日向は比叡から脅し取るようにカレーを奪い取ると、スプーンを取って海岸線の見える窓際の席に陣取った。カレーを一杯すくって口へ。なるほど不味い。
まず水っぽくて味が薄い。匂いはカレーなのだが、嫌にさらさらしていて味が無い。それにしては異様にスパイシーで、舌の先がひりひりと痺れた。
自分の後ろからは「このカレー不味いっぽい」「黙って食べなさい」などと、短いやりとりが聞こえる。
昼食を楽しむことを諦めた日向は、スプーンをおいて食堂の大型スクリーンに目を向けた。出撃中の艦隊を映し出すそれは、特別出撃が終わった今は正面で行われている観艦式のオープニングセレモニーの練習の様子を映し出していた。
艦娘達が画面いっぱいに映し出される。艦隊戦ではあり得ないような複雑な隊列を組んだ艦娘達が、何重も絡み合い海面に見事な紋様を映し出している。
艦隊は右に左にたくみに舵を取る。尾を引く航跡と缶に搭載したライトの光が、見る者に幻想的なイメージを抱かせた。
(この視点だと一見ばらばらな艦隊が、絶妙なバランスで列を維持しているのがわかる。逆に紋様は美しく整っているように見えても、各艦隊ごとに左右のわずかなブレや主機の回転数の違いでとっさの行動に遅れが出ているものもある)
ぼんやりとスクリーンを眺めながら、日向はポツリとつぶやいた。
「この食堂から指揮が取れれば、艦隊運動の幅も広がりそうだな」
何の深い考えもなく、ただ口をついて出た言葉。そこに意味も意図も意思も無く、頭に思ったまま、口をつくまま、垂れ流すまま。
ぼうとただ画面を眺める。縦横無尽に動く艦娘達。彼女たちが衝突しないで航行を続けられるのは、事前に組まれた航路に沿って決められた動きを繰り返しているからだ。戦場ではああはいかない、目標の無い航海の向かう先は衝突と轟沈。
しかし…。
「この食堂から指揮が取れれば、艦隊運動の幅も広がりそうだな」
脳裏をちらつく。その言葉、その意味。
「この食堂から指揮が取れれば、艦隊運動の幅も広がりそうだな」
艦隊運動と、隊列。航路と目標。
「この食堂から指揮が取れれば」
「この食堂から」
これは、まるで…。
「榛名の陣」
「
「次世代の艦娘の戦い方」
「瑞雲」
「着弾観測」
「イージスシステム」
「「索敵」「情報処理」「攻撃」の三つの要素」
そして…。
「中飛車」
息をのむ。
世界が止まってしまったかのように、あたりがしんと静まり返った。
全てが今、繋がった。