『クローム・髑髏』。沢田綱吉の10代目改めネオボンゴレファミリーの霧の守護者の片割れ。
かつては『凪』と言う名の少女で、義理の父親は外資系の営業部長。母親は女優と裕福な家で生まれるが、両親は家庭を省みない事から、愛情は全く与えられずに、心を閉ざした人生を歩んだ。
しかし、車に轢かれそうになった一匹の猫を助けようとして交通事故に合った事で彼女の人生は大きく変わった。
腹部を車のタイヤに潰され、内臓が無くなり両親からも見捨てられ、死を待つだけだった彼女は当時裏社会の法の番人である『復讐者<ヴィンディチェ>』の地下牢獄で幽閉されていた、死刑囚である『六道骸』と精神の波長が合ったのか、骸の仮の依りしろとして骸の幻術により内臓を生み出されて生かされ、『クローム・髑髏』として生きていくことを選んだ。
リング争奪戦。未来での死闘。シモンファミリーとの激戦。ツナ達と共に戦い、幻術使いとして多くの経験を積んできた。
そして虹の代理戦争では骸に頼ることなく、自身の力で内臓を作り戦う事ができるほどに精神的な成長もした。
最初は骸と骸の仲間である『城島犬』と『柿本千種』以外に心を開かなかったが、今では綱吉達を仲間として、京子とハルとイーピンを友達として受け入れるようになり、『もう1人の霧の守護者』としてネオボンゴレファミリーの一員として戦ってきた。
「(って、リボーンから聞かされていたけど、まさかこれ程の幻術使いとはね。管理局には幻術を使う魔導師もいるけど、彼女に比べるとレベルが違いすぎるわ・・・・)」
「リンディさん、こっちです・・・・」
リンディはクロームに連れられながら、周囲にいる“自分たち”を見据える。周りは、クロームの幻術によって生まれたリンディとクロームが逃げ惑っていた。
街は湖の守護騎士シャマルによって張られた結界に閉じ込められ、一般人達も結界内部で消えており、今この街はリンディとクローム、そしてリンディの魔力を狙ってやって来た烈火の将シグナム、鉄槌の騎士ヴィータ、盾の守護獣ザフィーラしかいない空間だった。
「クロームさん、本当に私達の姿は見えていないのかしら?」
「(コクン)大丈夫。さっきもハンマーの女の子<ヴィータ>が近くを通りすぎても、気付いていなかったから・・・・」
クロームは自身の幻術と、藍色の霞のような炎をした、霧の死ぬ気の炎が灯ったリング(リボーンがくれたランクB級)で、霧の特性『構築』を用いて、よりリアリティーが高くなった幻覚で、偽のリンディとクロームを使い、シグナム達は翻弄されていた。
「これが霧の死ぬ気の炎の『構築』、幻術をよりリアルに作る事ができるのね?」
「はい。高度な幻術ならセンサーやレーダーのような光学兵器も欺けます。霧の死ぬ気の炎ならデバイスのセンサーですら欺くことができます。私ごときの幻術でも撹乱位なら・・・・」
「クロームさん、貴女の幻術も十分凄いわ。正直私の知る限り、管理局の魔導師でもここまでの幻術使いは見たことも無かったから」
「でも、骸様や霧の赤ん坊に比べたら私なんて・・・・」
「それでも今貴女のおかげで助かっているわ。ありがとう、クロームさん」
「・・・・ありがとうございます///」
照れ臭そうに頬を染めるクローム。
「それじゃ、ちょっと襲撃者の顔を見に行きましょうか?」
「はい・・・・」
「(クロームさんもかなりのレベルの幻術使いだけど、その彼女をも上回る幻術使いの『六道骸』と『霧のアルコバレーノ マーモン』。一体どれ程の使い手なのかしら?)」
クロームもリンディから見れば幻術使いとしてかなりの使い手だが、そのクロームよりも格上の使い手がいることに若干苦笑いを浮かべた。
ーシグナムsideー
「一体どうなっている!?」
烈火の将シグナムは困惑していた。自分たちは高魔力保持者<リンディ>から魔力を蒐集しようと結界に閉じ込め襲撃した。
しかし、ターゲットと一緒にいた少女が霞状の藍色の炎を出したと思ったら、突然ターゲットが複数になった。
「レヴァンティン! 本物はどれだ!?」
[申し訳ありません、こちらもどれが本物か分かりません]
「デバイスのセンサーも欺いているのか!?」
シグナムは急いで他の場所でリンディとクロームの幻を追っているヴィータとザフィーラに念話を飛ばした。
「ヴィータ! ザフィーラ! そっちはどうだ?!」
《チクショウ! コイツらも幻だ!》
《こちらもだ! どうなっている!? 匂いも気配も皆同じだ! まるで見分けがつかん!!》
鉄槌の騎士ヴィータも、盾の守護獣ザフィーラも、幻術によって生み出された偽物に完全に惑わされていた。
「これ程の幻術使いが管理局にいたと言うのか?」
「残念だけど、管理局の魔導師にもこれ程の幻術を使える魔導師はいないわ」
「っ!?」
シグナムが近くのビルの屋上から聞こえた声に振り向くと、ライトグリーンのポニーテールの女性と、紫色の髪をパイナップルのように結わえた眼帯を付けた少女がいた。女性、リンディが、待機状態の自分のデバイスを構える。
「貴女が彼女達のリーダーね? ちょっとお話良いかしら?」
「話?」
「“闇の書のシステムの一部”、自らの意思と実体を持った“無限再生プログラム”。『守護騎士 ヴォルケンリッター』」
「くっ!」
「ヴォルケンリッター・・・・?」
「貴女達は、闇の書をどうするつもりで蒐集を続けているの?」
「我らには我らの目的と理由があります。貴女に答える理由は無い」
シグナムは剣のデバイスであるレヴァンティンを抜刀する構えを取る。リンディは言葉を続ける。
「私が11年前、“暴走した闇の書に家族を殺された人間”だとしても?」
「あ・・・・!?」
リンディの言葉にシグナムの心が揺れた。
[ーーーーーーー!!]
「オオーーーーッ!!」
「なっ!」
シグナムがベルガ語の電子音が聞こえ目を向けると、ヴィータが鉄球をハンマー型デバイス グラーフアイゼンで叩き、叩かれた鉄球はリンディとクロームのいる地点に当たり、屋上を粉砕した。
「シグナム! 何ボーッとしてやがる!」
「っ! あぁすまない・・・・」
気を取り直したシグナムは、リンディ達のいたビルの向かい側のビルを見ると、藍色の霧から出てくるリンディとクロームがいた。
「ふっ!」
「ハッ!」
リンディが杖型デバイス デュランダルを、クロームが三又槍を構えると、上空に人間形態のザフィーラもやって来た。
「これはちょっとマズイかしら?」
「大丈夫、リンディさん」
「えっ?」
「必ずボス達が来てくれる。それまで私が守ります!」
クロームは怯む様子も無く、リンディの前に出て三又槍をシグナム達に向けて振り回す。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
《シグナム、あの少女が幻術使いか?》
《あぁ恐らくな》
《散々おちょくりやがって、ぶっ潰してやる!!》
《待てヴィータ!》
「うおおーーーーー!!」
先ほどまで自分たちを撹乱させたクロームに警戒していたシグナムとザフィーラだが、ヴィータはシグナムの静止を聞かずにクロームの眼前まで近づき、アイゼンを振りかぶる!
「ぶっ潰れろーーーーーーー!!」
「ハァッ!」
クロームが三又槍の柄で地面を叩くと、なんとヴィータの真下から、巨大な火柱が噴き出した!
「なんだと!? うわああああああああああああああああああっ!!!」
「「ヴィータ!?」」
シグナムとザフィーラが火柱に呑まれたヴィータを助けようと飛び出すが。
「フッ!」
「なんだこれは!?」
ザフィーラの身体を植物の茎のようなモノが絡み付き動きを封じた。
「ザフィーラ?! おのれ! 妙な幻術を使う前に斬り捨ててくれる!!」
シグナムが幻術を使われる前にクロームを倒そうとする。今この場で厄介なのは、リンディではなくクロームであると判断したからだ。
「ハァアッ!!」
シグナムのレヴァンティンの刃がクロームの身体を切り裂くが、クロームの身体は藍色の霧となって消えた。
「何!? これも幻術だと!?」
「私はここ・・・・」
「っ!?」
「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」
「なっ!!??」
周りを見ると、何人ものクロームがシグナムを取り囲んでいた。
「くっ・・・・!」
シグナムは片っ端からクロームの幻を斬り捨てるが、次々と霧となって消えた。
「クソッ、一体本物は何処だ!?」
「グッ・・・・シグナム・・・・!!」
ザフィーラは自分に巻き付いた茎を引きちぎり、先ずは火柱に呑まれたヴィータを救出した。
「ヴィータ! しっかりしろ!」
「だ、大丈夫だザフィーラ・・・・」
「(何? あれほどの火柱に呑まれたのに火傷は軽微だと? やはりあの火柱も幻術。しかし、俺の身体に巻き付いた茎の感触も、火柱の熱も本物のようだった。一体・・・・?)」
「舐めやがって・・・・! おいザフィーラ、シグナムに加勢するぞ!」
「あ、あぁ・・・・」
負傷は軽微のヴィータは再び立ち上がり、シグナムに加勢する。それを見ていたリンディの頬に一筋の汗が流れる。
「(いくらクロームさんの幻術が優れているとはいえ、あの守護騎士達もかなりの実力者、このままではいずれクロームさんの方が・・・・)」
[転移魔法の反応を感知]
「えっ?」
デュランダルからの報告にリンディは目をパチクリさせる。
ーシャマルsideー
「っ!? 上空に転移反応?」
結界を張っていたシャマルもそれに気付き、上空を睨む。
ーなのはsideー
シャマルが張った結界上空に、なのはとフェイトが転移してきた。落下しながら待機状態のデバイスに話しかける。
「ごめんねレイジングハート! いきなり本番で!」
[オーライ。そのための私です]
「バルディッシュも!」
[ノープログレム]
[新システムの初起動です。新たな名で起動コールを]
「「うん!」」
なのはとフェイトがレイジングハートとバルディッシュを掴む!
「レイジングハート・エクセリオン!」
「バルディッシュ・アサルト!」
「「セット ア~ップ!」」
二人がデバイスを起動させると、レイジングハート・エクセリオンから桃色の魔力光が、バルディッシュ・アサルトから金色の魔力光が溢れ、なのはとフェイトの服が弾け、戦闘服BJ<バリアジャケット>が展開される。
なのはなBJは、聖祥大学付属小学校の制服をデザインされた姿に、レイジングハートの杖にはカートリッジシステムが搭載された。
フェイトは黒衣のBJとなり、斧杖のバルディッシュにリボルバー式のカートリッジが装備されていた。
桃色と金色の魔力光は流星のようにシャマルの結界を破り、戦場へと舞い降りた。
『っ!?』
[起動状態、異常なし]
[カートリッジユニット、動作正常]
新たな力を携え、二人の魔導師の少女は杖と斧杖を構えた。
お久しぶりです。新たに投稿している作品に夢中になっていました。令和初の『かてきょーリリカルREBORN』です。