エレナが亡くなってから、D・スペードは様子が変わった。規模を縮小しようとするプリーモの考えを否定し、さらに力を持つべきと進言した。
当然プリーモはこの考えを否定しようとしたが、プリーモ達が守る街に、敵対勢力が攻め入り、ボンゴレだけでなく、多くの一般人が被害を受けた。
それを聞いたプリーモは仕方なく、再びボンゴレの規模を大きくさせていった。
【これで、良いのかしら・・・・?】
【・・・・・・・・】
そんな中、ヴォルケンリッター達はD・スペードの本心に気づいていた。エレナを失ってから精力的にボンゴレの勢力拡大に尽力しているが、このままではプリーモ達とD・スペードの間に亀裂が生まれるのではないかと、シャマルとザフィーラは危惧していた。
【でもよ、デイモンの言うことも間違ってねぇよ。ジョットが規模を縮小したせいで、エレナは・・・・!】
【確かにな。反抗する勢力がいる限り、同じ事が繰り返される。スペードのやり方にも一理ある】
ヴィータとシグナムを危惧しているが、今は仕方ないんだと割り切り、ボンゴレの勢力拡大に協力した。
それが、主・アラウディの望みと違う事だと分かっていても・・・・。
◇
それから徐々にD・スペードは、かつてアラウディが『夜天の魔導書』を発見する前に捕縛した黒魔術のコレクターであった領主が残した魔術書や禁術の類いの研究をするようになった。
プリーモや他の守護者達はD・スペードに不信感を持つようになっていき、敵対勢力との抗争が大きくなっていくとD・スペードがプリーモことジョットとGの旧友『シモンファミリーボス』、『シモン・コザァート』に救援要請を勝手に出した事を知り、それが『D・スペードの罠』であると知らず、シモン・コザァートは罠に嵌められた(しかしこの策略は、プリーモがD・スペードを除いた守護者達にシモン・コザァートを救出させた事で失敗した)。
さらに不穏な話が守護騎士達の耳に入った。D・スペードのプリーモをボンゴレから排除しようとする動きがあると聞き、段々狂っていくD・スペードを見て、説得しようとした。
【なぁ、デイモン、これはちょっと、いや完全にやり過ぎだろう?】
【このまま抗争を続ければ、ボンゴレと何の関係の無い数多の市民の命が危険にさらされるぞ】
【ヌフフフフ、それがどうしました?】
【どうしました、だと・・・・?】
【これからのボンゴレは更に強く、大きく、何者も逆らえない最強の組織となります。多少の犠牲など、ボンゴレの発展の為ならば“安い物”ではないですか?】
【デイモン・・・・貴様、本気でそう思っているのかっ!?】
ザフィーラが拳を握り、シグナムが鞘に納めたレイヴァティンの柄に手をかける。
【当然ですよ。全てはボンゴレが最強の組織となる為です】
【・・・・デイモンさん、そんな事を、力無い人達を犠牲にするようなこんなやり方! エレナさんが喜ぶ筈がありません!!】
【・・・・・・・・・・・・】
【なぁデイモン、お前言ってたよな。『力なき領民達の為に尽くす事こそ、高貴なる者の務めですよ』って、それなのに、こんなの違うだろう。エレナだって弱い奴らを守るためにあるボンゴレが好きなんだよ、こんな事やってたら、エレナがきっと悲しんじゃうよ。だから【うな・・・・!】えっ?】
シャマルとヴィータが何とか説得しようとするが、D・スペードは顔を俯かせ、押し殺したような声を発し、顔を上げると、いつもの慇懃無礼な顔ではなく、憤怒に染まった怒りの表情だった。
【貴様らがエレナの思いの代弁者を気取るなど! 思い上がるなっ!!】
D・スペードはそう言うと、『D・スペードの魔レンズ』を使うと、守護騎士達の身体は金縛りにあったかのように動けなくなった。
【スペード、貴様!】
【どういうつもりだっ!?】
【以前から、あなた方を許せなかったんですよ。あの日、あなた方が襲撃者達をちゃんと始末出来ていたら、彼女は、エレナは! 死ぬ事は無かった!!】
【【【【っっ!!】】】】
D・スペードの言葉に、守護騎士達は息を呑み、そのまま守護騎士達のデバイスを奪った。
【待てっ!】
【おや、管制融合騎ではないですか?】
そこに融合騎(リインフォース)が駆けつけ、D・スペードから守護騎士達を守ろうと立ち塞がる。
【・・・・以前から、主アラウディはお前の動きを怪しんでいた。それがこんな事になるとはな】
リインフォースはシュバルトクロイツを取り出し、D・スペードを捕縛しようとするが、D・スペードも杖を取り出してリインフォースとぶつかり合った。
リインフォースは魔力弾等を放つが、D・スペードは幻術を駆使してリインフォースを翻弄し遂にーーーー。
【貰いましたよ。『夜天の魔導書』!】
【し、しまった!】
アラウディが持たないのでリインフォースが預かっていた『夜天の魔導書』を奪われた。
【エレナを救えなかった、守れなかったお前達が、穏やかな安らぎなど与えてなるものかっ!】
D・スペードは手のひらから黒い渦のような炎、『夜の死ぬ気の炎』を生み出した。
それを見てリインフォースの顔が驚愕に染まる。
【そ、その炎は、『夜の炎』!? D・スペード! 貴様まさか、復讐者<ヴィンディチェ>と、『バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタイン』と手を組んだのかっ!?】
【ヌフフフフ! その通り! この炎と『禁術』を使えば、私は永遠に生き続ける! そしてこれからも、ボンゴレを弱くする不穏分子を排除し続ける! その為にも、お前達は消え失せろっ!!】
D・スペードが手袋を脱ぎ捨て、指先を噛ると血が流れ、その血で『夜天の魔導書』に魔法陣を描くと、『夜の炎』を『夜天の魔導書』に叩きつけた。
『夜天の魔導書』はその魔法陣と『夜の炎』で黒く染まっていき、さらに鎖が巻き付いていった。そして、リインフォースや守護騎士達に異変が生じた。
【こ、これは・・・・!?】
【な、なんだよこれっ!?】
【記憶が、無くなっていく・・・・!?】
【主、アラウディの事も、エレナ殿の事も、ボンゴレの事も・・・・!?】
【デ、デイモン、スペード、貴様っ!】
【ヌフフフフ、ヌハハハハハハハハハハ!! これであなた方の記憶からボンゴレが消えるっ! そして『夜天の魔導書』とアラウディの繋がりを絶ち切らせて貰いましたよ! これであなた達は再び宛の無い流浪の旅に行くことになります! 全てはボンゴレの為に!!!】
高笑いをするD・スペードの目の前で『夜天の魔導書』が完全に鎖が巻き付くと、守護騎士達もリインフォースも、徐々にその姿が魔導書に吸い込まれていった。
【【【【【あ、主、アラウディ・・・・!!】】】】】
5人は吸収されると、D・スペードは『夜天の魔導書』を『夜の炎』で作った渦を作り出し、どこかへ放り投げようとしたその時、
バンッ!!!
【っ!】
D・スペードのいた部屋の扉を蹴破って現れたのは。
【・・・・・・・・・・・・・・・・】
鋭い殺気を放つアラウディだった。
【ん~ヌフフフフフ。少し遅かったですねアラウディ】
【・・・・・・・・・・・・・・・・】
アラウディは冷酷に微笑むD・スペードにゆっくりと近づきながら声を発する。
【D・スペード。その『魔導書』をこちらに渡して貰う】
【ヌフフフフ。あなたに渡して何になると? この『魔導書』は既にリセットされた。もはやあの守護騎士達を呼び出してもーーーー彼女達は、あなたの事を忘れてしまったんですよ】
【・・・・・・・・・・・・・・・・】
アラウディの目がさらに鋭くなるが、突如『夜天の魔導書』は光り出し、空の彼方に飛んで行ってしまった。
【おやおや。取り戻そうとしていた魔導書が行ってしまいましたねぇ】
【・・・・・・・・D・スペード、君を逮捕する!】
【ヌフフフフ、やってみなさい!】
D・スペードとアラウディが死闘を開始したその瞬間、その世界は光に包まれたーーーー。
次回、裏切りの霧の模造と孤高の浮雲の最終決戦がはじまる。