かつてない程の難産中……
第1話
戦闘訓練の次の日の朝、操司達が登校すると、高校の入口前にたくさんの人だかりができていた。
「何あれ」
優姫の言葉に2人は答えられず、さぁ、と言いつつただ首を横に振るだけにとどめた。しかし、何なのかはすぐに分かった。いや、この時は思い知らされた、といったほうが正しいのだろうか。
その中の1人が操司達の事を見つける。すると、すぐにその人だかりは操司達の事を飲み込んだ。
「あの、オールマイトについて一言!」
「オールマイトはどんな授業をしているの⁉︎」
「オールマイトが教師として働いている事に対してどう思ってます⁉︎」
荒れ狂う人の波とともに、言葉の奔流が操司達に押し寄せる。
「オールマイトは良い人ですよ」
「普通の授業です。他の先生と変わりません」
「僕らがオールマイトの行動をどうこう言える立場じゃないでしょう。オールマイトだって1人の人間なんだから。」
丁寧に返答していく珱九郎と優姫だったが、操司は苛立っていた。操司はマスコミの事をマスゴミと言っているくらいには嫌っているのだ。
そもそも世論というものが本当に世間一般としての総意なのだろうか。マスコミの報道が激しいと世間はマスコミの扇動するように動きがちだ。だからこそ報道機関は公正中立な立場をとるべきであるにも関わらず、マスコミは、大抵の場合、ある一方のことを猛プッシュする。操司はそれが気に食わなかった。
「そもそも貴女達は「操司!お前は喋るな!」…」
どうにかして人によって出来たビックウェーブを切り抜けた3人。教室に入ると皆がマスコミの話をしている。どうやら1-Aの生徒は皆総じてあの波に飲まれたようである。
程なくして相澤が教室に入り朝のHRが始まった。相澤はまず前日の戦闘訓練について講評をする。爆豪の行動について、そして、緑谷の個性について軽く触れていた。
「さて、ここからがHRの本題だ。急で悪いが今日は君らに……」
"本題""急で"の言葉に皆が反応する。なんせ言ったのはあの相澤だ。入学初日に入学式をすっぽかしていきなりテストを強いる、しかもそのテストの最下位は除籍というクレイジーな男だ。皆は気を張り巡らせていた。そんな中相澤は口を開く。
「学級委員長を決めてもらう」
『(学校っぽいのきたぁーー‼︎‼︎)』
クラス全員の心が1つになった瞬間だった。
そこから教室は混乱に陥った。数人を除けば皆委員長をしたいのである。やりたいという思いばかりが先行し、声を上げる者は多かった。そこに飯田が切り込む。
「静粛にしたまえ!多を牽引する重大な仕事だ!!やりたい者がやれるようなものではないだろう!!!」
特に一人ひとりの個性が強いヒーロー科においては尚更だ。
「周囲からの信頼あってこその責務!もし民主主義に則り皆で真のリーダーを決めるのであれば!!!」
飯田は迫力たっぷりに続ける。漫画であれば背後からゴゴゴゴ、といった文字が限りなく太く描かれるだろう。
「投票で決めるべき議案!!!!!」
しかし、皆の考えは1つになっていた。それは、
「いや、お前も手そびえ立ってんじゃねぇか!」
飯田の心境として様々な思いが渦巻いていることを操司は感じ取った。
それから先はスムーズに進んだ。結果としては緑谷が3票、飯田と八百万が2票であった。この時点で緑谷が委員長となる事は確定した。残るは副委員長であったが、飯田が再投票だとか、決選投票だとか言っていたものの相澤から面倒くさい、との理由で却下され、じゃんけんで決まった。結果、副委員長は八百万が務める事になる。
飯田は後にこの時の事を振り返り、自分の出したパーの事をこの上なく恨んだと言う。
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操司と珱九郎、それに轟の3人は昼食を早めに済ませ、2-A教室へと向かっていた。珱九郎は糸引との続きをするため、操司と轟は玲実に教えを乞うためであった。
初めは轟は居る予定ではなかったが、操司に誘われて今に至る。最終目的は違えど同じものを目指す仲間として切磋琢磨したいという操司の考えであった。
「お邪魔しまーす」
3人は2-A教室へと入る。広さは1-Aとほぼ同じであるにも関わらず机は2つしかない。どこか淋しさも感じてしまうような光景であった。
「おう、きたか」
「あれ、轟くん?も一緒なんだ」
2人は待ち合わせ通り教室で待っていた。糸引は見た目と言動に似合わずきちっと着こなし、玲実は緩く着ていた。戦闘訓練では後輩達を圧倒していた2人も、制服を着ているところを見るとなんだかまだ雄英の生徒なんだと意識させられる。
「んじゃ、俺らはトレーニングルームに行くか」
「はい、宜しくお願いします」
「そう固くなんなって」
はは、と笑いつつ2人は教室から出て行った。それから玲実が口を開く。
「さて、私らもやろっか」
そう言って玲実は教室の隅の方、と言っても教室の8分の1程度にはなりそうなほどの山なのだが、に重ねてあった資料の束を取り出す。
「これは……」
轟の疑問に玲実が答える。
「これは私がこの17年間で思い付いた戦術とかそれをした後のリフレクション」
「この量全部ですか⁉︎」
「うん、そう」
2人はあまりの量に驚愕する。轟は適当に一冊取り出して見てみた。そこには、その日にやった戦術、その手応え、結果、反省、改善方法などがびっしりと書いてあった。
「君ら2人に足りないのは、まずは臨機応変な対応。そのために必要なのは経験値だけど、あいにくそんな時間をかけるならもっと他の事したいっても思うよね。だから、私の経験を全部読むことで疑似体験して。んで、それに自分の経験を上書きする。それが私の思う1番強くなれる道」
2人は玲実の話をきちんと解釈し、咀嚼し、理解し、自分のものにしていた。
「というわけで、君らにはこれから2週間でこれを全部読んでもらいます」
『へ?』
今度こそ2人は絶句する。
「ちゃんと脳内でシミュレーションしながら読んでね。わかんないとこあったら聞いてくれれば教えるから」
ここから読み始めて、とだけ言い残して玲実は自身の学習に入る。
「ねぇ轟くん。2週間でできると思う?」
「………やるしかねぇだろ」
2人は少しずつ読み始めた。
警報が鳴り響き、操司達の訓練は終わってしまった。警報が鳴った原因がマスコミにあることを知って心の中で怒る操司と、それを見て若干固まっていた轟、2人の光景に思わず笑ってしまっていた玲実の3人が織りなす世にも珍妙な空気が2-A教室内に漂っていたのだが、この話とは直接関係ないために割愛させて頂こう。
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同時刻、マスコミが去った後の雄英高校校門前。そこには校長の根津、保健医のリカバリーガール、教諭のミッドナイトと13号がいた。目の前には何故かボロボロに崩れ去った肛校門のセキュリティが。4人とも険しい顔をしている。
「ただのマスコミにこんな事ができるのかい?」
根津の問い掛けに誰も答えないが、その答えがNOであることは誰もが分かっていた。
「邪な者が入り込んだみたいだね。あるいは宣戦布告の腹積りか……」
彼らは重苦しい顔つきで瓦礫を睨み続けていた。
しかし、彼らは気づいていない。このセキュリティを破壊した者が、雄英に対して、またはヒーロー達に対して憎悪の念を抱いている者が、そしてヒーロー達を抹殺しようとしている者が彼らのすぐ近くにいたことに。
「ねぇ、弔くん。やっぱりその個性の組み合わせはずるいなぁ。使い勝手が良い」
「うるさい、源氏。お前の個性はここでは使い物になんないのになんで来た」
「はいはい、まずはそのことは良いでしょう。先生が3人で行けって仰ってたのですから」
「はぁ、もう良い。目的は達した。まずは1stステージクリアだ。帰るぞ、源氏、獅童」
「はーい」「了解しました」
止まっていた世界が今複雑に絡み合う。
というわけでUSJ編第1話でした。
オリキャラが多くいるために大きく変わってくると思います。彼らはこれからどうなるんですかね。
ということで、次回もお楽しみに〜
感想、評価の方も是非宜しくお願いします。