立ち上る雲―航空戦艦物語―   作:しらこ0040

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【かけらをあつめて】

 

「初霜」

 

「日向様」

 

「初霜!」

 

「日向様!」

 

「はつしもぉ!」

 

「ひゅうがさまっ!」

 

 日向が膝を突き、強く初霜を抱きしめる。初霜も両腕を回して日向の服を握り締めた。

 

「ずっと、私のそばにいてくれたのだな」

 

 腕に力がこもる。初霜も、小さな掌で日向の道着を強くつかんだ。

 

「勿論です。日向様が「目障りだ」と仰られたので、普段は目につかない方が良いかと思ったのです」

 

「初霜、お前というやつは…」

 

 ますます力をこめる日向に反し、初霜は小さく制して体を離した。一歩後ずさり、日向を見上げた。

 

「日向様。大隊演習旗艦の任、おめでとうございます」

 

 鋭く踵をそろえる。

 

「お伝えするのが遅れて、申し訳ございません」

 

 立ち上がった日向は、まっすぐに初霜の言葉を受け止める。そして、意思も感情も全てを押さえ込んで言った。

 

「大隊旗艦として駆逐艦「初霜」に命ずる」

 

 ピンと張った空気が二人を包む。ゆっくりと深呼吸して続けた。

 

「お前は私の盾であれ。ずっとそばで、私を守れ」

 

「その言葉、心よりお待ちしておりました」

 

「そして…」

 

 日向の腰が折れる。大隊旗艦はなりを潜め、今度は戦艦日向として向かい合う。

 

「ごめん」

 

 深く頭を下げた。

 初霜は、何も言わなかった。

 しばらくの間、ただそうしていた。異様な空気であったが、居心地は悪くなかった。

 日向が顔を上げたとき、その表情は再び艦隊旗艦のそれに戻っていた。

 

「今度は、私がお前の刃になる。お前の敵は、私が切る」

 

 揺るがぬ決意は、刀のように鋭く強い。

 

永遠(とわ)に私と共にあれ。刀折れ、この膝を折る事になろうとも。死血の荒波を掻き分けて死線を共にあれ。お前の魂を私に分けてくれ。私と一緒に、死んでくれ」

 

 初霜はゆっくりと首を横にふった。

 

「永久に貴女を御守り致します。刀折れれば刃となり、膝をつけば貴女の足になりましょう。私の死血を踏みしめて死線を越えてください。私の命を糧にして。私の分まで生きてください」

 

 揺るがぬ決意は、盾のように固く重い。

 

「それが私の、いや…」

 

 言葉を切る。

 駆逐艦ではなく、姉妹としての言葉。その、本当の決意。

 

「『妹を守る』。それが、姉としての初霜の誓いです」

 

 この日、艦娘史上初の航空戦艦部隊が誕生した。最後に名を連ねた駆逐艦は「誇り」の中に、自分の闘いを見出した。

 

 決意と悲しみと、別れと意地と、誇りと絆の艦隊。

 小さな欠片たちが寄り集まった艦隊は、暗雲を裂き光の航路を航行(はし)る。後に「雷雲戦隊」と呼ばれる6人の少女がここに集結した。

 




中章終了

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