ーオットーsideー
オットーは、静かに、しかし激しい雷電を纏った青年、ドクターからの情報から知らされた『雷の守護者のもう一つの姿』を見据えていた。
「下がりなさいG4部隊」
「君達では相手にならない」
『・・・・・・・・』
オットーとディードが下がるように言うと、G4部隊は一瞬不服そうな態度を取るが、ケルベロスを構えたまま二人の後ろに下がった。
「ーーーーやれやれ、オットーにディード。君達が俺の相手になるのかい? 」
「随分と馴れ馴れしい態度ですね?」
「僕達と君は敵同士なんだよ? そんな友達感覚で話しかけないでもらいたい」
自分達の事を“敵だと思っていないような態度”に、オットーとディードは不快そうに顔を歪めて鋭く睨みつける。が、『雷の守護者』は欠片も怯まず、やれやれと肩を落とす。
「ま、“今はそうだね”。・・・・クロームさん。ミスシャマル。ザフィーラ」
「ん?」
不意に、『雷の守護者』が『霧の守護者』達に話しかけた。
「オットーとディードは『陽動』です。本命の『ルーテシアちゃん』がヴィヴィオを狙ってる。もう隊舎に侵入している筈ですよ」
「「っっ!!??」」
『ルーテシア』の名を呼び、さらに自分達が実は『陽動』で、本当の目的である『聖王の器』の事を話し出し、ビクッと身体を揺らすオットーとディード。
「『ルーテシア』・・・・?」
「ヴィヴィオを発見した日に、獄寺氏達が遭遇した紫の髪をしたチャーミングなリトルレディですよ」
「っ!? あの子が・・・・!?」
「ヴィヴィオを狙っているだと!?」
「ヴァイスさんがいますけど、足止めは期待できないでしょうから、急いで向かって下さい」
「(コクン!) ザフィーラ、時間制限があるからランボくんの側にいて!」
「分かった」
『雷の守護者』の言葉に頷いた三人だが、ザフィーラは残り、クロームとシャマルが隊舎に向かおうとした。
「ルーテシアお嬢様の元へはーーーー」
「行かせない!!」
オットーとディードは急いで『雷の守護者』と『盾の守護獣』を越えてを二人を追撃しようとした。
がーーーー。
「残念だね、『電撃コイル角‹コロナ・モッラ・エレットロ・ショック›」
「「っっ!? うわぁぁぁぁっ!!??」」
『雷の守護者』が鎧の胸にあるボタンを上に上げると、兜の大きな角が渦状に巻かれ、その中にコイルが伸びてきて、『雷の死ぬ気の炎』のような電流が流れたその瞬間、オットーとディードの身体ーーーーもっと詳しく言えば二人の『IS』と『体内の機械』が引っ張られ、『雷の守護者』に引き寄せられていく。
「な、何だこれは!?」
「か、身体が、引き寄せられる・・・・!? オットー! G4達が!?」
「っ!!」
地面に四つん這いになり、手と足とつま先で地面を掴み、かなり無様な姿ではあるが引き寄せられないように耐えているオットーだが、自分と同じ様に四つん這いで踏ん張っているディードに言われ、G4達の方に視線を向けると、G4達も身体を這い蹲らせて、引き寄せられないようにしていた。
「『雷の死ぬ気』、雷、電気・・・・そうか! あの『雷の守護者』は、『磁力』を発生させて、私達の体内の機械や、G4達のアーマーを引き寄せているんです!」
「何っ!?」
ディードの推察に、オットーは初めて目を見開いた。戦闘機人である自分達ナンバーズの身体には、肉体強化や身体能力向上の為の機械が埋め込まれている。
ソレが磁力の影響を受けて引き寄せられているのだ。全身機械の鎧であるG4達など、ナンバーズ以上に影響を与えられているのだろう。
そしてオットーは、この任務に赴く際、ドクターから言われていた事を思い返していた。
「っ、ドクターが言っていたね・・・・・」
【ーーーー『聖王の器』の回収の他に、もしも機動六課隊舎に『雷の守護者』が居れば、始末するか、再起不能にしてくれたまえ。あの守護者は君達戦闘機人のーーーー『天敵』となる存在だ】
その言葉を聴いて、正直意味がよく分からなかったが、今なら分かる。
ーーーー『電撃』に『電磁力』。
どれも戦闘機人である自分達とは絶望的に相性が悪すぎる。もしもこの守護者を放置してしまえば、『アレ』が完成した時、間違いなくこの守護者が『最大の脅威』となる。
「ーーーーディード」
「ええ。この守護者は、今ここでーーーー確実に仕留める!」
「!」
オットーとディードは、是が非でも雷の守護者を始末しようと、リングを取り出し嵌め、気合を込めるとーーーー『嵐の死ぬ気の炎』が放出された。
ー大人ランボsideー
「(やれやれ・・・・オットーとディードも本気になったか・・・・)」
大人ランボは平然としつつも、内心ため息を吐いていた。
『この後の展開』は、『三年前』に目の前で戦っている“オットーとディード本人達から聞いているが”、いざやろうと思うと気が滅入る。大人ランボは基本フェミニストだ。女性に対して、あまり暴力的な行為はしたくない。しかし、ここで二人を見逃せば、クロームは兎も角、シャマルとザフィーラが危険だ。
「(『十年バズーカの弾』の効力は後三分足らず。さっさと終わらせなければな・・・・)」
と、思っていると、オットーとディードが『嵐の死ぬ気の炎』をリングに灯すと、懐からなんとーーーー匣‹ボックス›兵器を取り出したのだ。
「「ーーーー開匣!」」
ドンッと二人が炎を箱に押し当てると、匣‹ボックス›兵器が飛び出してきた。
オットーの前に現れたのは、『嵐の死ぬ気の炎』を纏った大きなマンモスが大地を少し陥没させて現れた。
ディードの前に現れたのは同じく『嵐の死ぬ気の炎』を纏った牛丼と同じ牛のバッファローが前足で地面を削る。
「大嵐マンモス‹マンムト・グランデ・テンペスタ›!」
「嵐バッファロー‹ブーファロ・ヴェッロ・テンペスタ›!」
『ーーーーパォォォォン!!』
『ーーーーモゥゥゥゥッ!!』
大人ランボの鎧の角にも負けない程に雄々しい牙と角をした二頭が、今にもその『分解』の力を宿した武器を向けて突進してきた。
「やれやれ。こりゃぁ、手加減は難しいな!」
すると、大人ランボは磁力を消すと、全身に『雷の死ぬ気の炎』を纏い、激しく帯電するが、マンモスもバッファローも、一度突進すると止まる事のない動物達、左右に逃げようにも、既に逃げ道にはオットーとディードがISを構えて迫ってきていた。
「ーーーー少し痛い目に合ってもらうが、安心しな。未来で君達は、素敵な笑顔を浮かべて日々を過ごしている。その笑顔を守る為に、俺達は『仮面の戦士達』と共に戦えるのさ」
「「えっ?」」
大人ランボの言葉に、オットーとディードは小さく声を発すると、大人ランボは帯電していた稲妻を一気に放出した。
「ーーーー『雷の角‹コルナ・フールミネ›』!!!」
ーーーーピシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!
『モォォォォっ!?』
『パォォォォッ!?』
「うわぁあああああああ!?」
「ああああああああああ!?」
『っ!!』
嵐マンモスと嵐バッファローは緑色の電撃を受けて、アニマル達は倒れ、G4部隊も僅かに電撃を受け、マトモに受けたオットーとディードは盛大に地面に倒れた。
「ふぅ・・・・」
「気を抜くなランボ。まだ奴らがいる」
小さく息を吐く大人ランボに、少し回復したザフィーラが隣に立って指差すと、G4部隊が立ち上がり、ケルベロスを構えていた。
「やれやれ。アイツらの相手なんてしたくないんだが」
「ランボ。残し時間は?」
「恐らく後1分って所かな?」
「ソレではーーーー行くぞ!」
「ああ!」
大人ランボとザフィーラが、G4部隊へと向かった。
ーヴァイスsideー
そして、大人ランボが戦闘機人と戦っている頃。
飛び出していったランボを連れ戻そうとしていたヴァイスは、瓦礫を壁にしてやって来る旧型ガジェットを相手に戦っていた。機動六課に備え付けられている杖型デバイスを構えて旧型ガジェットの黄色のカメラアイを次々と狙い撃ち倒していく。
「よし、腕は錆び付いちゃいねえ!」
そうして再びデバイスを構える。
だがしかし・・・・。
「なっ!?」
そこには紫の髪をした小さな女の子が立っていた。 杖を持つ手が震え、照準がぶれる。ヴァイスは過去に起こった事が脳裏に蘇った。
ーーーー妹が人質に捕られてしまい、誤射してしまい、妹の目を射抜いてしまった事を。
「(違う! アレは俺の妹じゃない! こんな所で! しかもガジェットを引き連れて来てんだから、おそらく敵だ! 撃て! 撃つんだよヴァイス・グランセリック!! FWのガキ達よりもチビのランボだって飛び出していったのに、大の大人が何を昔の事を呑気に思い出して躊躇してんだよ!?)」
必死に自分を叱咤し、デバイスを握る手に力を込めようとするが、まるで力が入らず、そんなヴァイスに向かって、女の子は魔力弾を撃ち出し、ソレに当たった瓦礫に埋められてしまった。
「・・・・邪魔」
無様を晒した不甲斐ないヴァイスに向けて、女の子は冷淡に、そして無感情にそう言った。
が・・・・。
ーーーートン・・・・ヒュルルルル!
「っ!?」
突然響いた音と同時に、隊舎の床から蔦のような植物が生えてきて、女の子を拘束した。
「行かせないよ、ルーテシアちゃん」
「ヴァイスくん!」
クロームが幻術で、ルーテシアと呼ばれた女の子を捕まえ、シャマルが瓦礫を退かしてヴァイスに回復魔法をかけた。
「し、シャマル先生・・・・何で、ここに?」
「ランボくんが、あの女の子がヴィヴィオちゃんを狙っているって聞いてね。ヴァイスくんだと期待できないから助っ人に行ってくれって頼まれたのよ」
「あのクソガキ・・・・!」
自分は頼りにならないと、あのアホガキにベロベロバーされながら言われた様に感じ、ヴァイスが苛立たしげに拳を握ってブルブル震えるが、たった今、実際トリガーを引く手を緩め、無様を晒した手前何も言えなかった。
が、しかしーーーー。
「ーーーー何だ、何だ、なぁ〜んだ。存外早く出会えたなぁ? クローム・髑髏?」
「っ!? グロ・キシニア!?」
奥の方から声が聞こえ、ソコに目を向けると、傍らに気を失ったヴィヴィオを抱えた、グロ・キシニアがニンマリとした気持ち悪い笑顔で立っていた。