ーエンマsideー
「何をしてるのツナは!? 早く止めないと!」
フェイトがバルディッシュを取りだし、セットアップしようとする。が、その手をエンマが握って止めた。
「フェイト。黙って見ててくれ」
「エンマ・・・・?」
エンマの静かな、しかし重い圧力<プレッシャー>を含ませた言葉に、フェイトは身体を硬直させると、スバルを抱えた了平が戻ってきた。
「「スバルさん!」」
「先輩。スバルは大丈夫っすか?」
「極限に大丈夫だ。スバルは頑丈だからな」
「はにゃひにゃふにゃへにゃほにゃ・・・・」
「うん。大丈夫だ」
目を渦巻きにしながら珍妙な言葉を漏らすスバル。ソレを見て山本も、安堵したように頷く。
「フェイト。邪魔してやるなよ」
「ヴィータ・・・・?」
フェイトは、いの一番に飛び出していきそうなヴィータが、驚くほど冷静である事に面食らった。ちなみに、ヴィータの両腕には、悲しそうに、辛そうになのはを見上げるナッツが抱っこされていた。
「なのはのヤツ。“自分の教導の意味を教えていなかった癖”に、ティアナが言う事を聞かないからって砲撃魔法なんて使いやがって・・・・ちょっと調子に乗りすぎだ」
「ああ。少しばかりお灸をすえてやらねぇとな」
ヴィータの言葉に、隣に立っていたリボーンが同意するように頷いた。
「なのはが調子に乗りすぎってーーーーなのはが間違っているって言うのヴィータ・・・・!」
フェイトが目を鋭くしながらヴィータを睨むが、ヴィータはエリオとキャロがビクッとなる程のフェイトの睨みを見ても、まったく動揺しなかった。
「少なくともーーーー今この時は、アタシはなのはを否定するよ。アイツ、“アタシ達に言ってきた事を忘れちまっているようだし、自分はもうツナ達より強い”って思い上がっちまってるからな」
「っ・・・・!」
ヴィータが動かないなら自分が、とエンマの手を振り払って動こうとするフェイト。
しかし。
ーーーーギュィィィィィィン!
「うあっ!!?」
突然フェイトが後ろに引っ張られたかのように引き寄せられる。後ろを振り向くと、フェイトの拳位の大きさの重力球があり、フェイトはソレの引力に引き寄せられたようだ。
「『大地の重力』・・・・!?」
「行くならフェイト。この重力から脱出してからにしなよ」
「っ・・・・!」
エンマが戦闘モードになると、その瞳から放たれる威圧感に、フェイトは萎縮してしまった。
「ぐぴゃ? タコ頭とティアナも、戦ってるもんね」
「牛くん。気を付けてね」
上空で戦うツナとなのはと同じように、地上で戦闘を始めた獄寺とティアナ、ランボが身を乗り出すが、クロームが抱きよせ、リボーン達も一端ソッチに目を向けた。
ー獄寺sideー
「おらよ」
「っ!」
ーーーーバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!!
ーーーードガドカドガドカーーーーンッ!!
獄寺が両手の指に挟めた八本のダイナマイトを投げるが、ティアナはクロスミラージュで全て撃ち破る。火薬を抑えられているのか、ダイナマイトの爆発も小さい。
「へっ、流石にこの程度のダイナマイトは撃ち落とせるか」
「と、当然、よ・・・・! アンタこそ、あの悪趣味な武器をさっさと出したら・・・・!」
先ほどまでなのはにビビっていたが、漸くそれが収まり、獄寺を挑発するように言う。
か、獄寺はソレをフンっと、鼻で笑った。
「『SISTEMA C.A.I』を使うまでもねえ。今のテメェなんざ、このダイナマイトで十分だ」
「~~~~~!! 舐めんじゃないわよっ!!」
ティアナがクロスミラージュを構えて乱射するが、獄寺はまるでドッチボールの玉でも避けるように、軽々と回避していく。
「何で!? 何で当たらないのよっ!!?」
「んな感情が剥き出しの攻撃なんて、銃口と引き金とテメェの視線の動きだけ見てりゃ、簡単に回避できんだよ」
年齢はティアナの方が上だし、管理局の士官学校や六課に配属されても鍛えてきたのだろうが、生憎『実戦経験』の差は天地と読んでも良いくらいの差がある。
自分の銃が、ランスターの銃弾が、いとも簡単に回避されるのに、ティアナの心は益々焦っていく。
「『二倍ボム』!」
獄寺が先ほどよりも大量のダイナマイトをティアナへと放り投げた。
「なっ!? くっ・・・・!!」
ティアナはクロスミラージュで再びダイナマイトを撃ち抜いていくが、流石に数が多く、何個かのダイナマイトが自分に向かってきて回避する。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・(な、何とか避けたけど、これ以上はーーーー)」
「『三倍ボム』」
「嘘でしょうっ!?」
ティアナの頭上を、さらに大量のダイナマイトが埋め尽くさんばかりに放たれ、ティアナはまた撃つが、半分以上が落ちてくる。
「ーーーーこうなったら!」
ティアナは真っ直ぐに獄寺に向かって走り、後ろで落ちたダイナマイトが爆発し、その爆風を利用してさらに加速する。
「その判断は間違っちゃねぇ。だがーーーー『ロケットボム』!」
獄寺がまたダイナマイトを投げる。
「馬鹿の一つ覚えね!!」
ダイナマイトをただ放り投げているだけなら、落ちて爆発するまでのタイムラグの間に獄寺に接近して、クロスミラージュの銃口を押し付ければ、自分の勝ちだ。
と、ティアナは考えたが、獄寺は再びフンっと、鼻で笑った。
「テメェの考えくらいーーーーお見通しだよ!」
ーーーーピュゥゥゥゥゥゥゥゥンンッ!!
「なっ!?」
なんと、ダイナマイトの底から推進用のロケットが噴射されると、ダイナマイトは真っ直ぐにティアナに向かった。
「くっ!!」
ティアナはクロスミラージュを構えて撃つ。
ーーーードガドカドガドカドガドカァァァァン!!
爆煙で視界が遮られると、爆煙の中から、さらにダイナマイトが魔力弾のように飛んできた。
「この・・・・!!」
推進用ロケットがついているとは言え、所詮は真っ直ぐに飛ぶしかできない。落ち着いて見れば大丈夫、と考えるティアナだが、何と今放たれたダイナマイトは推進用ロケットから小さなロケットが噴射され、ジグザグな動きでティアナに襲い来る。
「何よあれっ!?」
「『ロケットボム・改』。推進用ロケットの他に小さなロケットが次々と噴射する事で多角的な動きをする新しいボムだ」
驚くティアナに、獄寺が静かにそう教えた。
急いで迎撃するティアナだが、ロケットの不規則な動きに翻弄され、弾が当たらない。
「ど、どうして・・・・!?」
「焦って冷静さを欠いた銃なんざ怖くもなんともねえよ。今のテメェじゃーーーー『紙飛行機』だって撃ち落とせねえ!!」
獄寺がそう言うと、『ロケットボム・改』がティアナに当たる。
ーーーードガドカドガドカドガドカドガドカンン!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
火薬は抑えられているが、BJを通して感じる衝撃と爆炎に、ティアナが悲鳴を上げる。
「テメェの『見えてねえモン』。良く見るんだな!」
「あ・・・・あぁ・・・・!」
ヨロヨロになるティアナに、さらにダイナマイトを放り投げ、爆発させる獄寺。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
爆煙の中から、ボロボロのBJのティアナが今にも気を失いそうな様子で、ヘタリと腰を落とした。クロスミラージュも度重なるダイナマイトの爆発を受けて、今にも砕けそうな程に破損していた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ダイナマイトを片手に持った獄寺が、ほぼ意識が飛んでいるティアナに近づき、ジッと見下ろす。
「(あっ・・・・死んだ・・・・)」
自分は死ぬ、殺されると、ティアナは直感した。だが、恐いとは思えなかった。
獄寺の目には、なのはのような昏く冷たい氷のような威圧感などなく、澄んだ泉のようで、それでいて炎のような熱さすら感じた。
「(・・・・私、死ぬんだ・・・・ごめんなさい、お兄ちゃん・・・・お兄ちゃんの汚名、晴らせなくて・・・・ゴメン、スバル・・・・こんな馬鹿に付き合わせちゃって・・・・皆、本当に・・・・ごめんなさい・・・・)」
ティアナは心の中で、皆に謝罪していく。
だがーーーー。
「言い残す事は、あるか?」
「・・・・・・・・死にたく、ない・・・・」
ティアナがそう呟くと、フッと意識を失ったーーーー。
「ふぅ・・・・」
獄寺はため息を吐くと、ダイナマイトを上空に投げ飛ばした。
ーーーーパァンッ!!
そのダイナマイトは、まるでクラッカーのような爆発を起こした。
「起きた時、また同じようになってたら、今度こそ本気で容赦しねえ」
そう言うと、獄寺は気を失ったティアナをおぶり、その場を離れようとする。
上空で、なのはの魔力弾を回避するツナを一瞥する。
「10代目、ソッチの馬鹿はお願いします」
獄寺は、その場を離れていった。
ーなのはsideー
なのはは苛立っていた。ツナはなのはが間違っていると言った。いつまでも自分を八年前の頃の自分と同じように見られて、見下されていると感じた。
ナッツがいないが、今まで訓練にも出てこなかったココが出てきたのは、大嫌いな自分を倒す為に来たんだなと言う事も分かっている。
自分だって八年前よりも成長している。ツナの弱点はとっくに見つけている。それはーーーー。
「・・・・・・・・魔力弾の包囲網か」
空中を飛ぶツナの回りに、幾つもの魔力弾が浮遊していた。なのははツナと戦いながら、魔力弾を生成し、ツナを包囲していたのだ。
「ココちゃんがどれだけ石化させても、ツナさんがどれだけ早く動けても、これじゃあ逃げられないよ。迎撃したくても、ツナさんの腕だけじゃ全て叩き落とす前に落下しちゃうからね」
そう。ツナの弱点とは、“空中戦では両手が使えない事”である。ツナの飛行は両手のグローブから死ぬ気の炎のバーニアで飛行する。
それ故、空中での相手からの攻撃はほとんど回避に専念するし、攻撃も蹴りや拳の一撃によるヒット&ウェイである。こうして空中で絶え間ない攻撃をすれば、ツナは両手が塞がり、攻撃を防ぐ為に両手を使っていれば自動落下してしまう。
さらにココが咆哮は、どうやらナッツに比べると範囲は広くないと言う事も、先ほどまでの戦闘で確認済みであり、X<イクス>ストリームで脱出しようとしても、バインドで拘束する準備も整っている。
なのはは勝利を確信し、ツナに冷笑を浮かべて口を開く。
「ツナさん、降参してよ。私は何も間違ってないって、間違っているのはツナさんだって認めてくれるなら、やめてあげるよ」
しかし、ツナはその瞳の闘志を欠片も消さず、少々呆れが混ざった声を発した。
「相手を倒したと確認も取らず、勝利を確信して舌舐めずりか。教導官としてだけでなく、魔導師としても『三流』に成り下がったようだな」
ツナの言葉に、なのはの頭にプチンっと、何かが切れた音が聞こえた。
「そうーーーーじゃぁ、頭を冷やしてね」
なのはが指を振るうと、魔力弾が一斉にツナに向かって飛んできた。
「ーーーーココ」
『ガォッ!』
しかし、ツナは冷静に、ココに呼び掛けると、それに応えるように、ココは力強く頷いた。
ーリボーンsideー
それを見上げていたリボーン達。
「その戦法は間違ってねぇぞなのは。確かにツナの両手を封じちまえば、お前にも勝機はある・・・・が、あくまでも“十年前のツナ”だったらの話だがな」
リボーンが不敵の笑みを浮かべてそう呟いた。
ーツナsideー
リボーンが呟くと同時に、ツナはボソッと呟いた。
「ココ、形態変化 加速形態<カンビオ・フォルマ モード・アッチェレラツィオーネ>」
『Guaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』
ココが雄叫びを上げて光に包まれると、魔力弾が迫りきってーーーー。
ーーーードガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガンンンッ!!!
ーなのはsideー
激しい爆裂が起こり、ツナの姿が見えなくなった。
「・・・・私の、勝ちなの・・・・!!」
ツナに勝った事をを確信し、ニヤリと唇の口角を上げるなのはは、ボロボロになっているであろうツナと、無茶をしたティアナにどうお説教をしようかと考えていると。
「ーーーー何処を見ている?」
「・・・・え?」
ーーーードンッ!!
突然後ろから声をかけられ、なのはが後ろを振り向くと、強烈な衝撃が横腹に襲い、なのはは流星のように近くのビルの屋上に落下した。
「かっは・・・・!!」
屋上の床に強かに叩きつけられ、一瞬呼吸困難になり、空気を吐き出し、なのはが上空を見上げるとーーーー無傷のツナが腕組みをして、蹴りを放ったポーズで空を飛んでいた。
「な、なんで・・・・!?」
両手を組んで飛行なんてできない筈なのに、混乱しそうになるなのはだが、ツナの靴から膝までを守っている、“炎を放出し、膝当てに『X』の文字が刻まれたオレンジ色のグリーブ”を装備しているのが見えた。
ーリボーンsideー
「おいリボーン、あれがツナの新しい装備か?」
驚くフェイト達とニヤリと笑みを浮かべるエンマ達。
ヴィータはリボーンに聞くと、リボーンはニッと笑みを浮かべて応える。
「そうだぞ。なのはの見つけた弱点なんて、十年前からとっくに分かっていたからな。それを補う為に正一とスパナが新しく作ったのがココだ。そして、あれがココが形態変化<カンビオ・フォルマ>した加速用の装備ーーーー『X<イクス>グリーブ』だ!」
リボーンが言い終わると同時に、ツナはX<イクス>グローブとX<イクス>グリーブから、純度の高い『大空の死ぬ気の炎』を噴射した。
次回、ツナとなのはが激戦!
『ロケットボム・改』
推進用ロケットの他に、小さな方向を変更するロケットを付けた新型ボム。投げ飛ばしたダイナマイトの弾道計算ができないとあらぬ方向に飛んでいくので、獄寺の明晰な頭脳があって始めて真価を発揮する。