中世の犠牲者   作:雨の日

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問答 それぞれの王の道

 ライダーの間違った飲みかたに呆れながらキャスターはセイバーの後ろにいた女性に目を向ける。女性は人間のようで人間ではない。おそらく人造人間。ホムンクルスだろうとキャスターは推測した。

 

「セイバー、許可をいただけますか?」

 

「? 何をですか?」

 

「杯を作成する許可です」

 

「私は構いませんが・・・・・・」

 

「構わないわ」

 

 セイバーは後ろにいる女性に目を向け、女性はキャスターの提案を微笑みを向けながら許可をだした。それを確認したキャスターは近くに植えてある植物の葉を何枚か手に取った。その葉に何かをキャスターが呟くとまるで何かに動かされているかのように葉が動き杯の形になった。

 

「これにそれを入れてください」

 

「おう。こりゃあ助かる」

 

「酒宴を開くなら酒以外にも用意するものがたくさんあるのです。ライダー、主催者なのですからそれぐらい用意してください」

 

「むう、すまん」

 

 全員に酒が配られたのを確認した後キャスターは酒を口に含んだ。教えによっては酒を飲むのは禁止するところもあるのだが葡萄酒は神の血である。残すことこそ罪であると考えているキャスターは酒を飲みことに躊躇はなかった。

 

「さて、此度の宴の目的を話しておくとしよう。聖杯は相応しきものの手に渡る定めだという。それを見定める儀式がこの冬木における闘争だというが、何も見極めをつけるだけなら血を流すにはおよばない」

 

「と、いうと?」

 

「英霊通し、お互いの格に納得がいったならそれで自ずと答えは出る」

 

「格が低いと認めたなら格が上だと思った相手に聖杯を譲るということでしょうか?」

 

「うむ」

 

「それでまずは私と格を競おうという訳か、ライダー」

 

 セイバーはライダーの話に一定の理解を示した。酒を飲みながらライダーに目を向ける。その目には自分の方が上であるという自負が宿っていた。そんなセイバーの視線を向けられたライダーは不敵な笑みを浮かべた。己の方が格が上だと。その態度が物語っていた。

 

「その通り。お互い王を名乗って譲らぬとあっては捨て置けまい。要は聖杯戦争ならぬ聖杯問答。果たして騎士王と征服王。どちらが聖杯の王に相応しき器か。酒杯に問えばつまびらかになるというものよ」

 

「騎士王? 貴女はアーサー王でしたか」

 

 キャスターはセイバーの真名を知らなかったので称号を聞いて目を見開いて驚いた。ちなみにライダーの真名に関しての時は自分でばらしてきてその後すぐに話が進んでいったため驚くに驚けなかったという事情があった。

 

 騎士王と征服王の王道、どちらも正しくどちらも間違っているのだろう。王のあり方は千差万別。正しい王のあり方など存在しないとキャスターは考えている。2人の王道が食い違いせめぎ合っているさまを見ながら自分はどうするべきかと思案に暮れる。

 

「キャスターよ」

 

「なんでしょうか?」

 

「お主は余とこの小娘の王道、どちらが間違っていると思う?」

 

 キャスターは悩む。王のあり方は千差万別であるがゆえに。どちらが間違っているなどとは言えない。だが、どちらかに賛成しなければ話が進まないだろう。

 

「どちらもその時代に合った王のあり方をしていると思いますが・・・・・・しいていうならライダーの方が合っているのでしょう」

 

「な、何故!?」

 

「貴女は何事も自分だけでやりすぎたのです。貴女は国を救いたいと言いながら国のことを何も見ていない。人の寿命は短いのです。自分がいなくなった後のことを考えたことがありましたか?」

 

「いや、それは・・・・・・」

 

「貴女は晩年不死の加護を失っていた。ならば、自分が死ぬ可能性があると自覚しておかなくてはならなかった。そして自分の死後、国が何とかやっていけるように後継者を育てなくてはならなかった」

 

「だ、だが!」

 

「モードレット卿にはその役目は務まらない。それは逸話を知っている人間なら誰でも肯定してくれるでしょう。ならば本当に円卓全員で運営させる方針を取るべきでした」

 

「円卓全員で?」

 

「はい。貴女は円卓をつくった。全員が対等だということを示すものを。ですが、基本的に全てあなたの提案が通っていたのではないですか?」

 

「それは・・・・・・」

 

 セイバーは心当たりがあったのか口をつぐんだ。円卓には自分の言うことならなんでも肯定するという騎士もいたし不満があっても口に出さない者もいた。トリスタンのように去っていったものもいた。ランスロットのように心痛めながらそれが最善だと思い行動する者もいた。

 

「誰もが間違うものです。たとえ貴女でも。それを止めてくれるようなものはいたかもしれないですがその多くは去っていったでしょう。自分たちの意見など聞いてくれないのだと」

 

 キャスターの言にセイバーは臓腑をえぐられたかのような痛みを感じた。もしそう思われていたのなら円卓など意味がなかったのではないかと。ただの独裁政治のカモフラージュのように思われていたのではないかと。

 

「ゆえに私は、私たちは貴女の王道を征服王の王道より下に見る。貴女は外枠が大丈夫だからと肝心な中身を見ない愚かものだと」

 

「中身を見なかったから騎士たちに裏切られたというのですか? だったら私はどうしたらよかったのですか!?」

 

「それはここに書いておきました。もし持ち帰れるのなら持ち帰ってみてこれをやってみてください」

 

 キャスターは懐から分厚い書物をとりだしてセイバーに渡した。その書物は聖杯問答が始まってから書かれたにしてはページ数が多い。事前に用意しておいたとしか思えないものだった。ただ、騎士王と聞いて驚いていたのは本当だとセイバーの直感が言っている。

 

「え~と・・・・・・」

 

「その書物は今さっき虚数空間で書いたものです。虚数空間はこの世界の物ではなく時間も違うのです」

 

「そうなのですか?」

 

「わからないわ。虚数魔術はあまり知られていない魔術だから」

 

 セイバーが女性に聞くも女性は虚数魔術の知識がないのか申し訳なさそうに返すしかできなかった。ライダーのマスターもわからないようで首をかしげながらその現象を見ていた。

 

 もちろんキャスターの言うことは嘘である。虚数空間で書いたのは正しいが書いたものはキャスターではなく魔導人形である。2000体以上使って書き上げたため短時間で作ることができたのである。ページとページにまたがる文章についてはかなり注意を払って作られているししっかりと添削されている。

 

「王道について語りつくしたようですし次は私の、私たちの用事に付き合っていただきましょう」

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