ー八神家ー
なのは達がヴォルケンリッターに襲撃されて翌日の朝。時々食事を食べに来る雲雀の指定席になっている八神家のソファーに、スラリとした足を組んで眠っているヴォルケンリッター烈火の将シグナムと狼形態でソファーの足元で眠る盾の守護獣ザフィーラ。昨夜の戦闘での負傷は草壁の迎えの車の中や主が寝静まった後に施された。そして自室のベッドで“闇の書”を持って眠る湖の騎士シャマルは、治療でかなりの魔力を消費してしまい静かに眠っている。
だが、闇の書は妖しい魔力を放ちながらシャマルの手から宙に浮き、部屋から消えた。
そして闇の書は八神家の家主である八神はやてとそのハヤトと同じベッドに入りウサギのぬいぐるみを抱いている鉄槌の騎士ヴィータ(同じく治療済み)が眠る部屋に現れ、カーテンを開け放つ。
「ンン・・・」
八神はやてはカーテンが開いて差し込む日差しに目を開け、宙に浮いている闇の書を見て微笑む。
「闇の書、おはよう」
何も答えない魔法の書物に八神はやては挨拶をした。
ーなのはsideー
昨夜の襲撃での負傷も完治したなのはは一緒に学校へ行こうとフェイトを待っていた。
「なのは!」
「フェイトちゃん」
「おはようなのは、具合とかどう?」
「魔法はダメだけど体は全然」
「そう・・・私とアルフもおんなじ」
「そっか・・・そうだフェイトちゃん、私のこと、助けにきてくれたんだよね?」
なのはがフェイトの手を両手で包むように握る。
「ゴメンね、ありがとう!」
「ん~ん、助けたのはツナだし、結局何も出来なかった上に、炎真の足を引っ張ったから・・・」
「そんな事無いよ! ありがとうフェイトちゃん!」
「うん・・・」
気を落とすフェイトを励ますなのはにフェイトも頷き、そのままフェイトの手を引いて、なのはは学校へ向かう。
「フフフフフ♪」
「あの人達、何だったのかな?」
「うん、私も急に襲われたから・・・」
「あっでも、クロノ達が事件の担当だから、きっと大丈夫!」
「うん・・・そうだよね」
「うん」
「あっそうだフェイトちゃん。今日の放課後、大丈夫?」
「ん?」
「レイジングハートとバルディッシュのお見舞い、行きたいんだ・・・」
ーはやてsideー
トントントントン・・・
グツグツグツグツ・・・
八神家のリビングではやてが朝食を作る音が響く。
「ン・・・んん?」
はやてに毛布を掛けられたシグナムとザフィーラ、シグナムが目を覚ました。
「あっ・・・ごめんな~起こした?」
「あっ・・・いえ」
「ちゃんとベッドで寝なアカンよ、風邪ひくから」
「ああ・・・す・・・すみません・・・主、雲雀と草壁殿は?」
「あぁ、昨日の夜、シグナム達が帰って来て直ぐに行ってもうたわ。雲雀さん達学校の風紀委員やから忙しいんやて・・・」
ザフィーラを起こしながら毛布を畳みながら昨夜“借り”が出来てしまった雲雀と草壁の事を聞くシグナム(草壁は兎も角として、雲雀に“借り”が出来てしまった事が口惜しいのである)。狼形態のザフィーラもアクビをしながら起き上がる。
「夕べもまた夜更かしさん? あんまり雲雀さんや草壁さんに迷惑掛けたらアカンよ」
「雲雀は兎も角、草壁殿には確かにご迷惑をお掛けしたと思っています・・・」
「もう、シグナムもヴィータもまだ雲雀さんの事を嫌っとるの?」
「どうにもあの男は信用できないのです。ザフィーラは全幅的に信頼しているようですが・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ジト目でザフィーラを見据えるシグナムの視線から、ザフィーラはサッと目を反らして毛繕いをした。すると、リビングのドアが開き、シャマルが慌てて入ってくる。
「すみませ~ん! 寝坊しました!」
「おはようシャマル」
次に別のドアが開き、ウサギのぬいぐるみを持って寝惚けたヴィータが入ってくる。
「おはよ~・・・」
「おはよ~、ヴィータ」
「うん」
寝惚け眼を擦りながら、主のはやてににこやかに挨拶するヴィータ。
「ほら! ヴィータちゃん、顔洗ってらっしゃい!」
「シャマル、後で草壁さんに連絡して、昨日のお迎えのお礼を言わなあかんよ」
「は、はいそうですね・・・!」
「ついでに朝から草壁さんと“愛”を語らってもエエんやで~♪」(ニヨニヨ)
「えっ?! あっ・・・は、はやてちゃん! そんな、哲矢さんも風紀委員で忙しいんですから~/////////」
「「(ニヤニヤ、ニヨニヨ・・・)」」
紅くなった顔を両手で押さえて身悶えし、全身からハートマークを出しまくるシャマルを眺めながら、はやてとヴィータはニヨニヨと笑みを浮かべる。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
あわただしくも、穏やかな日常の始まりをシグナムは微笑ましそうに、愛おしそうに見つめていた。
ーツナsideー
その頃、ツナとリボーンは空港に赴き、今日来日する“兄弟子”を出迎えた。
フードにファールの付いた緑のモッズコートを着た黄色い髪に整った顔立ちの外国人の男性と、その男性に付き従う黒スーツの壮年の男性がツナとリボーンに近づく。
「“ディーノ”さん!」
「よぉツナ、久しぶりだな」
“跳ね馬ディーノ”、ツナ達ボンゴレファミリーの同盟ファミリーの一つ“キャバッローネファミリー”10代目ボス。ツナの前のリボーンの教え子で、かつてはツナと同じで気弱で臆病な“へなちょこディーノ”だったが、リボーンとの日々で今や立派なファミリーのボスとして、部下や住民達から慕われる“理想的マフィアのボス”になり、ツナにとっても“頼りになるカッコいい兄貴分”なのだ。
「ロマーリオ、ご苦労さんだな」
「ボスが日本に遊びに来るのは、もうウチのファミリーでは恒例行事ですからねぇ」
そしてディーノに追従してきた壮年の男性の名は“ロマーリオ”。ディーノの父親である先代ボスの代からキャバッローネファミリーの一員としており、今はディーノの右腕で頼りになる副官である。
「話はリボーンから聞いてるぜ。まさかお前が“虹の代理戦争”前に、時空管理局と繋がりが持っていたとはな」
「黙っていてごめんなさい。でも、ディーノさんも管理局を知ってたんですね」
「キャバッローネを継いで少しして、ボンゴレ9代目からある程度の事を教えてもらってたんでな。正直“魔法”なんてファンタジーの世界だろうと思ってたんだけどな」
「でもオレも実際に“魔法”や、それを使う“魔導師”と会っています。皆良い子達ですよ」
「ふーん、そりゃ会ってみるのが楽しみだな。それにしても、恭弥のヤツがまた“敵対”するとはな。代理戦争の時は自分で参加資格を破壊したり、本当にアイツの行動は先が読めねぇな・・・」
一応雲雀恭弥とは師弟の関係(雲雀はそんなつもりは一切無い)だがディーノにとっても今回の雲雀の行動は頭を抱える程の出来事だった。
「炎真達からの連絡じゃ、雲雀は学校には来ているようだが、今はこちらから接触させるのを止めている」
「賢明だな、下手に恭弥の逆鱗に触れるとこっちに被害が出るからな。所で、獄寺と山本はどうした?」
「アイツらと了平は、雲雀が協力している魔導師達との戦闘に敗北してな。今は再戦に備えて特訓中だぞ」
ー獄寺sideー
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(カリカリカリカリ・・・)
獄寺隼人は現在学校を休み、マンションの自室でクロノから送られた“戦闘データ”から、ヴィータの戦術と武器の性能が映された映像から分析していた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(カリカリカリカリ・・・)
短気で喧嘩っ早く中二病な所が有るちょいアホだが、獄寺隼人は本来クレバーな“理論型”であり、特訓を始めるにしても先ず、ノートと鉛筆で自分の“武器の性能”と“理論”を頭に叩き込み、そこから“戦術”、“戦略”を組み立ててから特訓に移るタイプである。
現在はヴィータへのリベンジの為にクロノにレイジングハートとバルディッシュが記録していた戦闘映像を送ってもらい、そこからヴィータの戦術の分析を行っていた。
「フム、成る程な・・・」
しかし、眼鏡を掛けてノートと鉛筆でゴスロリ魔法少女の映像を分析する姿は、はっきり言ってドン引きモノでは有ったが・・・・・・。
「ニャオ~ン♪・・・」
因みに、“嵐ネコの瓜”はそんな主を無視して日向ぼっこを満喫していた。
ー山本sideー
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして山本武も学校を休み、かつて『時雨蒼燕流』を学ぶ為に父と修行した“あさり組”と書かれた提灯が有る道場に来て、瞑想していた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
目を閉じて瞑想する山本の脳内では、昨夜の戦闘でのシグナムとの立ち合いの記憶から、イメージトレーニングでシグナムと剣を交えていた。
“理論型”の獄寺と違って、“感覚型”の山本は持ち前の集中力とシグナムとの戦闘経験から、シグナムとの戦闘をイメージする。
「(『時雨金時』が無かったのは言い訳に過ぎねぇ・・・あのシグナムってヤツは“剣士”としても“魔導師”としても一流だ。前回は“剣士”としての姿を見せたが、次は“魔導師”としての姿も見せるだろうな・・・)」
「ワン!」
「ピィ」
道場の外で主を見守る“雨犬の次郎”と“雨燕の小次郎”が心配するように声を上げると、山本はいつもの爽やかな笑顔を向ける。
「大丈夫だぜ、次郎、小次郎! 次は負けねぇよ! 『時雨蒼燕流』は、“完全無欠”、“最強無敵”たからな!」
意気揚々と、山本は再び瞑想を始めた。
ー了平sideー
「シッ! シッ! シッ! シッ! シッ! シッ!」
了平は『並森中学ボクシング部』の部室で、ボクシングミットを付けた“晴れカンガルー”の漢我流(通称ガリュー)とスパークリングしていた。
「(これだけではまだ極限に足りん! あの男<ザフィーラ>と再び拳を交える時、こんな状態ではこの間の二の舞だ!)「精が出るなコラ!」っ!? “コロネロ”師匠! それに紅葉ではないか?!」
部室の窓を見ると、シモンファミリー“森の守護者”青葉紅葉と、迷彩服を着用し、大きなファルコンに首根っこを掴まれて空を飛ぶ赤ん坊、リボーンと同じ“元呪われた赤ん坊アルコバレーノ”の1人、元イタリア海軍潜水奇襲部隊COMSUBIN<コムスビン>の隊員である“雨のアルコバレーノ コロネロ”だった。
「久しぶりだな! コラ!」
「師匠! 何故ここへ!? 紅葉も、雲雀の監視をしていたのではないのか!?」
「そうしていたのだが、結局いきなりやって来たこの赤ん坊に、結局無理矢理連れてこられたのだ!!」
憤慨する紅葉を無視して、コロネロは相棒のファルコにぶら下がりながら了平に近づく。
「リボーンから話は聞いたぜコラ! 時空管理局が関わってる事態に、お前らトゥリニセッテの一角、ボンゴレリングを持つ者が首を突っ込むのは感心しねぇが、借りを返す気概が無ければ、俺の弟子とは言えねぇなコラ!」
「おぉぉっ!! 師匠、修行を付けてくれるのか!?」
「当然だぜコラ! シモンの森の守護者も、一緒に面倒見てやるぜコラ!」
「結局良かろう! 了平だけ強くなるなど結局俺が許さん!!」
「うおぉぉぉっ! 極限に燃えてきたぞ!! コロネロ師匠!!!」
「良し! 先ずは死ぬ気の練習試合だぜコラ!」
了平と紅葉はコロネロの指導の元、暑苦しく修行に打ち込んだ。