ヒードランは動かない   作:C-WEED

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思い付いたから書いた。後悔はしていない。
ごめんなさい許してください。ちゃんと他のもかいてますから。どうせこっちのは短いので。

まぁ楽しんでもらえれば幸いです。

11/29 とんぷー様、誤字報告ありがとうございます。


ヒードランの一日

 火口深部、という空間がある。メゼポルタ地方のラティオ活火山。異形の進化を遂げた伝説の紅龍、ミラボレアスがハンターと死闘を繰り広げる空間である。文字通り火口の奥にある。煮えたぎるマグマに囲まれた灼熱地帯であり、およそ人間が活動できるような空間ではない。

 

 

 閑話休題。

 物語の舞台はそこではない。その火口深部からすると遥かに地表近くの場所に小さな洞窟がある。入り口は巨岩に塞がれており、地表からそこに入ることは出来ない。そんな洞窟の最深部に一匹の生物がいる。

 

 

 眠っているのか、呼吸に合わせて体が動いている。目は開けたままで、瞳は爛々と輝いているが。

 

 

 頭部は鋼鉄の外殻に守られ、胴はマグマを思わせる赤い色。見るからに高温であり、所々赤熱している。足は付け根から先にかけて太くなっており、四本の爪が大地にしっかりと根を下ろしていた。

 

 

 彼の名はヒードラン。火山の洞窟に生まれ、火山の洞窟を住処とし、そして洞窟の中で一生を終える存在であり、この物語の主人公である。

 

 

 

 やがて朝が訪れ、ヒードランは目を覚ます。といっても、洞窟の中に日光は入ってこない為、朝かどうかなどはヒードランが知る由もない。彼にとっては、目覚めた時が一日の始まりであり、寝る時が一日の終わりなのである。

 

 

 目を開けたままだったのは、彼が瞼を持たないからだ。だがそれは何ら問題ではない。彼にとって瞼など洞窟を見守ることを邪魔するものに過ぎないのだ。

 

 

 目覚めた彼がまずすることは洞窟内の見回りだ。彼は縄張り意識が強い。大事な住処であるこの洞窟に許可なく侵入する者を許さない。彼にとって洞窟とは、母の子宮のようであり、世界であり、宇宙であり、ただの空洞なのだ。地震が起ころうと、火山が噴火しようと、外でハンターとモンスターが戦っていようと、この洞窟は不変であり、その中に住むヒードランには全くもって関係はない。ちなみに彼は卵生である。

 

 

 その強靭な四肢と、鋼鉄の爪を以て洞窟内をカサカサと言わんばかりに素早く動き回り、異常が無いかを確かめる。爪を食い込ませながら、天井であろうが壁であろうが関係ない、まさに縦横無尽の動きであった。

 

 

 彼はやがて元の位置に戻り動きを止めた。どうやら今日も異常は無かったらしい。この間凡そ3分42秒。カップ麺を作るには少し長い。3分42秒で回れてしまう洞窟とはいえ、そこで暮らすのは彼一匹。広すぎるくらいである。それもまた我々から見れば、であり、彼にとっては当然以外の何物でもないのだが。

 

 

 ところで、爪を食い込ませる以上、洞窟の壁や床、天井には彼の通った痕が残る。洞窟が知らず知らずの内に傷付いていたことに気付いた時、彼は一体何者の仕業かと激昂するのだが、それはまた別の話。赤熱した自分の体の他に光を放つものの無い洞窟内においては彼は自らを知ることも出来ないのだ。

 

 

 見回りを終えたヒードランは、やがて穴を掘る。食事の為だ。彼は鉱石を食べる。他の物が食べられないわけではない。土を食ったこともあったが、再び食べようと思えたのは鉱石だけであった。

 

 

 目当ての鉱石は燃石炭。文字通りの物体だ。比較的容易に見つかる上にそれなりにエネルギーが得られる。所謂コストパフォーマンスの良い物だ。

 

 

 もっとも彼にそこまでの考えはなく、すぐ見つかるそれを食べている内に腹がふくれる(十分なエネルギーが得られる)ために食事を止めるだけなのだが。

 今日も今日とでそれは変わらず、時々混ざる強燃石炭を噛み砕きながら彼の腹は満たされた。

 と、ここで彼の敏感な嗅覚が火薬の匂いを嗅ぎとった。彼は匂いに向かって掘り進める。近くに火薬岩があるのだろう。先程腹を満たしたばかりの彼だが、どうやら火薬岩は別腹らしい。

 

 

 目当ての火薬岩を発見した彼は、早速かじりつく。口の中でドカンドカンと爆ぜる火薬岩の刺激。これが堪らないらしい。どことなく心地よさげだ。きっと我々人類が炭酸水やわ○パチの弾けるやつを好むようなものだろう。

 

 

 一頻り楽しんだ後、彼は帰路に着く。来た穴を戻りながら、しっかりと埋めていく。

 全ては洞窟をいつも通りに保つため。穴の掘り始めが洞窟である以上、穴をそのままにしていれば洞窟は穴だらけになり、際限なく広がっていってしまう。それは彼にとって好ましくない。彼は狭く暗く変わり映えのない洞窟を愛しているのだ。広がっていってしまえばその分管理は面倒になるし、大きくなると崩落のリスクも上がる。ビビっているわけではない。重ねて言うが彼は変わらない洞窟を愛しているのだ。

 

 

 やがて洞窟にたどり着く。見回りは終わった。食事も終わった。次にすることは何か。

 

 

 見回りである。

 

 

 目覚めた直後と同様の素早い動きで洞窟を動き回り、異常が無いか確認する。彼が歩き回る以外に洞窟を傷付ける要因など無いに等しいのだが。

 

 

 エネルギーを得た直後な為か、3分で一通り見回ることができた。彼にとってはだからどうと言うことはない。異常が無かった。それが全てであり、それ以上もそれ以下もない。

 

 

 二度目の見回りを終え、彼のすべきことは終わる。よほどエネルギーが有り余っていない限りこの後何かをすると言うことはない。彼は省エネなのだ。

 

 

 目覚めた時と同じ位置に戻り、彼は眠りにつく。今日も洞窟を守りぬくことができた。彼は誇らしげだ。

 やがて静かに寝息を立て始めた。目は開けたままで。

 

 

 

 

 彼は洞窟の夢を見ていた。




読んで頂きありがとうございました。
楽しんで頂けたなら幸いです。

続きは思い付いたら書くって感じでしょうね。
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