「初霜」
「日向様」
「初霜!」
「日向様!」
「はつしもぉ!」
「ひゅうがさまっ!」
日向が膝を突き、強く初霜を抱きしめる。初霜も両腕を回して日向の服を握り締めた。
「ずっと、私のそばにいてくれたのだな」
腕に力がこもる。初霜も、小さな掌で日向の道着を強くつかんだ。
「勿論です。日向様が「目障りだ」と仰られたので、普段は目につかない方が良いかと思ったのです」
「初霜、お前というやつは…」
ますます力をこめる日向に反し、初霜は小さく制して体を離した。一歩後ずさり、日向を見上げた。
「日向様。大隊演習旗艦の任、おめでとうございます」
鋭く踵をそろえる。
「お伝えするのが遅れて、申し訳ございません」
立ち上がった日向は、まっすぐに初霜の言葉を受け止める。そして、意思も感情も全てを押さえ込んで言った。
「大隊旗艦として駆逐艦「初霜」に命ずる」
ピンと張った空気が二人を包む。ゆっくりと深呼吸して続けた。
「お前は私の盾であれ。ずっとそばで、私を守れ」
「その言葉、心よりお待ちしておりました」
「そして…」
日向の腰が折れる。大隊旗艦はなりを潜め、今度は戦艦日向として向かい合う。
「ごめん」
深く頭を下げた。
初霜は、何も言わなかった。
しばらくの間、ただそうしていた。異様な空気であったが、居心地は悪くなかった。
日向が顔を上げたとき、その表情は再び艦隊旗艦のそれに戻っていた。
「今度は、私がお前の刃になる。お前の敵は、私が切る」
揺るがぬ決意は、刀のように鋭く強い。
「
初霜はゆっくりと首を横にふった。
「永久に貴女を御守り致します。刀折れれば刃となり、膝をつけば貴女の足になりましょう。私の死血を踏みしめて死線を越えてください。私の命を糧にして。私の分まで生きてください」
揺るがぬ決意は、盾のように固く重い。
「それが私の、いや…」
言葉を切る。
駆逐艦ではなく、姉妹としての言葉。その、本当の決意。
「『妹を守る』。それが、姉としての初霜の誓いです」
この日、艦娘史上初の航空戦艦部隊が誕生した。最後に名を連ねた駆逐艦は「誇り」の中に、自分の闘いを見出した。
決意と悲しみと、別れと意地と、誇りと絆の艦隊。
小さな欠片たちが寄り集まった艦隊は、暗雲を裂き光の航路を
中章終了
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