ーツナsideー
「うわぁ、これが・・・・!」
「私達の新デバイス・・・・ですか?」
「そうで~す! 設計主任アタシ! シャリオ・フィニーノ! 協力! なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさんとリィン曹長!」
「はぁ・・・・」
機動六課のデバイスルームにやって来たツナとエンマとリボーン、そしてフォワード陣に楽しそうに説明する長い茶髪メガネをかけた管理局の濃い茶色の制服を着た女性は、メカニックの『シャリオ・フィニーノ一等陸士』こと、シャーリーである。
スバルとティアナの前に置かれている、青い宝石を模したペンダント上のデバイス『マッハキャリバー』と、白地に赤いXマークを円が囲み、中央に真っ直ぐ縦線が伸びているカード上のデバイス『クロスミラージュ』だった。
「『ストラーダ』と『ケリュケイオン』は変化無し・・・・かな?」
「うん、そうなのかな?」
エリオとキャロの前にあるのは二人のデバス、紫色の腕時計の『ストラーダ』と桃色の宝玉を模したブレスレットの『ケリュケイオン』。
「違いま~す!」
エリオとキャロが首を傾げていると、急にリィンが出てきて叫んだ。
「変化無しは外見だけですよ!」
「リィンさん!」
シャーリーの声かけに、リィンが合いの手で応える。
「はいです! 二人はちゃんとしたデバイスの使用経験は無かったですから、感触に慣れてもらうために基礎フレームと最低限の機能だけで渡してたです!」
「あ、あれで最低限・・・・?」
「ホントに・・・・?」
「(ま、優等生のなのはの事だ。いきなり最大ではいかねえな。俺もツナを超ハイパーモードに馴らす為に通常死ぬ気モードで軽く修行させたもんだ)」
「(へぇ~そうなんだ。ツナくん?)」
「(アレの何処が軽くだ・・・・!)」
自分達がさっきまで使っていたデバイスが、最低限の機能しか持っていなかった事にキャロとエリオは驚き、こっそり話ながらリボーンは、かつての修行を感慨深く思い出し、エンマはナッツを肩に乗せて青ざめるツナに首を傾げる。
パンツ一丁の死ぬ気で崖を登り、落ちたら死ぬ気で休み、また登り、落ちたらまた休み、また登り、落ちたらまた休み、頂上に登りきるまで繰り返される拷問のような修行だったのだ。
「皆が使うことになる四機は、六課の前線メンバーとメカニックスタッフが、技術と経験の粋を集めて作った最新型! 部隊の目的合わせて、そしてエリオやキャロ、スバルにティア、個性に合わせて作られた文句無しに最高の機体ですぅ!」
リィンがそう言うとデスクの上にある四機のデバイスがリィンの周りに集まり始めた。
「この子達は皆まだ生まれたばかりですが、色んな人の思いや願いが込められてて、いっぱい時間をかけてやっと完成したですぅ」
そしてリィンはティアナ達にそれぞれデバイスを渡す。
「だから唯の道具や武器と思わないで、大切に、だけど性能の限界まで思いっきり、全開まで使ってあげて欲しいです。丁度ツナさんとナッツみたいな感じですぅ」
「ガゥ?」
ナッツが首を傾げた。
「うん、この子達もね。きっとそれを望んでるから」
リィンとシャーリーが四人にデバイスを説明をしていた。
「やっぱりデバイスって凄いんだね」
「そうだな。丁度俺達の世界の匣兵器みたいな物だ。複数の匣を持たなくて良い分、管理局の方が技術的に上だがな」
「でも、結構スゴい技術をした物もあるけどね・・・・」
ツナの脳裏に、『フェイトのソニックフォームを上回る超加速装置』、『時の列車』、『地球のメモリ』、『欲望のメダル』、『宇宙エネルギーを宿すスイッチ』等が浮かんだ。
「ゴメンゴメン、お待たせ~」
すると、デバイスルームになのはが入って来た。
「なのはさ~ん!」
「ナイスタイミングです。丁度これから機能説明をしようかと」
「そう。もうすぐに使える状態なんだよね?」
「はい!」
なのはの問いにリインが元気よく答える。
「まず、その子達皆、何段階かに分けて出力リミッターを掛けてるのね。一番最初の段階だと、そんなにびっくりするほどのパワーが出るわけじゃないからまずはそれで扱いを覚えて行って」
「で、各自が今の出力を扱いきれるようになったら、私やフェイト隊長、リインやシャーリーの判断で解除していくから・・・・」
「ちょうど、一緒にレベルアップしていくような感じですね」
「あっ、出力リミッターって言うと、なのはさん達にも掛かってますよね?」
「あぁ~、私達はデバイスだけじゃなくて、本人にもだけどね」
「「「えっ!?」」」
「リミッターが、ですか?」
「「???」」
「・・・・・・・・」
なのはの言葉を聞いて驚愕するフォワード陣。しかし、ツナとエンマは良く分からず首を傾げていた。リボーンは何の事か察しがついていたが。
「『能力限定』って言ってね。六課<ウチ>の隊長と副隊長は皆だよ。私とフェイト隊長、シグナム副隊長にヴィータ副隊長・・・・」
「はやてちゃんもですね」
「うん」
「えっと・・・・」
なのはが出力リミッターのかかっている魔導師達の名前を挙げていく。
ティアナはすぐにその理由を理解したのだが、その隣のスバル、エリオ、キャロの三人はまだ唸っていた。そこへシャーリーが追加の説明をする。
「ほら、部隊ごとに保有できる魔導師ランクの総計規模って決まってじゃない?」
「あ・・・・え・・・・そうですね・・・・」
「一つの部隊で優秀な魔導師を多く保有したい場合は、そこに上手く収まるよう魔力の出力リミッターをかけるんですよ」
「まぁ、裏技っちゃあ裏技なんだけどね」
「(つまる所の、他の部隊とのパワーバランスだな)」
「うちの場合だと、はやて部隊長が4ランクダウンで、隊長達は大体2ランクダウンかな」
「4つ!? 八神部隊長ってSSランクのはずだから・・・・」
「Aランクまで落としてるんですか」
「はやてちゃんも色々と苦労しているです」
エリオとキャロの言葉に、リィンが少し暗い声で言う。
「私は元々S+だったから、2.5ランクダウンでAA。だからもうすぐ、一人で皆の相手をするのは辛くなってくるかな」
「隊長さん達ははやてちゃんの、はやてちゃんは直接の上司の『カリム』さんか、部隊の監査役の『クロノ提督』の許可がないとリミッター解除が出来ないですし・・・・許可は滅多なことでは出せないそうです」
「・・・・そうだったんですね」
その話を聞いたメンバーは暗い表情をするが、ツナとエンマは相変わらず首を傾げていた。
「ねえリボーン、つまりどういう事なの?」
「つまりなのは達隊長陣は、上層部の意向で手加減させられて戦っているって事だぞ」
「それじゃ、もしなのはちゃん達より強い敵が現れたらどうするんだよ?」
ツナには経験がある。スクアーロ、γ、突然今の自分達よりも強敵と遭遇する状況を。
「もう! ツナくんは心配性だねぇ、なのはさん達隊長陣は管理局でも最強戦力だよ! その皆さんよりも強い相手なんて、そうそういる筈ないって!」
シャーリーがカラカラと笑い、フォワード陣も確かにと頷く。
《実は目の前のツナさん達の方がはやてちゃん達より強いって、皆知らないですからねぇ》
《・・・・リィン。目の前にいるのは“8年前のツナさん達”だよ。流石にもう私達の方が実力は上だよ》
リィンて念話をしながらなのははそう会話していた。
と、その時ーーーー。
ヴーーヴーーヴーー!
いきなり周りが赤く点滅し、警報が鳴り響いた。
「このアラートって・・・・」
「一級警戒態勢!?」
「グリフィスくん!!」
《はい! 教会本部から出動要請です!》
《なのは隊長、フェイト隊長、グリフィス君。こちらはやて!!》
デバイスルームにあるモニターで、指揮官補佐である『グリフィス・ロウラン』に連絡をいれると、反対側から、『ある教会』にいるはやてから連絡が入る。空間モニターでフェイトの顔も映し出された
《状況は?》
《教会調査団で追っていた『レリック』らしきものが見つかった。場所は、エイリム山岳丘陵地帯。対象は山岳リニアレールで移動中》
《移動中って・・・・!》
「まさか・・・・!」
《・・・・そのまさかや。内部に進入した『ガジェット』で、車両の制御が奪われてる》
「『ガジェット』?」
「お前ら二人が交戦したロボットの事だ」
リボーンがツナとエンマに説明した。
《リニアレール車内のガジェットは最低でも30体。大型や飛行型の未確認タイプも出ているかもしれへん。いきなりハードな初出動や・・・・なのはちゃん、フェイトちゃん、いけるか?》
《私はいつでも!》
「私も!」
隊長の二人は頷く。
《スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ツナさん、エンマさん、皆もオッケーか?》
「「「「はい!!」」」」
《よーし、良い返事や。シフトはA-3。グリフィス君は隊舎での指揮。リィンは現場管制》
《はい!》
「はい!!」
《なのはちゃんとフェイトちゃんは現場指揮!!》
「うん!」
《ほんなら・・・・機動六課フォワード部隊、出動!》
「「「「「はい!」」」」」
《ツナさん! エンマさんは同行! 状況に応じて援護したって!》
「うん!」
「わかった!」
《・・・・皆は先行して。私もすぐに追いかける!》
「うん!」
この会話を最後に、フェイトとはやてからの通信が切れる。
「さて、何が起こるか、少し楽しみだぞ♪」
リボーンは帽子を目深に被り、ニヤリと笑みを浮かべたいた。
ー???sideー
そしてここは何処かの研究所の一室。
その部屋の中央に空中ディスプレイが上がり、リニアレールの姿が映し出されていた。
その映像を二人の男性が眺めている。
一人は白衣を着た科学者。一人は黒衣の男性。
「そろそろ六課が来るね?」
「ええ。あの場に向かわせたのは『通常のガジェット』です。“管理局の魔導師ごときでも、在庫処理の相手くらいにはなるでしょう”」
「で・も♪ 彼らも来たらどうする?」
「その為に、『新型』も向かわせています」
科学者がそう言って、パチンっと、指を鳴らすと、空中ディスプレイの隣に新たなディスプレイが表示され、十数体のーーーー『藍色のガジェット』が向かっていた。
「あれ? でも良いのかな? 気取られるかもよ?」
「問題ありませんよ。“エネルギーはほんの少ししかない機体”ですしね」
「あっそ。じゃ僕は『娘さん達』の調子を眺めてくるよ」
「どんな案配ですか?」
「んー、漸く“γくんくらいには近づけたかな”?」
「『電光のγ』近く、ですか。では、まだまだ戦力としては頼りないですね」
「まあね♪」
二人は薄い笑みを浮かべながらこれから起こる、“自分達の知らない歴史が動くのを楽しみにしていた”。
なのは達はもう自分達はツナ達より上だと思っています。
そして、次回で守護者と合流です。