ーなのはsideー
「あの人が、ツナさんの『雲の守護者』・・・(恭弥って、お兄ちゃんと同じ名前だなぁ・・・)」
「でも、あの人達<ヴィータ達>と知り合いのみたいだけど・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「アルフ・・・・・・?」
なのはとフェイトはツナの守護者の雲雀をマジマジと見ていたが、アルフだけは牙を剥き出して警戒していた。
「どうしたのアルフ?」
「気をつけてフェイト、なのは。アイツ<雲雀>多分、味方じゃない!」
アルフの“野生の勘”が、雲雀の危険性を察知し、なのはとフェイトがツナ達を見ると、ツナや炎真、獄寺達も警戒心を露にしていた。リボーンだけは面白そうに眺めていたが。
ー騎士sideー
「《なんでここにコイツ<雲雀>がいんだよっ!!》」
「《知るかっ! 私とてこの男<雲雀>がいるとは思わなかったのだ!》」
「《ちょっと二人共、念話で言い争っている場合じゃないでしょう!!》」
ヴィータとシグナムにとって雲雀は“何を考えているのか分からない得体の知れないヤツ”として認識している。“主”であるはやてがなついているが、それでも雲雀への警戒を解いてはいない。
シャマルはその雲雀の副官である草壁と懇意な関係である為、中立の立場にいる。因みに草壁に関してはヴィータとシグナムはソコまで警戒していない。それは以前シャマルの殺人級の手料理(ある意味ポイズンクッキングクラス)を気合いと根性と“シャマルへの愛”で食べきった雄姿を見て、むしろシグナムとザフィーラは草壁を“草壁殿”と呼んで敬意を持っているし、ヴィータもよくアイスを買ってくれる草壁を“哲兄ちゃん”と呼んで慕っているからだ。
「ザフィーラ」
「ハッ!」
「どういう状況?」
「ご説明いたします」
ただザフィーラだけはほとんど、イヤ完全に雲雀をはやてと同格と見ているのか、恭しく下げていた頭を上げて雲雀に状況説明をしていた。ザフィーラと草壁はお互いに通じるモノがあったのかすぐに意気投合し、時々二人で飲み(ザフィーラは嗜む程度で草壁は烏龍茶)に行く姿を見かける。
「現在我々は、あの栗色の少女<なのは>と金髪の少女<フェイト>からリンカーコアを蒐集しようとしていますが、ご覧の通り、何やら雲雀様と同じ“炎使い”が立ちはだかった状況です・・・!」
「ふ~~~ん・・・」
騎士達の中ではザフィーラを気に入っている雲雀は状況説明を聞き、ツナ達を見据える。
「あの炎使い達は、僕の学校の生徒達だ」
「雲雀様の? と言う事は並森生徒ですか・・・」
「ザフィーラ、あのボクサー<笹川了平>は任せる」
「承知!」
雲雀からの命令で直ぐ様ザフィーラは了平に向かった!
「ぬぅっ!」
「悪いが相手をしてもらうぞ! 拳闘士!!」
「極限に良かろう!!」
ザフィーラと了平はそのまま移動しながら戦闘を開始した。
「オイコラ、ザフィーラ!」
「貴様! 抜け駆けか!?」
「湖の君・・・」
「あ、ハイ」
「君達の獲物の女の子達の相手をしておいて」
「えっ!? でも私、戦闘系じゃ・・・」
シャマルの意見を無視して、雲雀はトンファーを構えてツナに襲いかかる!
ガキンっ!
「くっ・・・!」
「やっと君と戦えるね、小動物!」
雲雀は猛攻するが、ツナは空中に飛んで回避するが。
「ロール」
「キュッ!」
雲雀は『雲ハリネズミのロール』が自身を『雲の特性“増殖”』で生んだ、棘の生えた紫色の雲を足場にしてツナを追撃する。
「ツナさん! っ!?」
「何っ!?」
「うわっ!?」
「フェイト! アルフ! なのはちゃん!」
突如、なのは達の身体を緑色のワイヤーが絡まり、蜘蛛の巣にかかったようになり、レイジングハートとバルディッシュにワイヤーが絡み締め上げ、2機を破壊した!
「レイジングハート!!」
「バルディッシュ!!」
「ごめんなさい、少し大人しくしてもらいます」
シャマルが炎真を牽制するようになのは達を捕縛した。
「十代目っ!」
「テメェはアタシが相手してやるよ!」
獄寺にヴィータが迫り!
「っ!」
ガキンっ!
「私と手合わせしてもらうぞ、若き剣士よ・・・!」
山本とシグナムはつばぜり合いをし、距離を空けてお互いを見据える。
ー炎真sideー
「直ぐに助けるよ、フェイト」
炎真は拳を構えて、シャマルを睨むが。
「まぁ待て炎真」
「リボーン・・・」
「オイ、そこのレディ」
「えっ? 赤ちゃん? えぇっ!?」
突然現れた流暢に喋る赤ん坊にシャマルは面食らう。
「まぁそう警戒すンな、こっちとしてはお前らが何故こんな事をすンのか聴きてぇだけだからな」
「・・・・・・・・・」
「(ま、こう言われて直ぐに話す訳ねぇか・・・) 言いたくないなら別に構わねぇ。だが、なのは達に何かしようなら、ここにいる炎真が黙っちゃいねぇぞ」
「・・・・・・・・・・・・」
シャマルがなのは達に何かしようなら相手になると、炎真から放たれる威圧感から察したシャマルも迂闊に行動出来ず、膠着状態になった。
ー獄寺VSヴィータsideー
ドカカカカカカカカカカカカカカカッッ!!!
ヴィータが次々と投げ飛ばす鉄球を『フレイムアロー』で撃ち落として行く獄寺。
「(ちっ、このままじゃこっちがジリ貧だぜ! かといって“今持っている手持ち”でこれ以上は・・・)」
「呆けてンじゃねぇぞ!」
ヴィータがグラーフアイゼンを振りかぶって獄寺と肉薄する!
「ちっ・・・!」
グラーフアイゼンが当たるギリギリで獄寺が後方にステップして回避するとヴィータの目の前に“小さなダイナマイト”が。
「げっ! ダイナマイト!?」
「食らいな! “ミニボム”!!」
ボムッ!!
ヴィータは咄嗟にガードしたが獄寺は爆風を利用して距離を空けた。
「(コイツ、イカれてるぜ! 下手したら自分の武器にやられる所じゃねぇか!?)」
「けっ、ガキがハンマーなんて振り回してンじゃねぇぞ!」
「(ピクっ) ガキだと!?」
「ガキだろうが! どう見ても高町達と似たり寄ったりの背丈なんだからなぁ!!」
「それはアタシが“チッコイ”って言いたいのか!? この、“タコ頭”っっ!!!」
「(ピキッ!) 誰が“タコ頭”だ!? この、“エビ頭”っっ!!!」
「(プチッ!)エビ頭だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」
“赤い三つ編み”、でヴィータをエビ頭と呼んだ獄寺に沸点の低いヴィータの頭が沸騰した。
「誰が“エビ頭”だっ! この“銀ダコ頭”っ!!」
「(ブチッ!) 言いやがったな! この“桜エビ”っ!!」
「タコ!!」「エビ!!」「タコ!!」「エビ!!」「タコ!!」「エビ!!」「銀ダコ!!」「桜エビ!!」
と、鉄球や炎の矢を放ちながら、後に『嵐の爆風』と『鉄槌の騎士』と呼ばれる二人は、低レベルの口喧嘩を繰り広げていた。
ー了平VSザフィーラsideー
「ぬおおおおおおおおおおッッ!!!」
「くううぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!」
晴れのグローブとF<フィアンマ>シューズを装備した了平がザフィーラと肉弾戦を繰り広げていた。
「喰らえっ! 『マキシマムキャノン』ッ!」
ドゴオオオオオオオオオオンンッッ!
「グオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」
ガードする事が出来たが、『マキシマムキャノン』の威力にザフィーラは戦慄する。
「(何と言う威力! マトモに食らい続ければ如何に俺のガードでも耐えられんっ!!)」
「(『マキシマムキャノン』をガードするとは、極限に見事だ!)」
お互いに相手の力量を認め合い始める了平とザフィーラ。
「(速さは互角、攻撃力は向こうが上・・・)」
「(フットワークはどっこいどっこい、防御力は向こうが上!)」
「(ならば! 俺の防御がヤツの攻撃を防ぎきるか!)」
「(俺の拳がヤツの防御を打ち破るか!) いざ極限にっ!」
「勝負だっ!」
再び、了平とザフィーラ、後に『晴天の拳闘士』と『盾の守護獣』の拳がぶつかった!
ー山本VSシグナムsideー
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
獄寺とヴィータが口喧嘩しながら喧しく戦い、了平とザフィーラが熱く拳をぶつけている頃、山本とシグナムはお互いの剣、“刀”と“レヴァンティン”を構えて、静かにお互いを見据えていた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
見ている人間には分からないが、最初の一太刀から山本とシグナムはお互いの技量を察知し、闘気をぶつけ合いながらイメージの中で、何度もつばぜり合いを繰り広げていた。
「貴殿、名を何と言う?」
「山本武、アンタは?」
「烈火の将 シグナム。貴殿、剣を覚えて何年になる?」
「・・・・・・一年位、かな」
「そうか・・・」
素っ気ない返答だが、実はシグナムは内心歓喜していた。
「(素晴らしい! 僅か一年足らずでここまでの技量の剣士になったと言うのか!? 最初の一太刀で感じた確かな“才”! 更に“たゆまぬ努力”と“自身よりも格上の相手”との戦闘経験! それらがこの少年をここまでの剣士にしたのか?! いかんなぁ、鼓動が高まる!)」
そしてソレは山本も同じだった。
「(やっべぇ! この人すげぇ強ぇ! 多分剣士として力量は、“スクアーロ”や“幻騎士”と同等だ! やっべぇ、ワクワクしてきたぁ!!)」
お互い内心テンションがうなぎ登りになっていた。
「行くぜ!」
「来い!」
ザッ!
「(『時雨蒼燕流 攻式一の型 “車軸の雨”』!)」
「フッ!」
山本が繰り出す突きをかわすシグナム、かわされた山本は次の技を放つ。
「(『時雨蒼燕流 特式十一の型 燕の嘴<ペッカラ・ディ・ローンディネ> 』!!)」
「クッ!」
怒涛の突き攻撃に紙一重でかわす。
「ハアァッ!」
ガキン!
「おっ!」
「ツアァッ!」
力を込めた一刀で突き攻撃を無理矢理ストップさせ、攻撃に転じる!
「(『時雨蒼燕流 守式四の型 五風十雨』!)」
相手の呼吸に合わせて回避する山本はシグナムの懐に入り、片手で刀を振るう!
「クッ!」
スカ・・・
「何っ!?」
レヴァンティンで防御しようとしたが、振り上げた腕に刀はなく、空いたもう片方に刀が移っていた。
「(『時雨蒼燕流 攻式五の型 五月雨』!)」
「なめるなっ!」
ガキイィィィィィンン!!
そこから繰り出された二段目の攻撃をシグナムは鞘で防御した、が・・・。
「クッ、な、何だ!?」
再び攻撃しようするシグナムの身体が麻痺したように動かなくなる。
「(『鮫衝撃<アタッコ・ディ・スクアーロ>』)」
渾身の力を込めたその一撃は、鉄バットで殴られた衝撃が全身を走り、シグナムの全身が麻痺した。
「なめるなと言った!!」
しかしシグナムは、レヴァンティンを持った手を無理矢理に動かし、身体を殴り無理矢理に動かすと、再びレヴァンティンを振るう!
「うわっと!」
「ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア・・・」
「へへへ、やるねぇ、鮫衝撃<アタッコ・ディ・スクアーロ>で麻痺した身体で動けるなんてさ・・・!」
「貴殿もな、先程の見事な二段攻撃を私が防御する事を見越して、衝撃剣を隠す為のカモフラージュにするとは、なかなか以外にしたたかだな・・・!」
「やべ、楽しくなってきた! こうなりゃ、トコトンやろうか!?」
「フッいかんなぁ、私も高ぶってきたぞ・・・!」
「行くぜ! シグナム!!」
「来い! 山本武!!」
『烈火の将』と『時雨の剣士』、後に名剣士コンビとなる二人は、静かにしかし熱く剣を交えていた。
『天空の守護者達』と『守護騎士』、最初のバトルがまだ、始まったばかり。
ツナ達はリング争奪戦からまだ一年も経っていない計算にしてください。