女性が召喚されてから3日が経ったがいまだに少年に聖杯戦争について説明を行っていなかった。何故なら女性が少年の元にいる理由付けや少年の両親の死亡届をだすなどの少年の身辺整理をおこなっていたからだ。
少年は女性がおこなっていることによって両親が死んでしまったことを嫌が応にも理解してしまい1日のほとんどを自分の部屋に引きこもって涙を流すことに費やしているような状態だった。
女性は少年の様子を当然のことだと考えているのか触ったこともないようなたどたどしい様子で何とか現代機器を使って少年に食事をつくり少年の部屋の前に置いて声をかける以外少年と接触しなかった。
「私は、私たちはこのたたかいで生き残ることができるでしょうか」
少年の身辺整理などが一段落したあと、女性は少年の食事をつくるとき以外の時間何もすることがなくなってしまった。なので、現代機器の使い方を学んだり近所の子持ちの女性と井戸端会議に興じたりするようになった。
女性の容姿は日本だとかなり目立つ。自然と美人の女性がいると噂になりアサシンのサーヴァントに発見されてしまった。ただそのことを女性は気にしていなかった。アサシンは女性が1人になるころを見計らって襲撃をかけようと気配を絶ち、女性に見つからないように慎重に近づいていった。
「私は、私たちは今の貴方に負けるほど弱くはありません」
1人になった女性はアサシンに気づいたのか誰もいない道で立ち止まりアサシンのいる方に向いた。自分の技術に自信があったのか女性に声をかけられたアサシンは一瞬動きを止めてしまった。
「私は、私たちは喰らいましょう。貴方を、貴方たちを」
女性の影から何かが這い出てくる。それは虚無だ。それは影だ。それは闇だ。アサシンは本能的に理解した。あれに触れるわけにはいかない。あれに触れれば終わりだっと。
「何故私のことが・・・・・・」
「どうやってみつけたか、ですか? それは貴方の足元を見ればわかるはずです」
「これは!」
アサシンは女性の言う通り足元を見て理解した。足元が女性の陣地になっていると。そして周りを見渡して慄いた。住宅街の一角がすべて女性の陣地になっていることに気がついたのだ。
「私が、私たちがこの3日間何もしていないと思っていたのですか?」
女性は笑みを浮かべながらアサシンに淡々と告げる。この陣地は3日間でつくりあげたものだと。こんな広さの陣地など現代の魔術師では短期間でつくりあげることができないことなど気にせずに。
アサシンは急いで他の分体やマスターと連絡を取ろうとした。しかし妨害されているのか全くつながらない。その様子を見ながら女性はゆっくりと手を挙げて振り下ろした。その瞬間、彼女の影から出てきたものがアサシンに襲い掛かった。
「くっ!」
アサシンはすぐに身をひるがえして逃げようとした。だが体に重しをつけられたかのようにその動きは鈍くすぐに追いつかれそのものにのみこまれていった。
「ふふっ。 貴方の、貴方たちの能力は私が、私たちが有効活用しましょう。今は私の、私たちの中で眠りなさい」
女性の言葉が終わった時には影の中から出てきたものは女性の影に引っこんでいた。のみこまれたアサシンがどうなったのか知るものは女性しかいない。
その夜、アサシンのマスターである言峰綺礼と密かに同盟を結んでいるアーチャーのマスターである遠坂時臣は日ごとに減っていくアサシンの分体に作戦の変更も視野に入れながらこれからどうするかを通信用の魔道具を使って話し合っていた。
「どうします師よ」
「そうだな。まずはアサシンの被害状況を聞かせてくれ」
「はい、アサシンの分体が8名ほど何者かによって殺されました。最後の連絡からすると下手人はキャスターだと思われます」
「そうか。情報共有は万全だっただろうか? 最初のアサシンの脱落の理由がわかっていれば対策も練れたのだが」
「いえ、何かにさえぎられたようで連絡以降のアサシンの動向は・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
時臣は綺礼の報告を聞いて頭を悩ませる。今の情報だけではどうしたらいいのかわからないのだ。時臣にはキャスターの構築している陣地についての情報が全くない。アーチャーも召喚されてから勝手気ままに動いているがキャスターの陣地構築に気づいていない。慎重に慎重を重ねたキャスターの陣地構築に気づけるものは時臣たちの陣営にはいないのだ。
「どこらへんで殺されているのかはわかるかね?」
「はい。まずは・・・・・・」
綺礼が報告した場所は全部違う場所であった。共通点もなくその中心に何かがあるわけでもない。住宅地で消えているものが多いが川原や公園などで消えているものもいるのである。
「これ以上の消耗は好ましくない。明日、作戦を実行しよう」
「わかりました」
時臣はこの不気味な現状をひとまず置いておき作戦を実行することにした。アサシンの分体の1人をアーチャーに殺させて誰かが動くのを待ちながらその裏でアサシンの分体が情報収集をおこなってアーチャー陣営の勝利を盤石なものにする。時臣のこの作戦はアサシンの分体が少なくなればなるほど効果が見込めなくなる可能性が高くなる。そのため、即急に今の状況を動かす必要があった。これ以上分体が少なくなる前に。