「姉御、気合い入ってンなー」
「ま、まあ日向さんにああ言われちゃ仕方ないよね…」
素早く客をさばきながら、江風が漏らす。それに並び立つ名取も同調した。
テントの下で客の対応をし、タネを掻きませ、ポップコーンを売り歩く。艦隊運用とは大きくかけ離れた「それ」に雷雲戦隊が行き着いたのは、今から約2時間前にさかのぼる――――
―以下回想―
「初霜のポップコーンを手伝えだぁ!?」
灼熱の兆しを見せる日光の下で、加古は大声を張り上げた。
朝の演習場。普段練習用艦載機が騒がしいこのグラウンドは、今日はテントの鉄骨や資材で足の踏み場もないほど埋め尽くされている。こうしている間にも、イスや長テーブルを持ち込んだ艦娘達が、ぞくぞくと集合してきていた。
そのど真ん中に雷雲戦隊が集まって座り込んでいる。
「初霜のポップコーンテントの手伝いをしてほしい」
開口一番日向の頼みに、一番に異を唱えたのは加古であった。
「そもそもあたしらは今日、公開演習に出場するんだろうが。出店なんかに構ってる場合か!?」
「構ってる場合なんだよ。このポップコーンが成功しなければ、そもそも我々は演習に出る事すら出来ないんだからな」
「あんだと?!」
日向の言葉に加古のみならず、他のメンバーも首をひねる。初霜はそんな中、黙々とテントの組み立てにを続けていた。
「金が無いんだ」
「金だぁ?出場費かなんかか?」
日向は首を振る。
「いや、弾薬費だ」
驚愕。いや、唖然と言った方が正しいか。
「あれって自腹だったのか…。魚雷一本3千万とか?」
「いや、魚雷一本2万4千円。酸素魚雷は4万円だ」
「お手頃」
「という訳で稼がにゃならん」
日向が立ち上がる。何が「という訳で」なのか誰も気付かないうちに、困惑する加古の両肩をつかんで揺さぶった。
「頼むぞ加古、私は料理が不得手だからな。初霜についていけるのはお前しかいない。雷雲戦隊副艦「加古」!職務を果たせ!やり遂げて見せろ!」
「だ、旦那…(グッ)」
―以上回想おわり―
「いや、アタシには何が(グッ…)、なのかもわかンないからね」
「えっちゃんは、めんどくさいの、嫌いだもんね」
小さく口元を抑える名取に対し、江風は気にいらなそうに目を潜めた。
「お前「えっちゃん」ってな…」
「だって、【
きょとんとして江風を見つめる。
「そりゃそうだが、なンだかなぁ…」
「おらー、くっちゃべってないで働け―!」
副艦殿の怒鳴り声は、ぐらついたテントの屋根に反響して喧騒の中に溶けていった。