インフィニット/ストラトス 《GOLDBURN》 作:ビブロス
一夏の模擬戦から一週間。彼はいつもと変わらずに過ごしていた。摩耶ちゃんによってコテンパンに叩きのめされたことでショックを受けていると思ったが、どうもそんなことは無さそうだ。それ以上に一夏は何かを掴んだらしく、普段よりも気合いが入ってるような気がする。
流石に次期ブリュンヒルデ候補である。ちゃんと後進を育てているではないですか、まさに自慢の妹だ。
さて、俺はと言うと。廊下を歩くたびに女子生徒達からこそこそと
『クソもらし』
と呼ばれていた。
「死にたい………」
MAXでメンタルが崩壊していた。
放課後、二人きりの教室。シャルルちゃんを椅子に座らせ、その周りをぐるぐると歩く。そして俺の手には例の俺の尻に突き刺さっていたものがある。その先端をシャルルの席に滑らせる。カラカラ、カラカラと。
「ねぇ………、俺をクソもらしにした気分はどうなんだいシャルルちゃん、ねぇ、こっち見てよ、ほらぁ」
「あ、あれは、リモコンが壊れたからで……」
「お尻の穴ガバガバでこの一週間まともにウンチ出来なかったんだよ?さっきやっと硬いのが出たんだ、君もゆるゆるにしてやろうかぁ……?」
「いや、あの……」
「ガバガバゆるゆる……、ガバガバゆるゆる……」
席に座るシャルルの耳元で何度も呟く。ねっとりとなぶるように。恨みとつらみが口からこぼれ出るようだ。シャルルちゃんは流石にやり過ぎたと思っているのか俯いたままだ。
「俯いていてはいけないよ?顔を上げなさい、ほら」
「……ご、ごめんなさい、まさかリモコンが壊れるだなんて思わなかったんだよぉ……」
「存分に言い訳を言いたまえ、聞いてあげるよ」
「霧島さんっ!ありがっ……!」
「聞くぐらいしてあげるよ、ねぇ?どこの穴をゆるガバにしてほしい?」
「本当にごめんなさい!!」
お許しをー!と言わんばかりにシャルルちゃんは頭を下げる。だが、ゆるくなった尻はいつ決壊を起こすかわからないパンドラの箱となった。これはもうシャルルちゃんもガバガバになってもらわないと許されない。
「前か!後ろか!両方か!どちらがいい!?」
「全部イヤ!」
「よかろう!鼻の穴にしてやる!」
「やめてよ!というか最初から壊れてたんじゃないですか!?私を陥れる為にこんなことをしたように思えるんですけど!!?」
「ここにきて楯突くとは良い度胸だシャルルちゃん、もし俺が悪くなかったら全部の穴ゆるガバにしてやる!」
「私が悪くなかったら、許してくださいよ!」
半泣きで突っ掛かってくるシャルルちゃん。この土壇場で俺のせいにしてくるあたりどうもガバガバにはなりたくないようだ。別にこの俺の尻に刺さっていた物を使うわけでもないのに必死になっているのはとても面白い。ふはは、相手になってやろう。
IS格納庫。俺こと織斑一夏は砕けた弐式を見つめながら、その刃先に触れる。見事に破砕された断面を眺めると最後の一撃を思い出す。姿勢も体勢も悪かった、腰なんて全然入ってない、無我夢中の一撃だった。
『これで及第点です、次からもこの"感覚"を忘れずに』
そう、卯都木先生は言っていた。それは込めるべきは技術ではなく、力でもない、"気持ち"なんだと、俺に教えてくれた。込めるべき"気持ち"。
"死ね"
あの時に、思った正直な気持ちだ。別に憎いわけじゃない、恐いわけじゃない。ただ、あの一撃で卯都木先生の首が飛ぶのが見たかった。血が、肉が、"悲鳴"が飛び散るのを見たかっただけなんだ。
殺そうだなんて、思わなかった。ただ、"死ぬ"のが見たかっただけなんだ。
最悪な人間だと思う。恥ずべき気持ちだとも思う。でもそれ以上に自分が土壇場で何を求める人間なのか理解出来たことが嬉しかった。そういう人間なのだ、自分の本質を理解出来ることは人生でそうそうあることではない、それを俺は齢15にしてわかったのだ、自身の醜さに落ち込むことはあれど、"絶望"することではない。
そう、とても
「一夏、何してるの?」
掛けられた言葉に振り返る。簪さんがビニールの袋とタブレットを持って不思議そうに俺を見ていた。別に今日は何も約束してなかったと思ったが癖で此処に集まってしまうのだろうか?
「いや、壊れた弐式をどうしようかと思ってさ」
「……それなら、霧島さんに補修用の素材をもらったから、それを使います」
「補修用の素材?」
「最近こっちに送られて来たものです、物凄いんですよ、ほら、見てください」
少し嬉しそうに簪さんは俺にタブレットを見せてくる。肩を寄せ、俺に近付く簪さん、よほど人と触れあうのが好きなのだろうか。先日の恋人騒ぎ以降、身体の接触が増えた気がする。
「UMCって呼ばれてて、統一性金属擬似細胞ともいって、すっごく小さくてプログラム可能な金属製の細胞の塊です、命令すればなんにだって……」
「簪さん、距離……近くないか?」
「………え?」
「いや、この前の恋人騒ぎの後だからさ、こんなに引っ付いてるとまた何か言われかねないっていうか……」
「恋人じゃないから良いです、だからほら、見てください」
さらにグイグイと簪さんは俺にくっついてくる。いつもはISの油の匂いやら、モーターの焼ける匂いに混ざってわからないが、簪さんの匂いは凄く良い。とても女の子女の子してる匂いだが、どことなく甘い匂いがして、そこに惹き付けられる。
いやいや、ちょっと待とう。簪さんが恋人ではないと言ったんだ、なら俺も意識するのはいけないことなのではないか?多分これは友達としてなのだろう、そうだ、そうなのだ。とても友達との距離が小さいのが簪さんなのだろう。
なら、友達らしく距離を合わせてやるべきなのだろう。そうだ、そうに違いない。
篠ノ乃箒は覚悟を決め、IS格納庫に向かっていた。どうすればあそこまで強くなるのか一夏に"教わる"為だ。戦う手段は卑怯だったが、一夏の戦いには実力が伴っていた。ならば、同様に努力すれば私でも一夏に届くはずだ。まぁ、正直に言えばどんな改造をISに施したのか聞きたいだけだったりするのだけれど。
あわよくば専用機でも、と思ってたりする。ふふふ、専用機さえあれば私も一夏に勝てるはずだ!貴様に頭を下げるなど、お前に勝って私の物にすることに比べれば容易いこと!
「一夏ぁ!お願いがあるのだがぁぁぁ……あ」
「あ、箒、どうした?」
言葉が尻切れトンボになる。それもそうだ、流石に視線の先で一夏がベンチで股の間に簪を座らせているのを見たら、言葉に力が入らなくなるだろう。
その上、一夏は簪の顔の横からタブレットを覗き込んでおり、非常に二人の顔が近い、というか一夏の顔が簪の髪に触れてる。あすなろ抱きの亜種と言えるだろう、顔が近い。頭が沸騰して一夏を刺し殺してしまいそうだ、だが落ち着け、これは何かの間違いだ、やっぱり顔が近い。
「……一夏、顔近い」
「あ、悪い、流石にダメか」
「いや、一夏がタブレット見れないならいいよ、それにそんなに悪くないし」
「チョコレートより甘いぃぃぃぃぃ!!?!?!あああああ!!!!!!頭がおかしくなりゅううううううううう!!!!!!!!」
ガバハァッッ!!!と吐血しながらぶっ倒れる。心が痛い、死ぬほど痛い、何故神は私にこんな甘い場面を見せるのか、私が何をしたと言うんだ……。
「箒!大丈夫か!?」
「お願い!私も一夏の股の間に座らせてください!このままだと頭が爆発しちゃうのほぉ!?!」
「お、おお、いきなりだなおい」
「もしくは後ろから刺してしまうかもしれないから早く」
「簪さん!交代!早く!」
「そ……そうですね」
結局、部屋でリモコンと本体を分解して見たのだが、配線が切れてたり、ハンダが取れていることもなかった、動き続ける故障なのだから基本的に配線関係が壊れていることもないのだろうけども。
ならおかしいのは基盤だろう。
「……なんでこんなのにこんな凄い基盤入ってるの?」
「いやぁ、高いからじゃないかなぁ?」
セッシーに安いのとか使えないし。というかあの後から一週間ほど話もしてない。
多分セッシーに嫌われた。死ぬ。
「あ……、無理、死ぬ……」
「唐突に何言ってるんですか!」
「いや、もう一週間もセッシーと喋ってないし……、嫌われた、もう無理……」
「そうとう入れ込んでるんですね……」
「そりゃあ金髪だし巨乳だし俺の好みドストライクだし………」
べしゃあと机に突っ伏す。確かにセッシーは俺の好みドストライクなのだけれども、それだけじゃない何かに惹かれてる気がする。感のようなものが反応しているのだ。そんな俺を見ながら何故か恥ずかしそうにシャルルちゃんは自分の髪の毛を弄る。
「……僕も金髪でわりかし胸はあるんだけど……」
「そうねー、たしかにねー、でもシャルルちゃんは一夏みたいなのがタイプなんじゃないの?」
「え、なんで?」
「純粋で優しい、それに顔が良い、加えて家事が出来るらしいよ?優良物件じゃないか、そうだろ?」
「僕は………能力では人を選ばないよ、ましてその人のスペックなんかじゃ絶対だよ、だってそれはその人を形作るものであって、本質ではないよ」
「ふーん難しいねぇ、でも能力は必要だろう?君が結婚し、子供を産んだ場合はそれなりの金がいる、綺麗ごとだけでは済まないよ」
「そう?僕が稼げば良いんじゃないかな?」
「……君と結婚したがる男は多いだろうね、君こそが優良物件だ」
「そうかな?」
そうだよ、と答える。意外としっかりした娘である、というか絶対に
「しかし……基盤の問題となると簪ちゃんに聞くしかないかぁ、格納庫に行こう」
「こんなことを聞くんですか?」
「何の基盤かわからないから大丈夫大丈夫」
セシリア・オルコットです。私は罪深い女になってしまったようですわ。
部屋の机に座り、パソコンで検索サイトを使い"ある"事柄を調べている。検索ワードを変えて検索する度に自分の中の何かが崩れ、何かが顔を出して来たかのように感じる。カチカチとクリックしていくと検索リストがずらりと並び、その内の一つを選択。
『男性 お尻 ゆるい』
そして出てくる男×男の漫画及び小説の数々、無料のそれらを一瞥しては関連の商品をネット通販のカゴにどんどん入れていく。
これをこの前から、厳密には霧島さんのお尻大崩壊の後からずっと続けている。そのおかげで何だか気恥ずかしくて全然喋れませんでしたわ。
いや、それよりも霧島さんをそういう"性的"な目で見てしまうことが悪い気がしてしまいます。どんなに彼がふしだらな事を言ってはいても、"性的"なことをしているとは考えられないからです。
誰よりも汚いのに、誰よりも"綺麗"な気がします。
『ふひょ……、これやっばいですわ……』
そんなことを思いながら届いた"本"を読み漁る。こういうのを見てると思うのですが、霧島さんみたいな方は総じて"受け"という部類になっていて、一夏さんのような"そんな気"が無いような方が"攻め"に分類されています。
こういうのを見てるとリアルの彼等を見ても"想像"してしまう、そんなことがある、とネットで見つけました。いや、そんな性的な目線で霧島さんを見てしまうのはいけないこと。
いや、でも、それは私の中でだけで完結してしまえば良いこと。リアルの霧島さんが"そう"でなければ良いのです。なら、想像してしまっても良いのではないでしょうか。
なら、本読んでる場合じゃないですわ。どうせ二人は格納庫でまたIS弄ってる気がします。さっそく試さないと。
「ぐへへ、一夏の座り心地はいいなぁ」
「箒、よだれよだれ」
じゅるりとよだれを吸い上げて、一夏の程よく硬い太ももが自分の尻に当たる感触を楽しむ。こんなに触れ合うのはいつ頃ぶりだろうか、"家族"ともこんなに触れあっていない気がする。ていうか、ホントに一夏の身体ヤッバイ、なにこれ、ずっとこうしてたい。
「……で、篠ノ乃さんはどうして此処にこられたんですか?」
目の前で更識が不機嫌そうに腕を組んでいた。おのれこの女め、一夏をここぞとばかりに占領しおって、私がまごついていたばかりにかなり好き勝手して、一夏の彼女等という立場に……。
そういえば彼女、彼女らしいなこの女、一夏の彼女。彼女彼女彼女彼女彼女。彼の女。
「おあああああああ!!!もうむりぃいいいいいいいい!!!!?!!!」
「ひゃっ」
「一夏ぁ!あかんの!?私じゃあかんの?!?料理作るし!よ、夜も頑張るし!!!!」
「箒、落ち着こう、な」
「落ち着いてられるかげぼろろろろろろろろろろろろろろろ!!!!!!?!!!?!」
「イヤーっ!何で吐くかなぁーっっ!?!」
気持ちが高ぶり過ぎて思いっきり一夏にゲロぶっかけてしまう。
ぐへへ、唾つけてやったぜ。してやったり、といった顔を簪に向けると彼女は眉をピクリと動かした。
そして一夏の顔をぐわっと鷲掴み、がっぷりと"キス"をした。
むごごご、と一夏は抵抗するが簪は平然といった顔である。というかキスしやがったこの女。
キスをしてくれたのである。
「お、おのれぇーっっつ!!!」
「ぷはぁ………、普通ですね……、何されてるんですか?篠ノ乃さん?一夏が汚れてるんですけど、どいてもらえます?」
「か、簪さん!何をしてっ……?!?」
「こなくそー!!!」
対抗するように制服を絞めるベルトを抜き取り、そしてフロントホックブラのホックを外し、キャミソールの内側に一夏の頭を入れ込む。ワンピースタイプの制服故にスカートたくしあげて一夏をその中に入れ込んだ形になる。
一種の補食行為のような挙動に一夏は何も出来ず、簪は箒を眺めるだけだった。正直言えば、こいつは正気なのかと見定めていたのだが、既に箒は正気ではなかった。
「の!のわー!ふごごごごー!」
「はーっはっはぁっ!!私の胸の中で暴れるとはなぁ!そんなに良いか!良いか!良いのか!言ってみろぉ!!」
ふごごー!と一夏は脱出を試みるが、下手に動けば動くほど箒の規格外の胸に埋もれるだけ。箒も一夏の頭を両手で抱え込んでがっちりホールドしてるので、そう簡単には抜け出せない。
霧島が居れば『うらやまけしからん!』と大暴れするのだろうが、一夏はそれどころではなかった。
「……その程度ですか?」
簪はそれだけ喋ると一夏のズボンのベルトを外しだした。これにはさすがの箒も唖然とするしかなかった。というか一夏はたまったものではない。
「あ!ダメ!だめだめだめ!それはいけない!」
「…………だ、大丈夫……!」
「ダメだね!わかった!今簪さんもんのすごく混乱してるね!落ち着こう!頼む!な!箒も!」
「はぁん?そこにある一夏のモノなどとうに私は見ているわぁ!!」
「それ昔!超むかし!小さい頃の話!わかった!お前も混乱してるな!あ!もう混乱してたな!!最悪だ!」
「ちわー、簪ちゃんいるかーい?うぃ?」
ガチャリと扉が開き、霧島の声と共に部屋に入って来る音がした。
そして静寂。
「……ねぇ、君達、まだ齢15なんだからそんな倒錯的なことしちゃいけないよ?何か悩み抱えてるならさぁ……聞くよ?」
普通に霧島は心配してくれた。