インフィニット/ストラトス 《GOLDBURN》   作:ビブロス

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俺と君の距離ー慌てる柴犬マスクマンー

霧島はそこに居た。真っ黒な世界、足元は真っ赤な血で満ちていた。鼻が効かなくなるような鉄の臭い、血の臭い。一歩踏み出すごとにその血は自分の足を這い上がってきた。

 

『血に濡れることを貴方は避けられない』

 

声が聞こえ、そちらを向くと白髪の女性がこちらを見つめていた。その両腕は血で染まり、その胸からは絶え間なく血が滴っている。そしてその眼はどんな血よりも真っ赤であった。

 

『貴方は私と一緒に私と貴方の敵全てを焼き尽くすの、貴方は逃げられないし、逃がすつもりもない』

 

女は着ている服を胸元から真横に引き裂く。そこには一本の″楔″が突き刺さっている、それが血を滴らさせているのだと気付いた。ここの血は″彼女″の物だ。全て。

 

彼女は俺に近づき、露になった胸と楔を押し付ける。楔は俺の身体に傷を付け、血を滴らせる。

 

『私こそが貴方の欲望であり、本来の″理性と本能″、だから、この楔を引き抜いてちょうだい、そうすれば貴方は自分と″向き合える″』

 

彼女はぞっとするぐらいの綺麗な顔でニッコリ笑った。まるで″母親″の顔だと、ぼんやり考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「起きてくださいませんか」

 

高飛車で甘い声。その声で目が覚める。学園の保健室のベッドの上だった、そして横にはセッシーが座っている。

 

セッシーが座ってる!!セッシーエクスタシー!!

 

「おはよう!!!!!セッシー!!!!いつもどおりエロいね!!!!」

 

「声の音量デッカイですわ!!!あとエロい言わないでください!!」

 

「セッシーもね!!」

 

むっぎゃー!とセシリアは立ち上がるが、何を思ったのかするするとまた椅子に座った。その顔は何とも言えない表情で、セシリアはモジモジとして視線を泳がせるばかり。どうしたのだろうか、モジモジセッシーである。

 

「あ、あのですね、霧島さん‥‥‥」

 

「どしたー?」

 

「″彼″は貴方の知り合いか何かですか?」

 

モジモジはしていても冷たく鋭い言葉だった。

 

「どうしてそう思うんだい?」

 

「わたくし、彼と貴方の最後の会話を聞きましたの、彼は貴方を″同族かつ我々の仲間だったかもしれない″と言っていましたわ」

 

「ああ、たしかにそう言ってたね‥‥‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛び散る鉄片、流体人工筋肉の真っ青な血が噴き出す。ドクターは大腕という巨大な質量を失いまともに立てずいた。奴のコアAIはむちゃくちゃなバランスを何とかしようとひっきりなしに姿勢制御用のスラスター噴射する。

 

「ちぃっっ!相転移してる物質を切断するとか意味わかんないですよ!ディオ・カルネ使わないし!なので!私は引きます!アディオス!」

 

「『待て!』」

 

「待って良いんですか?まだやるつもりですかね?」

 

「『いえ、お帰りください、さよならバイバイ、最後に聞きたいことがあるだけです』」

 

「私の腕を切ったことに免じて答えましょう、何でも、一つだけ」

 

「『何の目的でここに来た!!』」

 

「テロリズムですよ、単純な答えです、世界の注目を集めているここの学園が襲われたとなれば各国がどう動くことか‥‥‥、あとは″同族かつ我々の仲間だったかもしれない″貴方に会いたかったのもあります」

 

「『‥‥‥え、やだぁ‥‥』」

 

「マジ反応やめてくれません?傷つくから、マジで、それではまた今度です」

 

よよよ、と微妙に涙声でドクターはフラフラと上空へと飛び立っていった。追っかけたいところだが、追っかけるほど機体がまともに動けるはずもなく。そのまま地面にへたりこみ、意識を失った。そこまでは覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧島さん!」

 

のんびり思い出しているとセッシーがお怒りである。セッシーエクスタシー!である。略してセッ○ス。

 

「はいはい、同族ってのは使ってる機体の技術の出所が一緒だからだよ、仲間ってのは男でIS動かしてるからじゃないかな?」

 

「技術の出所が一緒?」

 

「霧島技研ってわかる?九州のド田舎にある会社なんだけど」

 

「一応、ISの部品の一部を作ってる会社というのは聞いてます、というか霧島って‥‥‥」

 

「ご名答、俺はそこの社長やってる爺様の孫、そしてそこで作ったのがGOB、そしてあいつのくっそ硬い装甲とあの流体人工筋肉は霧島技研で開発されたやつ」

 

「なんだが無駄に装備をどんどん使い捨てる人とは思ってましたけど、けっこうなご子息だったからですのね、合点がいきましたわ」

 

「へへへ、惚れたかい?」

 

「‥‥‥いえ、あの、それはないこともないというか‥‥‥その、ですね‥‥‥」

 

歯切れの悪いセッシーである。再びモジモジと下を見るばかりだ。ふへへ、こういうセッシーも良いものである。エクセレント。

 

「と、とりあえず!貴方はあの″男″とは仲間では無いのですね!?」

 

「そうだよー」

 

「なら良いです!それでは‥‥‥!」

 

んばばば!とセッシーは立ち上がり、髪の毛で顔を隠しながら保健室を出ていく。しかし扉を開けたところでこちらを振り向いた、聞き忘れたことでもあるようだ。

 

「‥‥‥もう一つ聞きたいのですけど、貴方最後に織斑さんと凰さんを庇いましたけど、どうしてですか‥‥‥、貴方の機体ダメージなら逃げても誰も批難はしなかったと思います、死ぬとは思わなかったのですか?」

 

「セッシーも一夏も鈴ちゃんも15だろ?大人の俺が守らないといけないじゃないか、当然だよ」

 

「‥‥‥わかりましたわ」

 

そのまま顔を隠したままセッシーは保健室を飛び出していった。セッシー、プライド高いから怒っちゃったのかもしれない、どうしよう。

 

そんなことを考えてると扉が開き、一夏が入ってきた。頭に包帯ぐるぐる巻いて、頬には絆創膏を貼っている。

 

「あら、セシリアが居ると思ったけど、霧し‥‥‥ま、誰?」

 

「一夏、どしたの?」

 

「ふぅーん、ほぉー、霧島は″そんな顔″してたんだな、予想外に″渋い″、ギャップが凄い」

 

「あ」

 

ペタペタと顔に触る、いつものラバー製のマスクの感触は無く、素肌であった。いつもより視界が良いはずである。横を向くと夕日が差し込む窓に俺の顔が写っていた。

 

幾分か日本人離れした顔立ちがそこに写っている。久々に見た気がした、どうにもこの顔は気に入らない。まるで悪役の面構えだからだ、もう少しいい人そうな顔であったら、どんなに良かったことか。

 

「それでか‥‥‥」

 

セシリアがモジモジしてたのはこのインテリマフィアみたいな顔に恐がってたせいではないだろうか、いつもみたいに高圧的ではなかったのが証拠だろう。どうしたものか。

 

 

 

 

 

 

 

拝啓、天国のお母様とお父様へ。率直に申し上げます殿方に恋してしまいました。いやもう、ちょっと言葉になりません、マジですわ、マジで。いや、ちょっと、いや、いやいやいやいや、ホントに無理、まじ無理、何ですのこの気持ち。お母様が一切お父様のことを悪く言わなかったので何でこんな男のことを庇うのかと少し思ってましたけども、今わかりましたわ、その気持ち。わっけわからないけど、″わかりましたわ″。正直言ってあの保健室で最後の彼の言葉を聞いた時に″飛び付いて″しまいそうでしたわ。でもわたくしの超絶理性で抑えましたわ、代わりにベットで枕抱き込んでゴロゴロしてますけども。でもホントに誉めてほしいくらい耐えましたわ、自分の身体が、本能が、『やるべきこと』として認識してました。三大欲求にプラスされた気分ですわ。最悪で最高です!!

 

明日から少し優しくしようと思います、いや、いきなり全開で優しくするのはちょっと嫌な気がします、全裸で犬のマスク被ってたことを鑑みると、この気持ちと相殺して少し勝ったくらいなので、わずかに、ほんのり優しくしてみようと思います。わたくしは貴族の令嬢、そしてオルコット家の跡継ぎ、仲良くなりたいといえどわたくしが上ということをあの方に教えてさしあげますわ。

 

そう決めましたわ、そう決めましたの。このセシリア・オルコットが。

 

なので、明日のお昼にわたくしの手作りお弁当でもご馳走してやろうと思います。サンドイッチが良いでしょうか、多分最高ですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう!!!!!みんな!元気かな!」

 

柴犬マスクを被り、教室に入る。一瞬だけみんながこちらを見るがさっと視線を元に戻す、もう完全に珍獣扱いである。マスクを変える時期なのではなかろうか。贅沢なクラスメイトである。

 

「あ、おはよう霧島ぁー、身体の調子はどうだよ?」

 

一夏が子犬のように近寄ってくる、ホントに可愛い男子である。その後ろには保護者のように篠ノ乃がくっついていた、この前のドンパチに参加出来なかったのもあるが、一夏がちょっとケガしたのが″心配″でたまらないのだろう、そういう顔をしている。

 

「おー、大丈夫だよー、イッチーもだいぶ良さそうだねー、箒ちゃんの看病のおかげかな?」

 

「ああ!だいぶ良いぜ!箒は剣道やってたからこういう包帯巻くのとかサポーター巻くの上手いんだよ!な!」

 

「あ、あぁ、そうだ、私は巻くのが上手いんだ‥‥、じゃなくて!他にもしてやったろう!」

 

「あー、そうだな!″服″を着替えさせてもらったな!」

 

「あ、ばかも‥‥」

 

なんやて!?という表情で箒ちゃんと一夏にクラスメイト全員の視線が集まる。箒ちゃん的にはご飯食べさせてくれたぜ、とか言ってもらいたかったんだろうが、イッチーのチョイスが悪い。というかイッチー的にはそれが一番助かった事だから素直に答えちゃったんだろうけど。

 

多分上着だけ着せてもらったんじゃなかろうか、イッチーの軽い返答を見るにそんなところだろう。

 

「一夏くん!服を着替えさせてもらったの!?ホント!?!」

 

「なんてこったい!IS学園でトップクラスの巨乳の篠ノ乃さんに服を着替えさせてもらっただって!絶対エロいことしてるよね!絶対!」

 

「あーん!私も一夏くんの着替え手伝いたかった!!」

 

「エッチなのはいけないと思います!もう今度から箒ちゃんじゃなくて勃っきちゃぐぇえええ!!!!」

 

言葉の途中で箒ちゃんに思いっきり顔面を木刀でフルスイングされて教室の端まで吹っ飛ばされた。とんでもない暴力型エロ女子である。這いつくばって鼻血をドバドバ溢す、出血多量で保健室にブーメランしそうです。

 

「何してますの‥‥?」

 

「あー、セッシー!おはよう!!」

 

「お、おはようですわ」

 

セッシーが訝しそうにこちらを覗き込む。なぜか目が左右に泳いでいる、そしてモジモジセッシーである、かわいい。あと、いつもより普段している化粧よりも気合いが入ってる気がする。

 

「霧島さん‥‥、今日のお昼はお暇ですか?」

 

「ほい?昼?暇だよ?」

 

「でしたら、わたくしに付き合ってほしいのですけど‥‥‥、よろしい‥‥ですか?」

 

「‥‥‥‥」

 

「‥‥どっちですの?」

 

セッシーの凄みに負けて無言で頷く。それを見ると満足そうな顔をして自分の席へと帰っていった。そして気付いた今日のセッシーは超絶良い香りがした、いつもよりもっとである。エクスタシー!超エクスタシー!だった。セッシー!エクスタシー!である、略して

 

「セッ○スッッッッッッッ!!!!!!!!」

 

「公然猥褻だばかたれッッッッッッッ!!!!!!」

 

ちーちゃんの右ストレートが顔面へとめり込んだ。最近、俺に対するみんなの暴力が過激になってる気がする。とんだヤンキー高校である。

 

 

 

 

 

 

 

 

お昼時である。一夏は箒ちゃんと鈴ちゃんのダブル幼なじみに捕まって食堂へと引きずられていってしまった。かわいそうに、絶対に修羅場になるだろう。

 

そして俺はというと

 

学園の屋上、ベンチに座っている。セッシーと″二人きり″でだ。まさかこんな自分にこんな青春みたいな一場面が訪れようとは。何喋っていいかさっぱりわからない。

 

「で、さ、セッシー昼休みにこんなところ呼び出して横に座って俺に何をするのかな」

 

「な、何もしませんわよ‥‥‥、ただお昼をご一緒したかっただけですわ」

 

鼻血出そうである。モジモジ&顔を赤らめるセッシーの破壊力は半端がない。気を抜くと下ネタ言ってしまいそうだが、今言ったら、色んな意味で″死ぬ″。

 

「そ、それなら食堂で食べても良かったんじゃないかな?」

 

「わ、わたくしが作ったお弁当が食べれないんですの?!」

 

だよね、多分そうだと思ったよ。その俺の反対側に置いてるでっかいランチボックスは明らかにそれっぽいもの、え、何?いつからセッシーは弱点アナルの姫騎士属性ぶん投げて甲斐甲斐しく世話してくれる系のキャラ出して来たのだろうか。謎である。顔が怖いから下手に出てるのか?

 

「いや、食べれるよ、ていうか超食べたい」

 

「やった‥‥!!、あ、いえ、そ、それならちょっと条件あるんですけども‥‥‥」

 

やった、って言った。やったって言った!可愛いなセッシー!超可愛いなセッシー!!!てか条件て何だい!今なら何でも言うこと聞くよ!マジで!

 

「″マスク″外してくださいませんか?」

 

「おっ‥‥‥と、予想外」

 

「予想外ですの?」

 

「わりかし、セッシーは俺の顔にびびってるのかと思ってた」

 

「び、びびってませんわ、ちょっとその、″優しい″顔をしてましたので、また見たくなったのです」

 

「優しい?この顔が?」

 

「そうですわっ!だから早く!」

 

ペチペチと肩を叩かれて催促されたので、仕方なくマスクを脱ぐ。セッシーは満面の笑みを溢しながらランチボックスを開けてサンドイッチを寄越してきた。

 

「んふー!早く食べてください!」

 

「満足そうでなによりです、それでは‥‥」

 

厳かにサンドイッチを口に放り込む。歯を食い込ませた瞬間に口一杯に強烈な刺激が脳ミソに電流を流す。正直な感想を言えば、辛い、辛いだけである。

 

こ、ここで姫騎士っぽい属性出さんでも良いやん!!料理下手とか!というか、超どや顔でこっちを見てくるあたりけっこうな自信持ってるし!

 

「‥‥‥刺激的でなによりです、セッシー、これ、なに入れたん?」

 

「卵サンドですけど色味が気に入らないからカラシを入れましたわ!!感想は?!」

 

「お酒と一緒に食べたら美味しい奴だね」

 

「そうでしょう!」

 

お酒と言ってもアルコール度数超高い奴で味覚を超鈍感にしてって意味なのだが、超どや顔である。まぁ、可愛いから許してしまいそうである。いつか一緒に料理して修正しないと‥‥‥。

 

そんな事を考えてるとポケットの携帯が鳴り出した。おかしい、マナーモードにしていたはずなのに。こんなこと出来るのは二人くらいしかしらない。

 

「セッシー、ごめん、ヤバい奴から電話来たかも、出るね」

 

「ヤバい奴?」

 

「そうヤバい奴」

 

携帯を取り出し、通話ボタンを押し込むと同時に大音量で″女″のキンキン声が鳴り響いた。鼓膜がぶっ飛びそうである。

 

『斎ぃっー!!!!大丈夫っ?????この前ケガしたとか聞いたけど!?!』

 

「あー、軽症です、大丈夫ですから電話切るよ」

 

『あー!待って待って!2つほど伝えたいことあるから!』

 

「お早めにどうぞ」

 

『冷たいし!一つはそっちにGOBの新型装甲と光学系兵装と爆装ユニットを送ったから!ちゃんと斎が書いたとおりに大出力の推進ユニットもいっぱいつけたから!』

 

「へー、あの要求スペックの推進ユニット出来たんだ」

 

『私に不可能はないからね!すごいでしょ!』

 

「嫌がらせだったのに」

 

『ひどい!それとこれが一番重要何だけど、″摩耶ちゃん″がそっちに講師として行くらしいの』

 

「はっ!?!摩耶ちゃんが?!?正気か!?」

 

『あの子、斎がケガしたとか、若い女の子に囲まれてるとか、求婚したとか言ったらIS学園に行くとか言い出したのよ、一応、講師出来るくらいの実力あるから困りものよねー、なので頑張ってねー!シーユーアゲイン!』

 

「ちょっっっ!!!まっっっ!!あ、切れた‥‥‥、ていうかヤバいし!摩耶ちゃん来るの!?!超ヤバい!!!」

 

「‥‥‥何でそんなに慌ててますの??」

 

セッシーがわけがわからないといった顔でこちらを見てくる。確かにこんなに俺が慌ててればそういう顔をするのが道理だろう、しかし、ホントに″アイツ″はヤバいのだ。絶対に″血″を見ることになる。

 

「いや、俺の知り合いというか何というかちょっとめんどくさいのがIS学園に講師として来ることになった‥‥‥」

 

「知り合い?」

 

「俺の″妹″‥‥‥、次期ブリュンヒルデ候補の″卯都木摩耶″だ」




霧島の顔のイメージは皺が少ないマッツ・ミケルセンです。
ちなみにCVは杉田。
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