ストライク・ザ・ブラッド the Garden of sinners   作:蒼穹の命

2 / 8
プロローグ①

 物語を始める前に、まずは1人の少年の話をしよう。

 

 その少年は恵まれていた。

 

 生まれついての天賦の才。

 

 先祖代々続けていた剣の道、勉学等に励み、沢山の友人がいた。

 

 だが1つだけ恵まれなかった。

 

 少年は生まれつき、体が弱かった。

 

 原因不明の病を患い、長い時をベッドの上で病と闘いながら過ごし、静かに息を引き取った。

 

 死んだ少年の魂は辿り着いた。

 

 全てがあるのに何も無い。生と死の境界。

 

 全ての始まりであるがゆえに、その結果で世界の全てを導き出せるもの。最初にして最後を記したもの。

 

 この一端の機能を指してアカシックレコードとも呼ばれている。

 

 それは少年の知識を、記憶を、生きて来た軌跡を記録し、少年の魂から「少年」という余分な存在を消去しようとした。

 

 名前が、友人の顔が、両親の顔が、少年の記憶が消されていく。

 

 だが少年は抗った。

 

 抗ってしまった。

 

 これ以上失いたくないと。

 

 自身の記憶を、思いを、これまでの全てを奪うな‼と。

 

 自分は、自分のままでいたい‼と。

 

 その結果、少年は多くのものと引き換えに「 」と繋がり、消滅を免れた。

 

 だが少年は境界からは出られなかった。

 

 何故なら、少年は死んでいるため肉体がない。

 

 魂だけでは境界から出る事は無理だった。

 

 だから創った。自らの肉体を。

 

「 」と繋がった少年は膨大な知識と、根源という素材から新き自分(肉体)を創りあげた。

 

 そして、少年は境界を越えた。

 

 生まれて、生きて、死んだ、自身の世界とは別の次元へと落ちていった。

 

 落ちた先はどこかの草原だった。

 

 辺りには人も建物もなく、ただ草が広がっていた。

 

 まずは誰かを、何かを探そう。

 

 自分は世界の理に逆らってまで生きたいと願い、叶えてしまったのだから。

 

 だからまず、歩くことから始めよう。

 

 少年は立ち上がり、一歩ずつ歩き始めた。

 

 歩いて、歩いて、歩いて、歩いて。

 

 沢山歩いた。

 

 それでも誰もいない、何もない。

 

 変わらない景色を見て、少年の心は折れ始めた。

 

 痛くて、苦しくて、悲しくて、寂しくて。

 

 沢山の負の感情に押し潰されて、少年は地面に倒れ込んだ。

 

 自分以外誰もいない、綺麗なお月様が照らしている、草むらの海の中で溶けて消えてしまいそうだった。

 

 けれど、そんな時。

 

「こんな所で何をやっている」

 

 と、後ろから、女の人の声が聞こえた。

 

 少年は女の人が言っている意味がよく分からなかった。

 

「ただでさえ、そんな小さいなりをしているんだ。こんな所で倒れていたら見えなくなるのが分からないのか? 危うく邪魔だから吹っ飛ばす所だったぞ」と言われた。

 

 …………少しカチンと、頭にきた。

 

 立ち上がった少年は声がした方向に向いた。

 

 そこには、お月様を背に、黒い日傘と服を着た少女がいた。

 

 それを見た少年は、君だって小さいじゃないかと言った。

 

 その瞬間、少女が持っていた扇で叩かれ、そのまま正座させられて、クドクドと説教された。

 

 足が痺れてきた頃に漸く終わり、改めて少女に問われた。「こんな所で何をしていた」と。

 

 少年は全て話した。

 

 まるで熱にうかれたかのように、一から全部包み隠さず。

 

 この世界に落ちてから、初めて会った人だったからかもしれない。

 

 それを聞いて、少女はしばらく黙り込んだ後、口を開けて「お前はどうしたい」と聞かれた。

 

 1人になりたくない、何もない所にいたくない。

 

 ここではない何処かに行きたいと言った。

 

「ならば、私の所に来い」と手を差し伸べられた。

 

 少年は迷わず、少女の手をとった。

 

 少年は少女と共に草原を、海を、空を越え、人の手によって造られた、人と魔に属するもの達がいる常夏の島に行った。

 

 その後少年は、少女から姓を与えられ、この世界の人間として生きて行くことになった。

 

 南宮織(みなみやしき)と言う1人の人間として──ー

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。