ヒューマノイドと警察官 二章   作:とましの

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11話

光秀と暮らしはじめて数日間は何事もなく平穏な生活が過ごせていた。食器や衣類など少しずつ光秀の物が増えて、部屋の中は二人暮らしの状態に近づいていく。

ノートパソコンを壊したあの日以来、光秀はできるだけ家電に触れないようにしている。しかしテレビを見るのは好きらしく、そこから様々なものを学んでいるようだった。

 

ただ開発者の落ち度なのか、相変わらず光秀は頭をふくことができない。いつものように風呂上がりの光秀は頭を濡らしたまま出てきた。

髪から水滴を落としても平気そうな光秀に魚住はため息を漏らした。

それを見た光秀は首を傾ける。

「なんかあったか?」

「ここに座れ」

ソファに座ったまま魚住は足元を指差して指示を出す。すると光秀は何かに気づいたような顔を見せたがおとなしく指示に従った。

目の前の床に座った光秀の肩からタオルを取り頭をふいてやる。これももう光秀が風呂から出た後で行われる習慣になりつつあった。

「なあ魚住」

やや乱雑に頭をふいていると光秀が口を開いた。

「人間ってなんでやたら口くっつけたがるんだ?」

「ごほっ!」

虚を突かれた魚住はむせたように咳き込んでしまう。とたんに光秀が驚いた顔で振り向いき、最近覚えた背中をさするという事を実行する。

「大丈夫か? 病気か? 何か飲むか?」

慌てた様子で言葉を連ねたかと思えば立ち上がりキッチンへ駆け込む。魚住は咳き込みながら何か始めたらしい光秀に目を向けた。

 

 

しばらくキッチンを眺めていると光秀が湯気のたつカップをふたつ運んでくる。そのひとつを魚住に渡した光秀はそれを飲めと言い出した。

「テレビでやってたんだよ。咳が出たらこれ」

むせただけだが、光秀は真剣に心配した様子を見せてくれる。それが心地よすぎて、魚住はただむせただけだと言えなかった。

「何が入ってるんだ?」

「お湯とハチミツとレモン。ハチミツには抗菌作用があるからのどの炎症に良いんだ」

それは魚住も何となく知っている程度に定番の飲み物だった。実際に飲むのははじめてだが、光秀が入れたものを拒む理由はない。

魚住が蜂蜜レモンを飲む間も光秀はそれを真剣な眼差しで見つめていた。分量は正確だから効果はあるはずとつぶやく光秀は素直に好感が持てる。

カップの中身を飲み干した魚住は、ふと光秀の手元に目を向けた。

「飲まないのか?」

「これは魚住の咳が治らなかった時の予備」

二杯入れているのだからもうひとつは光秀自身のものだと思っていた。予想していなかった気遣いに魚住は思わず笑ってしまう。

「せっかく入れたんだから、それはおまえが飲めよ」

「魚住の咳は?」

「もう治った」

ヒューマノイドというのはどこまで真面目で愛らしい存在なのか。そう思いながら魚住は光秀が素直に蜂蜜レモンを飲むのを眺めた。

だがふとこの液体の甘さに引っ掛かって、そばのノートパソコンを開かせる。蜂蜜の成分で検索してみると養蜂場のホームページがトップに出た。そこを見ると真っ先に糖分へ目がいく。

「光秀ちょっと待て」

数種類ある糖分の中にフルクトースを見つけた魚住は慌てて振り返る。すると光秀は怪訝な顔でカップの中を見つめていた。

 

 

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