入学2日目。午前中は意外にも普通の授業だった。先生が皆プロヒーローであることを除いてはどこの高校でもある普通の授業である。時折プレゼントマイクが盛り上げようとシャウトしたり、エクトプラズムが演習中に個性を使って見回りを倍にしたりしていたが、ほんの少しの刺激に過ぎない。高校の内容を既に網羅している操司に彼から少しずつ勉強を教わってきた優姫と珱九郎にとっては退屈そのものであった。
席順は相澤の合理的思考が遺憾なく発揮された結果、出席番号順となった。操司は1列目の1番後ろ、珱九郎は2列目の1番後ろで2人は隣同士となる。
「うわ、隣は珱ちゃんか。新鮮さないな」
「授業中うるさくするなよ」
「………」
「そんな悲しそうな目で見ても無駄だぞ」
「僕のお色気作戦が通じないとは…」
「今のお前にはお色気の欠片もなかった」
「なん……だと………」
2人は平常運転だった。
また、優姫は5列目の1番前となっていたが、峰田からの黒板が見えないという要望により、5列目の後ろから二番目、八百万の前で緑谷の後ろ、轟の隣になった。斜め後ろは葉隠だ。
「よろしくね、焦凍くん」
「…ああ、よろしく」
「百ちゃんもよろしくね」
「まさか冬野さんと近くになるとは思いもよりませんでしたわ」
「まぁ、私の周りも中々個性的な面子だからね。楽しみだな」
「お前が1番個性にあふれてるだろ」
「ん?なんか言った?焦凍くん」
「…いや、何でもない」
「ちょっと!私も近いんだから無視しないでよ!」
「あ、ごめん透ちゃん。透明で見えなかったー」
「あ、なるほど。
ってちゃんと制服着てるわ!」
優姫は上手く馴染めている(?)ようだ。
昼はランチラッシュが経営する食堂があるが、とても人気があるため並ぶのも一苦労だ。
珱九郎と操司は上鳴、障子、蛙吹、耳郎と食堂へ行った。その一方で、優姫は八百万と教室で弁当を広げていた。
「え、百ちゃんそんなに食べんの⁉︎」
「個性の影響も有りますから」
「だからそんなに実っt…育ったのか」
「いや、隠されてませんよ!」
優姫の前では誰もがツッコミをしなければならない。それが彼女の凄さであった。
昼食が終わると、ヒーロー科としての特徴でもある、ヒーロー基礎学が行われる。生徒達はこの授業を楽しみにしており、皆そわそわしていた。
そんな中、1つの声が響く。
「私がーーーー!」
「こ、この声は」
「普通にドアから来た!!」
そう言ってオールマイトが前方のドアから教室に入ってくる。生徒達が歓声をあげる中、操司と珱九郎は
「ねぇねぇ、オールマイトさ。思ってたより静かにドアを開けたよね。結構気を使うんだね」
「でも声のせいで聞こえなかっただけってのもあり得るぞ」
などと話していた。緊張感のない2人である。
「私の担当する科目はヒーロー基礎学。単位数も最も多いぞ。
早速だが今日はコレ!『戦闘訓練』だ!!」
宣言と同時に何処からか取り出した『Battle』と書かれたボールを見て生徒達は反応を様々にする。
「そして、それに伴って、こちら!
入学前に送って貰った『個性届け』と『要望』に沿ってつくった戦闘服だ!」
オールマイトがリモコンのスイッチを押すと、壁から現れたのは23個のボックス。中には戦闘服が入っているようだ。
オールマイトの話に生徒達からは歓声が出る。そんな中オールマイトが話す。
「皆、これを着てグラウンドβに集合だ!!!」
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『被服控除』
入学のお知らせと共に届く提出しなければならない書類の1つだ。そこには自分の個性、特徴などを踏まえつつどんなヒーローコスチュームにしたいかの要望を記入できる。するとサポート会社がそれに沿ったコスチュームを作成してもらえるのだ。ヒーロー科としての特色とも言える。
(へぇ、思ったよりも軽いな。すごいぞ、これ)
操司達は男女別の更衣室で着替えを済まし、感想を話しながらグラウンドβに向かっていた。
操司のコスチュームは、漆黒の学生服のようなものの上に足元まで届き得る淡い黒色のコートを羽織っている。コートの持ち出しの部分は濃い藍色のラインが引かれているようだ。おまけに首からは十字架のシンプルなネックレスをつけ、白い手袋をはめている。傍目から見たら完全に神父である。
しかし、サポート会社というのは素晴らしいもので、この至って平凡な神父の格好の中にたくさんの工夫が込められているのだが、それについての説明は後ほどにしよう。
「お、珱ちゃんもいいね。かっこいい」
「まさか、素直に褒められるとは思ってなかった。お前は、神父か」
そう述べる珱九郎のコスチュームは、白の鈴懸に灰色に近い黒の袴。翼を連想させる茶色の装飾が結衣袈裟と共に掛かっている。背中には一本の長い錫杖が下げられ、腰には二本の刀が。そして顔は鴉天狗のお面で覆われており、見た目からすれば物騒な山伏といったところであろうか。
「そっちだって完全に鴉天狗まるっとリスペクトでしょ」
「俺はこういうの考えるのが苦手でな。ネットからパクった」
「それありなの⁉︎」
などと話していると、グラウンドβへと到着する。オールマイトは既に待っており、皆の様子を伺っていると、飯田がオールマイトへ質問をする。
「先生!此処は入試の時の演習場のようですが、今から市街地演習を行うのでしょうか?」
「いや、もう二歩先に踏み込む。屋内での対人戦闘訓練だ!」
オールマイトは皆の様子を見つつ軽快に進める。
「敵退治は主に屋外で見られるが、統計的に言えば屋内の方が凶悪敵の出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売……。このヒーロー飽和社かi……ゲフン、真に賢しい敵は、屋内に潜む‼︎
君らにはこれから「ヴィラン組」と「ヒーロー組」に分かれて、基本2対2の屋内対人戦を行ってもらう‼︎」
「基礎訓練もなしに?」
「その基礎を知るための訓練さ。但し、今回はただぶっ壊せばオーケーなロボじゃない所がミソだ!」
「勝敗のシステムはどのようになっているのでしょうか」
「ぶっ飛ばしてもいーんすか」
「また相澤先生みたいに除籍とかあるんですか?」
「分かれ方とはどのような分かれ方をすればよろしいのでしょうか!」
「このマントヤバくない☆」
矢継ぎ早に来る質問に対して、オールマイトは言葉に詰まる。結果、出てきた言葉は
「んん〜〜聖徳太子イィィ!!」
的を得た一言だった。
オールマイトはカンペを取り出し、書かれていることを伝える。まとめると
・片方がヒーロー役、片方がヴィラン役となる。ヴィラン側が保有している核をヒーロー側が取り締まる、という設定で戦う。制限時間は15分。核の場所はヒーローには知らされていない。
・くじでペアになるものと対戦組み合わせを決める。どのペアにもお互いの通信機、相手を確保するための確保テープ、建物の見取り図を配布。
・核にタッチするかヴィランを全員捕まえたらヒーローの勝ち。15分経つかヒーローを全員捕まえたらヴィランの勝ち。
くじの結果は以下の通り
A:緑谷出久 麗日お茶子
B:轟焦凍 飯田天哉
C:八百万百 峰田実
D:爆豪勝己 尾白猿夫
E:芦戸三奈 青山優雅
F:砂糖力道 口田甲司
G:上鳴電気 障子目蔵
H:蛙吹梅雨 常闇踏陰
I:冬野優姫 葉隠透
J:切島鋭児郎 瀬呂範太
K:甘野操司 耳郎響香 烏丸珱九郎
「先生。何でうちらだけ3人になるんですか?」
耳郎の質問にオールマイトが答える。
「いい質問だ、耳郎少女!!
今年は1クラス23人であってね、2人チームを組むと1人余ってしまう!
そこでだ!実は君ら3人チームが戦う相手はもう既に決まっているのさ!」
オールマイトの言葉と共に2人組が入ってくる。
1人は身長190を超えているのではというほどの長身の男。執事の着るような燕尾服に中は白のシャツを合わせている。
もう片方は隣の男に比べるとやや小さいが恐らく身長170は無い程度のショートカットの女性。フリルのついたピンクのシャツに赤のミニスカートを合わせている。ニーソックスを履き、革の手袋、頭には赤いキャスケットを被っているその様子は、スペインの活動家を連想させる。
「それじゃあ、君たちKグループと戦う2人を紹介しよう!君たちの先輩、2-Aの2人だ!」
「糸引 鉤(いとひき まがり)だ。よろしく」
「音楽 玲実(おとらく れみ)よ。楽しみましょう」
操司達の前に、今、最初の壁が立ちはだかる。
というわけで、第5話でした。
さて、衝撃の展開、まさかの2-Aに生徒がいるというね。すいません、物を投げないでください!
これから色々と原作とは違った動きが入ってきます。さて、どうなっていくのでしょうか!
ということで、次回もお楽しみに〜
感想、評価の方も是非宜しくお願いします。