ストライク・ザ・ブラッド the Garden of sinners 作:蒼穹の命
物語を始める前に、まずは1人の少年の話をしよう。
その少年は恵まれていた。
生まれついての天賦の才。
先祖代々続けていた剣の道、勉学等に励み、沢山の友人がいた。
だが1つだけ恵まれなかった。
少年は生まれつき、体が弱かった。
原因不明の病を患い、長い時をベッドの上で病と闘いながら過ごし、静かに息を引き取った。
死んだ少年の魂は辿り着いた。
全てがあるのに何も無い。生と死の境界。
全ての始まりであるがゆえに、その結果で世界の全てを導き出せるもの。最初にして最後を記したもの。
この一端の機能を指してアカシックレコードとも呼ばれている。
それは少年の知識を、記憶を、生きて来た軌跡を記録し、少年の魂から「少年」という余分な存在を消去しようとした。
名前が、友人の顔が、両親の顔が、少年の記憶が消されていく。
だが少年は抗った。
抗ってしまった。
これ以上失いたくないと。
自身の記憶を、思いを、これまでの全てを奪うな‼と。
自分は、自分のままでいたい‼と。
その結果、少年は多くのものと引き換えに「 」と繋がり、消滅を免れた。
だが少年は境界からは出られなかった。
何故なら、少年は死んでいるため肉体がない。
魂だけでは境界から出る事は無理だった。
だから創った。自らの肉体を。
「 」と繋がった少年は膨大な知識と、根源という素材から新き
そして、少年は境界を越えた。
生まれて、生きて、死んだ、自身の世界とは別の次元へと落ちていった。
落ちた先はどこかの草原だった。
辺りには人も建物もなく、ただ草が広がっていた。
まずは誰かを、何かを探そう。
自分は世界の理に逆らってまで生きたいと願い、叶えてしまったのだから。
だからまず、歩くことから始めよう。
少年は立ち上がり、一歩ずつ歩き始めた。
歩いて、歩いて、歩いて、歩いて。
沢山歩いた。
それでも誰もいない、何もない。
変わらない景色を見て、少年の心は折れ始めた。
痛くて、苦しくて、悲しくて、寂しくて。
沢山の負の感情に押し潰されて、少年は地面に倒れ込んだ。
自分以外誰もいない、綺麗なお月様が照らしている、草むらの海の中で溶けて消えてしまいそうだった。
けれど、そんな時。
「こんな所で何をやっている」
と、後ろから、女の人の声が聞こえた。
少年は女の人が言っている意味がよく分からなかった。
「ただでさえ、そんな小さいなりをしているんだ。こんな所で倒れていたら見えなくなるのが分からないのか? 危うく邪魔だから吹っ飛ばす所だったぞ」と言われた。
…………少しカチンと、頭にきた。
立ち上がった少年は声がした方向に向いた。
そこには、お月様を背に、黒い日傘と服を着た少女がいた。
それを見た少年は、君だって小さいじゃないかと言った。
その瞬間、少女が持っていた扇で叩かれ、そのまま正座させられて、クドクドと説教された。
足が痺れてきた頃に漸く終わり、改めて少女に問われた。「こんな所で何をしていた」と。
少年は全て話した。
まるで熱にうかれたかのように、一から全部包み隠さず。
この世界に落ちてから、初めて会った人だったからかもしれない。
それを聞いて、少女はしばらく黙り込んだ後、口を開けて「お前はどうしたい」と聞かれた。
1人になりたくない、何もない所にいたくない。
ここではない何処かに行きたいと言った。
「ならば、私の所に来い」と手を差し伸べられた。
少年は迷わず、少女の手をとった。
少年は少女と共に草原を、海を、空を越え、人の手によって造られた、人と魔に属するもの達がいる常夏の島に行った。
その後少年は、少女から姓を与えられ、この世界の人間として生きて行くことになった。