーマメントモジュールの側に着地
するG3
「GA―04!アクティブ!」
モジュールが開き、中から現れた
アンカーランチャー、『アンタレス』に
右手を差し込み装着した。
そして、彼女はアギトと戦っている遊具型
アカンベェに気づかれないように、近くの
建物の上に飛び乗った。そして、静かに
右腕をアカンベェに向け……。
『今だッ!』
『ボシュッ!』
音と共に発射されたアンカーが、アカンベェ
の体に向かって言った。
『ベェッ!?』
アカンベェが気づいた時には、もう遅い。
アンカーがその体にグルグルと巻き付く。
『ベェッ!ベェッ!』
咄嗟に逃れようとするアカンベェ。
しかし、鋼鉄のワイヤーの拘束から逃れる
事は出来なかった。
「お母さん!今のうちに!」
アギト「うん!」
アギトは、ストームフォームからグランド
フォームとなると、クロスホーンを展開し、
ポーズを取り、足下に出現した紋章の力を
取り込んでいく。
ハッピー「それぇっ!」
そんな中で、ハッピーの跳び蹴りが暴れていた
ローラー型アカンベェを倒した。
「キャンディ!」
キャンディ「皆の力を、合わせるクル~!」
5人「「「「「プリキュア!レインボーヒーリング!」」」」」
5人の放つレインボーヒーリングの波動が、
ローラー型アカンベェを浄化する。
アギト「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
更に、高く飛び上がったアギトの
ライダーキックが動けない遊具型アカンベェ
に命中。
大きく弾き飛ばされ、爆発、消滅した。
蹴った反動で着地するアギトとその元に
駆け寄るハッピー達とG3。
アカ「あぁぁぁぁっ!俺様のアカンベェまで
やられたオニ!」
マジョ「くっ!?こうなったら逃げる
だわさ!」
ウル「なっ!?おい待てよ!」
そして、アカンベェが3体ともやられたのを
見ると、幹部3人は撤退していった。
そして、それを静かに見送ったアギト、
ハッピー達だった。
バッドエンド空間が消滅した後。夕方の
公園にて。
みゆき達5人と向かい合うサファイヤと黄金。
あかね「それで、黄金。どうするん?
サファイヤの事」
黄金「……警察には届けない。
私が何とかする」
彼女がそう言うと、俯いていたサファイヤが
僅かに視線を上げた。
黄金「サファイヤは、私の右腕のDNA
から作られた、言わば私の妹とか、
娘みたいな存在だから。だから、
見捨てない。私が何とかする」
私は、そう言って皆を見つめる。そして、
皆は……。
みゆき「分かった。じゃあ私達も協力
するよ!」
あかね「せやな!サファイヤは新しい
仲間や!」
やよい「困った事があったら、何でも
言ってね!」
なお「私達が力になるからさ!」
れいか「いつでも相談に乗りますよ」
黄金「みんな。……ありがとう」
そう言って、皆サファイヤの事を
受け入れてくれた。
サファイヤ「お母さん」
その声に、顔を彼女の方に向ければ、
どこか戸惑っている表情を浮かべる彼女が。
それを見た私は……。
黄金「大丈夫だよ。これからは、私が
サファイヤの家族で、友達で、
友人だから」
そう言って、優しくサファイヤを抱きしめた。
そして、彼女も……。
サファイヤ「うん……!お母さん……!」
涙ながらに私を抱き返すのだった。
そうして、スマイルプリキュアの元に
新たな戦士が仲間となって加わったのだった。
ちなみに、あの後サファイヤに確認した所
食事は出来るけど必要、と言う訳ではなかった
みたい。そのため、話し合いの結果普段は
ふしぎ図書館のログハウスに居て貰う事に。
でも、その日の夜だけは……。
『パァァァッ』
サファイヤ「お母さん」
ふしぎ図書館から、本棚を通ってサファイヤが
パジャマ姿で私の部屋にやってきた。
あのパジャマは私のお下がりだ。
黄金「うん、こっちおいで」
私はベッドの淵をポンポンと叩き彼女を
招く。
サファイヤがベッドに潜り込むと、私は
部屋の電気を消し、自分もベッドに入る。
互いに顔が見えるように体を向かい合わせに
する。
サファイヤ「お母さん」
黄金「うん、おいで」
私はベッドの中で、サファイヤを抱きしめ、
そのまま二人で眠りについた。
新しい仲間は、とても頼もしい、
私の妹であり娘。
そしてこの日、私には新たに守りたい存在が
出来たのだった。
第14.5話 END
最初、G3ことサファイヤの立ち位置を妹か娘のどっちに
するか迷ったんですけど、娘って事にしてみました。
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