結果から言うと、私立聡明中学校の4人は無事合格していた。しかも、1位は珱九郎と操司の2人だというのだから驚きだ。操司よりも珱九郎の方が実技のポイントは高かったが、操司の方は筆記において珱九郎と差を詰めていたため、総合では同率だったらしい。
ちなみに、実技トップ5の成績は以下の通りである。なお、ポイントは、敵+救助=合計 の順に示している。
1.烏丸 珱九郎(119+11=130)
2.冬野 優姫(85+39=124)
2.甘野 操司(81+44=124)
4.飯田 天哉(58+51=109)
5.爆豪 勝己(93+7=100)
育田から(試験終了後に)設定された「150ポイント越え」を達成できなかったため、4人の春休み特訓メニューが死ぬほど辛くなったのはまた別の話である。
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時は流れ、入学の日。操司はいつもと変わらず『流一』をこなす。
雄英高校の入学初日。そんな日でも彼はペースを崩さない。
「楽しみだなー。どんな人がいるのかなー、うへへへへ」
もとい、崩されていた。
「操司〜、朝ご飯できたから降りてきなさーい」
「りょーかーい」
こうして彼はほんの少し気持ちを緩めたまま優姫達との待ち合わせ場所に向かう。
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初登校は3人であった。そもそも飯田家は3人とは遠い所にある為、4人揃って登校することなんて滅多にない。
「いやぁ、まさかクロ君が実技一位だとはね」
「でも、だからと言って天狗にならないでよ」
「なるか、アホ。というか烏天狗と鼻高天狗は別物だからな」
「え、本当に?」
「おい、本気で知らなかったのか」
などと話しつつ3人は雄英高校にたどり着く。この時点で集合時間の30分前だ。どうやら飯田の早く来る癖がうつり始めたのかもしれない。クラスを確認すると、
「あ、3人とも一緒!」
「てか、天哉も一緒だな」
「騒々しさが目に見えるよ」
「その騒々しさは9割5分優姫とお前だからな」
「A組かー。いやー、緊張するね」
3人は1-A教室に入った。すると、飯田は既に来ておりこちらを見るなりすぐに近づいてきた。
「3人とも、おはよう!」
「やっほー天ちゃん」
「あれ、天哉くん、少し引き締まった?この間よりもムキムキだね」
「特段変化させたことはないのだが」
「それ、多分師匠の特訓のせいだろ。天哉は特にきつかったからな」
など話をしていた。
途中優姫が
「あー、君はあの時の目付きも口も悪いやつ!」
と叫び一悶着あったり、ある女子に
「梅雨ちゃんと呼んで」
と言われ、抵抗を持った珱九郎が2人から弄られたりしたが、平和な時間を過ごした。
操司がふと廊下を見ると、入り口に立っているモサモサ頭の少年とボブカットの女子の背後に何かが倒れているのを見た。すると、その倒れているものから急に
「友達ごっこなら他所でやれ。此処はヒーロー科だぞ」
と声が聞こえた。操司はその様子を見るなりすぐさま神妙な顔をして珱九郎に話しかける。
「ねぇ、珱ちゃん。あれ先生だよね」
「多分な」
「あれさ、あの女子のスカートの中見えてない?」
「……そんなことはない。きっと。しかも、最近の女子なら何か中に短パンとか履いてるはずだから大丈夫だ。きっと」
「珱ちゃん。新入生が入学初日にどこの短パン履くかも微妙なところだし、そもそも珱ちゃんがきっとって連呼するときは大抵反実仮想ないしは実現不可能な希望だってわかってる時なんだよね」
「…うるさい」
「はい、ずぼしー」
と、小声でそんなくだらない話をしているうちに寝袋から出た男が話し始める。
「はい、静かになるまで8秒かかりました。君達は合理性に欠くね」
出てきた男の格好は、取り敢えず地味だった。黒髪はケアされてないかのようにだらりと垂れており、口周りには無精髭。服装は黒の簡素なスーツ?のようなものを身に纏っている。首回りに布のようなものが大量に巻かれているのが特徴的である。
「担任の相澤消太だ、よろしくね。早速だが、全員これ着てグラウンドに集合」
そう言って寝袋から出てきたのはジャージ。
(あれ、ジャージってみんな入学前に買ってるはずだよな)
案の定自分で買ったジャージを着用し、グラウンドに集まった。
「よし、それではこれから皆には個性把握テストを受けてもらう」
『個性把握テスト⁉︎』
ボブカットの女子(確か麗日と言っていた)が焦ったように相澤に尋ねる。
「え、入学式は?ガイダンスは?」
「君らにそんなことする暇も余裕もない。
雄英は自由な校風が売り文句。それは先生側もまた然り。お前らも中学時代にやったろ、個性禁止の体力テスト」
そう言って相澤は手に持っていたタブレットを見せる。タブレットには体力テストの種目が並んでいた。
常人に個性が表れてしまう、という超常現象に政府は、そして文科省は対応できていなかった。そのため、個性使用禁止、という形で体力テストを行っている。
しかし、これには欠点がある。それは、個性を本当に完全に禁止できるのか、という課題だ。個性には異形型、発動型、変形型、その複合型と様々な種類がある。それらを全て抑制することはなかなか難しい。特に異形型は常時発動されているのと同等であるため、使用禁止などということはできない。この時点で既に差が生まれている。
この問題点を相澤も文科省の怠慢だ、と指摘した。
「今年の実技成績トップは、烏丸か。来い」
呼ばれた珱九郎は前に出る。途中何処かから舌打ちのようなクリック音が聞こえたが、珱九郎は無視して相澤の言葉に集中する。
「お前、これから50mを走れ。個性を使用していい」
珱九郎が頷くと位置につく。皆が固唾をのむ中堂々と構え、スタートと同時に珱九郎は神足通で瞬時に走り去った。
「先ずは自身の最大限を把握する。それがヒーローの基盤を作る最も合理的な手段」
そう言いつつ記録を皆に見せる。記録は
〈0秒29〉
「す、すげぇ!」
「楽しそう!」
「個性を使えるのか!流石ヒーロー科!」
記録を見たのをきっかけに皆が歓声をあげ盛り上がる。
「ねぇ、操司くん。クロ君さ、益々速くなってない?」
「いや、あれはラグがなくなってきたんじゃない?意識と発動に差がないからより速く動けるってこと」
盛り上がる生徒を見た相澤は身に纏う雰囲気を急に変える。
「ほぅ、楽しそう、ねぇ。君たちは本当にそんな心算で3年間過ごすつもりなのかい?」
突如変わる相澤の雰囲気に皆の様子もガラリと変わる。ピンと張り詰めた様子だ。
そんな中相澤はこう繋げる。
「よし、トータル成績最下位の者は見込みなしとみなし、除籍処分としよう」
そう宣告する相澤は先ほどのくたびれた雰囲気の男とは打って変わって、
「生徒の如何は俺たちの自由。
ようこそ、これが〈雄英高校ヒーロー科〉だ」
強者の空気を醸し出していた。
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「最下位除籍って……理不尽すぎる!」
生徒たちの当然の抗議に対し、語り始めた相澤。まとめると、日本は理不尽にまみれており、そういった理不尽を覆してこそのヒーロー、ということだ。
「これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける」
ニヤリと笑みを浮かべ、人差し指をクイッと曲げながら相澤は生徒たちに言った。。
「"Plus Ultra"さ。全力で乗り越えて来い」
最後の相澤の言葉に対する生徒たちの反応は様々であった。気合を入れ直す者、深刻な顔つきで自身を見つめている者、笑顔のまま何も変化のない者…
そんな中、操司は優姫と珱九郎に宣言する。
「あのさ、僕はこのテストで本気で2人に勝つから。で、1位を取るから」
2人は一瞬キョトンとした顔を浮かべた後、直ぐに好戦的な笑みへと変化させる。
「私も負ける気ないから」
「俺は実技一位だったからな。負けるわけにはいかないな」
3人とも気合は十分である。
こうして、入学1日目の幕は開けた。
という訳で第3話でした。
かっちゃんに関してなのですが、実技があのようになったのは
①優姫との争いの所為で原作より多くロボを倒す
②優姫の背後にいたロボを何回か壊しており、それが優姫を助けたかのように思われたため、救助ポイントがついた
という背景設定です。異論はある程度認めます
次回は3人のチートっぷりを出していきます!
ということで、次回もお楽しみに〜
感想、評価の方も是非宜しくお願いします。