『並行世界』へと赴く   作:舞茸の都市

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第3話

 

 

 

壁を壊してきた存在は、見た目から言えば大体小学校低学年ほどの男であった。薄ら笑いを浮かべつつも眼の奥には怒り、憎しみが宿っている。敵と言われると余りにも不自然に思えるのだが、一般人と言われても腑に落ちない、そんな姿だ。

 

生徒達は、照久の見た目と行動の不一致からか動揺や油断を隠せない。

 

 

「こども?なんでこんなところに」

 

近づこうとする麗日に照久は目を向けた。

 

「子供とは酷いな。一応これでも年齢的には中学2年なんだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、思い通りに人を殺せる年だ」

 

 

そう言って麗日に向けてナイフを投げる照久。麗日は動けなかった。胸にナイフが突き刺さる。

と同時に操司が背後から麗日に触れ、ナイフの存在自体をなかったことにした。

 

 

「え?あたし、今刺されたんじゃ?」

 

 

この一瞬で起こった展開の早さについていけてない麗日。彼らを尻目に操司は飛び出し、照久に殴りかかる。照久は難なくそれを避けた。が、その先には既に珱九郎が待っていた。

照久を蹴り上げる珱九郎。吹っ飛んでいく照久。そんな彼らを見ながら操司は皆に向かって叫ぶ。

 

「みんな!あいつは(ヴィラン)だ。油断しないで早く逃げて!」

 

 

麗日にナイフが突き刺さる所を見ていたからか、皆は特に反論する事なく指示に従う。

彼らの背後では珱九郎が照久を引きつけている。珱九郎ならば敵に対して時間を稼ぐだけの強さも非難が終わった後に逃げるだけの速さもある。だから、まずは自分たちが早く避難しなければ。その様に誰もが思っていた。しかし、その考えはすぐに覆された。

 

 

 

 

 

"ドォン"

 

 

衝突の音が響き、一行がそっと後ろを見ると、そこには、

 

 

 

 

「ふぅ、全くこんなんで僕を時間稼ぎしようとは、君らも無駄な事するね」

 

「………」

 

「クロ君!」

 

身体中血だらけの珱九郎の顔を無造作に掴む照久と

 

 

 

 

「戦闘経験では一歩劣る!」

 

「や、やられた……」

 

「先生!!」

 

13号の背中をチリにする男の姿があった。

 

 

 

 

 

 

(やばいやばいやばいやばい!

このままじゃ皆殺される。なんとかしないと)

 

必死に頭を働かせる操司に対して、照久は告げる。

 

「なあ、操司くん。僕はね、君を、いや、君たちを殺しに来たんだ。崩土さんをあんな目に合わせた君らを」

 

覚えのない言葉に疑問が浮かぶ。確か崩土は自ら逃げ出したはず。

 

「あんな目も何も、君らが逃げ出したんじゃん」

 

「黙れ!」

 

優姫の言葉に照久は怒鳴りつける。

 

「お前らがあそこまで痛めつけておいて何が勝手に逃げただ!ふざけるな!!

崩土さんはぼくを守って死んだ。お前らが崩土さんを殺したんだ!

だから!今度は僕がお前を、いや、お前の大切なものを殺すんだ!奪うんだ!!!」

 

身に覚えのない言葉に混乱する操司と優姫。他のクラスメイトは不思議そうなそして若干疑いを持った目で2人を見ている。そんな中、靄の男が照久に告げる。

 

 

「源氏照久。感情的になっている場合ではありません。早く生徒達をばらけさせますよ」

 

「ははは、すいません黒霧さん。少し楽しくなっちゃってました。

でもまずは」

 

 

異様な雰囲気がこの場を包む中、出た言葉は、

 

 

「この男を殺します」

 

珱九郎の殺害宣言だった。

 

 

 

 

途端走り出す操司と優姫。そして、そして、全く同時に緑谷も走っている。

遅れて他の者も何人か走り出していた。しかし、

 

 

「させません!」

 

黒霧が目の前に立ち塞がる。

 

「あぁ、もう邪魔!」

 

優姫が息を吹きかけると、それは吹雪となって靄を多少流した。

走る生徒達。

 

「(間に合え!)エアパルム!」

 

 

ダン、と響く足踏みとともに操司は手の平を思いっきり突き出す。空気に干渉を起こし、まるで見えないボールが飛んでくる様に衝撃が飛んでいく技だ。

操司の掌から繰り出されたそれは真っ直ぐに珱九郎を掴む手にぶつかる。

 

 

「いった!」

 

照久は手を離した。優姫は黒霧を止めておくため動けない。操司は走り出すが、それよりも早く辿り着いたのは、

 

 

 

「スマァァァァァァァァッシュ!!」

 

 

「うわっと」

 

 

緑谷だった。緑谷の腕から生み出された衝撃、暴風は照久を退けるのに十分であった。この隙を突いて操司は珱九郎を連れ出す。

 

「逃げるよ!2人とも!」

 

操司の言葉を合図に2人は撤退するが、

 

 

「逃がしませんよ!」

 

優姫が振り向いた途端に黒霧は全体を覆い尽くした。

 

(速い!間に合わない)

 

逃げる間もなく一行は靄に飲み込まれた。

 

 

 

 

*****************

 

 

 

「うわぁぁ」

 

飛ばされた先で優姫が初めに見たものは、水面だった。何もすることができずボチャァンと派手な音を立ててダイブする。

 

「(ここは、海ではないか。しょっぱくないし。底は人工的、プールか?)」

 

などと考えながら水面に向かって泳いでいると、遠くから敵と思しきものが泳いできた。

 

「きたきたぁ!まずは1人目ぇーーー」

 

大口を開ける敵に対し、優姫は口の中の息を吐き出した。すると、口から氷が敵に向かって一直線に伸び、敵を凍らせてしまった。

 

 

「冬野ちゃん」

 

ここで蛙吹が冬野を掴んで悠々と進む。彼女らは水の中から抜け出し、近くにあった船に乗り込んだ。

どうやらここはUSJ内の『水難ゾーン』のようだ。優姫とともにここに飛ばされたのは緑谷、蛙吹、峰田の3人だけだった。

 

4人は船の上で話をする。

 

「さて、と。大変なことになったね」

 

「うん。オールマイトを殺す発言に、相澤先生や先輩達の知り合いみたいな敵。それと烏丸くんに重傷を負わせる程の敵もいて……」

 

「で、でもよぅ。オールマイトを殺すなんてできっこねぇよ!あんな奴らオールマイトが来たらケチョンケチョンだぜ!」

 

そう言って腕を回す峰田に蛙吹が指摘する。

 

「本当にそうなるのかしら?」

 

「へ?」

 

「あいつら、オールマイトを殺すって言っているのよ。計画がある以上、殺す算段はついているはずよね。それに敵の1人は私たちの内で戦闘力の高い烏丸ちゃんを倒せる程の実力者。果たして本当に大丈夫なのかしら?そもそも私たちはオールマイトが来るまで持ちこたえられるのかしら?」

 

蛙吹の言葉にブルブルと震えだす峰田。まぁまぁ、と抑えつつ優姫は3人に尋ねる。

 

「さて、どうする?戦う?それとも待つ?」

 

優姫の問いに蛙吹と緑谷は悩む。

待つのも悪い手ではない。敵は油断してたとはいえ蛙吹の蹴りも避けられないような、いわば只のゴロツキ。敵が仮に船に乗り込んできたとしてもこちらには優姫がいるため、負けることはないだろう。

しかし、

 

 

「……戦おう」

 

「そうね。私も賛成だわ」

 

2人は戦うことを選ぶ。

 

「ど、どうしてだよー!オールマイトが来るのを待てばいいだろ!オレらが危険を冒す必要はまだないって!」

 

「……そうじゃないんだ、峰田くん」

 

緑谷は反応する。

 

「あいつらにはオールマイトを倒す算段がある。なら、僕らがオールマイトのためにできることは、彼奴らと戦って勝つことだけじゃないかな」

 

そう言いながら緑谷は皆に告げる。

 

「まずは皆の安全を確かめるためにも、僕らが、ここで勝とう」

 

「オールマイトの為に、か。そんなの考えたこともなかったな。

まぁ、私も戦うのには賛成だけど」

 

「決まりね」

 

「えぇぇ!」

 

4人はお互いの個性を確認し合い、作戦を立てることにした。

 

「ていうか今更だけど緑谷ちゃん」

 

「なに?蛙吹さん」

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

蛙吹に言われ顔を真っ赤にする緑谷を尻目に蛙吹は続ける。

 

「あなた、個性使ったのに腕が壊れていないわね。調整に成功したのかしら?」

 

はっと気づいたように他の2人も緑谷の腕を見る。先程珱九郎を助けるために緑谷は個性を使った。しかし、その右腕は今もなお外傷のないままだった。

 

「うん、そうなんだ。何でかは僕にもわかんないけど」

 

「凄いじゃん出久くん!無意識でも結果は結果だよ!成長してる証拠だね!」

「あ、ありがとう、冬野さん」

 

盛り上がるのもそこそこにして、4人は話を続ける。蛙吹が提案する。

 

 

「冬野ちゃんが水面を凍らせるのはダメかしら?」

 

「うーん。良いけど、私は凍らせるときは0か100しか出来ないからさ。敵さん達死んじゃうよ。溶かせないし」

 

冬野は今まで凍結よりも、どちらかといえば降雪や使い魔の制御の方に力を入れていた。そのため、凍結はまだ調整が出来ないのだ。

ふむ、と考えていると、

 

 

 

ドォン

 

轟音が響き、船が真っ二つに割れる。

 

「さっさと終わらせるぞ」

 

「引き込んじまえばこっちのもんだ」

 

船の外から聞こえる敵達の声に峰田が動揺する。峰田は耐えられなくなったかのように叫びだし、個性であるもぎった物を敵に向けて投げつけた。

 

「ばか、個性バレるでしょ!」

 

慌てて優姫が止める。

 

「ケロ、峰田ちゃん。本当にヒーロー志望なの?」

 

「うぐっ、しょうがねぇだろぉ!ついこの前までただの中学生だったんだぞ!」

 

「まぁまぁ、落ち着いて実くん。梅雨ちゃんもズバズバ言い過ぎだよ。たとえ本当のことでも時にはビブラートに包まないといけないって」

 

「冬野ちゃん、多分ビブラートじゃなくてオブラートよ」

 

「何気冬野の言葉が1番グサリときてるからな!」

 

わぁわぁ騒いでいたが、

 

「そうか!」

 

緑谷の一言に皆が黙る。

 

「どうしたの?」

 

「うん。これなら、勝てるかもしれない」

 

 

『水難ゾーン』は現状の打破に入る。

 

 

 

 

*****************

 

 

 

「いよっと」

 

操司が珱九郎を担いだまま飛ばされた場所は『倒壊ゾーン』だった。

 

「おわっ」

 

声のする方を向くと、そこには切島と爆豪がいた。

 

「2人もここにとばされたのか」

 

「みてぇだな。てか珱九郎は大丈夫か?」

 

「………たぶん」

 

珱九郎の容態は見ただけでも酷いものだった。顔を叩きつけられたのであろう、元々つけていたお面は見る影もなく、頭からは血が滲んでいる。触ってから気づいたのだが、恐らく足は両方とも折れているのだろう。

 

操司達が思案していると

 

 

「いたぞ!餓鬼どもだ」

 

(ヴィラン)がやってきた。

 

「2人とも、あいつらを頼んだ!僕は珱ちゃんの処置をするから動けない」

 

「うっせぇ、俺に命令すんな!こいつらなんざ俺1人で十分だ!」

 

「おーおー頼もしいこって」

 

食いつく爆豪を受け流し処置に入る操司。

 

(危ないところだけ治しておこう。やり過ぎてこの世界もろとも崩壊なんて洒落になんないし)

 

そう思い操司は珱九郎の頭部に触れる。怪我したところが少しずつ治されていった。

治療中、操司がちらりと爆豪たちの戦っているところを見るが、爆豪も切島も敵相手に負けるような危なっかしさは全く見当たらない。心配はなさそうだ。

操司による治療が終わる。それと爆豪達が敵を倒すのにもひと段落がつく。

 

「お疲れさま」

 

「おぅ、珱九郎はどうだ?」

 

「そんな、僕は医者ではないからそこはよくわかんないよ。でも、取り敢えずは治しといた」

 

そうか、と切島は返した。

 

「さて、2人はこれからどうすんの?」

 

操司の問いにまずは切島が答える。

 

「そりゃ勿論他の奴らを助けに行くだろ。戦闘に慣れてないような奴が心配だ」

 

「ふん、勝手に行ってろ」

 

「はぁ?」

 

「俺はあの靄モブをぶっ潰す」

 

またかよ、と抗議する切島だったが、爆豪はうっせー、と返す。

しかし、操司は爆豪に対して何となく今までとは違った感じを受けた。今までならもっと怒り狂った顔つきのはずなのに、今はやけに冷静であった。

 

「つーか」

 

「しねぇー!!」

 

突如爆豪の背後からカメレオンのような姿をした敵が現れるが、爆豪は持ち前の反射神経で反撃、あっけなく撃破する。

 

「俺らにあてられたのがこの程度の奴らなら別に他の奴らも平気だろ」

 

「お前そんなに冷静だったか……?」

 

 

(他の奴らも平気って、信頼してる証拠だよね。爆豪くんは凄いな。僕はまだ不安だよ)

 

そう思いつつ操司は2人の話を聞いてる。

 

「よし、爆豪!お前に乗ったぜ!!」

 

「僕は珱ちゃんを運ばなきゃいけないし、邪魔になりそうだから広場にはいかないよ」

 

操司は他の所にいるクラスメイトのヘルプに回ることにした。

 

 

「んじゃ、あとは別行動でね」

 

「おう、気をつけろよ」

 

そう言って3人は倒壊ゾーンから離れる。

(まずは近くにある山岳ゾーンから行くか)

 

 

操司は山岳ゾーンへと急ぐ。

 




というわけで、第3話でした。
USJ編はアニメで1番ワクワクした記憶があります。大好きですね、私は。


ということで、次回もお楽しみに〜



感想、評価の方も是非宜しくお願いします。


【追記】
急で申し訳有りませんが、一旦ここで〈未完〉とさせて頂きます。理由の方は活動報告の方に記載しました。中途半端で申し訳ない…
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