俺達に鏡をくれ   作:ハナのTV

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二人の生きた時代

魔女と龍は救国に来る。一人と一匹が世界を創造し、大地と空、二つの太陽と月で光と暗闇を与えられた。そこから生まれた我らも彼らの子、塵が塵へと戻る、大地に生まれて土に還るのなら、我らも彼らの土である。故に彼らは我らをいつも見ているのだ――

 

そんな言い伝えが残されて数千年、種族が争い、繁栄と衰退を繰り返し、幾度かの愚かしい戦争の積み重ねの末に隣接する巨大な三つの大国が世界を統括し、兵器、竜甲の開発にスポーツ、文化で争う、静かな戦争がある以外にこの世界にさしたる脅威は存在しなかった。

 

猪の頭と屈強な体を持つホギー、賢狼の血を受け継いだウルフィ、知恵と器用さで生き残って来たヒト、神である龍たちの末裔の竜、大陸を一時期は飲み込んだ巨人サイクロプス。

 

剣を交え、長い殺し合いの果てに彼らはついに種族の壁を乗り越え、国家を作り、忠誠と信仰、親愛を以って手を取りあった。三つの国に分かれて秘密裏の戦争さえあったが表面上は平和な時代が長く続いた

 

だが変化は突然訪れ、それに最初に気付いた者達は真っ先に死んでいった。

 

三つの国が接する中央、“触れ得ざる神域”、「この世のヘソ」と呼ばれる場所に突然侵略者たちが現れた。彼らは優れた技術と物量で、瞬く間に支配領域を広げた。魂のない機械の兵を率いるニンゲンと呼ばれる彼らに制圧されることを恐れ、この事態に三国は協力し、全力で抵抗した。

 

いわば、異種族同士の戦争であったため負ければ殲滅され、奪い尽くされると誰もが恐怖した故の徹底抗戦はおびただしい死体の山を築きあげて十二年、長い戦争は侵略者の突然の衰退によって幕を閉じ、そのあっけなさすぎる終わりに誰もが安堵ではなく恐怖を、歓喜ではなく不安を抱いた。

 

戦死者は3千万を超え、世界中の十代から三十代にかけての若者の層が減り、疲弊しきった各国はこの際、手を握りあうことにした。世界は国家連合、ドラゴニアを結成した。

 

箒にまたがる魔女とそれに寄り添う首の長い龍が描かれた紅い旗のもとに。あの忌まわしい戦争の後、ヒト達が自らが龍と魔女になろうとして二年――この世界のヒト達は今、あの忌まわしい戦争の残り火を虱潰しに消していた。

 

だが、火は未だに消えない。

 

暖炉で燃やした薪木の灰の中、小さな火が煌々と燃えるように。命の炎は種の分け隔てなく、その輝きを残す。

 

そして、そこから零れ落ちた二つの火。二人の若いヒトが広い世界に自らの光を発しようとしている事を誰が知っているだろうか?

 

 

物語はかつての三つの大国の一つ、オズから始まる。

 




次回から本編開始です。
楽しんでいただければ幸いです。
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