インフィニット/ストラトス 《GOLDBURN》 作:ビブロス
『そういやさ、クラス代表って決まったの?』
という一言を午後の授業の一発目に誰かが喋ってから6時間、未だにうちのクラスでは話し合いと言う名の罵倒が飛び交っていた。
「一夏君だろjk!」
「私!セシリア・オルコットですわ!」
「この前変態に負けてたじゃん、で結婚するの?」
「ぐっ!負けましたけど結婚はしませんわ!」
「約束を反故にするなー!この弱点アナルー!」
「変態は黙ってくださいませ!」
「黙れ変態!かえれかえれ!」
「お前のおかげで『一組ってなんか濃ゆいよね、精神的にも物理的にも』とか言われてんだぞクソ野郎ーっ!!!」
「最近、一夏と仲良くし過ぎだ変態め!私と一緒に居れる時間が少なくなるばかりだ変態め!一夏を解放しろ!」
「うるせーデカチチー!いつもイッチーが『箒はいつも俺の事心配して引っ付いて来る』とかいってんぞー!この万年発情期ー!バブみが足んねーぞ!」
「ま、万年発情期ぃ?!この変態が!」
「それは良いとして、俺がクラス代表だと君たちの立つ瀬なさそうだからイッチーで良いんじゃない?『あそこのクラスは変態に蹂躙された』とか言われるよ?別に俺は良いけどNE!」
「やっぱり一夏君じゃん!jk!」
「私ですわー!」
と、いった感じでずっとループしている。ほとんど霧島がちょっかい出してぐるぐるしてるのだが。正直なところを言ってしまえばクラス代表はみんなの真ん前に立ってもハキハキ喋れる奴の方が良いだろう、そこのところ考えたらドンドン発言するセシリアの方が良いのではなかろうか?毎回霧島はセシリアが立候補してるのに対してとやかく言ってるが、あれは弄ってるだけだろう。
と、そんなことをぽやーっと考えながら霧島からもらった白式に搭載された兵装のマニュアルを眺める。俺でもわかるようにまとまっているので凄い助かる。
「イッチー、マニュアルはどうかな?」
「助かるぜ、俺でも良くわかるから凄いな」
「そうか、それならかんちゃんに感謝しときなよ、頑張ってとっ散らかってたマニュアルをまとめてくれたんだから」
「へぇ、簪さんになんか持ってかないとな」
何が良いだろう?ここ最近ずっと三人で一緒になって機体を改造して飯も一緒に食べていたが、全くそこら辺は聞いてなかった。今日にでも聞いておこう。
「おい、一夏」
と、思っていたら凄い勢いで箒に呼び止められた。すんごい形相でぷんすかしてる、カツカツと足を鳴らして威嚇してくる、胸バンバン揺れる、ヤバイ。
「え、あ、クラス代表なら他の奴に‥‥‥」
「他の女の匂いがするぞ!一夏!」
「唐突に凄いこと言い出したよこの人」
「このクラスの女じゃないな!一夏!」
「女の匂いを嗅ぎ分けてる」
「どこの馬の骨だ!仕方ない私がお前にバブみを仕込ませてくれる!幼なじみだからな!さぁ!」
「そのまま自分の欲求叩きつけてきた」
「というか、このままだと代表決まらないから一夏がするべきなんじゃないのか?皆はそう言ってるぞ?」
唐突に話題を変えられた。堂々巡りの議論にみんな痺れを切らして『もう、お前決めろ』の雰囲気である。セシリアだけ『お待ちなさい』と待ったをかけてるが霧島におちょくられて邪魔されてる。
「いや、俺この前箒に負けたから他の人が良いだろ、なんなら箒でも良いし」
「そうではないだろう!昔の一夏なら!」
そこで箒は口をつぐむ。″昔なら″。俺も昔なら『俺がやるぜ!』とか言ってたんだろうか。もう高校生だ、自分の力量くらいわかっているつもりだからここでは発言を控えてるし、立候補もしない。下手にしくじって千冬姉の顔に泥を塗るのも悪いだろう。
「イッチー、とりあえずやってみて後で交代ってのもありなんじゃないかな?もしくは候補の人と戦って決めるかだよ、あ、俺はダメだよ、なったら怒られるから」
「いや、まぁ、それなら良いと思うけど、候補はセシリアだけだっけ?あ、箒も候補に入ろうぜ!再戦だ!」
「受けてたちますわ!」
「はーい、セッシーやめようねー、この前の俺との戦闘でブルーティアーズの破損けっこういってるからIS同士のタイマンは危ないよー」
むぎょー!と暴れるセシリアを霧島が抑え込む。それを尻目に箒を見上げると物凄く複雑な顔をして立っていた。
「わ、わたしも専用機持ちではないからな、それに‥‥‥この前勝ったのも運が良かったというか‥‥‥、それにこの前戦った時に少し壊してしまっていてな、借りれないかもしれんのだ」
「んじゃ俺しかないじゃん、修理終わったらクラス代表選考し直すなら一時俺でも良いぜ」
「んじゃイッチーでいこうか」
『暫定クラス代表決まったからイッチーは、ちーちゃんに報告だよ!セッシーはここで抑えとくから行ってきな』とIS展開して大暴れしそうなセシリアを霧島が羽交い締めにしつつ、俺に千冬姉のところに行けと促した。
箒は『部活だから私は一緒に行けない、しかし何か困ったのなら私が助けないこともない、いいか、助けないこともないんだ、肝に命じておけよ』と再三念押しされてしまった。
というわけで職員室である。千冬姉にクラス代表の件を話そうと思っていたが生憎いないので職員室で待機である。さっさと終わらせて白式を調整しに行きたいところだ。
「あ、一夏」
懐かしい声が聞こえ振り向いたところ、昔良く見ていた顔がそこにあった。茶色を含んだ黒髪をツインテールに仕上げ、華奢と言っても過言ではないほどのスレンダーボディー、それでも身体の真ん中に一本芯が通ったかのような印象を受ける。
「 鈴じゃん!久しぶりだなぁ、お前もIS学園に入ってたのか、何組なんだ?」
「2組よ、あんたがIS動かせるって聞いたからこっち飛んで来ちゃったわよ」
「へ?、あ、俺を心配してくれてISに入学したのか?なんか悪いなぁ、やっぱり鈴は面倒見いいな」
「いや、まぁ、そうなんだけど、そうじゃないっていうか、というかあんたなんで此処にいるの?」
「いや、クラス代表に選ばれちゃってさ、あ、暫定だぜ、暫定」
「へぇ、私もよ、専用機だって持ってるんだから!もしクラス代表戦で戦うことになっても手加減しないわよ、良い?」
「おう!今改良してるから楽しみにしてろよ!こっち来て出来た友達と改造してるんだ!」
「え、改造?ISを?学生だけで?」
「おう!」
「‥‥‥はぁ、お前はそんなことしてたのか」
千冬姉だった。腕組みをして困った奴を見るような眼でそこに立っていた。そんなにまずいことでも言ってしまっただろうか?
「凰、クラス代表を受け付けた、行って良いぞ、織斑何か用があるのか?」
「あ、千冬姉、うちのクラス代表、俺になったから報告しに来たぜ!」
ズゴォッッ!と脳天に拳が突き刺さった。頭に火花が飛び散るような感覚、横で鈴がウゲェみたいな顔で見ていた。
「織斑先生だ、それで自分でISを改造してるのか?やめろ、あれは学生が簡単に改造出来る代物じゃない死にたいのか?」
「俺″達″だ、簪さんと霧島が協力してくれてるし、二人は俺に合わせて丁寧にしてくれてる、それが悪いのかよ」
「簪?あのISを″自作″しようとしてる生徒か、それにあれは倉持技研所属のISだろう?」
「一回俺が連絡したらスゲー文句言われたけど、霧島が二回目連絡したらOKもらった、なんでだろうな」
「なんでだろうなって‥‥‥、もういいクラス代表はお前なんだな、クラス代表戦まで時間がないが改造は終わるのか?」
「わかんない!」
「‥‥‥‥、頭が痛くなったきた」
「お、頭痛なのか薬買ってこようか?」
「そういうわけじゃないでしょ一夏、あ、あんたのIS見せてよ!凄いんでしょ?」
「おう、いいぜ!んじゃ千冬姉またなー!」
そのまま格納庫の方へと向かった。どうにも俺がIS改造したりするのが気に入らないらしい。もしかすると雪片を格納庫の隅っこに放置してるとか知ったら怒られるかもしれないので黙っておこう。
格納庫。霧島がスクール水着でISの装甲板を運んでた。
「ぎゃああああああ!!!!変態だぁー!?!?」
鈴がもんどりうってひっくり返るが、こちらとしてはいつもの事なので慣れっこである。
「ごめん遅れた、霧島その格好どうしたの?」
「暴れたセッシーのせいで俺の制服が変身する魔法少女レベルで破れたからこれ着てる」
「むー!むー!もごー!」
「後ろにガムテープで口塞がれて手足縛られたセシリアが見えるんだけど」
「破いた罰ですよ、あぁ!股間の布部分がズレる!ズレちゃうよぉ!見えるねぇ!見えるねぇ!見えちゃうねぇ!具が見えるねぇ!」
「もがぁあああああ!!!!!!!!」
「我が一族の掟として局部を見られてしまった場合、見た相手を殺すか一生相手を伴侶とするかの二択のみ!結婚するしかないね!セッシー!具を出すよ!」
「むぎょあああああああ!!!!!!」
その後ろで黙々と作業する簪。普通に可愛い部類の女の子なのだが、オイルまみれになってるのでえらいことになってる。ISにエクソスーツ組み込むことになったせいではあるのだが。
「何とか組み込めた‥‥‥、あれ、来てたの?」
「すげえ顔になってるぞ簪さん、ほらタオル」
「ありがとう、此処まで来たから後は貴方が乗ってから設定する、そこから色々と機能を教えることにする‥‥」
「おー、んじゃ乗るかー」
「一夏、この人は?」
「あ、俺の白式の改造を手伝ってくれてる簪さんだ、すごいんだぜプログラムをほとんど一から組んでくれてるし俺のアイデアを全部実用的にして搭載してくれる!すごいスペシャルな人だ!」
「いや、そんなんじゃないから‥‥‥」
「謙遜するなよ!あ、こっちは俺のセカンド幼なじみの凰鈴音な!」
「ふーん、この人が一夏のIS改造してるのね、というか向こうの″変態″は何なの?やばくない‥‥‥?」
「あー、スクール水着のが霧島斎、同い年じゃないぞ年上だ、成人済み、んでガムテープで固定されてるのがセシリア・オルコット、先日霧島に負けて許嫁にされた人だ」
「‥‥‥複雑なのねー」
「あれは私としては気にしないことにしてます、凰‥‥‥さん」
「鈴音、もしくは鈴でいいわ、あんまり名字で呼ばれるの好きじゃないし、で一夏をこれに乗せるんでしょ?早くしなさいよ、あたしはそれを見に来たんだし」
「おー、それじゃあ乗るかー」
一夏はするすると白式を登って機体内部に潜り込んだ。同時に簪が流したフィッティングプログラムが一夏の身体データを取得し固定器具を調整する。
「組み込んだエクソスーツはフレーム自体はアメリカ製のを使ってるけどソフトウェア関係は日本製に変えてる、今回これを組み込んだ理由としてはISのPICを活用したパワーアシストでは使用する武装に対して柔軟に対応″し過ぎる″ということになり変更した、もちろんフルパワーでは両方使用することになるけど」
「射撃兵装は?結局リロード関連は俺が自前でするしかないんだろ?」
「そこはすでに解決してる、両腕に搭載してるソウドオフ型の上下二連式散弾銃は暴発を防ぐ為に折った状態で積載してます、なのであなたには片手で取り扱い出来るようになってもらう」
「あら、よっと」
一夏は左腕にマウントされていた上下二連式散弾銃を引き抜いた。と、そこにいる全員が思ったが、スポーンッ!!と散弾銃は真横にかっ飛んでいた。
全員が呆気に取られた直後に散弾銃は付近にあった打鉄にぶつかり、倒してしまったのだ。びっくりするくらい音が格納庫に響き、全員の目線が一夏に注がれる。
「‥‥‥てへぺろ!」
「あ、有り得ないわよ一夏!何やってんの!?弾入ってたらどうする気?!?ちゃんと操縦しなさいよ!」
鈴がかなりご立腹な様子で一夏へと突っ掛かっていく。その真横で簪と霧島は何にもなかったかのようにPDA(携帯端末)上の設計図を確認していた。
「‥‥‥グリップが甘かったわね、グリップ形状変えるか、マニュピレーターの構造を変えようかしら」
「爪部分の構造を二重にすれば良い、″あれ″を扱う時にも使えるはずだ」
「あんたたちびっくりするくらい無反応ね!馬鹿なの?!」
「「いつもの事」」
「嘘でしょ?!正気!?一夏!あんた何やったの?!?!」
「この前はセミオートショットガン落っことして暴発したぜ、多分そのせいでこんなにローテクな銃になったはず」
一夏が指差した先には抉れた壁があり、周辺に砕けた瓦礫がそのまま放置されていた。テスト用の火薬量減らしたシェル使ってて良かったよなー!と一夏はヘラヘラすると、思いっきり鈴にぶん殴られた。
「信じらんない!馬鹿なの!?やっぱりあんたはわたしが居なきゃダメなのね!」
それだけ言うと鈴は格納庫から出ていった。何だったんだ?と一夏達は首を傾げた。