インフィニット/ストラトス 《GOLDBURN》   作:ビブロス

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バトル!バトル!バトル! ーあんまり喋らない柴犬マスクマンー

人を殺せる人間ってのは、どんな種類かわかる?

 

彼女は小さい俺に対してそんな質問を投げ掛けて来た。今さら考えればとんでもない質問だ、普通そんなことを小さい子供に言うものではない。だが俺は真剣に考えて答えを出した、彼女に気に入られようと必死だったのかもしれない。

 

殺せるくらい強い人間!

 

その答えに対して彼女はほんのり笑いながら俺の頭を撫でてくれた。答えは正解に近いが全く違っていたのだろう。

 

私の考えでは三種類、自身の事しか考えていない人間、自身よりも大事なものがある人間、そして″自分も他人も″全てがどうでもいい人間。

 

 

貴方はどの″人間″になるのかしらね?

 

 

そう言って彼女は俺の目の前で左手に持っていた拳銃で頭に風穴を開けた。飛び散る骨と柔らかい肉が俺の顔にかかったのを覚えている、それは俺が初めて見た人間の″死″だった。悲しくはなかったが、彼女の綺麗な″金髪″が血で汚れてしまった事だけは非常に残念に思えた。

 

 

 

 

 

 

 

目が覚める、懐かしい夢を見た。ベットから立ち上がり柴犬マスクをかぶる、その感覚が自分の中の″スイッチ″を切り替える。晴れやかな気分に浸りつつ扉を開けた。

 

「きゃああああー!!!!変態が全裸でいるわー!!!!いやぁあああああ!!!!」

 

「マスクだけ被ってる!!!!完全に変態だぁ!!!!!!!」

 

黄色い声援が廊下に響き、誰かが俺専用のブザースイッチを押した。響くブザー音。バターン!と千冬先生の部屋の扉が勢い良く開かれた音が聞こえる。

 

おっと、服を着忘れたようだ、うっかりうっかり。早くしないとちーちゃんが鬼の形相でぶん殴ってくるはずだ、怖い怖い。

 

 

 

 

 

 

はてさて、今日は晴天であり、クラス代表戦の日である。一年だけの行事ではあるものの、優勝賞品は学食のデザートタダ券が半年分とあってなかなかの盛り上がりである。ていうか、以外とお金持ちの子いっぱい居るからそれほど欲しくないだろ、と言いたい所だがはしゃげる場なので黙っておこう。

 

一夏の試合自体はくじ引きにより後半にある。一回一回の試合でけっこう時間かかったりするので、わりかし今は暇を持て余すことになっている。

 

「はーい!ジュースいらんかねー!お菓子もあるよー!今日ぐらいダイエットなんて考えなくて大丈夫だよー!」

 

「いらんかねー‥‥‥ですわー」

 

「セッシー!声を出すんだよ!かきいれ時なんだよ!胸揺らしながら!パンツ見せながら!愛想振り撒く!!良いかな!」

 

取り敢えず暇なので小遣い稼ぎにチアの格好して軽食を売ることにした。セッシーにも同じような格好させて手伝いさせていたりする。すげぇバルンバルンしてる、セルフジョイ。

 

「なんで私がこんなこと!」

 

「君が破いたのは俺の制服なんですけど?」

 

「すぐ弁償すると言ったでしょう?!」

 

「ダメだよー、君の贖罪は俺のお手伝いなのさ、ほら頑張れ頑張れ」

 

「ていうか、こんなことせずに試合してる方達を見てた方が良いのではないんですの?わたくしより胸も揺れたり、パンツ見えたりしますわよ?」

 

「セッシーのしか見たくないから良い、ほら胸揺らす!」

 

「‥‥‥‥‥‥!!」

 

信じられないと言った顔でセッシーはババッ!!っと胸を隠した。羞恥に顔が赤く染まり半泣きでこちらを睨んでくる。なんと俺のツボを突く婦人なのか、あ、貴族らしいから貴婦人なのか。イタズラしてやりたいところである。性的な意味で!

 

ところで一夏はISのセッティング出来ているのだろうか。最後までスラスターの調整をおこなうと言っていたのだが、″あれ″による重心移動はとんでもないレベルだからそれに対応する為なのだろう。頑張って欲しいものだ。

 

ちなみに俺のGOBも二人が協力してくれて使いやすくなっている、はずだ!多分!2割くらい

 

 

 

 

 

 

試合まで3分。ISスーツに着替えた俺は格納庫で準備体操をしていた。その横で簪さんがPDAを操作し、白式の最終チェックを終わらせていた。

 

「準備は良い?一夏」

 

「おう、準備万端だぜ!簪さん!」

 

白式に乗り込み、起動させる。ISコアからの電力が機体内を駆け巡り、全てのモーターに火が入った。エクソスーツ部分の油圧機構が稼働し始め、スーツのフレームに力が入る、固くもなく、軽すぎない適度な抵抗が腕にかかった。

 

凄い腕だ。整備した簪さんに感謝しつつ手のひらを動かす。シャキシャキと金属のほどよく擦れる音と共に指が自身の指の動きと連動して動くき、塗りすぎていないグリスと金属の香りが鼻をくすぐる。

 

一歩前へと足を踏み出す。足に掛かる擬似的な地面の抵抗、HUDに表示される足への負荷は簪さんが組み込んだショックアブソーバーにより次の一歩の為に効率良く吸収され、放出される。

 

背中から腰へと移動した背部浮遊ユニット、展開型の積層スラスター。思考操作によりスライド機構が働き、自由自在にスラスターの方向を変える。

 

「‥‥‥最高だ、ありがとう!」

 

「時間です、頑張って」

 

「おう!」

 

ガショリと右手でサムズアップを決める。同じように簪さんもサムズアップを決めてくれた。意外とノリの良い娘である。

 

カタパルトに足を嵌め込む。電力がチャージされカタパルトレールからわずかに放電する。

 

「織斑一夏!改修型白式!出る!」

 

「あ、カタパルトの電圧間違えてた、ちょっとまって、あ」

 

「へ?な‥‥‥?!」

 

バゴンッッ!!!と俺は″想定以上″の速度で弾き出された。HUDに表示されていたカタパルトの電圧出力は白式に対応する出力よりも0が一つ多かった。単純に10倍の力で吹っ飛ばされたのである。その速度で上半身が後ろに曲がらなかったのはエクソスーツの背骨フレームの強靭性の賜物だった。

 

「来たわね!いち」

 

「ああーっっっ!!!!!」

 

そのまま対戦相手の鈴を通り越して反対側の試合会場の観客用シールドへとぶち当たった。そのままズルズルと地面へと落ちる。自分のケガは無いものの機体にダメージがあるんじゃないかと思うくらいの速度だった。

 

「何やってんの!?あんた!?」

 

「カタパルト!カタパルトが悪いから!俺のせいじゃないから!」

 

「うるさい!試合開始よ!」

 

ちょっと待て!という間に試合開始のブザーが鳴り、ほぼ真上から鈴が襲い掛かる。その手にはIS用の青龍刀。

 

取り敢えず回避。地面への踏み込み、スラスターへの操作、重心の移動、全てを同時におこなう。機体=白式はそれを驚異的なレスポンスで実行する。鈴の振るった青龍刀をスレスレで回避した。

 

「何?!」

 

「流石!思った通りに動く!」

 

「まだ!」

 

鈴は機体のスラスターを噴かし、強引に機体の機動をねじ曲げ、蹴りを放つ。防御、足を踏ん張って腕でガードする。衝撃。つんざくような金属音、凄まじい衝撃がショックアブソーバーを通り越して俺に襲い掛かる。踏み込んだ足がめり込み、流された衝撃が地面に亀裂を走らせる。でも、耐えた。

 

「耐えた!?甲龍はパワー系なのよ!」

 

「パワー系をこんな動かし方するお前が怖いよ!」

 

「うるさい!」

 

「お返しいくぞ!」

 

受けた鈴の蹴り足に組み付き、そのまま足ごと自分を回転させる、もちろんスラスターによる加速込みである。プロレスにおけるドラゴンスクリューと呼ばれる技に近いだろう。鈴は不安定な片足をねじ曲げられたせいで体勢を崩し、地面へと上半身を打ち付けた。それは再び鈴を空中に浮かせるほどの威力があった。

 

「追加ぁ!!」

 

スラスターによる反対向きに急制動をかけ、後ろ回し蹴りを放つ。それは空中に浮いていた鈴の腹部に突き刺さり、壁まで吹き飛ばした。

 

やった!と思った途端に壁に激突した鈴の方から舞い上がる土煙をぶち抜いて見えない″何か″が飛んで来た。回避と思い、体勢を変えた瞬間に衝撃が左肩にぶち当たる。きりもみ回転しながら地面を転げ回る、何とか見えた視界にはもう一発の何かが再び土煙をぶち抜いて来る様子が写っていた。

 

顔面に衝撃。後頭部から地面にめり込みつつ、壁まで吹っ飛ばされる。痛い頭、それを逆撫でするような″アラート音″、次の攻撃が来る。背筋に緊張が走り、身体が反射的に動く。それに反応するようにスラスターが稼働。足から空に向かって舞い上がる。

 

元居た位置に着弾する″何か″。爆発する壁。重心を変えて体勢を整えると同時に、こちらに″狙い″をつけているだろう鈴が見えた。何を撃ってるのか、何で撃ってるのかさっぱりわからない。だが、結局は鈴が″見える″位置に撃ち込んでいるのは変わらない。そう、見えるところにしか撃ち込んでこないのだ。

 

HUD操作、両腕部搭載の散弾銃のシェルを煙幕弾に変える。両腕から引き抜く、それと同時に腕部に搭載された小型サブアームが肘付近に格納されたシェルを散弾銃に詰め込む。銃身を手首のスナップだけで発射出来る形状に変形させ、狙いは大雑把につけて引き金を引く。

 

「無駄なこと‥‥‥!」

 

普通の弾丸と思っていた鈴。放たれる″何か″。数発くらった事で大体の着弾タイミングはわかってる。空に墨を引くように直線的に飛んでいく煙幕弾に″何か″が直撃した。和紙に墨を落としたかのように空を煙幕が塗り潰す。そのまま3発煙幕弾を鈴に向けて放つ。

 

「小癪でしょ!一夏!」

 

「悪いな!」

 

視界を失った鈴はむちゃくちゃに″何か″を撃ち始める。視界を煙幕で潰したとはいえ、ISのハイパーセンサーなら時間がたてば熱感知及び赤外線等でこちらを割り出してくる、その前に距離を″詰める″。

 

スラスター最大出力。スラスターからのエネルギー放出からの再吸収、そして高圧縮。イコライザ展開、右手に超大型のマチェーテが現れる。その刀身の表面には幾何学的かつ人体の血管のように赤い線が駆け巡っていた。

 

高圧縮されたエネルギーの解放。瞬時加速(イグニッションブースト)と呼ばれる、ISの加速技術。直線的ではあるものの、爆発的な速度を得ることが出来る。知識を多少かじった程度だったが、意外と出来るものである。

 

驚異的な速度で煙幕をぶち抜き、そのままの勢いでマチェーテ=『雪片弐式』を鈴へと叩き付ける。名前は霧島が雪片弐型の代わりだからと言って、弐式と名付けた。正式名称は流体式重心移動型近接兵装二号。刀身に走る線の中では特殊な流体金属が高周波を出しつつ流れており。使い手の振り方に合わせて刀身内での流量を調整し、重心を移動、その刃を対象に向けて垂直かつ最速で直撃するように自動で調整する。

 

故にその直撃は甲龍のシールドバリアをぶち抜き、その右腕部の中程まで切り裂くほどの威力を放つことになった。

 

「ち!浅いか!」

 

「な!?」

 

「続けていくぞ!」

 

「‥‥‥!!良い度胸じゃない!」

 

踏み込むイメージ。スラスターが瞬間最大出力を上げ、ステップの要領で前方へと俺を推し進める。下段構えからの突き。しかし難なく鈴はそれを青龍刀で弾き、返し刃でこちらへと振り抜く。

 

回避。間に合わないので腕部の硬い装甲とシールドバリアで刃を反らす。SEが僅かに減少、しかしそのまま前へと進む。ここで逃したら良いようにやられる。逆に良いように″ごり押せ″。

 

「落ち‥‥‥っろ!」

 

「あんたがっ!!」

 

空いている腕部による手刀。弐式の刃部分と同じ素材の爪、マニュピレータの関節固定、衝撃吸収用の関節を逆に伸ばすことで実行する簡易的なパイルバンカー。狙いは関節部分。

 

横凪ぎの青龍刀。手首部分に向けて手刀を叩き込む。火花と鉄片を撒き散らしながら甲龍の手首が吹き飛ぶ。しかしそのまま顔面にラリアットを食らう。

 

エネルギーを持ってかれる。やり返せ!逆襲の意思に反応して白式の出力が上がる。右腕に搭載していた散弾銃を″右手″で引き抜く。器用に小指にストックを引っ掛け、曲芸のような俊敏な動きでバレルを戻し、狙いをつける。

 

「‥‥‥ひ!」

 

鈴の小さい悲鳴。銃口は鈴の顔面に向けており、容赦なく引き金を引く。閃光、そして閃光。二発をほとんど同時でぶっ放す。特殊金属を使った00バック弾は容赦なく甲龍のシールドバリアを引き剥がし、最終防壁である絶対防御にまで攻撃を通した。

 

しかしエネルギーを0には出来ておらず、鈴は即座に後ろに引く。逃げて体勢を立て直すつもりだろう、逃がすわけない。左腕の散弾銃を引き抜き、シェルを選択、″フレシェット弾″。

 

「逃がすかッ‥‥‥!!」

 

「好きなようにさせてたまるか!!」

 

「イッツ!ショータァーィム!」

 

第三者の声。引き金を指に掛けた。しかし引くことはなかった。

 

直後、真上から光が二人に向けて降り注いだのだ。全くの予想外なその光景。行動を起こす前に光が炸裂し、二人は2,000度の熱風に巻き込まれ、吹き飛ばされた。二人は吹っ飛ばされる最中光を放ったと思わしき姿を見た。

 

″第三者″。二本の″大腕″をぶら下げた黒光りする機体が試合会場の真上に居た。その機体、ISには上半身裸の″男″が乗っていた。ISに男が乗っていたのだ。

 

″女″にしか動かせないISに″男″が乗っていたのだ。

 

「レディースアーンレディース!!女ばっかりだね!筋ッッ肉が足りないなぁ!非常に足りないなぁ!なので君たちに筋肉を授ける堕天使参上だぁ!感謝!感激!雨あられ!涙を流しながら筋肉に奉仕するのだ!レディース!オーケェーイ?!?!?」

 

加えてとんでもない変態が乗っていた。

 

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