ーツナsideー
なのはとフェイトとアルフが守護騎士<ヴォルケンリッター>と交戦を始めてすぐ、ここ並森郊外の山の空で、オレンジと真紅の閃光が超高速で翔びながら何度か交差し、激しい激突音を響かせていた。
「フッ!」
「ハァッ!」
超ツナと炎真がフェイトを上回るハイスピードバトルの模擬戦を繰り広げていると。地上から二人の模擬戦をパラソルを広げ、横に置いたテーブルの上にエスプレッソコーヒーが入ったカップが置き、ビーチチェアに寝そべりながらレオンが変身した双眼鏡で暢気に眺めているリボーンがいた。
「ん?」
双眼鏡のレオンをテーブルに置いて、優雅にエスプレッソを飲むリボーンだが、レオンがいきなり携帯に変身するとジャズメロディーの着信音が流れ、リボーンはそれに出ると何度か相槌を打ちながら、少し顔に笑みを浮かべ携帯を切り、レオンを拡声器に変身させて模擬戦を繰り広げるツナ達に向けて声を上げる。
「おいツナ! 炎真! ちょっと降りてこい!!」
「「ん?」」
二人は突然呼ばれてリボーンの近くに降りていく。
「どうしたリボーン」
「何か有ったの?」
「今エイミィから連絡が有ってな。予想通りあの騎士達がリンディを狙って現れたようだぞ」
「っ! そうか。それでリンディと護衛として一緒にいる筈のクロームは?」
「あぁ、クロームが幻術で奴らを振り回したようでな。今は新調したデバイスを装備したなのはとフェイト、それとアルフのヤツが交戦しているみたいだ」
「フェイト達が!?」
「クロノはどうした?」
「今クロノが手勢の魔導師を連れて現場に急行しているみたいだが、恐らく雲雀が出てくるかもな」
「「(コクン)」」
ツナと炎真はお互いを見て頷き合い、リボーンはすかさずツナの肩に乗ると、ツナと炎真は両手の炎の吹かせて空を飛んでいった。
ークロノsideー
「クッ!」
クロノは迫り来るトンファーの攻撃を紙一重で回避する。時に障壁で防御しようとするが、煙のように燃え上がる紫色の死ぬ気の炎、『雲の死ぬ気の炎』を纏った鋼鉄製のトンファーが障壁を難なく砕き、クロノは空を飛べるアドバンテージを活用して回避していた。
「ふ~ん。君、それなりにやれるね」
猛禽類のような鋭い眼差しを好戦的に煌めかせ、自分の相棒である『雲針ネズミのロール』が作ったトゲ付の雲に乗りながら、雲の死ぬ気を纏ったトンファーを回転させる。
「(強い。今まで戦ってきた次元犯罪者達が束になっても敵わない程に・・・・!)」
クロノは内心焦っていた。現在結界内部では、母親であるリンディや、そのリンディを守るために守護騎士と交戦しているであろうなのはとフェイトとアルフの元へ行かねばならないが、目の前にいる少年の実力が自分の予想を大きく上回っていた。唯一の優位に立っているのは、彼は雲に乗らなければ空中を動けないが、自分は飛行魔法で自在に空を飛べる。このアドバンテージをどう活かせば勝てるか、クロノは雲雀と戦いながら思案していた。
「フッ!」
「チッ!シュート!!」
雲雀が雲を跳びながらクロノに接近するが、クロノは誘導魔力弾を放つ。
「・・・・・・・・・・・・」
だが雲雀はトンファーを回転させると、トンファーから鎖分銅が飛び出して、『雲の死ぬ気の炎』の特性である『増殖』により鎖分銅は凄まじい勢いで伸びていき、それを雲雀が縦横無尽に振り回すと、誘導魔力弾を全て叩き落とした。
「なっ!?」
「・・・・!!」
一瞬唖然となったクロノの隙を狙って肉薄した雲雀が、トンファーを振りかざすと、クロノはすぐに切り替えるて障壁を貼り防御をするが、雲雀には何の意味もなく破壊され、クロノの左腕に雲雀のトンファーがめり込み、骨が砕ける音が響いた。
「ぐぅあっ!!」
一瞬悲鳴を上げるクロノにさらにトンファーで攻め立てる雲雀。
「くぅっ!」
トンファーがクロノの眼前にまで迫り、クロノは痛みと衝撃に備えて目を閉じる。
「・・・・・・・・???」
いつまで経っても衝撃が来ないことにクロノは戸惑いがちに目を開くと。
「やぁ小動物コンビに赤ん坊」
「ちゃおっス、雲雀」
「「・・・・・・・・」」
「綱吉、炎真、リボーン!?」
雲雀のトンファーを手の甲で防いだ超ツナともう片方のトンファーを受け止める炎真、リボーンはツナの肩に座りながら雲雀に挨拶する。
「「ツアッ!!」」
「ワオ」
超ツナと炎真が力を込めて雲雀を押し飛ばし、雲雀はロールの作った雲に着地する。
「ツナ君、ここは僕に任せてクロノ君とフェイト達を!」
「わかった、気をつけろよ炎真」
超ツナは片腕が折れたクロノに手を貸しながら離れたビルの屋上に向かった。
「ふーん、君が相手になるのかい? 古里炎真?」
「『大地の拳<プーニヨ・テッラ>』」
炎真は拳に重力球を纏い構える。
「そういえば、君にも借りがあったね」
雲雀がトンファーを構えると、炎真と雲雀はぶつかった。
ー超ツナsideー
雲雀と炎真が交戦する空域から離脱した超ツナとクロノは、ビルの屋上に着地し、リボーンがクロノの折れた左腕を応急措置をする。
「くっ・・・・すまない綱吉、おかげで助かった」
「気にするな。炎真が雲雀を引き受けてくれている」
「雲雀のヤツも継承式の時に炎真に完膚無く叩きのめされたからな。その時の借りを返すつもりなんだろう」
ツナがボンゴレファミリーを継承する(ように見せる芝居の)継承式でシモンリングの本来の力を取り戻した炎真によってボロボロに負かされた事が、プライドの高い雲雀にとって我慢ならない事だった。
「クロノ。なのは達は?」
「あぁ。なのはとフェイトとアルフに艦長とクロームは、現在あの隔絶結界の中で、前回交戦した襲撃者達と交戦中だ。結界を解く魔導師達は雲雀恭弥に全滅させられて、こちらから向こうに行けない状態だ・・・・」
「そうか」
ツナは街の一角を囲んだ結界を睨んで上空に飛び呟く。
「オペレーションX<イクス>」
[了解しましたボス]
「な! ま、まさか・・・・!?」
「『X BURNER<イクスバーナー>』で結界を破壊するつもりだな」
「待て待て! 待って!! 『X BURNER』って、聞いた所によると、なのはの砲撃魔法<スターライトブレイカー>級の技だよな?! あんな技を街中で使ったらどうなることかっ!? それよりも結界を張った魔導師を見つけた方が!」
「そんな悠長な事をやっている暇はねぇぞ。ツナ、構うことねぇやっちまえ!!」
「おいリボーーーーンっ!!」
などと喋っている内にツナが発射体制に入り、クロノはこの後の事後処理を考えて胃痛を感じていた。
ーシャマルsideー
「えっ? ウソ? あれってあの時の砲撃よね?? えっまさか撃つの! 撃っちゃうの?! 撃っちゃうつもりなの??!!」
シャマルは上空に移動したツナのモーションから、以前の襲撃で自分達が逃げるので精一杯だった砲撃を放とうとしていると理解し、玉のような汗が幾つも流れた。
「みんな急いで離脱してっ!!」
《シャマル?》
《なんだよ!? こっちは今忙しいんだよ!》
《何があった?》
「後で説明するから今は・・・・あっ・・・・」
「遅かった・・・・」
シャマルの視線の先には、橙色の炎の奔流、『X BURNER AIR』を放つ超ツナがいた。
ーヴィータsideー
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオンンッ!!
ヴィータと交戦していたなのはは、突然結界の一角に亀裂が走り、そこから橙色の炎の奔流が流れ出した。
「にゃっ!? な、何! 何なの!?」
「んだこりゃあっ?!」
「えぇっ!?」
「何事・・・・?」
「うわわわっ!」
「こ、これは!?」
なのは達と守護騎士達が突然の異常事態に愕然となると、穴が開いた場所から橙色の炎を噴射させながら超ツナが入ってきた。
「ツナさん!」
「あの野郎!」
なのははツナが来た事に喜び、ヴィータは悪態をつく。そしてシグナム達にシャマルの念話が送られる。
《皆。直ぐにこの場を撤退して! 急いで!》
「やむを得んか」
「チッ!」
《ザフィーラは雲雀さんを連れ出して! 私達の中じゃ雲雀さんを連れ出せるのは貴方だけだから!》
「心得た」
未だ雲雀に不信感&敵意を持つシグナムとヴィータ。雲雀を強制的に連れ出せる戦闘力が無いシャマル。雲雀が守護騎士の中で気に入っている上に、雲雀との仲も良好なザフィーラに白羽の矢が立った。
《結界内に閃光弾を出すわ! その隙に!》
結界内部に緑に輝く魔力弾が現れる。
「あれは・・・・?」
「すまんテスタロッサ。この勝負預けた」
「シグナム!」
フェイトとの戦闘を中断し、撤退するシグナム。
「なのは、無事か?」
「うん!」
超ツナと合流するなのはに、ヴィータが声を上げる。
「ヴォルケンリッター鉄槌の騎士、ヴィータだ!」
「あっ・・・・」
「そんなに話がしてぇならその内出向いてやる! だから、今は邪魔すんじゃねぇ!」
「あっ!」
ヴィータはなのはとツナを睨んで撤退した。シグナムとヴィータとザフィーラが撤退するのと同時に、緑の魔力弾が膨張し光輝く。
「くっ・・・・!」
「フェイト!」
「あぁ・・・・!」
「っ・・・・!」
アルフがフェイト庇い、ツナがなのはを庇う。そして光が収まると、隔絶結界は消え、通常空間に戻っていた。
ー炎真sideー
「ふっ!!」
「はぁあっ!!」
雲雀のトンファーと炎真の重力球を纏った拳がぶつかり、拳の斥力で雲雀を吹き飛ばすが、ロールの雲が移動してきて雲雀の足場になる。
「ロール」
「キュウッ!!」
ロールは特性の『増殖』でトゲ付の球体を作り出すと炎真に向かって攻撃した。
「っ!」
炎真は手を動かさずに重力操作をすると、球体は全て雲雀に戻りながら大きくカーブして、明後日の方向に飛んでいった。
「(雲雀さんの所に向かうように操作したのに、やっぱりまだ操作しきれていない・・・・!)」
「(ニヤリ)」
重力操作が上手くコントロールできない事に歯噛みする炎真だが、雲雀は炎真が噛み殺し概のある獲物になっているのを楽しそうにニヤリと笑みを浮かべるが。
「失礼いたします。雲雀様」
突然やって来たザフィーラが雲雀を羽交い締めする。
「何のつもりだいザフィーラ?」
「雲雀様、ここは一端退却を・・・・ぬおっ!?」
ザフィーラの拘束を無理矢理振りほどいた雲雀は、ザフィーラの顎にアッパーの要領でトンファーを振るうが、紙一重でザフィーラは回避した。
「ひ、雲雀様・・・・!」
「何人たりとも、僕の邪魔は許さない・・・・!」
雲雀がトンファーでザフィーラを攻撃するが、ザフィーラはトンファーを抑えて雲雀の押し合いを繰り広げる。
「雲雀様! こ、ここは拳イヤ、トンファーをお納め下さい!」
「噛み殺す!」
「(仕方ない! このまま転移魔法を使う!)」
ザフィーラは押し合いをする雲雀と雲雀の肩に乗ったロールごと、転移魔法で離脱した。
「(そう言えばツナ君に聞いたっけ? 雲雀さんは自分の戦い邪魔されるのが一番気に入らないって)」
雲雀恭弥。前回で起こった『虹の代理戦争』でも、『制限時間のルール』に縛られるのがイヤで、自ら参加資格を破壊した程の戦闘狂<バトルマニア>である。
ークロノsideー
エイミィ達オペレーターに追跡を任せたクロノは、ツナ達と合流した。
「クロノ、大丈夫?」
「あぁ大丈夫だフェイト。左腕を骨折したけど、リボーンの見立てでは、キレイに折られているから3日位には完治するそうだ」
ツナと炎真が駆けつけるまで、雲雀とガチの決闘をしていたクロノは、雲雀に折られた左腕をさする。正直純粋な戦闘能力では間違いなく、獄寺や山本や了平を上回っていた。
以前模擬戦で獄寺達と接戦し、ツナに完敗してからクロノは自分を鍛え直そうと訓練を積んでいなかったら、この程度の怪我で済まなかったとクロノは思った。
「他の本局の魔導師さん達は大丈夫なの?」
「あぁ、全員人体急所を攻撃されて一撃で気を失っただけだからね。すぐに復帰できるよ」
最も、魔導師である自分達が、魔法を使えない普通の人間(一応)である雲雀に手も足も出ずに瞬殺されただなんて、彼らのこれまで培ってきたプライドは、完膚無く粉々になったようなモノだが。
ーはやてsideー
ピンポーン
「ん? 誰やろ?」
「ピィッ?」
その頃。八神はやてと、はやてと一緒に留守番していたヒバードが突然のインターホンに首を傾げ、はやてが出る。
「はいはーい。ちょぉ待ってて!」
はやてが扉を開けると、そこに見知らぬ男性がいた。綺麗な黄色い髪に、フードにファールの付いた緑のモッズコートを着た整った顔立ちの外国人のお兄さんと、その男性に付き従う黒スーツの壮年のおじさんが立っていた。
「お邪魔するぜ。八神はやてちゃん」
「あのお兄さん誰?」
「おっと、コイツは悪いな。俺はディーノ、恭弥の家庭教師だぜ」
「えっ? 雲雀さんの??」
八神はやては、キャバッローネファミリーボス、跳ね馬ディーノと邂逅した。