確か私は…友達に会いに来ただけ…だったよね?
だったらどうしてこうなってしまったのだろうか?
…あれから一日が経った。猛竜と知り合いということで、私の部屋は猛竜の隣の部屋になった。
そして今日は私の入隊に伴い、会議室にこの支部の人たちが集まっている。
「わぁ、結構いるのね」
「そりゃそうさ。俺も含め、ここにいるのは消耗品だから、たくさんいないと困る」
後ろから支部長が話し掛けてくる。
「なんというか…すみません」
予想外の返答になんだか申し訳なくなり、つい謝ってしまった。はぁ、この癖も直さないとなぁ…
「はっは、君が謝ることじゃない…すべて魔人どものせいだよ…」
支部長は自分の兵器を取り出し、憎々しげに語った。その兵器の型はパイルバンカーというものらしい。
「おぉ、随分とまともなのが来たじゃねぇか」
狭い廊下によく響く野太い声。その声の主は浅黒い肌で髭にまで白髪が混じり、腹筋のような形の防具と黒いマントが特徴的な50代後半くらいの男性だった。
「は、初めまして、友喜と申します。」
「へぇ、友喜ちゃんっていうのかい、俺はバルト。よろしくな」
「まったく…まともじゃないやつが何を言うか。遅刻だ。早く入れ」
「うっせえなぁ、こっちにも都合があってな…」
「…はぁ、死にたくなかったら俺のいうことは聞いておけよ」
「はいはい、あ~…肩痛ッてぇわぁ~」
男性は怠そうに首をボキボキと鳴らしながら会議室に入っていった。
「…今の方は?」
「俺の同期で、兵器のスペシャリストだ。ガサツだが、気のいいやつだ。兵器のことで分からないことがあればやつに聞けばいい。」
支部長と同期ということは、やはり50代後半ね…その年でまだ戦っているなんて…やはりここは異常だわ…
「猛竜は来なかったようだが、時間だ。始めよう。」
「はい…」
時計を確認した支部長に促され、私は会議室に入った。
猛竜とはきちんと話しておきたかったけど、仕方ない、入ろう。
会議室に一歩踏み込むと一斉に鋭い視線を向けられてしまった。これも私が女だからなの?はぁ…これからここで私、やっていけるのかなぁ…
「あの子が猛竜と話してたっていう子か?」
「へぇ、猛竜と話した…レアだな」
「女なのに兵器を、か…」
「なかなか可愛い子じゃん♪」
ザワザワとする中、支部長の声が響く。
「自己紹介を頼む」
「初めまして。前野 友喜です。えと、兵器のことについてはまだまだ分からないことだらけなので、よろしくお願いします。あ、私の兵器は大鎌型です」
そう言って私は大鎌型の兵器を取り出す。
「よろしく、俺はライノ。ライフルを使う。腕には結構自身あるんだよね~」
スコープを覗き込み、笑みを浮かべる姿は正直少し不気味だった。
「なーに言ってんだ!!コイツをぶっ放せば一気に掃討できんだよ!!」
今にもそのガトリングを放ちそうな勢いで兵器を向けてきたのはソルデス。こっちに向けないで!!お願い!!
「ウェインだ。使うのはガントレット…コイツで何体か魔人どもを討ってきた…これからもそうしていくつもりだ…!!」
そう言うとその兵器をはめた手を憎々しげにぐっと握り込んだ。
「バルトだ…っと、さっきも言ったな。俺のは斧だ。気づけばコイツとも長い付き合いになるなぁ…」
細かい刃毀れなどはあるものの、きちんと手入れされており、大事にされていることがよく分かった。
「僕はノーレイ。普通の剣…なんだよね、はは、僕ってそんなに個性ないかなぁ…」
個性がないと剣になるのかな?でも猛竜も剣だし…あ、猛竜のは長いのか…ってあれだけ変わっててそれだけ!?
「ベルナー。槍を使う…すまん、俺は話すのが得意じゃない」
中距離最強と言われる武器、槍。見た目は細いが、この人も相当の使い手なのかも知れない。
「俺の名前はウルってんだ。ハンマーが得意だ。叩き潰すんなら任せろ」
なるほど、見た目に違わないパワーファイター、ってところかな。
「はーい、僕はハーノ、二丁拳銃で狙い撃ち、さ。君、結構可愛いね…よろしく♪」
こ、この人は…!?なんというか…チャラい!!そしてなんか古い!!
そんな中、部屋の奥で、つまらなさそうにこちらを睨んできている少女がいた。
「へぇ、女の子もいるんですね…」
「ああ、珍しいというだけで居るとこには居るもんさ…名前はリーザだ」
すごく話し掛けづらい雰囲気だ…でも、挨拶くらいはしないと!
「は、初めまして!リーザ…ちゃん!」
勇気を振り絞って話し掛けてみた。しかし…
「あんたには…あんたには渡さないから!!」
いきなり少女にレイピア型の兵器を向けられてしまった。はぁ…何度私は兵器を向けられるのだろうか…
その後勢いよく走りだし、そのまま少女は会議室から出てどこかへ行ってしまったようだ
なんというか…いろいろな人がいるなぁ…と思うが、どの人にもある共通点が一つ。それは大小様々な体中の傷、傷、傷。
ほとんどの人が年端もいかないような人なのに、何故そこまでの傷を負う必要があったのか、そして何故そんな傷を負ってまで魔人を討とうとするのか。それが私には分からなくて、つい聞いてしまった。
「あの、どうして皆さんは魔人を倒そうとするのですか?」
そのとき、一瞬場が凍った。あれ、何かいけないことでも言っちゃったのかな…
「な、何…言ってるの…?魔人だよ、魔人!!俺たちの故郷を襲った…あの…!!ああぁぁッ!?」
さっきまでのチャラい感じの人と同じとは思えない程に表情を歪ませながら、獣の咆哮のように声を荒げる。
「あいつら…!!絶対に殺す…!!邪魔するやつがいるなら…一般人でも構うもんか…!!」
先程まで自分には個性がないと嘆いていた彼がその手に持つ剣が震える程に強く握りしめている。
「ああ、許さねぇ…奴らは…俺の…妻を…娘を…!!くそがぁッ!!」
支部長の同期の彼は、怒りに任せて会議室の壁に大穴を開けてしまった。
「殺す…一匹残らず殺し尽くす…」
槍を使う彼の奥歯が砕けんばかりの歯軋りがはっきりと聞こえた。
「支部長…私…どうしたら…」
「君は悪くない…」
穏やかにそう言いながらも、自身の掌に爪が食い込み、手から流れる血液が、支部長の怒りと悲しみの深さを物語っていた。
そして、ここは私に任せろ、とでも言うように、私は部屋に戻されてしまった。
「私…とんでもないことを…!!」
「何してんだ、こんな所で。部屋入るならさっさと入れ」
どうやら猛竜はちょうど今帰ってきたようだった。
「あっちが騒がしいが…何かあったのか?」
「あ、あの…あ、やっぱり…なんでもない…」
「なんだよ、言いかけたんだ、最後まで言えよ」
「じゃあ………すごく聞きにくいことなんだけど…猛竜の故郷で何があったの…?」
「そんなことか…俺たちは魔人から何も守れない雑魚だった。それだけだ」
「そんな…じゃあ…!!」
「いいか!!金輪際その話をここの奴らにするな!!」
そして猛竜は再び夜の闇に消えた。私は、怒りに狂ったあの猛竜の顔を忘れられない。
「ああ、どうして私は…」
詳しいことは何も聞けなかった…ただただ、自分の無神経さに呆れるだけだった。