勉強ばかりでイライラしていた時に物理の先生が量子力学について話し始め、「これ神様転生の代わりになり得るんじゃないか?」とか思うほどに狂ってしまったのでつい書いてしまいました。
バリバリ理系人間ですので文章能力皆無ですが、1人でも読んで楽しんでいただけたら幸いです。
では、START!
第1話
突然だが、皆さんは『多元宇宙論』というものをご存知だろうか。
複数の宇宙の存在を仮定した理論物理学による論説のことで、物理的に観測不可能な様々な事象を数学や物理学を元に理論を構築し、既知の観測や観察とともに予想された物理理論の一つである(wikipedia引用)。
この言葉の中にある「宇宙」というのは、所謂spaceのことではない。物質的宇宙を含む我々の生きている全事象(例えば時間、空間、エネルギー、物理定数など…)のことを総称して「宇宙」と呼んでいる。
この論説は現代物理学、特に量子力学における主流な理論となっているが、この理論を応用した考え方のひとつとして、『並行世界(parallel world)』という考え方がある。我々の生きている世界と並行している世界が多数存在し、それらが相互に作用しあっている、というものだ。
例を1つ挙げてみる。例えばあなたがサイコロを振った、そしてその結果1の目が出たとしよう。この時「1の目が出た」という事象は必然的、もしくは偶発的に生まれたものではない。サイコロを振った事により1の目が出る、2の目が出る、…、6の目が出る、といった6つの『並行世界』が互いに干渉しあい反発しあい生まれたのが我々が見ている現実世界に起こった「1の目が出た」という事象である。つまり、出てきた1の目、というのは他の世界からの干渉と反発の結果出来たものである。
これが『並行世界』による相互作用、という考え方だ。
この考え方に魅了され、一生をかけて研究し続けた男がいる。その男の名は天野総司。彼は苦心の末2×××年には遂に『並行世界の発見と発生原理の解明』を果たし、助手の音村獅童とともにノーベル物理学賞を手にすることとなる。
その研究成果について少し解説しておこう。
前述の通り、我々の生きている世界は大量の『並行世界』による相互干渉と反発から生まれるものの1つだ。ならば、他の世界、他の様に干渉しあった結果はどこに生まれているのだろうか、天野は其処に注目した。そして、天野は「他の世界というものは我々が生きている空間の外側にある」と考えた。
苦心の末、天野は『並行世界』へ干渉するためには7次元の世界まで拡張する必要があることを発見し、拡張のための新たな物理指数を定めることで他の世界を観測する、そして恣意的に干渉することができる様になった。その指数の名をアマノ-オトムラ指数と呼ぶこととした。
これが天野の研究成果である。
しかし、齢70を超えた男の関心は尽きない。次に天野が目指したのは『並行世界の発生原理を利用した現実世界の創造』である。
この日も研究所の一室で実験は続いていた。今回天野達が行っている実験は、試料に記されている1つの打点をケース内で発生させた他の並行世界に強制作用させる事で5つに増やす実験だ。スケールが小さい、と思う方もいるかもしれないが、実験というものは普通安全性の高いものから始めるものである。大きなスケールで始めてしまうと、対処できない場合も出てくる。その点で天野はとても慎重な男だ。スケールを間違えるミスなど犯す訳がない。そう、故意に何かを操作しなければ…
「天野先生、機器のセット終了しました」
「はい、ありがとう。後は僕がやるからちょっと下がってて。ちゃんとコントロール頼むよ、音村助手」
「……はい」
天野が操作する機械は特定の場所の次元を変化させる装置だ。それにより『並行世界』を強制的に作り出す。。その際、音村をリーダーとするサポートメンバーが5〜10人体制で後ろから誤作動のチェックなどを行うのが、いつもの研究である。
天野達はまずケース内のエネルギーを上げると共に次元を上げる様機器を操作する。
「6次元突入、エネルギー準位をあげて」
「了解。δ線照射。ケース内を安定化」
順調に研究は進む。
「7次元突入します。アマノ-オトムラ指数を3つあげて」
「了解。2分後に指数が3つ上がります」
天野の判断でこのケースの中に試料を入れる。
「7次元突入完了。試料投入。同時に録画開始してください。」
打点が1つから増え始め、天野は安堵している。
(あとはエネルギーがなくなるだけだ。のんびり見てるか)
研究途中、ある事に気づく。
(ん?おかしい。僕達の解明した原理に基づいて実験は進めた。上手くいけば、試料に打点が5つしか付かないはず。何故打点が"数十個"も付いているんだ?)
打点が増えている時点で他世界への干渉は済んでいる。おかしいのは制御しているはずのものが過干渉を起こしている点だ。
「おい、一旦中止しよう。アマノ-オトムラ指数を2つ下げて。ゆっくりと6次元まで落としてくれ」
……返事はない。
「おい、誰か。誰もいないのか?そんな訳ないだろ。音村くん?」
天野が後ろを振り向くと、其処には動きっぱなしの機械と1人の青年の後ろ姿が。
(あれは誰だ。音村くん?にしては雰囲気が違うような。まぁ良い)
その青年に呼びかけようとした時
青年が何かレバーを1つ下ろそうとした。
(え、あのレバーって、もしや!)
「馬鹿野郎!やめろ!!」
青年がガコンとレバーを下ろし、
パリン
ケースの割れる音と共に
天野の目の前に広がる世界が
"ぐにゃり"
と曲がった。
天「‼︎‼︎」
天野に強い頭痛が襲いかかる。
(立って…いられ……ない………)
天野の操作していた機械が急に熱を帯びる。完全に機器のオーバーワーク。天野は頭痛の原因を現在起きている過干渉によるものと踏んでいた。天野は装置を強制的に止めようとするが機器はもう触ることができないほど熱くなっている。
(あぁ、僕は死ぬのか?まぁ、歳も歳だから、しょうが……な………い………k……………………)
天野はそのまま目を閉じてしまう。
静まり返った研究室に誰かの声が響く。
「ふふふ。先生、そんなに『並行世界』が好きなら、向こうの世界に行ってしまえばいいと思いますよ。貴方の存在はこの世界にはなかった事にしておきますから、御安心を」
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「そうじー、起きなさい。もうお昼になるわよ」
天野が目を覚ますと其処は暖かい陽射しの降り注ぐ部屋だった。
(ん?ここはどこだ。研究室でも、病院でもない。)
天野は目の前にいる女性に聞いてみることにした。
「あのー、ここはどこでしょう。あなたはどなたでしょうか?」
「またそうやって寝ようとする。今日はそんなことに引っかかりませんからね!お母さんは操司の母親なんだから、そんな嘘バレバレですよ!」
早く起きてきなさい、とそう言い残して、母と自らを名乗っていた人物は去っていった。
(どういう事だ、これは。)
とりあえず起き上がろうとするといつもと感覚が違う。手元を見ると、やけに小さい。
(これはもしや…)
天野は近くにある鏡を見て驚愕した。体が縮んでしまっていた。
(はぁ、どこの名探偵だよ、全く)
部屋に貼ってあった名前シールから自身の名を「甘野操司」だという事を知る。
甘野は状況を整理した
(まずここは僕の知る世界じゃない。記憶では並行世界の実験途中だった。あの青年が下したレバー。あれは恐らく音村くんが研究していた核融合によるエネルギー生成器のレバーのはず。
つまり、あの膨大なエネルギーによってケースが壊れ7次元空間が僕のところまで広がったために、僕自身が『並行世界』へ飛ばされたって事か。
…ふう、厄介だな。
取り敢えず情報収集は朝食を摂ってからだ)
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事の発端は中国軽慶市、発光する赤子が生まれたというニュースだった。
それ以降、各地で『超常』は発見され、原因も判然としないまま時は流れる。いつしか『超常』は『日常』へ、『架空』は『現実』へと成り代わっていき、世界人口の約八割がなんらかの特異体質を持つ超人社会。それが現代社会である。
そんな混乱渦巻く世の中で注目されている職業がある。それは
“ヒーロー”
元々は個性を悪用する者から市民を無償で救けていた人々がいた。彼らは活躍するにつれてヒーローと呼ばれるようになり、政府は世論に押される形でヒーローを職業と認定した。それ以降、ヒーローは子供達にとって最も憧れる職業となり、誰もがヒーローを目指すようになる。
これは元ノーベル物理学賞受賞者の“天才”天野総司が『並行世界』で甘野操司として活躍する物語である。
初め1マス開けたいのに開けられない…
この話はフィクションです。よって、『多元宇宙論』や『並行世界』、次元などについての異論は受け付けません(本当は違うことは筆者もわかってますが、構成上こうせざるを得ない…)