インフィニット/ストラトス 《GOLDBURN》 作:ビブロス
「それで、デュノア社の新世代IS開発遅延の為、男性IS操縦者と最新機体のデータが欲しくて学園に来た、ついでに男のふりをすれば俺達に近付けると画策した」
「‥‥‥そうだよ、僕はその為に父に言われて来た」
シャワーでのドタバタ後、とりあえず落ち着いて服を着て三人で話し合いすることとなった。話し合いのお供にイモけんぴを噛りつつだ。
「これ、美味しいですわー」
ポリポリとイモけんぴを食い散らかすセッシーを横目にシャルルの事情を聞いたところ、シャルルの母は愛人でシャルルは彼女の私生児として育っていた。昨年、母が病死した為に父に拾われることとなったらしい。
そしてその時にIS適性を見出だされ、学園に叩き込まれたとのことだ。よくあることで、″使い捨て″と言ったところか。体の良い駒である。
「マジかぁ、それで俺達は黙ってた方が良いんでしょ?セッシーはこっちで黙らせとくから」
「霧島さんの部屋に女が居るのは許せませんわ!!」
「適当に理由つけて掃除道具部屋に帰るから、どうせ明後日にはネット回線工事のために業者が来るし」
「良いの‥‥‥?」
「いや、良いも何もだよ、たかだかISのデータ集めだ、戦争にも使わないし、これは大々的で火薬多めの″スポーツ″だ」
人が″殺せる″スポーツだが、大抵のスポーツは事故が起これば死ぬ。ISはその確率が比較的高いだけだ。
「ありがとう、ごめんね‥‥‥、もし何かあってバレたら僕はすぐに出てくから‥‥」
「‥‥‥ちなみに、出てった場合シャルルちゃんはどうなっちゃうのかな?」
それは‥‥。とシャルルちゃんは押し黙る。こういう反応ということは十中八九悪い事になるのだろう。よし、黙っとこ、シャルルちゃんは良い子っぽいから、あと金髪だし。
「んじゃ言わなくて良い、そこら辺の事情には一切立ち入らない、ついでに俺もセッシーも黙っとく、これでオーケー?」
「‥‥‥はい、何から何まですいません‥‥」
「んで、これからが″取引き″だ、それで我々はイーブンだ」
「い‥‥‥イーブン?」
「そうイーブン、じゃあ、取引き条件の話を詰めようか」
ニッコリと笑う。スケキヨマスクの相乗効果もあってか、シャルルちゃんは予想以上にひきつった顔になってる。よし、これなら″何でも″条件に出来る。
「え、エッチなのはダメですわー!!」
横からセッシーが俺の肩をポカポカ叩いてるのが少し調子狂うところである。
こんにちは織斑一夏です。最近の日課は放課後に学園のアリーナで白式改の性能テストをすること。今日も今日とていつもの日課を過ごす、のだが。
アリーナに入ったところで派手にぶっ飛ぶ機体があった。霧島のGOBである。不思議なことにいつもより動きが″人間″っぽい気がする。なんか機体にしたかな?
「お、霧島じゃん」
「なんだかんだ言って、霧島さんもアリーナに入り浸ってますね」
あの人も戦闘″狂″です、そんなことを横で簪さんが言っていた。も、って何だろうか、俺も戦闘狂とでも言いたいのだろうか、不本意である。ただただ、俺は白式を動かしたいだけなのに。
というか、相手は誰だ?視線の先で見慣れぬISがライフルを三点バーストしていた。オレンジ色の機体だった。マニュアル通りの動き方だが、その動く流れは臨機応変で″キレ″があった。″素直で愚直″な戦い方。好きな戦い方だ。
「一組に転入してきたシャルル君ですね、機体はラファールリヴァイブカスタム、デュノア社の第2世代、ラファールのカスタム機」
「なんでも知ってるねー、簪さんは」
「ラファールは打鉄弐式を作る時に参考にしてたから、それより、新装備追加したから早く使って」
「早いなぁ、追加するの」
「元々実装するつもりだったし、打鉄弐式に搭載するつもりで設計してたのを流用しただけ、さっ、早く」
「んじゃやるかー」
白式を展開。いつも通りの見た目だが、両腕部と脚部先端に向けて重心が移動してる気がする。脚部の先にワイヤーカッターのような刃物が付いてるのは確認出来るが、腕部は全然見た目変わっていない。
「今回実装したのは、脚部の攻撃用スパイクと多目的直刀『剃刀』、そして多用途型電磁加速器です」
「けっこう載せたな、もしかして重量変わってなさそうなのは装甲薄くした感じか?」
「元々空いてた部分に装甲入れてただけなので、少し薄いです」
ふーん、と返事をしつつ『剃刀』を展開。両腕部の小指側から鍔の無い刀の柄が飛び出す。そのまま柄を引き抜くと薄い刃の真っ直ぐな刀が現れた。
「薄い‥‥‥、これ″何本″入ってる?」
「両腕で20本、構造が簡単で質量が少ないからかなり搭載出来た、そのかわり防御には使えません、受け太刀すれば確実に″折れ″ます」
「そうなのか、そこまで便利には出来ないか‥‥‥」
しかし白式の手に対して剃刀の柄は少々薄く小さい、普通に握ってはすっぽ抜けてしまいそうだ。普通とは違う持ち方をしないといけない。試しに指先で挟んでみよう。
「ほっ!」
人差し指と中指で柄を挟む、親指で人差し指を上から押さえてガッチリ保持する。腕の反動制御機構のクラッチを外し、腕を鞭のようにしならせて、斜め上に振り切る。キイインという音が響きわたる。均整の取れた薄い刃が綺麗な音を奏でる、それは厳かで画一的だが、それ以上に″暴力的″だった。剃刀(かみそり)とは良く言ったものだ。
「一夏」
「ん、なんだ?」
「飛んでってる」
「え?」
「きゃー!霧島さん!大丈夫ですのー!?!」
セシリアの悲鳴の方向を見ると霧島のGOBの尻部分に剃刀が突き刺さっているのが見えた。それに駆け寄るセシリアとシャルル、ビクンビクンしてる霧島。大惨事だった。
「‥‥‥おーっと」
「おっちょこちょいね、一夏」
夕方ですよ。
「シャルル君とは武装が似かよっててね、自分の動きの洗練に繋がるんだ」
「へー」
モシャモシャと野菜炒めを口に放り込み、霧島の話に耳を傾ける。放課後の大事故は意外と被害は少なく霧島のお尻に三センチほど剃刀が突き刺さっただけですんだ。結局ビクンビクンしてたのはシャルルの″グレースケール″と呼ばれる武器が股間に直撃したせいとの事だった。
俺のせいじゃなくて良かった。
「しかし、シャルル君は器用で助かるなぁ、こっちに送られて来た武装をけっこうテストしてくれたし、いやー、良いデータが取れた取れた」
「さすがに20種類来た時はびっくりしたよ、ははは」
「うちの母親が何でもかんでも送って来るからね!助かったよ!」
はははー!と霧島はニコニコ笑っており、その横でシャルルがニコニコ笑っていた。多分、送られて来た武装があと80種類ほど有ることを知らないからだろう。扱い方が謎の武装もチラホラ見えたので、これ以上付き合ったら相当苦労するのは目に見えていた。
霧島が楽しそうなので何も言わないが。
「でも良いなぁ、模擬戦してくれるなんて、俺なんか簪さんとテストターゲット使うくらいしか出来てないぜ」
はははー!と笑ったところで後ろから肩を掴まれた。振り返るとニコニコと笑った箒と鈴が居た。ニコニコと笑っているが目は笑っていなかった。
「ほう、私が放課後剣道に誘っても来なかったのは女の所に居たせいか、良い御身分だなぁ一夏」
「あたしが模擬戦してやろうかって言ったのに良いって言ったのは誰だったかしら、一夏?」
「いや、あ、簪さんが二人でした方が良いって言うから」
「「二人の方が良い?!?!」」
ぐおー!と食って掛かってくる二人。ホントに簪さんが武装テストだから均一性能のテストターゲット使った方が標準データが取れるって言ってたからであって、けして二人を邪険にしたわけではないのだが、そんな説明してくれる簪さんは格納庫の方に居るのでどうしようもない。
というか、話聞いてくれそうにない。
「なら、模擬戦を頼めますか?鈴さん、箒さん」
「か、簪さぁん!!」
話は聞いたぜ!待たせたな!みたいな感じで食堂の入り口で簪さんが腕組みをして立っていた。それを見た二人はツカツカと簪さんのところまで歩み寄ってガンの飛ばし合いを始めた。
「ほう、貴様が簪か、一夏が色々お世話になったなぁ」
「あんた最近一夏を独占し過ぎじゃない?」
「一夏は誰の物でもありません、それにもうほとんどの動作データも取れましたし、それに対するAIのアップデートも済んでます、対人戦の頃合いです」
「それで?一夏と戦うことで私たちにメリットあるの?」
鈴が訝しそうに簪さんに聞いた。微妙に頬が緩んでるのを見ると俺と戦うのが楽しみなのかもしれない、とんだ戦闘狂である。
「今回、私は自分の打鉄弐式の制作のためのデータ収集のために一夏に協力してました、なのでもし一夏が負けるような事があれば私の能力が未熟な証拠、一夏から一切の手を引きます」
「なかなかの覚悟、一夏ぁ!明日の放課後に模擬戦だ!良いな!」
「覚悟しなさいよ!一夏!」
ふははははー!と鈴と箒はそのまま食堂を後にした。あいつら自分の飯を残したまんま行ってしまったことに気付いてないのだろうか。仕方ないから食べておいてやろう、仕方ない。別に残すのが悪いからであって、お腹が凄く減ってて今食べた分だけで足りなかったわけではない。
「今思ったけど、一夏、どれだけ食べるの?」
横で霧島が不思議そうに俺の手元を指差した。眼を向けると1キロの白米と山のように盛った野菜炒めがあった。
「何言ってんだよ、まだ三杯目だぜ?」
「いや、食べ過ぎじゃん」
「霧島さんも食べ過ぎですわ」
セシリアがコツンと横から霧島を小突く。確かに三キロもステーキ食ってれば食い過ぎの部類だろう。あ、やっぱり俺も食べ過ぎてたか。
「いや、肉だけだし、ご飯はまだ後で食べるし」
「まだ食べるんですの?」
「悪いかな?」
「わたくしが作ったサンドイッチはそんなに食べませんでしたわ!!」
え、そうだっけ?と霧島が発言したせいで、目の前で痴話喧嘩が開始される。おいおい、と思いつつご飯を頬張ったところで真横に簪さんが座ってきた。
「どうした?」
「もし、あなたが負けた時は私は白式の改修から手を引くことになりますけど、私の弐式の完成を手伝う約束は残ってますので、一夏″が″私″を″手伝ってください、勝っても手伝ってもらいたいですけど」
「まあ最初からそんな話だったし、別に構わないぜ、俺の為に手伝ってくれたんだ、恩返しはするさ」
「そうですか」
では、と簪さんはナチュラルに俺の野菜炒めを俺の箸を使って一口食べて食堂を後にした。何てことだ、野菜炒めが減ってしまった。仕方ない箒と鈴の残したご飯で補填するとしよう、仕方ない、仕方ないのだ。
そして夜である。シャルルちゃんと同室である。女子高生と同じ部屋!ヤバいテント張りそう。いや、ダメではないか相手は15歳の女性、手を出せばロリコン待った無し。あ、セッシーは別だよ。セッシーは女神だから。女神はロリコンではない、OK、合法、合法女神。
まあ、シャルルちゃんですよ。金髪系フランス人。とにもかくにもフランス人は臭いという俗説があるが、シャルルちゃんは別だね、良い匂いしかしない。セッシーはずっと膝の上に乗せて置きたいくらい可愛くて良い匂いが超するけど。
閑話休題。変な方向に行くね。
とりあえず、とりあえずですが、シャルルちゃんには黙っとく条件として2つほどお願い事をした。一つは「うちの装備のテストをしてもらうこと」これは昼間に話した。もう一つはセッシーに嫌われないように″恋愛アドバイス″をもらうこと。死ぬほど恋愛体質のフランス人のシャルルちゃんの事なのでもう二人くらいの男性とは付き合ってるはずだろう、たまに出てくる色気はその経験の現れであろう。
ぐへへ、15にしてスケベな女子である。
そんなスケベなシャルルちゃんから奥手な俺に素晴らしいアドバイスが飛んで来ることを祈る。そして現在全裸スケキヨマスクでシャルルちゃんがお風呂から上がるのを待機しているところであります。
「霧島さん、シャワー先に使ってごめんな‥‥‥」
「ふふふ、叫ばないとはなかなか訓練されたシャルルちゃんですね」
「‥‥‥何やってるんですか」
「全裸待機だよ!君に二つ目のお願いをしようと思ってね!」
ニッコリとシャルルちゃんに微笑みかける。ちなみにシャルルちゃんには二つ目のお願いは言ってなかったりする。なので凄い恐怖に染まった顔でシャルルちゃんが俺のこと見てるのは多分凄い勘違いしてるからなのだろう。
シャルルちゃんはなんてうっかりさんなのだろう。
「ど‥‥‥どんなお願いなんですか?」
「俺に言わせる気かな?欲しがりさんめ!」
とりあえずそれっぽいこと言ってみる。大丈夫だよ!やらしいことになりそうになったら止めるからね!俺はロリコンじゃないからね!セッシー合法!
「ほらほら、ちょっと涙目しながら『貴方って最低のクズね!』って言ってみな!ちょっとはお願いが緩和するかもよ!」
ヘイヘイ!シャルル!ビビってる!と煽ってみるもののシャルルちゃんは『くっ殺せ!』みたいな顔をするばかり。女騎士属性なのだろう。ネタばらししちゃおうかしら。
と、思ったところで、シャルルちゃんはおもむろにジャージの上着を脱ぎ出した。とてもヤバい雰囲気になってきた気がする。
「シャルルちゃん、ちょっ‥‥‥」
「私は‥‥‥そ、そういうことやったことないから‥‥‥どうすれば良いか全然わかりません」
頬を赤くさせ、シャルルちゃんはシャツの中に腕を引っ込めてパチリと胸を押さえつけてたブラのホックを″外した″。その気になってんじゃん、ヤバいじゃん、超ヤバいじゃん。
経験あるけど俺はそういうの全然知らないからどうしようもない。適当にエロゲーっぽいこと言えば良いのかな。そうなのかな。
そんなわけないし!止める事の方が先決だし!あと俺の股間のバジリスク止めないとね!
「‥‥‥一応聞くけど‥‥脱げば良いん‥‥だよね?」
「うん」
うん、じゃねーよ俺!何で流れに身を任せてる感じになってるんだよ!いや、この前裸見たって言っても湯気で見えてなかったし、そのあと顔を胸に埋めたからホントに見てないし!あ、お触りしてんじゃねーか!もうだめだ!ロリコンだ!ダメだ!もうシャルルはズボンにまで手を出してる!いけません!いけません!パンツ見えてる!
あぁ!おしまいだ!と思ったその時、自分の頭の上に天使の俺と悪魔の俺が現れていた。超自然的なアレなのか、トチ狂った頭が見せる幻覚なのかもしれない。どっちにしろ″まとも″ではない。
『あぁ、おいたわしい、そんなことではダメですよ』
『げへへ、ダメだぜぇ?そんなんじゃあよぉ』
頭の上で二匹はクルクルと回りながら俺に語りかける。
『偉い人は言いました』
『エロい人はこう言ったぜ?』
『女子高校生とは』
『女は12からよぉ』
『熟女です!』
『ババアってなぁ!』
「よっしゃぁー!俺はロリコンじゃねー!NOロリコン!猛タッチやー!」
ヒャッハー!と飛び掛かる俺。そんな俺を見ながらシャルルちゃんは何か諦めたような顔でその上で恥ずかしそうに俺にこう言った。
「ご‥‥‥ゴムは‥‥してください‥‥」
「すんませんでしたぁああああああああっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!」
飛び掛かった勢いのまま壁で三角飛びして、部屋のガラスぶち破って外に飛び出した。最後のガラスをぶち破れである。即座にチーちゃんに追っ掛けられてぶん殴られたのは言うまでもない。
「シャルルちゃん!ほんとうにごめんなさい!出来心なんです!出来心なんですー!」
ははー、と昔お母さんと一緒に見た日本の時代劇でこんな姿勢を見たことがある。土下座だろう。初めて見たが多分こんなに見事な土下座はそんなにお目にかかれないだろう、そんな気がした。
なので、とりあえず思い切り顔面蹴飛ばした。ぶへー!と鼻血出しながら霧島さんは床にべちゃっと倒れた。よし、気が晴れた。
「どう落とし前つけてくれるんですか?」
あ、やっぱり気は晴れてないや。もうちょっとやろう。
「ど、どうしましょうか?」
「そんなに大人になっても落とし前のつけかたくらいわからないですか?」
へ‥‥へぇ、と霧島さんはひきつった引き笑いを浮かべた。まるで謝るぐらいしか思い付きません、といった感じだ。これも時代劇で見たことがある、悪代官に脅される農民の″顔″だ。どんな″理不尽″でも飲み込む顔だ。
「とりあえず、そんなマスク被ってても謝罪にはなりませんよね?脱いでください」
「はい」
く!身体は自由に出来ても心までは自由に出来ないんだからね!と言わんばかりの動きでマスクを脱ぐ。びっくりするくらいの渋めの顔立ちのお兄さんがそこに居た。
インテリマフィアみたいな顔立ちの男が『く!殺せ!』みたいな顔で床に座り込んでいる。なんだか、ちょっと優越感が生まれてきた気がする。
「許してあげるので、″何でも″してくれますね?」
「へ、あ、いや、何でもってのはですね、その要求によるというか」
「私にあんなに恥ずかしい思いさせたのに、私はあの時霧島さんに″何でも″するつもりでしたよ?」
嘘だけど、と思いつつ霧島さんの『どうしよう?』という顔を眺める。あぁ、楽しい。上から物を言うってこんなに気分が良いんだ。
「な‥‥‥何でもします‥‥‥」
「ふふ、何でもしてくださいね、霧島さん?」
頬が吊り上げるほど笑いそうになる。いや、実際吊り上がってるだろう。私は今そういう気分だ、仕方ない。さぁ、霧島さんに何をさせようか、何をしてもらおうか。本当に楽しみだ。