インフィニット/ストラトス 《GOLDBURN》   作:ビブロス

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出来ること、やりたいこと ー次の話で酷い目に合うスケキヨマスクマンー

IS学園は最も栄えている学園都市でもある。学生向けの店が多いものの、それを支える側である教員等の大人の方々向けの店も多数存在している。その中の一つである居酒屋の一室。少し狭めの個室に三人が顔を合わせて酒を飲んでいた。私こと山田摩耶と千冬先生、そして卯都木先生である。

 

「そういうわけで1組担当のよしみということなので、仲良くしましょう!乾杯!」

 

「乾杯」

 

「はい、乾杯です」

 

ぐいっと、ビールを呷る。あー、っと喉に来る刺激を堪能したところでポツポツと料理が運ばれてくる。いつもは体重を気にして油っこい物は食べないが、今日は食べることに決めてる、とりあえず唐揚げ!

 

「千冬さんと飲むのなんて初めてですね」

 

物腰柔らかに卯都木先生はお酒を飲む、その一挙一動から育ちの良さが滲み出る。先日の霧島君との模擬戦の時の激しさなどどこかにいったようだ。本当の卯都木先生はこちらの方なのかもしれない。

 

「そうか?それより私の安酒に付き合うなんてどうしたんだお前?」

 

「お酒なんて安いも高いもほとんどありませんし、元々私は安酒の方があってますから、何か頼みます?私日本酒飲みたいんですけど」

 

「ビール、居酒屋ではビールしか飲まん」

 

「それではビールですね、山田先生はどうされます?」

 

「あ、私もビールで!」

 

「はい、あ、店員さーん」

 

かしこまりー、とやってきた若い男性店員は卯都木さんを見た途端に固まってしまう。それもそうだろう、テレビに出てくるようなモデルやら女優と一線張れるような美貌の持ち主でそのスタイルときたら!やや崩れた座り方で飲み物注文してる姿が艶やか過ぎてもういけない。歩く18禁、と霧島君は言っていたようだが、全くその通りである。

 

でへへ、と鼻の下のばした店員がビールを持ってくる前にとりあえず最近聞いた話題を振ってみることにする。

 

「あ、そういえば一夏君の事聞きました?」

 

「一夏?あぁ千冬さんの弟さんでしたね」

 

「アイツがまた何かやらかしたのか?」

 

「いえ、やらかしたというかなんというか、噂なんですけど明日の放課後に篠ノ乃さんと凰さんの二人と模擬戦するらしいんですよ」

 

「なんだ珍しくもない、あの二人は一夏の幼なじみだろ?ただの喧嘩だ、喧嘩」

 

「いえ、それがですね今一夏君と付き合ってる更識簪さんって生徒と別れろって言ってるそうなんです、模擬戦で負けたらですけど」

 

なんだと?と千冬先生がぐいっと前に出てくる。横に居る卯都木先生も気になる様子である。意外と色恋沙汰に興味があるようです。

 

「一夏君はどうでも良いらしいんですけど、更識さんは付き合い続ける気があるそうですよ、というかスキンシップ凄いらしいです、ベンチで肩寄せ合って仲良くしてたり、IS展開してる一夏君の腕に座ってイチャイチャしてたり、色々目撃されてますね」

 

「‥‥‥ほう、アイツも高校生になったって事か」

 

ビールを飲みほす千冬先生。わずかに動揺が見て取れる、やっぱり姉弟でずっと暮らしてきたからなのだろうか、一人立ちが始まったのが嬉しいけど寂しいのでしょう。

 

「‥‥‥山田先生、うちの兄の噂とか聞きませんか?」

 

「霧島君のですか?最近は転校して来たシャルル君と仲が良いですね、セシリアさんは霧島君にべったりですけど」

 

「また金髪‥‥‥、それよりセシリアさんにべったりではなくて、セシリアさん″が″べったりなんですか?」

 

「そう‥‥‥ですね、セシリアさんに霧島君がちょっかい出してたんですけど、あの襲撃の後くらいからセシリアさんの方がちょこちょこ付いて回るようになったようです」

 

へぇ、と卯都木先生は日本酒を口に入れる、実に18禁な挙動である。しかし、あんなに嫌ってそうな霧島さんが女性と良い感じなのがそんなに気に入らないのでしょうか?多分こっちも少し寂しいのでしょう。

 

「そういえば山田先生は最初の頃は霧島に付きっきりだったじゃないか」

 

横から意地が悪そうに千冬先生が霧島君との事を話題に出して来た。何もそんなに特別な事があるわけではないのだけれども、卯都木先生からけっこう強めの眼光が飛んでくる。

 

「いや!何も無いですよ?!最初の頃は霧島君一人だったことが多かったし機体の事で困ってましたから先生である私がついてたんです!それに!今でも印象悪いですし!」

 

「‥‥‥山田先生、一つ忠告しておきますね、うちの兄は学生の頃からずっとあんな感じでした、大学でも単位落としまくって、何とか卒業出来るようなダメっぷりでした、悪い印象を持つ人が大半です」

 

「やっぱり」

 

「でもですね、その中でも兄の事を盲目的に慕う人が少数ですが居ました、その方々は全員最初は兄にかなり悪い印象を持っていたんです」

 

「へ?」

 

「兄は一瞬でも自分に親愛を示した人間に対しては至極全うな対応になります、‥‥‥わりかしですけども、あと、あの人あんなでも育ちと教養だけはありますので、頭の良い人や良識がある人であればあるほど盲目的になります」

 

「え、霧島君ってそんなにお金持ちなんですか?」

 

「山田先生知らなかったのか?実家からIS送って来るような所の坊っちゃんだぞ、アイツ」

 

「え、あ、そうですね、確かに」

 

「まあ、お金持ちだからって理由で付いて来るような人も居たんですけど、兄の一番ヤバいのが絶妙な″危うさ″なんです、保護欲を増長させるような人のくせして、土壇場で犠牲を省みずに突っ込んで何とかするんで、それにやられる人がいました」

 

「へー、モテてたんですね」

 

「はい、私は妹でしたので兄のそういった方々とは面識ありましたけど、総じて″山田先生″みたいな方が多かったです」

 

「‥‥‥私ですか?」

 

「特異な方も居られましたが、基本的に貴方の様に″母性的″な方が多かったですね、男女問わずに‥‥‥、今でもあの人達は兄が自分無しでは生きられないと思っている」

 

「‥‥‥な、なんですかそれ?ほとんど洗脳じゃないですか‥‥」

 

「そうですよ、だから″忠告″するんです、人生を棒に振らないようにするために」

 

わかりました、と返事をすると卯都木先生はニコニコしながらおかわりどうされますか?と聞いてきた。しかし霧島君って意外と怖い人なんですね。なんというか意外な事実だった気がします。確かにまともな人ではないけど、優しい男性だと思っていました。もしかして卯都木先生がちょっと大袈裟に言ってるのかも、でもそんな感じではなかったです。

 

「それよりも明日の一夏の模擬戦だ、卯都木先生、もしアイツが勝った場合は少し戦ってくれないか?」

 

「私がですか?」

 

「アイツには手も足も出ない強者との戦いを経験させておきたい、私がしたいが私は手加減も容赦もかけてしまうからダメだ」

 

「私なら手加減しなくて、容赦ないからですか?ひどいですね、そんな感じに見えます?」

 

「見える、それに容赦はなくても手加減は出来るだろ、霧島との戦いを見ろ、あれだけズタボロにしてもアイツは生きてるじゃないか、それが証拠だよ」

 

「まーそれはそうですけど‥‥‥、勝ったところで乱入しろってのは‥‥‥、一夏君が気分悪くしますよ?」

 

「‥‥‥大丈夫だ、やってくれ」

 

そうですか、と卯都木先生は千冬先生の提案を了承した。千冬先生は少し一夏君に厳しく接しているところが見受けられます、それは彼が死なないようにしているから、と私は思います。でも、それが彼に受け入れられるかどうかはわかりません。その点において千冬先生は少し一夏君に″甘えてる″ように思います、『アイツならきっと私を理解してくれる、許してくれる』そんな思惑が今の千冬先生からは感じます。

 

たった一人の家族で唯一の理解者だから、そう思えてしまうのでしょうね。でも一夏君にとっては千冬先生がたった一人の理解者でない時はどうするんでしょうか?もし許してもらえなかったら?もし理解されなかったら?

 

多くある大人の定義の中で『大人になるには依存先を増やす必要がある』とあります。一人に依存するのではなく、多くの人に依存すること。まあ、率直に言うなら代替、替わりを見つけることです。その点においては一夏君は非常に上手く″大人″をしています。千冬先生以上に。

 

 

 

 

 

 

放課後、どこから話が漏れたのだろうか、アリーナにぞろぞろと生徒が集まってくる。しかも話が変な風に広まったらしく、俺と簪さんが付き合っているなんてことになってるらしい。俺と付き合っているなんて簪さんからしたら迷惑だろう、全力で否定したいところなのだが『おもしろそうだから、このままにしといて』と言われたので黙っておくことにしたが‥‥‥。

 

「一夏ぁ‥‥‥貴様、私という幼なじみが居ながら他の女にうつつをぬかすなどなぁ‥‥‥万死に値するんだよ、わかるかぁ?」

 

「一夏、許してあげるから、私に腕と足を折られなさいよ、大丈夫、いっぱい看病してあげるから」

 

はははははは!と少し気味の悪い笑い声をあげる箒と鈴が目の前に立っていた。しかもISを展開したまま。

 

おっかしいなぁ、俺は一人ずつ相手にする感じだと思ったのに。今にも二人同時に飛び掛かりそうな雰囲気なんだけど、困るなぁ二体一とかしたことない。

 

『一夏』

 

「お、簪さんどうした?」

 

『私的にも一人ずつ相手にするつもりだったんだけど、向こうがやる気満々だから二体一っぽいです、頑張って』

 

ですよねー、と簪さんからの通信に応答する。やっぱり簪さんも一対一のつもりで言ってたよね、今さら言ったところで何とかなる感じでもなさそうなので頑張るとしよう。

 

「イッチー!頑張れー!」

 

「ファイトですわー!」

 

アリーナの席で霧島とセシリアが仲良く応援してくれていた。仲が良いなぁ、まるで兄妹みたいだ。あんな感じに千冬姉と遊んだのはいつ頃だっただろうか、中学入って少しまではあんな風に一緒に居てくれた気がする。

 

今度の夏休みはどこか二人で遊びに行こうかな?あー、俺が車の運転出来ればなぁ、色々な所に連れていけるのに。

 

『一夏‥‥?』

 

「うん?あぁもう少しで開始か、大丈夫、やるだけやるから」

 

そう、と簪さんは通信を切った。同時に白式を展開、スラスターを閉じたままゆっくりとエネルギーを集中。内部の熱の高まりをセンサーが感知し、一部放熱板が開く。これで開始と同時に速度が出せる。

 

箒と鈴は近接が主体の戦闘スタイル。箒は得物は刀でスピードがあるし、下手に近接に持ち込むと致命傷をもらう。鈴は前回の戦いを踏まえて俺を近付けさせない気がする、龍砲で中距離を維持してSEを削りきってくるはずだ。

 

一方的に攻撃するなら遠距離しかないが、白式には遠距離兵装は付いてない。付けてても俺が使えない。

 

なので近接でいく。拡張領域から雪片弐式を引っ張りだし、肩に担ぐ。マニュピレータのトルクを上げる。

 

「覚悟しろ、一夏!」

 

箒が怒鳴る。罪悪感や焦燥感を捨てろ、前だけ見ろ。感情を乗せて動かない、自分の出来る最高のスペックを単純にぶつけるだけだ。

 

『開始です』

 

開始のブザー音。肩に担いだ弐式を全力で箒に向かって″ぶん投げる″。

 

「なっ‥‥‥!?」

 

打鉄の刀で弐式は真上に弾かれる。流石に有段者で剣道の国体で優勝するだけはある。完全に不意を突いたのだが、見事に弾いたのだ、驚嘆に値する。真正面から近接で敵う気がしない。

 

「戯れた事を!」

 

「確かに戯れた事だな」

 

瞬時加速(イグニッションブースト)で箒の懐へ、顔と顔がくっつきそうなくらいの至近距離。目を見開く箒。向こうが動く前に足を引っ掛け、首を掴んで投げる。合気道での『入り身』に近い投げ方だった。

 

後頭部から地面に激突する箒、しかし目線だけは俺を捉えており、振り上げていた刀が返され、振り下ろされる。

 

即座に回避。突っ先が鼻先を通過するのを見届け、返される前に距離を取る。

 

「流石に追撃無理かぁ‥‥、やっぱり箒はすごいな!」

 

「卑怯な事をするな!」

 

「そうかぁ?なぁ‥‥‥鈴!!」

 

スウェーバックしつつスラスターを噴かし、空中に″回避″。直後、龍砲が着弾、土煙が舞い上がった。

 

「な!?避けたの?!今のを!?」

 

「タイミング的に今かなーってさ!鈴の攻撃は間髪入れずに来るから油断出来ないな!」

 

「いけしゃあしゃあと!一夏!!!」

 

龍砲の連続射撃。鈴の目線向いてる方を頼りに回避行動に入る。一発、二発、三発目までは避ける事が出来たが、四発目が右肩に直撃。さすがに見えない射撃は回避しきれない、どうせ鈴も四発目から散弾にでも切り替えてるのだろう。″全弾″回避するのは難しい。

 

「やっぱり攻撃は攻撃で潰さないとな!いくぞ!箒!鈴!」

 

両腕の二連ショットガンを引き抜き、榴弾を装填、適当に二人に向けてぶっ放す。とはいえIS用のショットシェルと同等の弾頭なんて対人用のグレネードなのでISには毛ほども傷をつかせられない。

 

グレネードでダメージが入るだなんて期待もしてないが。

 

「この程度!なめてるの!?」

 

「なめてないさ!」

 

打ち上げられていた弐式を空中でキャッチ、反重力制御を完全カット、関節を固定設定。真下に向けて瞬時加速(イグニッションブースト)。

 

重力加速と瞬時加速による二重加速は鈴の甲龍を吹き飛ばすほどの推力を白式にもたらした。斜め下への″体当たり″である、白式と甲龍の機体重量の差を埋める為の行為だったが、上手くいった。物凄く機体が軋んだが。

 

「体‥‥当たり!?」

 

「まだまだぁ!」

 

関節トルクを最大設定。組み付きながらスラスターを複数回噴射、鈴の背中に回り込む。そのまま腕を″離脱″する。

 

「なっ?!」

 

驚く鈴、沸き立つ観客、そんなものを完璧無視しながら離脱した腕を鈴の首に″絡ませる″。蛇のようにしなる腕は的確に鈴の気道と頸動脈を締め上げ、脳への酸素供給を断っていた。

 

「‥‥こ‥‥んなので私がぁ‥‥‥!」

 

「ごめんな」

 

グイ、と力を入れると鈴はグニャリと糸の切れた人形のように崩れ落ちた。そのまま背中を蹴飛ばし、斬りかかってくる箒にぶつける。

 

「一夏‥‥‥!!お前は!卑劣な事を平気で‥‥!」

 

「卑劣‥‥卑劣かなぁ?」

 

後方に飛び退きながら離脱した腕を回収し、装着。AIが腕を同期し終わる前に箒が突っ込んでくる。律儀に鈴を受け止めて横に寝かせてからだ、男らしい。

 

動かない腕では攻撃出来ないので、もう少し後ろに下がる。追従するように箒が肩に刀を担いでスラスターを噴かす、イグニッションブーストはさっき結構な出力で使ったので使用不能、というか同期にAIの処理リソース回してるから変に発動すると壁まで激突しかねない。

 

「その性根を叩き直す!!」

 

真っ正面からの真っ向唐竹割り、切っ先に一切の迷いが無く、真っ直ぐでブレの無い一撃、見事と称賛するべきだ。俺では弐式の重心移動機能がないと出来ない芸当。本当に凄い。

 

「覚悟っっ!!!!」

 

刀が振り下ろされる、ギリギリ回避出来たが、右腕の装甲の三分の一を縦に切断された。右腕の機能のほとんどが停止したことがHUDに表示される。右利きの俺にとっては深刻だろう、箒もそれをわかっているからこそ今の一撃を放ったはずだ。

 

まぁ、代わりに指を″もらった″が。

 

「何っっ!?!?!!」

 

箒のマニュピレータが指の第二関節付近からポッキリと折れていた。回避しながら放った蹴りで折れたのだろう、一応やっておくものだ。良く良く見ると足先のワイヤーカッターが足裏の方向を向いていた、こんなの仕込んでたのか簪さん。

 

「説明して欲しいなぁっ‥‥!!」

 

両足のアイゼンを展開、地面を抉りつつ振り下ろしていた箒の腕に回し蹴り。ガァン!と金属がぶち当たる音が響き、打鉄の腕の装甲がひしゃげ、フレームが露になる。フレームごと折るつもりだったが、流石に近接系の量産ISだ、フレームだけは硬く出来てる。

 

「武器を潰しに来たかっ!だとしても‥‥!!」

 

「フレーム硬いなぁ‥‥!ならっ!!」

 

「遅い!」

 

箒渾身の踏み込みだった。まともなマニュピレータで握られた刀であれば容赦のない一撃を見舞われていたことだろう、だが箒の手は指無しだ。器用に親指と″腕″で刀を保持しているものの刃先はガタガタで安定していないし、速度も出ていない。

 

真横に一閃。普通なら間に合わないが、速度のない箒の打ち込みは″カウンター″出来る。

 

「な‥‥っにぃ!?」

 

スラスターで飛び上がり、刀を回避。そのままスラスター全開で箒の顎に向けて蹴りを放つ。身体全身を使い、放った蹴りは見事に箒の顎に直撃した。絶対防御が発動し、箒自体にはダメージは入っていないが、箒の脳ミソは確実に揺さぶられ、それは脳震盪を起こさせるには充分過ぎた。

 

白目になりながら箒は地面に突っ伏した。どよめく歓声が耳に届くが、どこか他人事だった。俺が強くなった、強くなったかもしれないが、十分に箒も鈴も強い。ただただ、上手く″ハマった″だけだ。

 

まだダメだ。確実に、絶対的な何かが足りない。

 

「‥‥‥何が‥‥足りない?」

 

「教えてあげましょう、一夏君」

 

後ろから優しそうな声がした。振り向くと卯都木先生がニコニコしながら立っていた、何故かISスーツを着てる。ホントにナイスバディが着るとISスーツは視覚に対して暴力的だ。

 

というか何で着てるんだろう?

 

「あなたが足りないと思ってるのは戦いの中にあります、それも″死に対面″するような戦いの中で」

 

「‥‥‥言葉ではわからないことなんですか?」

 

「察しが良いですね、その通りです、感覚みたいなモノですよ、実感しなければわからない」

 

「それを今から卯都木先生が教えてくれると?」

 

「ええ、千冬さんのお願いですから」

 

「‥‥‥そうですか、その″向こう側″に千冬姉が居るんですね、俺が行かないといけない″向こう″に」

 

「そうよ、だから私が貴方を殺す気で攻撃しますので、生き抜いてくださいね?よそ見したら″死にますよ″?」

 

そう言いながら卯都木先生はISを展開した。右手の弐式を強く握り、自分がどんな立場に居るのか再確認する。これから卯都木先生が俺を殺しに来る。しかも千冬姉の指示だと言っていた。強い敵との戦いを肌で感じさせる為、そんな腹積もりじゃないだろうか?

 

でもそれだけじゃ″足りない″。

 

それ以上の、言葉ではわからない、重要な″何か″が足りない。さっぱりわからない。

 

でも、わからないだけだ。目の前の卯都木先生と戦えばわかるかもしれない。

 

‥‥‥‥いや

 

″勝てば″わかる。

 

「じゃあやりましょう、でも俺は勝つつもりで行きますよ」

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