四台の大型モニターに膨大な量の数列が並び流れていく。大型コンピューターが稼働を続けるそばで徳川真琴はその端末に手を乗せていた。
指先をキーボードの片隅に置いた状態のまま、画面を流れる数列を眺めている。
「…そうか」
数列を眺めていた紫色の瞳が画面からはずされ、細い指先もキーボードから離れる。
「やはり誤作動じゃない。感情プログラムの暴走だ」
そうつぶやいた徳川はため息を漏らしながら目を閉ざす。ややあって目を開かせた徳川は振り向くように部屋の入り口を見た。
すると扉が開かれて明るい金髪の男性が駆け込んでくる。
「おあっ! っとー、違ったか」
はつらつとした声を聞きながら徳川はモニターを切った。
「はじめまして?」
「はじめましてかな? 総務の前木慶次っていうんだ」
「俺は…」
別の部署なら親しくなる理由もメリットもない。そう考えながら徳川は真面目な顔で名前を口にした。
「徳川真琴。開発部にいる」
「あ、開発に入った新人か。実は俺、前まで開発にいたんだ。今はちょっと事情があって総務に移動してるけど」
「事情?」
なぜ開発からまったく関係のない総務に移動するのだろう。理解できない徳川は素直に首を傾けた。
すると前木は硬い笑いをこぼしながら扉を閉めて近づいてくる。
「なんていうか…怖くなっちゃって」
「開発が?」
「……した、ヒューマノイドが、廃棄されるところが」
ゆっくりと笑顔が弱々しくなっていく。徳川はそんな前木を前に一瞬驚いた顔を見せた。しかしすぐに真面目さを取り戻すと顔を背ける。
「それはなんとなくわかる」
「俺、Mシリーズ開発に加わりたくてここの研究所に入ったんだ。だけど最新型のはずの002も故障して廃棄されるとかされたとか聞いてさ。そりゃあ…完璧なものを作るなんて、無理なんだろうけど、でも……可哀想で怖くて」
前木の独白を前にして徳川はゆっくりと目を落としていった。
「それでも、生み出してくれたことを感謝していたと思う」
徳川の言葉に前木が驚きに目を丸める。そんな前木が見つめる先で徳川は真面目な表情のまま光を失ったモニターを見上げた。
「人だって壊れれば命を失うこともある。だけどだからって生みの親を感謝しないなんてありえない。だからヒューマノイドも同じだと思う」
「おおおおおおっ!!!」
真面目な話をしていたそばで前木が大きな声をあげた。それに驚いた徳川は目を丸めて前木に振り向く。
「そうだよな! そうだった! そうだそうだ!」
喜んだ様子で声をあげていた前木はその足で部屋を出ていこうとする。
「ありがとな! 真琴!」
勢いよく扉を開けた前木はそのままの勢いで部屋を飛び出していく。そのため彼がなぜこの部屋に来たのかわからずじまいだった。