スマイルプリキュア!~新たなるプリキュア、その名はキュアアギト!?~   作:ユウキ003

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今回は第15話がベースですが、G3ことサファイヤと黄金にもスポットを当てたオリジナルな部分もあります。


第15話 母の日

~~~前回までのあらすじ~~~

修学旅行を終えて戻ってきたみゆき達7人は、

代休という事で集まっていた。そんな中、

彼女達は森林に落下したポッドを見つけ、その

中で眠っていた青い髪の少女を保護した。

ふしぎ図書館のログハウスに少女を運び込んだ

みゆき達。しばらくして少女は目を覚ましたが、

彼女は自分が、誰かに『G3』と呼ばれていた

事以外、何も覚えては居なかった。新たな

名前として、サファイヤの名前をみゆき達から

貰った少女。しかし、そんな中で街中に

現れた3幹部。そして更に、少女、サファイヤ

は、かつて横浜の戦いで切断された黄金、

アギトの右腕の細胞から得られたデータを元に

造られたクローンだった事が分かってしまう。

戸惑い、絶望するサファイヤ。しかし、

姉であり母でもある黄金の言葉を聞き、彼女は

プリキュアを倒す為に生み出された力で、

アカンベェ達を退け、黄金達に迎え入れられる

のだった。

 

 

~~ふしぎ図書館・ログハウスにて~~

 

『キュッ、キュッ』

今、私は手作りのクッキーを入れた袋を綺麗に

ラッピングしていた。

サファイヤ「……。お母さん、何してるの?」

その時、それを側で見ていたサファイヤが

不思議そうな顔をして私を見ている。

黄金「これはね、プレゼントを創ってんだよ」

サファイヤ「プレゼント?誰にあげるの?」

黄金「私のお母さんにあげるんだよ。今日は

   母の日だから」

サファイヤ「母の、日?」

と、首をかしげるサファイヤ。

そっか。元々戦う為に生み出された

サファイヤが、そんな事知ってる訳無い

よね。

 

黄金「えっとね。母の日って言うのは、お母さん

   にありがとうって気持ちを込めて、贈り物

   をしたり、何かを手伝ってあげたりする

   んだよ?」

サファイヤ「そう、なんだ。……じゃあ、私も

      お母さんに、何か贈り物をした方が

      良いの?」

黄金「え?」

そ、そうだった。サファイヤにとっては私が

お母さんなんだ。

  「ううん。大丈夫だよサファイヤ。まだ

   サファイヤはこっちの事に慣れてない

   んだし、気持ちだけでも十分だから」

サファイヤ「……うん、分かった」

そう言ってどこか悲しげな表情を浮かべながら

頷くサファイヤ。

う~ん、間違ったかな?

 

とか考えていると、上で本を読んでいたみゆき

ちゃんの声が聞こえてきた。

みゆき「ねぇ皆!見て見て~!」

あかね「お~。ちょっと後でな~」

そう答えたあかねちゃんは、何やら難しい顔で

裁縫を続けている。なおちゃんも同じく裁縫で

何かを作って居るみたい。やよいちゃんは

絵を描いているようで、れいかちゃんは……。

あれって陶器でも作ってるのかな?

う~ん、れいかちゃんだけ私達とレベルが

違うな~。とか思いながら私は内心苦笑を

浮かべていた。

 

みゆき「みんな何してるの?芸術の秋?

    ってまだ夏にもなってないし……」

れいか「お母様へのプレゼントですよ」

みゆき「プレゼント?」

と首をかしげるみゆきちゃん。

なお「ほら、母の日だし」

みゆき「母の日?何時?」

その言葉に、みゆきちゃんは何やら

戸惑っているみたい。

 

あかね「今日やん今日!」

みゆき「今日……!?」

あっ。みゆきちゃんの顔が強ばった。

これってもしかして……。

黄金「もしかしてみゆきちゃん、今日が

   母の日だって事……」

と、私が聞くと……。

 

みゆき「わ、忘れてた~~~!!」

4人「「「「え?……え~~~!?!?」」」」

黄金「あちゃ~~」

戸惑い絶叫するみゆきちゃん。更に驚くあかね

ちゃん達。私は額に手を当てながら苦笑を

浮かべるのだった。

 

 

一方、ウルフルン達の基地では……。

ジョーカー「これは一体、どういうことですか?」

静かながらも、怒気を孕んだ声で空っぽの、

ポッドが置かれていた場所を見つめる

ジョーカー。そんな彼の後ろでは、ウルフルン、

アカオーニ、マジョリーナが立たされていた。

 

     「G3が転送され、しかもプリキュア

      の味方になった、と?」

普段は敬語を使うジョーカーだが、今日ばかりは

高圧的だ。

アカ「あ、あれはウルフルンが悪いオニ!

   何度もポッドを叩くからオニ!」

ウル「あっ!?テメェ何チクってんだよ!」

マジョ「あれは100%ウルフルンのせい

    だわさ!」

ウル「んだとぉ!?」

と、3人が内輪もめをしている声を聞きながら、

ジョーカーは静かに舌打ちした。そして、

3人の方に振り返った。それだけで3人は

ピタリと止まる。

しかし……。

 

ジョーカー「もう良いです。過ぎたことを

      気にしても始まりません」 

そう言って、ジョーカーは3人の傍を通り過ぎる。

     「こうなったら、残ったG4に

      より強力な洗脳を施します。

      しかしその分、実戦で使えるように

      なるのには時間が掛かりますので、

      それまでは皆さんでプリキュアの

      相手をして下さい。ではこれで」

とだけ言い残して、ジョーカーは部屋を後に

した。しかしジョーカーは廊下を歩きながら……。

     「……役立たず共め」

侮蔑と軽蔑、嘲りを込めてそう呟くのだった。

 

 

戻って地球。みゆき達はと言うと……。

 

 

あの後、みゆきちゃんは急いで帰宅。私も

出来上がったクッキーを手に本棚の扉から

帰宅。下の階のレストランへと向かう。

しかしどうやらお店には結構な数の

お客さんが居て、何だかお母さんも

お父さんも大変そう。

う~む。これ、今行くと色々大変そう。

これはお店を閉める夜まで待った方が

良いかも。

そう考えた私は、自分の部屋へと戻った。

 

でもそこには……。

黄金「あれ?サファイヤ?どうしたの?」

本棚の扉を使ってきたのか、サファイヤが居た。

サファイヤ「うん。私、やっぱりお母さんに

      何かしたくて。今日、母の日、

      なんでしょ?」

どこか不安そうな表情で居るサファイヤ。

黄金「そうなんだけど……」

正直、私には母というものがまだよく

分からない。どちらかと言えば、私自身が

お母さんにありがとうを言う側だからね。

いきなりそれを言われる側になったって

戸惑っちゃう。

 

  「ごめんねサファイヤ。私はまだ、

   お母さんって言うのがよく分かんない

   んだ」

サファイヤ「え?」

私は、首をかしげるサファイヤをベッドに座らせ、

自分もその隣に腰を下ろした。

 

黄金「確かに私は今、サファイヤの姉でありママ

   かもしれない。でも、私はまだ子供なんだ。

   だから、私はまだちゃんとしたママじゃ

   無いかもしれない」

サファイヤ「……そんな事ないよ。ママは、立派な

      ママだよ?」

黄金「そう?」

サファイヤ「うん。だって、私を、娘として、妹

      として、迎え入れてくれたんだもん。

      ……こんな、兵器の、私を」

……兵器、か。

サファイヤは、そう呟くや否やどこか暗い顔

をしている。

だから、こんな時こそ私の出番だ。

   『ギュッ』

黄金「何言ってるのサファイヤ。サファイヤは

   兵器なんかじゃない。私達の、

スマイルプリキュアの大切な仲間で、

私の妹であり、娘なんだから」

私はサファイヤを抱き寄せ、頭を優しく

撫でながら教えるように優しく語りかける。

すると……。

 

サファイヤ「やっぱりだ」

黄金「え?」

サファイヤ「そうやって、優しく私を守って

      くれる。だから、黄金が私のママ

      なんだよ」

そう言って、サファイヤは紅い瞳で私を

見上げる。

その瞳に、私は苦笑する事しか出来なかった。

黄金「そ、そうかな~?」

サファイヤ「うん。そうだよ。そして、だからこそ

      私はママに、ありがとうって気持ちを

      伝えたい」

そう言って、サファイヤは逆に、私の腕を抱き、

体をすり寄せてくる。

黄金「う~~ん」

とは言え、どうしたもんかと唸る私。

 

やがて、思いついた。

  「あ、そうだ。ねぇサファイヤ。じゃあ

   母の日のプレゼント、って事で私のお願い

   を一つ聞いてくれないかな?」

サファイヤ「お願い?何?」

 

黄金「それはね。私とデートしよ」

 

その後、私達はふしぎ図書館を経由して家を

出た後、商店街へ向かった。

さっきはデートとか言ったけど、まぁ実際

には町のことをまだよく知らないサファイヤ

に色々案内してあげようと思っただけ

なんだよね。

 

私達はいろんな場所を歩き回った。本屋や

ペットショップをウィンドウショッピングしたり、

アイスクリーム屋さんで二人してアイスを

食べたりしていた。

そして、ある程度町を回り終わった時、私達は

公園のベンチに並んで座っていた。

 

「ん~~。は~~。いや~歩いた歩いた~」

私は伸びをして、隣に座るサファイヤの方を

向く。

  「どうだったサファイヤ?町を歩いてみて」

サファイヤ「うん。凄く、色んな物があった。

      色んな人がいた。だから、びっくり

      してる」

サファイヤは、目をキラキラさせながら静か

だけど、それでも熱く語っている。

……彼女は、兵器として奴らに創られた存在。

でも、初めて見る物に驚き、心奪われている

姿は、人間と同じ。そうだ。この子は人間と

何ら変わらない。私の妹で、娘だ。

 

今なら、母性というものがどういうものか、

ちょっと分かる気がした。

 

     「でも、お母さんはその、良かったの?」

黄金「ん?何が?」

サファイヤ「これってプレゼントになるの?だって、

      お母さんのお金使っちゃったし、

      私、お母さんに何もあげられてない

      気がする。やっぱり何か……」

黄金「良いの。そう言うのは」

そう言って、私はサファイヤの言葉を遮る。

 

  「母の日はね、お母さんに『いつも

ありがとう』って言う思いを届ける日

なの。何かをプレゼントする事は、

その思いを伝える方法であって、目的

じゃない。だから私、思うんだ。

母の日は、プレゼントを贈る日じゃない。

思いを贈る日なんだって」

サファイヤ「思いを、贈る」

彼女は、私の言った言葉を理解しようとしている

のか、同じ言葉を繰り返す。

 

その様子を見ていたけど、流石にもう私の

お財布の中身がギリギリだし……。

黄金「そろそろ行こっか」

サファイヤ「あ、うん」

私が立ち上がり、手を差し出すとサファイヤは

その手を取って立ち上がった。

 

   『プルルルルッ!』

と、その時、私のポーチに入っていたケータイ

から着信音が鳴り響いた。

黄金「あれ?電話?」

私はポーチからケータイを取り出して通話

ボタンを押す。

  「はい?もしもし?」

みゆき「黄金ちゃ~~ん!ヘルプ~~!」

電話に出た途端、向こうから聞こえるのは

みゆきちゃんの声だった。

黄金「ど、どうしたのみゆきちゃん?

   何か悩み事?」

みゆき「うん!そうなの~!お願い私の

    特技を教えて~~!」

黄金「……………。えぇ?」

は、話が全然見えてこない。

 

 

電話ではしょうが無いので、私とサファイヤは

すぐにふしぎ図書館のログハウスに向かった。

で、そこで話を聞く私達。

 

  「成程。事情は分かったよ。つまり、お金が

   無くて一旦はプレゼント諦めたけど、

   家事が色々ヤバくて、皆が何かを創って

   いるのを見て、プレゼントを自作しよう、

   って事で良いのかな?」

みゆき「うん!それでね、自分の特技を生かした

    物を作ろうと思ったんだけど……」

黄金「みんながそれについて答えられなかった、と」

みゆき「そうなの~!私でも分かんないし~!

    黄金ちゃん、私に特技ってあるの~!?」

 

そう聞かれ、私は頭を悩ませる。

特技、みゆきちゃんの特技か~。

家事全般はさっき失敗したとか言ってたし、

う~ん。みゆきちゃんがよく知ってるのは……。

 

黄金「童話。……あ、絵本」

みゆき「え?何々?何か思いついたの黄金ちゃん!」

黄金「あ~。うん、思いついたって言えば

   思いついたんだけど……」

みゆき「何々!?お願い聞かせて!」

黄金「あぁうん。みゆきちゃんってさ、童話とか

   が好きだよね?もっと言えば絵本とか」

みゆき「うんうん!」

黄金「ふと思ったんだけど、そんな感謝の気持ちを

   絵本にして書いて、お母さんにプレゼント、

   って言うのも悪く無いかな~と思った、

   んだけど……」

みゆき「だけど!?」

黄金「その、ね?時間が足りないかな~って」

みゆき「はっ!?」

 

私の言葉に、みゆきちゃんは息を呑みしばらく

固まったあと、がっくりと項垂れてしまった。

れいか「確かに、今からですと絵本を創る時間

    はとても……」

なお「無い、よねぇ?」

私の言葉に、皆がう~んと唸りながらも頷く。

黄金「ごめんねみゆきちゃん。今はそれくらい

   しか思いつかないや」

みゆき「う、ううん。ありがとう黄金ちゃん。

    でも、どうしよ~」

悩み、机に突っ伏すみゆき。ふと、彼女が横を

向くとキャンディがいた。

   「あっ」

その時、みゆきの目にキャンディが首に下げた

お手製のネックレスが映った。

   「それだぁっ!」

ガバッと起き上がり、キャンディを、正確には

その首のネックレスを指さすみゆき。

 

 

その後、みゆきちゃんはネックレスを創る事に

して、なおちゃんからのアドバイスでチャームは

自作する事に。

粘度からチャームを成形し、絵の具で着色して

いく。

しかし、みゆきちゃんは出来上がったネックレス

のチャームの部分が思ったように出来なかった

事から若干落ち込み気味。

一度は渡すのを止めようか、とか言ってたけど、

周りの皆のアドバイスでメッセージカードを

添える事に。

早速私達7人とキャンディはメッセージカード

のあるお店に向かった。

 

そして、皆してメッセージカードの棚を見ていた

時。

 

『キィィィィィンッ!』

黄金「ッ!?この感覚っ!?」

頭の中に響くいつもの警告音。

サファイヤ「お姉ちゃんっ!」

更にサファイヤもG3としての力で気づいた

のか、険しい表情を浮かべる。

キャンディ「ウルフルンクル~!」

更にキャンディも気づいたのか慌て出す。

 

黄金「あっちっ!」

お店を飛び出し、駆けつけた先では、ウルフルン

がバッドエンドエナジーを集めていた。

そしてその傍の花屋さんでは、母の日を

カーネーションを買いに来た人達が皆

無気力になってしまっている。

 

みゆき「酷い……!皆、行くよ!」

 

みゆきちゃんのかけ声で皆がスマイルパクト

を取り出す。

サファイヤ「ママッ!私も!」

黄金「ッ!?」

変身しようとする私。そこに飛んでくる

サファイヤの言葉に、一瞬迷う。

 

サファイヤ「私、自分で決めた!私はママや

      みゆきちゃん達を守りたい!

      だから!」

……余計な心配だったな。と私は思う。

黄金「行こう!サファイヤ!」

サファイヤ「ッ!うんっ!」

 

皆がスマイルパクトを取り出し、プリキュア

へと変身していく横で私もオルタリングを

召喚し、叫ぶ。

黄金「変身っ!!」

サファイヤ「G3システム、解放!」

 

私がオルタリングを叩いてアギトに変身する

横で、サファイヤもまた魔法陣を展開し、鋼鉄

の装甲を纏って行く。

 

ハッピー「キラキラ輝く未来の光!キュアハッピー!」

サニー「太陽サンサン熱血パワー!キュアサニー!」

ピース「ピカピカぴかりん♪じゃんけんポン♪

    キュアピース!」

マーチ「勇気リンリン直球勝負!キュアマーチ!」

ビューティ「しんしんと降り積もる清き心!キュアビューティ!」

アギト「神が生みし悪を断つ戦姫!キュアアギト!」

6人「「「「「「6つの光が導く未来!輝け!スマイルプリキュア!」」」」」」

 

G3「G3システム、起動完了。戦闘態勢に移行します」

 

私達の名乗り。更にG3が独特な言い回しで

準備完了である事を告げる。

 

ウル「ちっ!現れやがったなプリキュアと

   裏切り者のG3!今日の俺は

   苛ついてだ!赤っ鼻でやってやる!

   出でよ!アカンベェ!」

 

ウルフルンが手にした赤っ鼻を使うと、

カーネーションをベースにしたアカンベェが

現れた。

 

ハッピー「私の創ったネックレス、お願いね!」

キャンディ「クルッ!」

ハッピーは創ったネックレスをキャンディに

託して下がらせる。

 

ウル「やっちまえぇ!」

   『アカン、ベェ!』

奴の命令に従い、アカンベェは体の一部、

鋭くなった葉っぱをカッターのように

打ち出してくる。

それを避け、まずはマーチがキックを

放つが、蔦の触手に弾かれ、サニーは

花の部分で掴まれ投げ返されてしまう。

左右から攻撃するビューティとピース。

しかし、花の部分から放たれた花粉でくしゃみ

が止まらなくなり、攻撃どころじゃなくなる。

そこにアカンベェが葉っぱカッターを放とう

としてくる。

 

G3「させない!アーマメントモジュール

   展開!」

彼女が右手を横に向けると、魔法陣が現れ

武器を収めた箱、アーマメントモジュール

が現れた。

  「GM-01!アクティブ!」

彼女が叫ぶとボックスが稼働し、中から

拳銃型武装、スコーピオンが現れた。

 

   『ベェッ!』

G3「撃ち落とす!」

放たれた葉っぱカッターをG3のスコーピオン

の銃弾が撃ち落とす。

ハッピー「はぁぁぁぁぁぁっ!」

そこに飛びかかったハッピーは、2本の蔦を

まとめて抱くようにして一度は押さえ込むが、

怒ったアカンベェが蔦を振ってハッピーを

弾き飛ばしてしまった。

 

 

アギト「ハッピー!」

私は咄嗟に着地したハッピーのフォローに

入る。

   「大丈夫?」

ハッピー「へーきへーき!」

キャンディ「ハッピー!頑張るクル!」

ハッピー「うん!任せて!」

キャンディの応援に笑みを浮かべながら応える

ハッピー。しかし、キャンディのその姿を

気に入らないウルフルンは、キャンディごと

プリキュアを攻撃するようにアカンベェに

命令する。

   『アカンベェッ!』

アカンベェの蔦の触手が伸びてくる!

 

アギト「逃げてっ!」

私が叫ぶと、ハッピーがキャンディを抱えて

跳躍する。

 

しかし、その拍子にキャンディが抱えていた

ネックレスが地面に落ちてしまう。

   「しまったっ!?ネックレスが!」

建物の上に着地した私が、反転して

取りに戻ろうとする。けどそれより早く、

ウルフルンがネックレスを拾い上げる。

 

ウル「何だぁこりゃぁ?」

ハッピー「あぁ!お母さんへのプレゼントが!

     返して!」

咄嗟に飛びかかるハッピー。が、ウルフルンは

それを軽く避け、アカンベェの元へ飛ぶ。

ウル「プレゼントだぁ?テメェもそんな

   下らねぇ事してんのか?」

マーチ「何だって!?」

ピース「ハッピーが一生懸命創ったのに!」

奴の言い分に抗議するマーチやピース。

しかし、奴はそんな言葉などどこ吹く風と

言わんばかりに笑う。

 

ウル「テメェが創ったのかよ!どうりで

   やたら下手くそだと思ったぜ!」

ッ!あいつっ!ウルフルンの言い分に

私の中で血が沸き立つ。

  「こんなもん、貰って喜ぶ奴が

   いるのかよ?」

ウルフルンの言葉がハッピーの心を抉る。

 

 

そして、その場で一番早く動いたのは、

ウルフルンの言葉を否定しようとしたピースでも。

奴の言葉に納得しそうになったハッピーでも。

激高しそうになっていたアギトでも無い。

 

   『ダァァンッ!!』

突如、一発の銃声が響き渡った。

ウル「ぐあっ!?」

空を割いて飛んだ銃弾はウルフルンの手を弾く。

その拍子にネックレスが宙を舞う。

 

そして、それをキャッチしたのは……。

G3「ハッピー」

ハッピー「じ、G3ちゃん」

銃声の主、G3だった。

 

G3「私ね。さっきお母さんに教えて貰った

   んだ」

G3は、ネックレスをハッピーに差し出しながら

静かに話し始める。

  「今の私はお母さんの娘。だから、何かを

   プレゼントしなきゃって思った。

   でも、私にはまだ、何も無かった。

   そんなとき、お母さんが言ってくれた。

   母の日のプレゼントは、お母さんに

   感謝の気持ちを伝える為の方法の一つ

   に過ぎないって。母の日は、プレゼント

   を贈るためにあるんじゃない。

   思いを贈るためにあるんだって」

ハッピー「思いを、贈る」

 

G3「だから、これは、ハッピーの思いが

   籠もった、大事なプレゼントだから」

そう言って、G3はスコーピオンを足にあった

ホルスターに収めると、左手でハッピーの

右手を持ち上げ、彼女の手に右手に持った

ネックレスを置いた。

 

  「どれだけ不器用でも良いと、私は

   思う。だって、重要なのは形じゃない。

   どれだけ、ハッピーの心が、想いが

   籠もっているかが重要なんだよ」

ハッピー「想い」

G3「そうだよ。これには、ハッピーの想いが

   詰まってる。ガラクタなんかじゃない。

   だから……」

G3の言葉に、ハッピーは自分の右手の

ネックレスに視線を送る。

 

ウル「何をごちゃごちゃと訳の分かんねぇ

   事を!アカンベェ!」

しかし、そこにアカンベェが蔦の触手を

伸ばしてきた。

アギト「不味いっ!」

咄嗟に私がフォローしようとした時。

 

G3「GS-03」

ポツリとG3が呟いた。

 

次の瞬間、アーマメントモジュールから

何かの武器が出てきて、射出された。

 

G3「ふんっ!」

射出されたそれが、G3の右腕に合体する。

武器が相当重かったのか、合体した衝撃で

G3の右腕が僅かに後ろに下がる。

 

そこまで触手が迫る。でも……。

  「アクティブ」

右手を振って、武器の折りたたまれていた

刃を起立させるG3。

  『ギュィィィィィィィィンッ!』

そして、大型振動ブレード、デストロイヤー

の一撃が迫っていた蔦の触手を真っ正面から

真っ二つに切り裂いた。

花弁と花粉、蔦だった植物片が周囲に飛び散る。

 

  「私は、本気で戦う」

G3が、目元を覆うバイザー越しにアカンベェ

を睨み付ける。

そんな彼女を見て、私は小さく笑みを浮かべた。

アギト『全く。頼もしい娘だことで』

そして、私は心の中でそんな事を考えていた。

 

   『さて、と。私も見てるだけって訳には

    行かないよね!』

   『カチッ!!』

私はベルトのスイッチを叩き、フレイムフォーム

となってベルトからフレイムセイバーを

引き抜く。

 

ウル「ちっ!?アカンベェ!さっさと奴らを

   やっちまえ!」

   『アカンベェ!』

奴の命令に従い、葉っぱカッターを放ってくる

アカンベェ。

 

アギト「そんな、のっ!」

しかし、それを私が切り捨てる。

   「何度も通じると想わないでよね!」

そして、私はそのまま迫り来る攻撃を

切り払い続ける。

そして、僅かに後ろに目をやれば、そこでは

ハッピーが決意に満ちた表情でネックレスを

見つめていた。

 

 

ハッピー「大切なのは、形じゃない。想いなんだ」

彼女は、静かにネックレスを見つめると、次に

傍に立つG3へと視線を向ける。

    「ありがとうG3ちゃん。おかげで

     私、大事な事が分かった気がする」

G3「ううん。お礼なんていらないよ。だって、

   私はもう皆の仲間だから。私もお母さん

   と同じ。大切な人を守りたい。だから、

   私も皆の力になりたいって想った。

   それだけだよ」

ハッピー「そっか。ありがとう、G3ちゃん」

G3「うん。どういたしまして!」

 

 

G3は、ハッピーと笑みを浮かべ合う。

   『アカンベェッ!』

アギト「ッ!?しまっ!ぐっ!?」

しかし、そちらに一瞬気を取られた私は

アカンベェの残った一本の蔦の触手に

弾き飛ばされ、皆の傍に強制的に下げられた。

 

その時。

ハッピー「アギト!」

不意に後ろから声を掛けられた。振り返ると、

そこには決意の表情を浮かべたハッピーの

姿があった。

その姿に、私はフレイムセイバーを振って

気合いを入れ直す。

 

アギト「露払いは任せて。トドメはお願い」

ハッピー「うん!」

G3「お母さん」

頷くハッピー。そこに近づいてくるG3。

  「私も行くよ」

アギト「えぇ。そうだね。……行くよっ!」

G3「うんっ!」

 

私達は縦に並んで駆け出す。

ウル「ちぃっ!?アカンベェ!まずはそいつらを

   やれ!」

   『アカンベェ!』

残された蔦の触手が向かってくる。でも!

アギト「はぁっ!」

   『ガキィィィンッ!』

フレイムセイバーの一刀で蔦を逸らす!

   「G3!」

G3「任せて!」

次の瞬間、私を飛び越えたG3のデストロイヤー

が振り下ろされ、蔦をぶった切る。

ウル「何っ!?」

 

   『アカンベェ!』

そこに葉っぱカッターが飛んでくる。

しかし今度は私がG3と入れ替わり、炎を

纏ったフレイムセイバーで全部切り払う。

  「く、クソッ!」

明らかな劣勢に狼狽するウルフルン。

 

そして……。

ハッピー「私、分かったんだ。母の日はお母さん

     にありがとうって気持ちを伝える日。

     だから、プレゼントのできが悪いとか

     じゃない。私は、お母さんにこの

     気持ちを伝えるんだ!」

アギト「行けッ!ハッピー!」

 

私の声を合図として、ハッピーが大きく飛び上がる。

ウル「バカが!空中じゃ良い的だぜ!アカンベェ!」

   『アカンベェ!』

奴らはハッピー目がけて葉っぱカッターを放つ。

   『ドキュンドキュン!』

アギト「はぁ!」

ウル「何ぃ!?」

しかしそのカッターを、G3のスコーピオンの

射撃と、フレイムセイバーを振って放った炎の

斬撃派が撃ち落とす。

 

アギト「やらせるわけ、無いでしょ!」

笑みを浮かべる私。そして、それだけで十分

だった。

 

ハッピーが大技を放つには……。

 

ハッピー「プリキュア!ハッピーシャワー!!」

空中から降り注ぐように放たれた桃色の光。

その光はアカンベェを浄化した。

それを確認した私達は息をつき、あの狼も

撤退したのか、バッドエンド空間が消滅した。

 

 

戦いが終わった後、私達は商店街のベンチに

座っていた。みゆきちゃんは、所々欠けて

ボロボロになったチャームのネックレスを

前に苦笑していたが、そこに現れたみゆきちゃん

のお母さんに、無事ネックレスを渡す事が

出来た。

ネックレスを嬉しそうに受け取るみゆきちゃん

のお母さんに、私達も自然と笑みがこぼれる。

 

そして、私達はお母さんと一緒に帰っていく

みゆきちゃんを見送った後、解散となった。

そんな帰り道。私はサファイヤと家に向かっていた。

サファイヤは、私の家から本棚でふしぎ図書館

に帰そうと思って居たからだ。

 

サファイヤ「お母さん」

黄金「ん?なぁに?」

サファイヤ「私、来年はお母さんに何かプレゼント

      する。私もお母さんにありがとうって

      想いを伝えたいから」

黄金「そっか。じゃあ、期待して待ってるよ」

サファイヤ「うん!任せて!」

笑みを浮かべるサファイヤ。そして私も笑みを

浮かべる。私達は夕暮れの道を、手を繋いで

歩く。

 

私はその日、母というものがどういう存在

なのか、少しだけ分かった気がしたのだった。

 

     第15話 END

 




相変わらずの亀更新ですが、楽しんで頂ければ幸いです。

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