ついに主人公が登場します。そしてここから時間がごちゃごちゃして分かりにくくなります…
目の前で男友達が殺されそうになっている。化け物にその巨大な爪で体を貫かれ、動けなくなっている。必死にこちらに向かって何か言っている。その冷たい目とは裏腹に、とても温かい笑顔。ああ、どうしてこんなことになってまで笑えるの?口の端からは絶えず血が流れ出ている。どこまでも赤く、やはり彼も人間なんだと実感する。目の下にクマなんか作って…また夜更かししたんでしょ?
…あれ?私に男友達なんていたっけ?だけど嫌だ。どうしようもなく嫌だ。目の前で起きている事が嫌だ。無力な自分が嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ………!!
………ようやく長い夢から目を覚ますと、そこは見慣れた部屋だった。時計の針は朝の6時30分を指している。
またか…最近よく嫌な夢を見る。そこには必ずさっきの男友達が出てくる。彼は…誰だっけ?また名前を聞き忘れてしまった。次こそは必ず名前を聞こう。
そして次こそは…彼を救い出そう。
「はぁ…ついに私もここまで来ちゃったかぁ…」
まさか夢の中でまで人助けをすることになるとは…私は自分の性格を少し恨んだ。
ともかく、今は学校に行く準備をしよう。そしてベッドから降り、床に足を着くと…
「…あれ?いつもより目線が低い…また猫背が悪化したのかな」
私は周りと比べて…その…少し…胸が大きかった。皆は羨ましがったが、本人からしてみれば邪魔なだけで何もいいことなんかなかった。
おまけに重くて仕方なかった…のだが、むしろ今日はなんだか体が軽く感じた。私には一つだけ心当たりがあった。
「あ、またやっちゃったのか…携帯携帯は…あれ?携帯がない!!どこに置いたっけ…」
私は急に不安になって二階の自分の部屋から家族のいる一階のリビングへ向かった。
「あら、おはよう。今日は早いのね」
「お姉ちゃん、おはよ~」
どうやら父は既に仕事に行ってしまったようで、リビングにいたのは母と妹だけだった。
「おはよう、お母さん、私の携帯どこにあるか知らない?」
母はきょとん、とした顔をしている。何かまずいことを言ってしまったのだろうか?しばらく考えていると、横から妹が小声で言った。
「携帯なんて持ってたっけ?…お姉ちゃん寝ぼけてるの?顔でも洗ってきたら?」
私はまだ携帯を持っていない…なるほどなるほど…なら次に聞くべきは…
「あっ!お母さん!今って何年何月何日!?」
「朝から変なことを聞くのね…熱でもあるの?」
「ない…と思うけど…今って何年何月何日?」
私はもう一度聞いた。
「本当に変な子ね…今は平成24年7月30日よ、夏休みもそろそろ終わるんだから、いつまでもそんな調子じゃダメよ?」
ということは今私は中学一年生、彼は中学二年生のはずだ。
「夏休み…か。ということは彼はあそこかな?」
急いで準備をすると、私は急いで家を飛び出した。
「お姉ちゃん、変だったね」
「そうね、まあ、多感な時期だから…右腕が…!!疼くッ…!!フフッ」
「…お母さん、何言ってるの?」
何か勘違いをされているみたいだったが、そんなことは知る由もなかった。
「場所は確か…今から行けば余裕だよね」
目指すは街の東側にある施設、対魔人戦実行機関日本支部。表向きは外国が日本に置いている駐屯地ということになっているが、実際のところは人間に憑依する魔界の精神生命体「魔人」を兵器を駆使して狩ることを目的としている施設。そして、彼の家代わりとなっている場所だ。
このどこか寂しいコンクリートの大きな建物、間違いない。ここだ。
「でも、どうやって中に入ろう…あ、あそこにいるのは…」
門の前で気怠げに門番をしている男性がいた。
「確かあの人は…彼の教官の…」
彼を観察していると、私の視線に気付いたのか、声を掛けてきた。
「やぁ、おはよう。何か御用かな?」
「お、おはようございます。あの~…」
「ああ、もしかして猛竜のお友達かな?それなら遠慮せずに入りたまえ」
そう言うとやたらと長いパスコードを打ち込んだ。すると門が開き、その全貌が露わになる。へぇ、猛竜さんっていうのかぁ…
「あ、はい…お邪魔します」
若干緊張しながらもその鋼鉄の砦に踏み入った。
「猛竜の部屋はこの廊下の一番奥だ。早く行ってあげなさい」
「え!あ、は、はい…」
しまった!!何を話すかなんて何も考えていなかった。そうだ、これを見せれば…しばらく考えながら、コンコンと扉をノックし、思い切って入った。
「失礼しま~す…って、うわぁ!?」
「誰だてめえ…」
部屋の奥のベッドから立ち上がりながら、彼の鋭い声と鋭い目線を向けられたかと思うと、次の瞬間には細い腕に握られたあの恐ろしく重い剣が目の前に突き付けられ、私は腰を抜かしてしまいました。恥ずかしい…
腕こそ細く、剣を持つ手は小刻みに震えてはいたものの、無数の傷が刻まれた顔。間違いない、彼だ。
「ちょっと、何度も何度もそんな危ない物向けないでよ!!」
私が敵でないことが分かったのか、彼は静かに剣を下ろした。
「会ったのは初めてのはずだが…どっかで会ったか?」
「…会ったというか一方的に覚えているというか…」
「なんだよ、訳分かんねぇ答えだな…」
「あっ、そうだ、これ!!これ見て!!」
話がなかなか進まず足踏みをしていましたが、私は切り札を思い出しました。空間に穴を空け、次元の狭間に手を伸ばしあの女性から受け取った“それ”を取り出して見せつけた。
「お前…!」
「どう?驚いたでしょ!!これが私の兵器!!」
明らかに驚いた顔をしたので一気に畳み掛けるが…
「…なんだ、新入りか…知ってると思うが、女に優しい所じゃねぇぞ」
「………え?」
「支部長にはもう会ったか?それと…」
勝手に話が進む。
「ちょ、ちょっと待って!!」
「なんだよ、早めに認証はしちまった方がいいぞ。今みたいに剣を向けられたくなければな」
そう言って彼は部屋を出て何処かへ行ってしまった。
「とりあえず、さっきの教官に話を聞いてみようかな…」
不意にそこにやってきた豪華な服装に立派な顎髭の、いかにも偉そうな人に声を掛けられた。
「君、何故ここで兵器を出している?…何があった?」
あ、これ仕舞い忘れてた…
「さては新兵か?そんな話は聞いていないのだが…っと失礼、こちら日本支部支部長…」
あ、この人支部長だったのね。
「はい、はい。了解しました。それでは」
なんの話をしていたのだろうか?この言い表せない胸騒ぎはなんでしょうか?
「まさか君が博士の知り合いだとはね…前野 友喜(まえの ゆき)、君の対魔人戦実行機関日本支部の所属を認める。認証手続きもこちらで進めよう。」
私はいつの間にか第六感という能力までも手に入れていたようです。しかし、こう叫ばずにはいられない。
「ど、どうしてそうなったんですか~~~~~!?」
これから波乱の毎日が始まりそうです…
ついに登場しましたね、主人公!!
次回予告
対魔人戦実行機関日本支部に強制的に入れられてしまった友喜は、施設の人たちとのコミュニケーションを図る。しかし、施設にいるのは一癖も二癖もある者ばかりで…
次回「兵器を携える者たち」です。