では、第4話START‼︎
それから操司と優姫、珱九郎の3人はよく一緒にいるようになった。クラスメイトと仲が悪いわけではないが、この3人でないとどうもおさまりが良くないようだ。勉学においては、優姫と操司が大体同じ程度で常にTOP2を独占、珱九郎も学年で20位以内には入るほどであるから、頭が悪いわけではない。運動においては、優姫が他の2人に比べれば若干劣るが、それは性別の差というものもあるし、そもそもクラス内で言えば運動はできる方である。
よって、学年内でこの3人を「聡明エリート3人組」と呼ぶ者も少なくなかった。3人は全く気にしていなかったが。
そんな私立聡明中学校にだって様々な行事がある。体育祭、文化祭、マラソン大会…etc.
そんな中操司を最も苦しめるあの行事がやって来た。
「あぁぁぁ、なんで写生大会なんて有るんだよぉぉぉぉ…」
そう、実は操司、絵を描く事が苦手である。以前、人を描いたら
「死体現場にある白いやつみたい」
と言われ、犬を描いたら
「操司君ってさ、人間コンパスか人間定規だよね、きっと」
と言われ、リンゴを描いたら
「すごーい!数学の幾何学模様みたい!座標軸はどこに設定してるの?」
と言われるほどだ。この日は写生大会当日であるため、一日中自分で決めた場所の風景画に取り組む事になっている。
操司が嘆きながら登校していると、2人が近づいてきた。
「おっはよー、操司くん!今日は頑張ろうね!」
「あぁ、おはよう、優姫さん。
……………写生大会なんて滅べば良いのに、てか滅ぼそうかな。ここでヴィランに堕ちるのも1つの手だよな」
「おい、物騒だな、止めとけよ。親友が敵となるヒーローとかフィクションの世界だけで十分だ。
……………まぁ、共感はするがな」
絵が苦手なのは珱九郎も同じようだ。
「でも、私も一緒に描きながら教えるから、頑張ろう!2人とも!」
そう、以前写生大会で書く場所を決めていた際、優姫は強引に2人とも自分と同じ場所を描かせる事にしていた。3人が描く場所は街の傍を流れる河川敷であり、他に其処を描こうとする人は居なかった。他の人に自分の絵が見られない事は良かったのだが、操司と珱九郎にとって一番の天敵は
「優姫さん!今日は僕の描いた絵について感想言わなくて良いからね!」
「俺も同様にしてくれ」
「えー、なんでー!」
彼女、冬野優姫である。操司が以前言われた感想を前述したが、あれは全て優姫による発言。しかも全て悪気があるわけではないのがいっそう操司のメンタルをえぐる。操司よりも優姫との付き合いが長い珱九郎ならば尚の事。
「ねえ、珱ちゃん。今日はがんばろう」
「どれだけ精神崩壊を起こないようにするかが勝負だな」
「ちょっとー!2人とも私の事ディスってない⁉︎」
などと話しつつ校舎にたどり着く。
朝のホームルームが終わると直ぐに全員が体育館に集まり、美術の先生による注意事項を聴く。通りがかりの方にきちんと挨拶をするだとか、友との無駄話は厳禁だとか今日1日で終わらなかった時は課題になるということまで細々と注意された。
それらも終わり、遂に移動、そして写生開始となった。3人の選んだところは河川敷、往復は徒歩で移動する。ならば、中学生ならば当然、
「ふっふっふ。クロ君ありがとね〜、荷物持ってくれて」
「ちくしょう、覚えてろよ2人とも」
「じゃんけんに3回も負けた珱ちゃんが悪い」
こうなる。
何気ない話を続けていた3人だが、急に優姫が切り出してきた。
「ならさ、操司くん!走っていこっか‼︎」
優姫はそう言って全力で走り始める。
「あ、ちょっと、優姫さん⁉︎」
「操司、俺は走りたくないからあいつを追いかけてくれ」
珱九郎は3人分の画材一式を持っている。走るのは流石に辛かった。
「うん、分かった!」
そう言って操司は優姫を追いかけて走り出した。
「……頑張れよ」
珱九郎の呟きを聴くことなく。
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操司が走って河川敷に向かうと、優姫はもう既に着いており、目の前を流れる川を何かを考えているかのように見つめていた。
優姫は操司の存在に気付き、こちらに笑顔を向ける。
「あ、操司くん、遅いよー!
暇だったんだからね」
「はぁ、はぁ、優姫さんがはやいんだって。これでも頑張ったんだよ」
そう言って操司は息を整えつつ今回描く景色を見た。操司の目の前には緑が生い茂り、川の向こう側には木々がずらりと立ち並ぶ。左側には川の両岸を結ぶ橋が立っている。川の水は透明度が高く、向こう側の景色を写し、自然にできた写生画のようになっている。
操司はおもわず魅入ってしまう。その様子を見て優姫は微笑みつつ話しかける。
「どう、この場所。春なら奥の桜が満開になるからもっと良いんだけどね。綺麗でしょ」
「うん。良い場所だね」
「ふふ、ならよかった。この場所は私の大好きな場所でさ、何かあって悩んだり落ち込んだりするとここでぼーっとしてる。2人に私の大切な場所を教えたくて」
「ふーん、そっか」
操司は優姫の微笑みにどきりとしてしまう。
(……まぁ、優姫さん可愛いししょうがない。恋ではないよな、友達だし)
「どうしたの?黙っちゃって」
「いや、優姫さんも落ち込むことってあるんだなぁって思って」
「何それ、ちょっと心外だなぁ。とか言いつつも、そういえば落ち込むことってあんまりないかも。
それよりも何か決心をしたいときにここに来るかな」
「それが優姫さんらしいね。今日はなんか決心することあった?」
優姫は少し躊躇いながら答える。
「うん。まだ決心出来てないけど」
「そっか」
操司は優姫の思いつめた顔を見て心配する。
「僕にできることあったら言ってね。何でもするから」
そんな操司の答えに優姫はふふふ、と笑う
「(私は操司くんのせいで悩んでるのに…)
鈍いなぁ、もぅ」
「へ?なに?」
「いや、何でもない。決心できたなって話」
「そっか、なら良かったよ」
と、ここで珱九郎がついたようだ。
「あ、珱ちゃんが来た」
「やっと着いた…画材って何気重いな。お、2人とも何かあったか?」
「へ?ただ優姫さんと仲良く話してただけだよ」
「そうか。分かった。ほら、2人の分」
そう言って珱九郎は2人に画材を渡す。
「クロくん…ありがとね」
「おぅ、決心はまだついてなかったか」
「うん。ついてたと思ってたのにね。でももうついたよ」
「分かった。後から事情は聞くからな」
2人の会話を聞いて操司はキョトンとする。
「だから事情も何も話してただけだよ」
「…ふぅ。そうなら良いけどな」
「ほら、2人とも、描くよ!課題にはしたくないから早く終わらせよ!」
こうして3人の写生大会は過ぎていった。
帰りもじゃんけんに負けた珱九郎が3人分の荷物をすべて持ち、しかも2人に肉まんを奢ることになったのはまた別の話である。
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某日、闇深まった頃のとある場所
2人の男が向かい合っていた。初老の男はへなりとその場に座り込み後ずさりをして距離をとろうとする。若い男の方はそんな抵抗も気に留めずずかずかと近づいていく。
「やめてくれ、やめてくれ。なぁ、俺はお前に何かしたか?何もしてないだろ!」
「まだ分からんか。それがお前の罪だ」
「だ、だれか、たすけ…」
逃げようとする男に対し、別の男はナイフを突き立てる。血飛沫が周りに飛び散る。
「始末完了。さて、帰るか」
男が個性を使おうとすると
"ガタン!!!!!"
何かが倒れる音がした。気になり音のした方に近づく。どうやら扉の奥のようだ。
男が扉を開けると、そこには傷だらけの少年がいた。少年は漆黒のように深い目をしており、まるで意思などないかのような顔つきでこちらを見ていた。
「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…………」
ぶつぶつと呟いている。男はそんな少年の姿をじっと見た。
「ボウズ。お前の親は死んだ。いや、殺した」
少年は何も考えられないかのように男を見つめている。
「……俺と来るか」
こくりと頷く。
「ならさっさと支度しろ。ヒーローと騙るクズどもが来る」
「おじさん、名前は?」
「……切屑。切屑 崩土(きりくず がれ)だ。
行くぞ、早く支度しろ。源氏 照久(げんし てるひさ)」
悪は蠢く。
平和の陰に
ひっそりと
確実に
てな訳で第4話でした。
さぁ、どうなるのでしょうか。筆者にさえまだ分かっていません(おい)
新たなオリキャラ紹介
・切屑 崩土(きりくず がれ)
→謎の男。少なくとも源氏の親2人を殺している。当時25歳。
・源氏 照久(げんし てるひさ)
→親を殺された少年。当時7歳、切屑とともに何処かへ消える。