戦闘民族は迷宮都市の夢を見るか 作:アリ・ゲーター
国破れて山河有り、とは誰の詩だったか。
堅城ドロストレアの落城により、ただそれのみによって一国の王は降伏の使者を送り、また一つ国が滅んだ。
国が無くなったとはいえ人が居なくなったわけじゃない。
戦の趨勢があまりにも急に傾いたためか、実質的な人死には極端に少ないようで、戦力はそっくり残っている。占領した側もいつ足下をひっくり返されるか判らない状況下で安心していられず、戦争が終わったというのに傭兵達を雇い続けていた。
俺は正直とっとと離れたいのだが、目立ち過ぎたというか、やり過ぎたというか、大将と
推定とはいえLv.4以上、
この城塞都市に住んでいる市民、そして兵士達は長年の不落を支えてきた城壁をそれこそ信仰のように信じて、頼りにしてきた。心の支えであり、それがある限り負ける事がないと思い込んでいたのだ。
だからこそそれを砕いてしまった『壊城』がいる限り、勝てない、抗いようがないと思ってしまう。
……治安に役立つのはいいとしても、化け物扱いされているようで、もうちょっとどうにかならないだろうか。
城壁自体は
などと考えて見ても意味はない。要は印象の問題だ。
特にやることを与えられているでもなく、所属しているだけでタダ飯と報酬を貰える。グータラするにはこれ以上ない環境なのだが……うん。
「……暇は苦手だ」
戦う場があるわけでもなく、きっちり鍛錬できるような場所でもない。
城壁の上で逆さ腕立てをしつつ、ぼやいた。
二週間ほども経つと、さすがにドロストレアも幾分かは落ち着きを取り戻していた。市街では瓦礫も撤去され、市が開かれ、積荷を積んだ馬車が行き交う。
占領した国の方からも官僚らが続々と集まり、今後の方針も決まって矢継ぎ早に指示が出ているようだ。
そんなせわしさの中、俺とサイモンだけが暇を持てあましていた。
俺はともかく、侯爵であるサイモンがそんな事でいいのかと思ったが、実務的な事は全て家宰がやってくれるそうで、式典や儀式めいた事でもなければそう出番もないらしい。
それで何をしているのかと言えば。
「それでだね、領地は南海に面した港町も含む豊かな地域だ、200
自領の自慢……というわけではなく、抱え込み、要するにスカウトだ。傭兵は多しといえど、ステイタスを二度ほども昇華したなら傭兵団の団長クラスだ。高レベル(らしい)傭兵が
評価されるのは悪い気持ちはしない。ただ、誰かに仕えるつもりはない。
そう言ってきっぱり断ったのだが、どうもこの男、人の話を聞かない。
というかもしかしたら暇潰しに来ているだけかもしれない。俺が黙々とスクワットをしている傍でワインを飲みながら勧誘の言葉を続けている。
「ところで君は
勧誘のネタも尽きてきたのか、思い出したかのようにそんな事を言う。
確かに普段は尻尾は腰に巻いて服の中だ、気づくわけもない。
今は部屋にいるのでくつろぎモードだった。意外と尻尾は尻尾で同じ姿勢でいると凝るので困る。
「サイヤ人、かなり遠方に住んでる種族だよ、少なくとも俺以外に同族見た事はないなあ」
見かけたらやばいのだが。何がやばいって惑星がやばい。
サイモンは形の良い顎に指を当て、ふむと頷いた。異様に美形なだけに何気ない仕草でさえサマになる。
「しっかりしているように見えたけど、かなり年下だったかい?」
「……15だよ」
「それは……うん、そうか」
サイモンの目が優しく同情に満ちたものになった。やめてくれ。同情はいらない、身長がほしい。
何となく空気がだらりとして感じるようになったその時、ドアがノックされ、失礼します、と若い声が聞こえた。
いいぞー、と声を掛けるとややあってドアが開く。
身なりの良い少年だ、俺だけでなくサイモンが座っているのを見ると、緊張したのか一瞬固まり、敬礼をする。騎士見習いのフォウといっただろうか。色々持ち上げられてしまった事もあり、俺が与えられた部屋は元領主が住んでいた館の中だ。サイモンと大将も同じ館に居室を持っている。
用を聞くと、サイモンと俺に来客があったらしく、取り次ぐかどうか判断を聞きにきたらしい。とりあえずはと来客の名前を聞くと、それは確かにむやみに追い返すわけにもいかず、かといって素直に取り次ぐのもどうかという客だった。
「オラリオの【ヘルメス・ファミリア】……しかも神様自ら?」
サイモンが柳眉を寄せ、困惑げに呟いた。
□
橙黄色の髪に、傷一つ無い端整な顔、肢体は均整が取れ、どこか人には無い雰囲気を漂わせている。
ゆるみ、明るいその顔は優男、という言葉がぴったりかもしれない。
どこか飄々とした様子で神は言った。
「たまたま旅の途中に近くまで寄っていたんだ、それで聞けば
おどけた様子で「お近づきの印に」と言うと、後ろに控える
「おお、これはもしや噂のインク要らずの羽根ペンですか。名高い【
「ハハハ、いやオラリオの外でもうちの
「はは、これはサロンでも自慢できますよ、ありがたく頂きます」
流れるようにあれやこれやと話し始める二人。
しかしおどれーた。
サイモンが如才なく喋っている。
あのノリとフィーリングで生きてるようなお調子者が、正直もう二日目には面倒臭くなって普通にタメ口聞いてもかえって喜んでいた変人が。
やはり良いところの生まれってのは違うようだ。
「それで彼が?」
「ええ、こたびの戦果の立役者です」
「……なぜか君を見て驚いているみたいだけどね」
「あはは、なぜでしょう」
どうやら話がこちらに移ったようだ。立場としては俺は現状サイモンの直雇いということになっている。後ろに控えていたが、一応空気を読んで前に出た。
サイモンが俺を紹介すると、神ヘルメスは橙黄色の瞳を面白げにまたたき、へえ、と感嘆したような声を上げた。
「聞いたよ君の事はね! あの城壁を指一本で完膚なきまでに粉砕したんだって?」
……俺はいつの間に『クンッ』を覚えたのだろう? いやあの技は指二本だったか。
俺は口をひくつかせて答える。
「あー、さすがにそれはもの凄い尾ひれがついてます」
「お、やっぱり? 実際はどんな感じで城壁壊したんだい?」
「そりゃ、こう……正拳突き?」
神ヘルメスはなるほどなあ、と頷くと、さも感嘆したように言った。
「Lv.4でもよほど力特化でもないと難しいよな、鍛えるには相当苦労したろうね」
「おや?」
唐突に足を踏まれた。
サイモンだ。
イタズラかこの野郎と見たら、待てをするように手をひらひらと振る、掌には『さぐり』と書いてあった。
「ん……? どうかしたかい?」
「いや、どうもゴキブリが居たような気がして」
神の問いに答えるサイモン、不思議な表情をするヘルメス。後ろの
肩をすくめ仕切り直しとばかりに【ファミリア】の主神を聞いてくる。
今更ながら気づいた。なるほど、と。目立つというのは色々痛くもない腹を探られるものだ。
「すいません、傭兵連中の間じゃ【ステイタス】だけでなく所属【ファミリア】やレベルを明かすのも
これ自体は本当の事だ、傭兵はいつ敵味方に分かれるかも判らない。実際には戦によって死ぬ事は少なく、人質として金を請求したりされたりする事が多いが、それでも戦は戦だ。モンスターではなく人を相手に戦う場所でそんな情報を垂れ流しにするのはよほどの世間知らずくらいなものだった。ギルドに所属し、レベルを公開している
「う~ん、そりゃ残念。友神の
元よりそれほど期待していなかったのかあっさりと引く。ただの好奇心だったろうか。
「ま、気が向いたら
そう言い、サイモンと再び話を始める。
神が居たのはそう長い時間の事ではなく、風が吹くように来て、去っていった。
「いやあ……」
と、サイモンがぬるくなった茶で喉を潤し呟く。
「神相手に誤魔化すのは大変だね。あ、フォウ君、水を汲んできてくれるかな、お茶を淹れたくとも少々水が心許ないようだ」
はい、と言いきびきびと水瓶を抱えて行く少年。
出て行くのを見計らって、俺は心からの声を吐く。
「サイモン、お前って頭回るんだなあ……」
「……君、もしかして僕をもの凄い無能のように思っていなかったかい?」
「まさか天下の侯爵閣下にそのような不届きな事思っても言えるわけが」
「君とは一度ゆっくりと話をした方が良いようだね」
「そんときゃとっとと逃げ出すよ」
それは困る、とサイモンは肩をすくめた。
空になったカップを卓に置き、気取るように髪をなでつけ、口を開く。
「まあ、これだけ名前を売ったんだ。好奇心旺盛な神々だけじゃない。武力の欲しい権力者は星の数ほど居るし、味方にならないならいっそ、というのも居るだろう。これから大変だよナッシュ」
「噂広めていいように使ってる側が言うもんじゃねえよな」
「僕の味方になってくれればそういう面倒臭さとは無縁になるよ? もちろん君の
再び勧誘の台詞に戻るサイモンに、そういうのはいいからと呆れて首を振る。
地位も名声も必要な時は必要なのだろうが、今の俺に要るとは思えなかった。
□
新雪にくっきりついた足跡も、降り積もり続ける雪でまたたくまに消えてゆく。
空は薄暗く、舞う雪がただ白い。
銀世界、というには幾分かくすんだ光景だ。
風が吹いたわけでもない、枝が重さに耐えかねてか、どこかで雪がドサリと落ちる音がした。
雪原を歩いている。
雪原といっても一面に広がる平野というわけじゃない、あちこちにはまばらに木々が立ち並び、今は視界が悪くて見えないものの、前方には山が幾筋もの稜線を見せている。
吐いた息が白く煙り、やがて薄れる。
気を高めていればさほど寒さも問題じゃないものの、それはそれで見た目も異様に映る、毛皮の防寒着を着込み、フード付きの帽子を被っていた。
ひときわ大きい杉を見つけ、その幹に印がついているのを確認した。
「もう少しか、追い込んでるって話だが……出番あるかねえ」
ドロストレアの戦い以後、やたら有名になってしまい、契約が終わったと同時にあちこちから勧誘の使者が来る事態になってしまっていた。他人の思惑が多分に含まれていたとはいえ、名前が売れすぎるのも面倒臭いものだ。
俺が選んだのはもっとも単純な方法、逃げの一手だった。ただ月明かりの無い夜に荷物を持って舞空術で宿を飛び出しただけだったが。
この『飛べる』という事に関しては素性よりも何よりも秘密にしておいた方が良いのかもしれない。
知られてしまえば、俺には思いも付かない対策を立てられてしまう可能性はあった。
北に向かい夜の空を飛び、中央を走る山脈を抜け、砂漠を越える。
南北に長く延びる大山脈、ユーラル山脈、複雑に枝分かれする川。その近くにそこそこ大きな町を見つけて降り立った。
ドロストレアは大陸でもかなり南方にある場所だ、情報は人伝いであり、ここまで距離が空けば名前が伝わっている心配はないだろう。
予想通りというべきか、この辺一帯、カルランと呼ばれている地方では
一帯を治める国は遊牧系の『バルア・ハン』、民はトナカイの遊牧を主とするヒューマンと、ユーラル山脈の豊富な鉱石を求めて定住したドワーフ、そして交易に利を見た者達だ。林業も盛んなせいか、エルフとは仲が悪いらしい。
ひとまず宿を借り、周辺を探索、その後は仕事、飯のタネ探しだ。
大体はどこにいっても酒場に行けば良い、ギルドの支部があればそっちで依頼を受け付けている時もあるが。そして情報が必要なら馬宿に行って馬丁にいくばくかの金を握らせるとあまり聞けない話が聞けたりもする。
この町はウォルグ川を使った水上交易で栄えているらしい、金の巡りも良いようだ。大きな酒場、小さな酒場と幾つもあり、労働者が酒を酌み交わしている。
うち一つ、旅人が多い酒場──これは馬宿があれば間違いなくそれだったが、そこに入り、酒と食事を頼む。主人らしき男が出てきたので大体の滞在期間、そしてモンスター退治なり護衛なり、腕っ節があればいいという仕事があれば声を掛けてくれと言っておいた。
相手からすれば俺は流れ者の得体の知れない相手だ、すぐに割の良い仕事は回してこない。
出元の怪しい依頼から、あるいは誰も片付けようとしないような依頼、兎小屋を狙っているコボルドの退治、そんな仕事を片付けていると、あるとき間違えとしか思えないような金額の仕事を紹介された。
薦めはしねえ、と前置きをされて大まかな内容を説明する。
モンスター討伐の依頼だ。モンスターの種類は伏せられており、ただ強いという事は確からしい。手負いであり、ある場所までは追い込んだもののそこで手詰まりになってしまったようだ。
確かに怪しい依頼だった。出元は言えない、モンスターの種類も不明、追い込んだ人数、どれだけの神の眷属が参加しているのか、それも不明。ただ、報酬は良い。
たまにあるのだ、やましさプンプンのこの手の依頼が。特に新しく居ついて、住民に顔もろくに知られていない内に飛び込んでくる事が。
面白い、と思った。
使い捨てにする気満々の依頼だ、どれほどのモンスターなのか。
二つ返事で引き受け、酒場の主人には渋い顔をされた。
手書きの地図によれば、そろそろのはずだった。
今だ降り続ける雪で、夜でもないのに視界が悪い。いっそ舞空術で空から見渡してみるかと思っていたところ、風上から木の燃える臭いがわずかに鼻をついた。
「おし、見っけ」
風上の方には小高い丘とぽつぽつと生える木々が重そうに雪を被っている。
近づけば丘の斜面はひさしのように大きく張り出した岩盤があり、人の手も加えられているらしく、何本もの大きな石柱によって支えられている。その影から煙りが出ており、野営をしている事が判った。
火を囲んでいるのは一隊、と言っても良い人数だった。
30人ほどは居るだろうか、装備はばらついているものの、大体が統一されている。おそらく領主か誰かの私兵なのだろう。
話を聞くにここはドワーフの廃坑、その入り口にあたる所らしい。元からそういう形だったのだろう、ひさしのようになっていた岩盤を内側からさらに削り、柱で支え、相当に高さのある天井を作り出している。奥には魔石灯で照らされた鉱山の入り口が見えた。
よく来てくれた、と心にも思ってなさそうな顔で、ガルイと名乗った髭の隊長が前金だと言いずしりと金貨の入った皮袋を渡してくる。払いは悪くないらしい。
仕事を聞けば、鉱山の奥に逃げ込んでしまったモンスターの退治だと言う。
「油断せぬよう言っておくが、インファント・ドラゴンを相手にするようなものだと思ってくれればよい」
未だ明確にモンスターの名前を出さない事にちょっとした違和感を持ちつつも、その程度ならと請負う。
魔石灯の明かりを頼りに鉱山を進み、死体が無造作に転がっているのを見かけた。
少なくとも俺の前に雇われた二人組の冒険者、彼らの隊のうち腕効きが3人、未帰還だそうだ。着ている鎧を見るに、彼らの隊のうちの一人だろう。首がねじられ、背中側に顔があり、苦悶と恐怖に彩られた表情をしている。
投げられたのだろうか、腕や足も随分とひしゃげていた。
「血が……」
妙だな、と口の中でつぶやく。
この兵の間近で大きな血痕が残っていた。
だがこの兵の死体に大きな出血は少ない。
まるで死体を囮に使い、近寄った者を奇襲したかのような──
当然それはモンスターの戦い方ではない。
「仲間割れか……?」
あるいはモンスターと言う名目で
それはそれで、これだけの人数で追われる
ただ……気を探っても、それほど強い気、というものは感じられない。獣のようにじっと機会を待ち身を伏しているのだろうか。
いくつかの分岐を経て、わずかな気を感じる方へと歩を進める。もっともそれほどの精度がない、コウモリでも群れていればそれを大きな一塊の気として捉えてしまう事もある。
天井が高く、幅のある広間に出た。岩盤が水を含んでいるのか、時折水の滴り落ちる音がする。
真っ正面、男の体が見えた。壁際に腰掛け、うつむいているようにも見える。魔石灯に照らされたその肌色はどこか青白い。
「兵の一人って感じじゃねえな、冒険者か」
無造作に歩み寄る、かがみ込んで様子を見た時だった。
音もなく、ただ気配だけが天井から
半ば予期していた。
俺は地を蹴り、ほとんど水平に後ろへ飛び退り、躱す。
ずしゃ、と水袋が落ちた時のような音、擦過音の混じる吐息が聞こえる。
うねる太い胴体、きらめく鱗、締め付けられれば並の男など背骨ごと砕かれるだろう。
そして続く上半身はそれとは対照的に艶めかしい成熟した女の体だ。
オラリオでならともかく、地上ではそうお目にかかるものじゃない、敵とするのは初めてだ。どのくらい強いのかも判らない。
俺は戦いが始まる感覚に高揚を感じた。笑いが浮かぶ。
まずは確かめてみるか、と敵の攻撃を受ける気で構えた。
ラミアは動かない。ただ敵意の炎の宿る瞳がこちらをじっと睨め付ける。
動かない。
動かない。
動かない。
どさりと、音が広間に響く。
数十秒も構えて待っていたら、力を失ったように倒れ伏してしまった。
「……えぇ」
そりゃねーべ。
間抜けな絵面を笑うように、水滴がしたたり小さく音を立てた。
よく見ればラミアの体には無数の傷がある、胴体の鱗もあちこちが剥げ、血がにじみ出していた。
「おいおい……なんでそんなボロボロなんだよ」
追い込まれる間にやられたものか、ここで死んでいる連中にやられたのか。
ともあれ、こんなんでは戦いどころじゃない。モンスターの生死確認とトドメを刺すだけの仕事になってしまったようだ。
「……クふ、クッ。あレだけ嬲っておキ、よく言ウ、
つい口を突いて出ただけの言葉に、返答があり、俺は唖然とした。
「えーと……」
ゆっくり二度まばたき。
何となく自分の頬を自分でぺちぺちと叩いてみる。間違いなくさっきの言葉は目の前の倒れたラミアが言った言葉だ。
「……モンスターって喋れたんか」
驚きとしか言いようがない。ただコボルドやゴブリン、その他諸々今まで見たモンスターで人の言葉を喋っているのも解している様子も見たことがない。
種族により違うのだろうか? しかし喋れる種族など聞いた事が。希少種?
思考が絡まる。混乱する頭をとりあえず落ち着けと、拳で額をゴンゴンと打ち、目下の状況をどうしたものか、という事を考えた。
ラミアにもう一度声をかけても何の反応もない、様子を見てみたが、油断をさせて不意を打つつもりもなく、本当に気絶状態にあるらしい。その体の下には段々出血から血だまりができはじめていた。
水滴の音はもしかしたら血の滴る音も混じっていたかもしれない。
「討伐すりゃいい……ってもんなのかね、これ」
どうしようか、と久々に単純に行きそうもない問題に頭を悩ませた。