少年たちはまだ知らない。
この世界が腐りきってることなど…
ん?なんでそんなことを言うかって?
そりゃ…こんな世界を坊主たちみたいなチビどもに見せたら絶望しかねない。
まだ、年端も行かないガキどもには現実を受け止めるすべがまだ備わってない。そんなうちにこんなの見せたら壊れかねないからね…こんなのは大人に任せろって?
無茶言いなさんな。今の長…この日本を背負っている女がどんなやつか知ってて言うのか?
あ…そうだったな。あんたらは部外者だったな…
あー話は長くなるが聞いてってくれるか?
これは、青年が守ろうとして守れなかった世界のお話だ…
それは今から4年前の話だ…
日本の大都市を震源地とした大きな地震が起きた。
震源地である霧乃宮と言う町では住民の6割が瓦礫の下敷きや地震が原因とする火災により死んだと言う。
霧乃宮という町には代々言い伝えられてきた言葉があったそうだ。
「攻牙苦心」
この4字熟語だけがなぜかこの街には言い伝えられていた。
昔はその言葉がもつ本当の意味を知っている人間はたくさんいたみたいなんだが…これまた、その6割の全員がそうだったらしく、古文書をあさってみてもその言葉が書かれた文は一度も出てこなかった。
そんな街は地震の崩壊で荒れ果てた。そして、日本という国も変わり果てた。
地震の被害で首相が居なくなったのを聞きつけたある女性が…あ、今の首相な。
それが、突然言ったんだ…
「この国は腐っている。だからこそ今回の地震が起きた。だから、今度は私がこの国を変える」
「絶対的な君主がいてこそ国は上手く回っていく。そして、この国の王は今から私がなる」
ってな感じで笑えるぐらいド直球に日本に王制を持ち込んだんだ。
その女性の名は『秋星槭』
山の奥の奥、幾度となく政界を牛耳ってきた一族の人間だ。
まぁ…槭自身元々は霧乃宮の生まれなんだが、頭の良さ、回転の速さから秋星家の養子になったんだ。
親子そろって反対することもなく娘を差し出したのも、彼女の成長を願っての事だろうけど…
彼女自身見放されたとも、売られたなど思いもせず、ようやく解放されたと思っていたらしい。
おっと、言い忘れた。槭は姉貴なんだ。と言っても、本当の姉貴じゃねえ。師弟関係みたいなもんだよ。
俺が確かガキの時…12歳の時だったかな…
当時13歳だった槭に俺が喧嘩を吹っ掛けたんだったな…
「おい、そこの!見ない顔だよな。どこから来たんだ」
「なに…いきなりその言い方は失礼だわ…名乗りなさい」
「へ、よそ者に名乗る名前なんてねーよ」
「そう…私は灰村槭…あんたみたいな礼儀の知らないお子様が嫌いよ」
「そうかよ、どんなやつかなんて知らねーけど、よそ者がうろうろしてんじゃねーよ」
「はぁ…赤いものに突っ込んでくるなんてあなたは闘牛か何かなの?」
「何が闘牛だよ!」
「やめて…怪我するわよ」
そこで突っ込んでいった俺が軽く投げ飛ばされただったな…
あのことは今思い出しても思い切りよくぶっ飛ばされたからな。こう…腕を掴まれてひょいって感じで投げられて、気づいたら空見てたもんな…
「力の差を実感したかしら…」
「す、すみませんでした…」
「はぁ…さっさと名乗りなさいよ」
「お、俺は…」
「何よ、女に敗けたからって言い淀むことないわ。私は強いもの」
「お、俺には名前がないんだ…」
「は?何?身売りでもしてたの?」
「いや、両親が小さい時に捕まってそこから先何にも思い出せないんだ」
「そう…あなた家は?」
「え?無いけど…路地裏で毛布包まってるだけだけど…」
「あなた、私の下に付きなさい。勝者が敗者に命令するのは当然の権利でしょ」
「で、でも…俺はあんたみたいに強くもなければ頭も良くない…」
「いいわよ、一から叩き込むから。そしてあんた今日から絢斗と名乗りなさい」
「あ、あやと…」
「さあ、行くわよ絢斗。今日から忙しくなるわよ」
こんなわけで、名乗り遅れたが俺の名は灰村絢斗、ここ霧乃宮で村長みたいなことをしている。
アイツは昔から無茶ばかりする奴だったがそれなりの考えをもって行動してる。
アイツの行動次第では俺も国とやりあうこともあるかもしれんが、今はそんなことは思うことはない。
槭自身がこの国のためにしていることだ…陰ながら応援するさ。
何でかって?ふふふ…愚問だぜ。俺がアイツの側近だからだよ…