かてきょーリリカルREBORN   作:BREAKERZ

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この回で、1つの悲劇が起こった。


襲撃の裏側、無念の槍と憎悪の炎

ーゼストsideー

 

『戦闘機人ナンバーズ』が撤退し、地上本部の隔壁が解放されると、レジアス・ゲイズ中将は直ぐ様自屋に戻った。 窓の外では、大画面に表示されたジェイル・スカリエッティが、犯行声明を行っていた。

不遇な技術者達の恨みの一撃だの、自らが生み出した戦闘機人の自慢などを滔々と語るスカリエッティを、レジアスは忌々しげに睨みつける。

 

「ええい、何故、連絡が取れん!」

 

通信機をいじりながら、大声で怒鳴る。

「すでに回線を変えられているようです」

 

部下の女性が言った。娘であり地上本部三佐である『オーリス・ゲイズ』に他の部下達は被害の確認に奔走している。現在付き従っているのは、地味な容貌の部下の女だけ。

実はーーーースカリエッティとレジアスは裏で繋がっていた。

しかし、それはあくまで地上の平和を守る為に、レジアスがスカリエッティを利用しているだけで、その逆など決してあってはならない。 レジアスは肥え太った身体を揺すりながらイライラと歩き回る。

と、その時ーーーー。

 

「ーーーー久しぶりだな、レジアス」

 

「ーーーーぜ、ゼスト・・・・!?」

 

扉が外から開かれ、ソコから入ってくるのは、 レジアスのかつての友で、死んだ筈の『ゼスト・グランガイツ』であった。

その姿を見た瞬間、怒り、焦燥に駆られていた心が冷え切ってしまい、まるで幽霊を見たかのように顔が青ざめた。

 

「ゼスト、何故、お前が?」

 

「お前に聞きたい事があって来た」

 

ゼストは大股でレジアスに近づいていく。相棒のアギトには邪魔が入らないよう廊下で見張りをしてもらっている。 ゼストは壁際に立つ部下の女性を一瞥する。

 

「(・・・・できれば1対1が望ましかったが、流石にそこまで望むのは贅沢なようだな。・・・・見たところ、戦闘能力は低く害もないだろう。他に気配を感じない。問題はないだろう)」

 

ゼストが近づくと、レジアスは恐怖に震えながら後退する。コレから口にしようとしたのは、『8年前の事件の真相』であった。

ゼストは元々〈時空管理局〉の一員で『ミッドチルダ』の地上部隊である『首都防衛部隊』を率いていた。

ギンガとスバルの母親である『クイント・ナカジマ』、ルーテシアの母親である『メガーヌ・アルピーノ』は直属の部下であり、レジアスとは『政治』で、ゼストは『現場』で、それぞれ出来る事で世の中を平和にしようと誓い合っていた、同じ志を共にした親友の間柄だった。

しかし、中々治安改善に向かっていかずそればかりか、『次元航行部隊』や『本局』は自分達の失態で起きた事件の責任を『地上部隊』に押し付けてくる始末であり、完全に軽んじられる身となってしまっていた。

ゼストの方は「『次元航行部隊』とは事件の規模が違う」と割り切ろうとしていたが、ソレに納得いかず憂いたレジアスは、手当たり次第の方針を模索。魔法を悪用したテロの抑止力にするとは言え武力の積極投入等を行い、次第に良くない噂が流れるようになった彼をゼストは心配するようになっていた。

そして8年前。レジアスが違法行為を実行する前に、技術の流出源を抑えようと、戦闘機人関係の研究に通じている可能性が高かったスカリエッティの施設らしい研究所とレジアスが通じていないかを確かめる為に、自らの独断で部隊を率いて捜査に向かったが、勇み足に出てしまった事が災いしてしまい、研究所の迎撃によって部隊は壊滅させられてしまった。

ソレにより、クイント・ナカジマは死亡。

メガーヌ・アルピーノは瀕死の重傷を負わされた上で捕縛された。

自身もスカリエッティの部下であったチンクの右目を潰すが、致命傷を受けて死亡する事態となってしまった。

だが、『時空管理局最高評議会』から依頼を受けたスカリエッティによって蘇生され、『人造魔導師』として復活した。

不完全な技術だった為に次第に肉体が耐えられなっていくが、8年前の事件がレジアスに嵌められたものなのか、その為に迂闊だった自分はまだしも、大事な部下達まで犠牲になったのかと真相と、離別した親友のあり方を確かめるため動き、そして遂に、レジアスと対峙し、『真実』を問い詰めようとした。

しかし、ゼストは知らないが、レジアスは確かにスカリエッティと手を組んでいたが実は、〈時空管理局〉の最高意思決定機関である『脳ミソだけの生き恥さらしな老害共‹最高評議会›』の命令で、治安用の戦力を依頼していたので協力関係も、多くの犠牲も本意では無かった。

ゼストの部隊が壊滅した事も、捜査を引き止める前に出動した後に事後報告で済まされた物であり、更に言えば犠牲を蔑ろにした『最高評議会』から、『研究サンプル』として扱われたのを苦々しく思っていた。

しかし、逆らえば自身が潰されるだけで終わってしまうので、自らの理想を実現する為に最早引き下がれず突き進んでいった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そしてかつての親友ゼストが蘇っていた事も知っており、彼の部隊を死なせてしまった後悔もあり、ゼストと向き合わなければならないと思い、ゼストが赴くのを待っていた。

 

「レジアス、お前は・・・・」

 

ーーーーザシュ・・・・!

 

「ゴバァッ!!?」

 

「っ、レジアス!!?」

 

そして次の瞬間、レジアスの背中か胸を突き破り、鋭い刃物が、否、剣が飛び出し、その刀身がレジアスの血で汚れた。

 

「ーーーーくだらん過去話はここまでだ」

 

レジアスの背後から、『藍色の霧』のようなものが集まり、黒髪のおかっぱ頭と特徴的な眉をした鋭い目付きをし、腰に4本の剣を携えた男性、確かスカリエッティの陣営にいた『幻騎士』と言う男だ。

 

「『ドゥーエ』。貴様ももう猿芝居を終わらせて、スカリエッティの所に戻る準備をしろ」

 

「・・・・そうさせてもらうわ」

 

幻騎士が地味な部下の女に声をかけると、その女の地味な容貌が一変していく。

蠱惑的な顔立ちと、大人の女性らしい肉感的な身体を青いボディスーツを身に纏い、右手には鋼の長爪『ピアッシングネイル』を装備した『ナンバーズ・ドゥーエ』。彼女は『IS‹インヒューレントスキル› ライアーズ・マスク』によって、他者に変身する事ができるのだ。

 

「・・・・私がこの爪で、その豚を始末してみたかったけど、仕方ないわね」

 

ドゥーエはつまらなさそうに転送の魔法陣を準備する。まるでレジアスの事など、眼中に無いと言わんばかりであった。

 

「・・・・・・・・き・・・・さ、ま・・・・なぜ・・・・スカリ、エッティが・・・・わた、しを・・・・!」

 

「スカリエッティから伝言だ。『君もあの『脳ミソだけの生き恥さらし共』と同じ。生きてようが死んでいようが、コレからの『世界』に、何の影響もないから安心して眠ると良い。永遠に』、とな」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

ーーーーザシュンッ!

 

レジアスは言葉を紡ごうと、口を開こうとした。

が、ソレよりも速く、幻騎士が突き刺した剣で抜き取り、噴水のように鮮血が飛び散り、レジアス・ゲイズは口から溢れる血で何も発せられずに、うつ伏せに倒れて息を引き取った。

 

「貴様ッッ!!!」

 

憤怒に染まったゼストはフルドライブを発動し、渾身の力で槍を斬り下ろして、幻騎士の脳天を斬り裂く・・・・が。

 

ーーーーサァァァァ〜・・・・。

 

幻騎士の身体は、『藍色の霧』となって霧散した。

 

「っ、何だと!?」

 

全く手応えがない。姿形のない霧でも斬りつけたような感覚に、ゼストは周囲に目を走らせる。

ドゥーエは背中を向けて、転送の魔法陣の準備を進めている。

まるで、ゼストの事も、取るに足らない存在のように。

 

「ーーーー貴様も、命を落としたいようだな?」

 

「っっ!!!」

 

後ろから聞こえた声に向けて槍を突き刺すが、幻騎士はソレを難なく回避し、そしてーーーー。

 

ーーーーズバァァァァンン!! ドバアァァァァッ!!

 

「ぐぁああああああああああああっっ!!!!」

 

両肩を一瞬で斬り捨てられ、両腕が血の噴射で吹き飛び、ゼストの悲鳴が声高く響き渡った。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

幻騎士は2本の剣を振って血を振り払い、鞘に納める。

 

「フーッ!・・・・フーッ!・・・・フーッ!!」

 

が、ゼストは両肩を失い、大量の失血をしたにも関わらず、口で槍を咥えて持ち上げて、幻騎士に向かっていく。

 

「・・・・無様だな」

 

幻騎士はそんなゼストを姿を、何の感情も宿っていない、否、何処か憐れんだ目でそう言って、再び2本の剣を鞘から抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

ーシグナムsideー

 

通路の途中で、融合騎アギトと戦っていたシグナム(地上本部の方に来ていた)。しかし突然聞こえた男性の悲鳴に、アギトは踵を返してレジアス・ゲイズの部屋に向かい、シグナムもソレに付いて行った。

そしてーーーー。

 

「っ!?」

 

「こ、コレは・・・・!?」

 

レジアスの部屋に入ったアギトとシグナムは、あまりにも酷い惨状に言葉を失った。部屋が血の海と化していたからだ。

両肩から両腕を失い、胸に✕の字に斬られたゼストが仰向けに倒れ、ソレに向かい合うように背中から刺されたような傷をしたレジアスがうつ伏せに倒れていたからだ。

そして、その2人の亡骸に何の興味を示していない2人の男女、1人はシグナムは映像でだが知っている。かつて山本達が戦った幻騎士と言う剣士。

 

「旦那!」

 

ゼストの元へ行こうとするアギトを、シグナムが制止した。迂闊に近づけば、アギトの命も斬り捨てられると、確信したからである。

 

「・・・・貴様、幻騎士、か・・・・?」

 

「噂に聞いた『烈火の将』か? 山本武に伝えておけ。あの未来の借りは必ず返す、とな」

 

「それでは、失礼します」

 

「・・・・待てよ」

 

奇妙に感情の抜け落ちたようなアギトの声に、幻騎士とドゥーエは足を止めた。

 

「1つだけ教えろ。旦那は、旦那はソコの親父と話し合えたのか?」

 

「いいえ。その前に幻騎士が始末してしまいましたから」

 

「そっか」

 

アギトは顔を上げ、憎悪に燃える瞳で幻騎士を睨みつけた。

 

「なら、お前は私が殺す。どんな手を使ってもだ!」 

 

幻騎士はアギトを一瞥すると、まるで興味を抱いていないと言わんばかりの無機質な目で見てから、転送魔法陣に入り、ドゥーエと共にその場から消えた。

 

「・・・・間に合わなかったか」

 

ゼストとレジアスの死体を見て、シグナムが悔しげに顔を歪める。

ささやかな願いを踏みにじられ、どれだけ無念だったのだろう。ゼストの死に顔は、怒りと絶望と後悔が複雑に混ざり合い、目からは涙まで流れ、とても『安らか』と言えるようなものではなかった。

室内には、噎せ返るような血の臭いと、アギトの嘆きの声に満たされていた。




今思うと、レジアスもゼストもあの『脳ミソお化けの老害達』の被害者だったんですね。
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