ヒューマノイドと警察官 二章   作:とましの

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14話

光秀の全システムを精査してバグを検出する作業は、それだけで二時間がかかる。さらにシステムのバックアップをするにも一時間はかかるという。

もちろんその間も石黒はモニターを見続けていた。

「エラーの内容について聞いても良いですか?」

電子音がいくつか響く室内で問いかけられた魚住は眉をひそめた。言いにくそうな顔で、それでも二度ともキスをしたと告げる。

するとモニターを見つめていた石黒の目が魚住へ向けられた。

「あなたがしたんですか?」

「するわけがないだろう。一度目は出会ったその日の夜だぞ」

「では…確実にラブドール機能が働いているという事になりますね。しかしたしか、スポーツドリンクを一杯飲んだだけですよね?」

「ああ、二度目の時も蜂蜜レモンをカップ一杯飲んだだけだ」

「通常はそれだけで機能が動くことはないのですが…」

なぜ機能が動いたのか、真剣に考え込む石黒から目を移して魚住は寝台を眺める。

スリープモードにされた光秀は今も懇々と眠り続けていた。ヒューマノイドであるためか、光秀はとても整った顔立ちをしている。そのため寝顔も綺麗ではあるが、やはり起きて笑っている顔のほうが好きだと思えた。

 

 

考え込んでいると不意に魚住の背後でドアが開かれた。振り向いた魚住は現れた徳川へ軽く会釈を向ける。すると徳川は、やはり真面目な顔のままだが缶コーヒーを見せた。

「M003の調整と聞いたので、差し入れです」

「ありがとう」

愛想はないが親切な若者から缶コーヒーを受け取り礼を返す。すると徳川はモニターの前にいる石黒の元へ缶コーヒーを持っていった。

「三成は何か悩みごとか?」

部外者である魚住には敬語を使う徳川だが、年上の同僚にはそうではないらしい。そんな徳川に問われた石黒は考え込んだ様子のまま振り向く。

「ラブドール機能が誤作動を起こしているようなんです。上の口から入れられた果糖ではそうそうスイッチが入らないはずですが」

「……フランスにはそういうヒューマノイドがいるぞ? 今のところ確認されているのは女性型ヒューマノイドばかりだけどな。昔の言葉を借りればセクサロイドか。性交渉を主として利用されている」

「なぜそんなものがいるんですか」

「性癖の問題だろう。それにそもそもそれらは日本から輸出されたヒューマノイドだ」

徳川の話を聞いた石黒は驚いた様子を見せていた。信じられないといった様子ながらもモニターに顔を向けてそんなことがとつぶやいた。

「しかし改善しようにも…教授の組んだプログラムに介入できるかどうか」

「難しいのか?」

どう対処すべきかと悩む石黒のそばで徳川が首を傾けた。とたんに石黒が不機嫌に眉をひそめて徳川をにらむように見る。

「新人のあなたは教授の実績を知らないでしょう」

「知らないが、それがプログラムである限り無理なことはない」

徳川はこの施設の新人で、だからこそ警察の捜査協力という雑用を押し付けられている。そんな若者は強い口調で言い放つと石黒の肩を押して椅子から立たせた。

そうして代わるように椅子へ腰を下ろすと徳川はキーボードを打ち始める。すると画面に大量の数字と英語の羅列が並び始めた。

 

 

 

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