ーフェイトsideー
「クライド・ハラオウン提督」
「クロノくんの、お父さんなんですね?」
フェイトと炎真(転送装置があるからまだいた)はリンディから、『闇の書』に関する事を聞こうとしたら、故人となったクロノの父親、リンディの夫、クライド・ハラオウンの事を聞いた。
ちなみにアルフはとっくに夢の中。
「ン・・・・11年前、前回の『闇の書』事件の時に亡くなっちゃった。私の旦那さん。犯人と『闇の書』の護送中、魔導師四人がかりで封印した筈の『闇の書』が暴走して、あの人は『闇の書』を艦の外に出すために、小型艇で護送コンテナを運び出そうとして・・・・それでそのまま・・・・」
その先は聞かなくても分かった。その時に、クライド・ハラオウンは帰らぬ人となったのだ。
「・・・・・・・・・・・・」
「その・・・・クライド提督が亡くなった時、クロノって・・・・」
「クロノは、3歳だったわね。葬儀の時にね、あの子、泣かなかったの。あの日を助けられなかった私の事を責めたりもしなかった。それからもず~っと一度も。そんなあの子が、私は時々不安でね。でも、学校で友達になってくれたエイミィがね、クロノが言ってた事を教えてくれたの。【父さんと母さんの事を、誰よりも誇りに思っている。だから、自分も同じ仕事をしたいんだ】って」
「「・・・・・・・・・・・・」」
炎真とフェイトはリンディをジッと見つめていた。
「あっ・・・・アララ。ごめんなさいね、こっちの話ばっかりで!」
「あっ、いえ・・・・」
「凄くいい話でしたよ」
「・・・・私ね、炎真くんや綱吉くん達にも感謝しているのよ」
「えっ?」
「あの子、クロノは14歳で執務官になったから、同年代の男友達がいなくてね。エイミィが友達になってくれていたけど、やっぱり男の子には男友達がいてくれる方が良いのねって、炎真くん達と一緒にいるときのクロノの顔を見るといつもそう思うわ」
「そう、ですか?」
「ええ。貴方達と話しているときのクロノの顔、凄く楽しそうにしているからね。肩肘張らずに対等に話ができる同性の友達がいるのは、良いことだとつくづく思ったほどよ」
「////////」
「・・・・・・・・」
炎真は少し照れ臭そうに、頭をかき、フェイトは微笑ましそうに炎真を見た。
「じゃあ今度はフェイトさんの話ね」
「は、はい」
「前にも少し聞いたけど、お母さんの事、プレシアの事、今はどう?」
「(ドキッ!)」
「・・・・・・・・」
プレシア・テスタロッサ。フェイトの母親であり、『PT事件』の主犯。現在管理局からは死亡扱いされている。
炎真はドキリとなるが、フェイトは思案するように顎に手をおく。
「やっぱり、今も上手く説明できません。なのはに助けてもらって、炎真達に受け入れてもらえて、リンディ提督やクロノに温かくしてもらって、私は確かに、ここにいるんですけど・・・・」
うつむいたフェイトの脳裏に、虚数空間にのまれる直前のプレシアの言葉が浮かんだ。
『ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、私は行くわ。アリシアと一緒に・・・!』
『っ!・・・・母さん・・・・!』
『貴女は行きなさい、貴女の“帰る場所”に、貴女の帰りを“待っている人達”の所に・・・・!』
『母さん・・・?』
『さようなら、フェイト・・・』
その時のプレシアの顔は、慚愧と悲しみ、そしてどこか慈しみに満ちた笑みだった。
「心のどこかが少しだけ、あの日で止まったままな感じがしています・・・・」
「フェイト・・・・」
炎真が心配そうにフェイトを見つめるが、フェイトは少し顔を上げて自嘲気味の笑みを作る。
「ダメだね、私・・・・」
炎真はフェイトのソッと抱きしめ、リンディは首を横に振る。
「そんな事ないわ、立派よ。これからもっと、色々お話しましょ。これまでの事も、これからの事も」
「はい、お願いします」
フェイトはリンディに目を向けると、炎真にすり寄るように身体を寄せた。
「(プレシアとアリシア、リニスに会わせるのは・・・・)」
「(もう少し、先になりそうね・・・・)」
フェイトに気づかれないように、炎真とリンディは目配せした。
ーなのはsideー
同じ頃、なのはは高町家の自分の部屋で、新たな力を得た『レイジングハート エクセリオン』から、自分の能力を詳しく説明された。
[形状変化は、私とバルディッシュ、共に3形態ずつ]
レイジングハートは空中ディスプレイで自分達の形態を説明する。
[バルディッシュのブローヴァとクレッセント。私はアクセルとバスターカノンは通常形態]
バルディッシュはハのルバード形態とデスサイズ形態。レイジングハートは杖形態と砲撃形態を表示した。
[そして三つ目は]
「フルドライブ・・・・エクセリオンモード」
[その通り]
なのははどちらかと言うと、獄寺と同じく武器の性能と能力と特性を見てから、訓練に入るタイプなので、夜遅くまでレイジングハートの説明を聞いていた。
ーシャマルsideー
翌日の7時前に帰宅したシグナムとヴィータ、それと雲雀の相手をしていて何処かボロボロの雰囲気になっている大型犬いや、狼形態のザフィーラを、シャマルが出迎えた。
ちなみに雲雀は地球に戻るとすぐに、学校があるので、並森へと帰っていった。
「おかえり、みんな」
「ああ」
「おう」
「結局、夜通しになっちゃったわね」
「その分、蒐集も進んだ。後で『闇の書』に」
「ええ」
シグナムとヴィータは靴を脱いで、ザフィーラは足の裏を拭いて、リビングに向かい、シャマルも続いた。
ーはやてsideー
「んん~~!! んっ!」
起きたはやては身体を伸ばすと、車椅子に向かおうとしたが。
ドクンッ!
「うっ、ああ・・・・」
はやての体内で、“何か”が胎動する。
「あっ・・・・ううっ・・・・ああっ・・・・!」
はやては胸を抑えて苦しむ。
「あっ・・・・あぁっ・・・・くっ・・・・!」
はやては車椅子に寄りかかるが、車椅子が音を立てて倒れ、はやても意識を失った。
「はやて!」
「はやてちゃん!」
車椅子が倒れる音が聞こえたのか、シグナム達が慌ててはやての部屋に入り、はやてを海鳴大学付属病院へ運んだ。
◇
「ん・・・・」
「はやて・・・・」
「ヴィータ・・・・みんな・・・・」
「心配したぜ、はやて」
「ディーノさん・・・・ロマーリオさん・・・・」
はやてが目を覚ますと、不安そうに自分を見つめるシグナムとヴィータとシャマル。シャマルから連絡を受けて駆けつけたディーノとロマーリオがいた。
「ロマーリオ。すぐにドクター石田を」
「あいよ」
ロマーリオが出て少しして、はやての担当医である石田先生が来て診察した。
「急な発作だったけど、今はもう大丈夫みたいね」
「もう、みんなが大げさにするから。ほんま、ご心配おかけしました」
「あのね、はやてちゃん」
「ん?」
はやては車椅子に乗り込もうとするが、石田先生が止め、しばらく入院する事になった。
ディーノとロマーリオははやての元気な姿を見届けて、部屋を後にした。
「しばらく入院とは、ショックや。それに、私が家を空けると、みんなや雲雀さんのご飯が心配や」
「それは、その・・・・」
「なんとかします。大丈夫です」
「お見舞い、毎日来るから!」
「ヴィータはええ子やな。そやけど平気やで」
はやてはヴィータの頭を撫でると、そのままヴィータに膝枕した。するとヴィータは安らいだような表情になった。
「そや、雲雀さんは来とらんの?」
「その・・・・一応連絡はしたのですが・・・・」
「哲矢さんから、風紀委員の仕事やらが貯まっていたみたいで、来られないそうです・・・・」
「あんな冷血野郎なんかほっとこうよはやて!」
ヴィータは雲雀に対して、相も変わらず毛嫌いするような態度をとっていた。
「そんな事言うたらアカンよヴィータ。雲雀さんも雲雀さんで忙しいんやから・・・・」
雲雀に悪態突くヴィータを諫めるはやて。
ー雲雀sideー
そして、はやてが入院している部屋のちょうど真上の屋上では、当の雲雀が手すりに寄りかかりながら夕日に背を向け。その隣に、草壁が直立不動の姿勢で、ザフィーラ(狼形態)が姿勢正しくお座りの体勢で控えていた。
ザフィーラはシャマルとの念話内容を雲雀に伝える。
「雲雀様。シャマルはこちらに残り、主のお世話と万が一に備えての護衛を。シグナム、ヴィータ、そして私は、お見舞い以外の時間を蒐集に当てる事となりました」
「そうか・・・・」
「では私も、蒐集に向かいます」
ザフィーラは雲雀に一礼すると、そのまま転移魔法を使って、その場から姿を消した。
「んで、お前はどうすんだ恭弥?」
すると、ディーノとロマーリオが、屋上に入ってきた。
「はやての症状は悪化している。このままでは手遅れになっちまうぜ?」
「・・・・・・・・」
雲雀は何も言わず、ただ夕暮れの街を見つめていた。
ーリボーンsideー
リボーンとツナと炎真が、沢田家のツナの部屋でクロノからの連絡を受けていた。
「守護騎士達の動きが活発になった?」
《ああ、なのはとフェイトにはもう伝えているが、どうも行動方式を変えたようだ。君達の力を借りたい状況になったら、こちらから連絡する》
「ああ」
「うん」
「了解」
クロノ達との通信を終えると、ツナはリボーンに問う。
「リボーン。本当なのか? 『闇の書』の事?」
「ああ。昨夜見つけた記述に書かれた事が事実であればな」
「事実かどうか確かめるには・・・・」
「アイツに聞くのが一番だな」
リボーンはレオンを携帯電話に変身させると、ある人物にハンズフリーで連絡した。少ししてその人物が出た。
《やあリボーン君に綱吉君に炎真君♪ 守護騎士、ヴォルケンリッターと『闇の魔導書』に関してかな?》
「白蘭・・・・」
そう、『あらゆる平行世界の自分と知識を共有できる能力』を有する、白蘭だった。
『PT事件』でプレシアを救出した時にも彼の能力で、プレシアとアリシアとリニスを助ける事ができた。白蘭ならば、『闇の書』に関する知識が有るのではないかと、リボーンが連絡したのだ。
「白蘭、お前の事だ。こっちの状況は概ね理解しているんだろう?」
《まあね♪ 僕としては面倒だからなるべく管理局に関わり合いたく無いけど、綱吉君達には“借り”があるし、高町なのはちゃん達とのこれからの展開にも興味あるから、ある程度の協力はするよ♪》
白蘭の能力を管理局が知れば、“どんな手段を用いても”、白蘭を捕らえると考え、ツナ達は白蘭の能力を関してはリンディ達にも詳しく教えていない。
《『闇の書の呪い』を打ち破る方法はあるよ》
「本当っ!?」
《うん。でも、成功するかは分からないよ。それに、その方法の為には“2つ程の条件”をクリアしないとね》
「その方法は何だ? 白蘭?」
《そうだね・・・・先ずは、“彼ら”に交渉しないとね》
「“彼ら”・・・・?」
炎真とツナは固唾を飲み、リボーンは真剣な表情で白蘭の言葉を待つ。
白蘭を意を決して、言葉を紡ぐ。
《・・・・“復讐者<ヴィンディチェ>”だよ・・・・》
「「「っ!!?」」」
ツナ達は息を呑む、裏社会の法の番人、最強の赤ん坊アルコバレーノの成れの果て、『復讐者<ヴィンディチェ>』の名前が出てきたことに・・・・。
ー白蘭sideー
「(ま、と言っても。これで上手く行くかは分からないけどね。何しろこの世界の八神はやてちゃんは、『ギル・グレアム』と、その使い魔である『リーゼロッテとリーゼアリア』と接点が無いみたいだし・・・・)」
白蘭は、“自分の知る歴史と違う流れになったなのは達”に、興味を抱き始めた。
ちなみに、その『ギル・グレアム』は管理局を引退し、『リーゼ姉妹』と共に、グレアムの故郷のイギリスで悠々自適に晴耕雨読な生活をしていた。
この世界の白蘭が知っているのは、『テレビ版 リリカルなのはA's』なんです。