ーはやてsideー
「ん・・・・眠い・・・・」
『闇の書』の内部。暗闇に包まれた空間に、八神はやては眠そうに呟いた。
そしてその前には、融合騎の少女が優しく、静かにはやてを見つめ、ソッと呟く。
「そのままお休みを、我が主・・・・」
「ぁ・・・・・・・・」
「あなたの望みは、全て私が叶えます・・・・」
そんな二人に近づく影があることを、二人はまだ気づかない。
ーツナsideー
「うぉおおおおおおおおおおっ!!」
「はぁああああああああああっ!!」
ツナと融合騎が、空中で激しく拳をぶつけ合い、海鳴町近海にまで飛んでいった。
時に融合騎が魔力弾を放つが、ツナは巧みな空中旋回で回避し、ガントレットから炎の放出技・『Xカノン』を放つ。
「ナハト、撃ち貫け」
「『Xカノン』!」
融合騎はそれを正面から受け止め、再び魔力弾をツナに放つが、ツナもXカノンで相殺し、海に隆起した岩がその余波で崩壊した。
「流石は、“ジョットの後継者”だな・・・・」
「“ジョット”・・・・! “初代<プリーモ>”の事か?」
「もはや、過ぎ去った思い出だ」
悲しそうにそう呟いた後、再び橙色と黒色の閃光が海鳴近海で激しくぶつかった。
「す、すごい・・・・!」
「呆けている場合じゃねぇぞ」
ツナと融合騎の戦いに圧巻されるなのはを肩に乗ったリボーンが正気に戻す。
「良いかなのは。タイミングを見逃すな。ツナがヤバくなったらお前が助けに回れ、気を抜くなよ?」
「う、うん・・・・! 頑張ろう、レイジングハート」
[了解です、マスター]
負傷した獄寺達は空に来られない為、なのははツナをサポートするタイミングを見定めていた。
ーはやてsideー
「私は、何を望んだっけ?」
「悲しい現実を、すべて消してしまいたいと・・・・」
「・・・・・・・・」
はやての脳裏に、一人の少年の言葉が過った。
【誰かが助けてくれる事を期待して、自分でどうにかしようとしない弱虫には興味ないな】
「(雲雀、さん・・・・)」
ーツナsideー
「っっ!!」
Xカノンと魔力弾のぶつかり合いで、一瞬視界が眩んだツナの眼前に、融合騎がナハトヴァールのパイルバンカーを叩きつけようとするーーーー。
「ツナさん!!」
しかし寸前で、なのはが魔力砲を放ち、融合騎は後方に回避し、なのははツナの隣に立つ。
「お前達も、もう眠れ」
「・・・・まだ眠れない。俺達は、まだ眠る訳には行かないんだ!」
「いつかは眠るよ。だけどそれは、今じゃない!」
「眠ればすべてが終わる訳じゃねぇ。どんな辛い事でも、目を開けて進む。それが生きるって事だぞ」
ツナとなのはとリボーンの言葉を聞いても、融合騎は態度を変えず、その頬には涙が流れていた。
「レイジングハート、エクセリオンモード」
なのはがそう言うと、レイジングハートは薬莢を射出しーーーー。
「ドライブ!」
[イグニッション]
なのはなBJがその姿が変わり、レイジングハートも杖からまるで、突撃槍のような形状に変形した。
「悲しみも悪い夢も、終わらせて見せる!」
「・・・・・・・・・・・・」
なのはは新たな姿、『エクセリオンモード』へと姿を変えたのを見て、融合騎は片腕を横に振ると、海からマグマが噴出しーーーー。
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
それを見て、ツナ達も改めて気を引き締めた。
ー炎真sideー
「・・・・・・・・・・・・」
炎真は、眼前に立っている戦闘形態の自分を見据えると、後ろにいる両親と妹の真美に振り向く。
「炎真、お兄ちゃん・・・・?」
炎真は首を傾げる真美に目線を合わせようと腰を下ろし、真美の頭を撫でた。
「ゴメンね、真美・・・・! 守れなくて、ゴメンね・・・・! 助けられなくて、本当にゴメンね・・・・!!」
炎真は涙を流しながら、真美に謝る。嫌、真美だけでなく、両親にもその謝意を持っていた。
「お兄ちゃん・・・・」
「でも、ゴメンね真美・・・・僕はまだ、そっちに行けないんだ・・・・」
炎真の後ろにいた戦闘状態の炎真が歩を進め、炎真と一体化すると、炎真の姿が、戦闘状態へと変わった。
「真美、父さん、母さん・・・・行ってくるね」
炎真は涙を流し、両親と真美も涙を流しながら頷いた。
それを見て、炎真は両手の炎を噴射して、空を飛んでいった。
ーフェイトsideー
フェイトはアリシアと共に、外で木漏れ日が漏れる大きな木の下でのんびりと遊んでいると、空に雨雲が立ち込め始め、フェイトとアリシアは家に戻らず、木で雨宿りをすると、ちょうど雨が降ってきた。
「ねえアリシア、これは夢なんだよね」
「・・・・フェイトは、変な事を言う子だね。夢な訳、ないじゃない」
沈黙が二人を包むが、フェイトが声を発する。
「アリシアと私は、同じ時間を生きられない。アリシアが生きてたら、私は生まれてないんだもの・・・・」
「・・・・・・・・」
あまりにも残酷な事を、フェイトは辛そうに言うが、アリシアは黙って耳を傾ける。
「母さんも、私には、あんな風には・・・・!」
「優しい人だったんだよ。だけどちょっと、一生懸命過ぎたの。死んじゃった私を、生き返らせる為に・・・・」
「うん・・・・」
「ねえフェイト、夢でも良いじゃない? ここに居よ、ずっと一緒に。私、ここでならフェイトのお姉ちゃんでいられる。ママやリニスだって、フェイトにうんと優しくしてくれる。家族みんなで、楽しい事いっぱいある」
「・・・・・・・・」
俯くフェイトの手に、アリシアは優しく握る。
「フェイトの欲しかった幸せ、全部あげられるよ?」
ーはやてsideー
「私が、欲しかった幸せ・・・・」
「健康な体。愛する者達との日々。眠ってください。そうすれば、夢の中で貴女はずっとそんな世界にいられます。誰も貴女を傷つけない。悲しみも痛みも何もない、そんな世界に・・・・」
「ぁ・・・・そんな、あったらええな・・・・」
再び眠りにつきそうになるはやて。しかし、暗闇の世界が戦闘の影響で激しく揺れた。
ーなのはsideー
ツナとなのはが連携で融合騎と戦闘し、なのはが砲撃魔法を繰り出すが、融合騎は難なく防ぐ。
「1つ覚えの砲撃。通ると思っているのか?」
「通す!!」
「ナッツ!」
『ガァウッ!!』
薬莢が噴出されると、レイジングハートに何枚もの翼が生え、ツナもナッツが『ガントレット』に変身した。
[スタンバイ]
「レイジングハートが力をくれてる。ツナさんが一緒にいる。泣いてる子を救ってて!」
レイジングハートの先端と翼から赤い刃が飛び出す。
「エクセリオンバスターA・C・S! ドライブ!!」
「『ビッグバンアクセル』!!」
なのはとツナが、融合騎に突っ込み、融合騎は障壁で防ぐが押され、隆起した岩を次々と粉砕していった。
「「はぁああああああああああっ!!」」
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
一際大きな岩に叩きつけられ、漸く止まった。
「くっ・・・・うっ・・・・」
「届いて! ブレイク・・・・!」
なのはが次々と薬莢を射出すると、レイジングハートの先端が障壁を僅かに貫く。
「まさか・・・・!」
「シュート!!」
爆発が起こり、岩柱が崩れ、離れた位置で腕を抑えるなのはをツナが支えた。
ほぼゼロ距離からの砲撃に、融合騎を止められたかと思ったが、融合騎は健在で、ツナとなのはは気を引き締めた。
ーはやてsideー
揺れる世界で、はやては目を冷ましそうになる。
「そや・・・・私はまだ・・・・ん?」
目を開けそうになったはやての眼に、涙を流す融合騎の顔が映った。
ーフェイトsideー
雨雲から雷が迸るのを見て、フェイトはアリシアから離れる。
「ありがとうアリシア、ゴメンね・・・・だけど私は、行かなくちゃ」
アリシアに振り向いたフェイトの目は潤んでいた。
「っ・・・・! ゴメンねは、私の方」
アリシアはフェイトに、待機状態のバルディッシュを差し出す。
「本当は分かってた。だけど少しでも、夢の中でも、一緒にいたかったの」
「っ・・・・!」
アリシアはフェイトの手にバルディッシュを握らせた。
フェイトはアリシアをぎゅっと抱き締めた。
「ゴメン・・・・! ゴメンね、アリシア・・・・!」
「いいよ。私はフェイトのお姉ちゃんだもん。待ってるんでしょ? 大事な人と、大切な友達と、優しい人達が」
「うん・・・・!」
「じゃ、いってらっしゃい。フェイト」
「ありがとう、お姉ちゃん、大好き・・・・!」
「私も、大好きだよ、フェイト。現実で私に会ったら、同じように、抱き締めて・・・・!」
「えっ・・・・?」
涙を流して笑みを浮かべるアリシアに、フェイトは少し戸惑うが、アリシアは光となって消えた。
「・・・・・・・・」
「フェイト・・・・」
フェイトの後ろに炎真が現れ、後ろからフェイトを抱き締めると、フェイトは炎真の手を握った。
「行こう」
「うん」
フェイトは『真・ソニックフォーム』へとセットアップすると、バルディッシュを大剣のザンバーフォームへと変形させ、炎真を拳に重力球を生み出し、上空へ投げる。
「行ってきます。私が今、いるべき場所へ! 疾風迅雷!!」
「超新星!!」
フェイトがザンバーフォームのバルディッシュを振り下ろし、炎真は重力球を爆裂させて、夢の世界を撃ち破った。
ーはやてsideー
眠りそうになるはやての耳に、聞き覚えのある声が響いた。
「・・・・君、いつまで寝ているんだい?」
「はっ!」
目を見開いたはやての目の前には、融合騎の少女の向こうに、学ランを羽織った黒髪の少年が立っていた。
ビキッ!!
その時、暗闇の世界に亀裂がはしったーーーー。